墓じまいで手元に残る遺骨には新しい供養先が必要
「今のお墓は遠すぎて、お参りに行けない」
「お墓を管理してくれる人がいない」
というような悩みから、墓じまいを検討中の方は多いようです。
大自然を思わせる散骨の情報を集めたり、永代供養墓のCMを観たりして、これらが通常のお墓とどう違うのかよくわからないまま…イメージだけで墓じまいを進めていませんか?
墓じまいで手元に残るご遺骨は、永代供養墓、散骨、自宅安置のいずれかで供養することになります。違いをよく知って、ご家族に合った方法を選びましょう。
墓じまい後はどうする?散骨と永代供養墓の違いは?
墓じまいで手元に残る遺骨を新しく移す場合に候補となる「散骨」と「永代供養墓」について、特徴を比べてみましょう。
散骨の種類と費用相場
ご遺骨をまく時の方法や場所によって、いわゆるプランの種類が異なります。そして、その費用はその場所に向かうために利用する交通手段に左右されます。
次項ではかかる費用の相場をプランの種類ごとに紹介します。
沖合で散骨をするため、船に乗って散骨ポイントへ向かいます。利用する船の形態や規模により、金額も手順も変化します。
自分たちと業者のスタッフしかいないため、散骨地点に向かう間に想い出の地を巡ったり、お別れパーティーをしたり、さらに散骨のタイミングも時間をかけてゆっくり過ごせたり、自由にできるということが大きなメリットといえます。ただ、チャーター便ですので、費用は高額になるでしょう。
散骨業者が定期的に運航している散骨専用クルーズ船に乗り、散骨場所を目指します。乗船人数が多いことから使用する船も大きいものとなり、乗り心地の良い船旅になります。散骨を目的とした乗客しか同船していないため、気兼ねなく過ごせるでしょう。
チャーター便に乗るより費用を抑えられる上、実際に自分たちの手から遺骨をまけるプランです。進行管理は業者が責任を持って取り仕切るので、散骨をする人の作業負担が少なくなります。
しかし、1家族ごとに定員がある場合、乗船を希望している家族が多いならば不向きでしょう。
海での散骨を希望していても、健康上の理由で乗船できなかったり、海から遠く離れた場所に住んでいたりするなど、物理的に難しい方は、業者による代行委託散骨を利用することができます。業者に遺骨を代行してもらったら、散骨の完了を証明する書類を受け取ります。
費用を抑えることができますが、大切な遺骨を託す業者の選定は慎重に行いましょう。
散骨業者や寺院が所有する土地に散骨専用のエリアが設けられているパターンです。四季を感じ、自然葬であることを実感できる葬送になるでしょう。山間部のアクセスしづらい場所にある可能性が高いです。
国内で唯一、自治体が散骨専用として認知しているカズラ島は、島根県隠岐郡にあります。島全体が散骨関係時のみ上陸可能とされており、普段から自治体に守られているのです。
自分が所有して管理している私有地であれば、無料で原則散骨することが可能です。
成層圏で破裂する風船にご遺骨を搭載するものから、月に向かうものまで幅広くあり、値段も大きく変わります。ロケットに遺骨を搭載して月まで飛ばすと、250万円以上かかるそうです。
セスナ機やヘリコプターからご遺骨をまく空中葬は、利用する乗り物などによって値段が変わります。
散骨は明文化された法律がないため、自分が所有している土地の中で行うことは禁じられておらず、費用が発生しません。
ですが、周囲の宗教的感情に配慮すると、散骨を行った土地を新たな用途で使うことは難しくなってしまいます。また、散骨は違法ではありませんが、独自の条例を制定している自治体があるため、確認が必要です。
「散骨は遺骨をまいておしまい」というイメージがありますが、そうではありません。遺骨をまいて自然に還し、供養しているのです。遺骨を全て散骨すると、手元に残らず、以後の遺骨の管理は永久に不要となります。
散骨の場合は、実施した時点で供養が完了すると考えられます。形は残りませんが、永久に供養されるため、散骨は永代供養の一つといえるでしょう。
永代供養墓の種類と費用相場
先ほど述べましたが、永代供養(定義)は、先祖供養を霊園や寺院に完全委任するしくみを指しています。
永代供養墓は、契約時に永代供養を約束するお墓のことです。個別に遺骨を安置する区画は使用できる期間が設定されており、ある程度年月を経ると他の方々の遺骨と一緒にして(合祀)、供養される場合が多いようです。
屋外に永代供養墓の施設がある場合、3つのタイプに分けられます。
個別の専用施設にそれぞれ納骨し、墓標があるため、従来のお墓に近いイメージです。使用料や管理費用は他のタイプに比べて高めです。
モニュメントや塔の地下にある個別の納骨スペースを使用します。
個々に分けず、他の人の遺骨とまとめて供養されます。
霊園場所の分類は以下となります。
- 都市型…樹木葬専用エリアが霊園内にあるタイプ。
- 里山型…墓標の樹木の根元に遺骨を埋葬。
- 庭園型…庭園のような樹木葬専用霊園。
埋葬方法別に、費用相場を紹介します。
シンボルツリーの下に、他の遺骨と合わせて埋葬。
専用の埋葬場所に、少人数単位で利用。
埋葬した遺骨と同数、墓標の樹木を植樹。
比較的安価ではあるものの、しくみと立地が金額に大きく影響します。
室内にお墓があるイメージです。
ずらりと並んだ仏壇に納骨します。
骨壺を納める棚状タイプで、比較的安価です。
IT技術により制御されている最新式の納骨堂です。
散骨と永代供養墓では墓じまいの手続に違いはある?
墓じまいを行うにあたり、手続が必要かどうかを知っておくとスムーズに進めることができるでしょう。キーワードになるのは「改葬」です。
遺骨の新しい供養先が「改葬」に該当するかどうかで、手続は異なります。
散骨には明文化された法律がなく、手続は不要です。
東京都福祉保健局によると「他のお墓や納骨堂などに遺骨を移す場合は、区市町村による改葬許可が必要となりますが、散骨のために取り出す場合は、区市町村により取り扱いが異なりますので、必要な手続などを区市町村に確認してください。(公式ウェブページによる)」とされ、法で定められた手続はないといえるでしょう。
散骨業者によっては、遺骨に違法性や事件性がないことを確認するため、改葬する際に必要な公的書類である『改葬許可証』の提出を求められる場合があります。
墓じまいで取り出した遺骨を、新たに「永代供養墓」や新しいお墓に納める「改葬」をするのは、お墓の引っ越しに該当します。
お墓や葬儀に関する法律で「墓地埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)」というものがあります。そちらには、改葬する際に自治体の許可を必要とし、「改葬許可証」の受け取りを定めた条文があります。
墓じまい後に散骨をするメリットとデメリット
散骨のメリットとデメリットを次項から紹介します。墓じまい後の新しい供養先を選ぶ際の参考にしましょう。
遺骨の新しい居場所に散骨を選ぶと考えられるメリットは以下の2点です。
散骨を選びたい理由に「子孫に迷惑をかけたくない」とあります。(生命保険株式会社の調査による)散骨は遺骨をまいて供養するため、今後は管理が必要なく、費用も一切発生せず、子孫に迷惑がかからない方法なのです。
自分自身で散骨をすると、直接的に先祖を供養する機会を得られます。
散骨すると起こりうるデメリットも知っておきましょう。
「遺骨をまく」という行為は、いくらパウダー状の遺骨でも、衝撃を受ける方がいるでしょう。遺骨はお墓に安置することが一般的であり、その他の在り方を考えることは少ないです。
遺骨を全てまくと、お墓もなくしていることもあり、新たな心の拠り所が必要かもしれません。
墓じまい後に永代供養墓に納骨をするメリットとデメリット
遺骨の新しい供養先に永代供養墓を選ぶと、どのようなメリットがあるでしょうか?また、デメリットは何でしょうか?
永代供養墓はさまざまな形態がありますが、共通のメリットを紹介します。
永代供養墓は、どのような施設でも必ず経営母体があり、管理者がいます。納骨すれば永代供養されるため、管理もしてもらえます。
例外はありますが、永代供養墓の施設の多くが、アクセスの良さを魅力としています。「お墓が遠い」悩みで墓じまいをする場合、お参りしやすさは重要な要素ではないでしょうか。
永代供養墓の大きなデメリットを知っておきましょう。
お墓に遺骨が大量に眠っていた場合、新しい供養先を見つけるのは困難かもしれません。永代供養墓の納骨する区画を契約するタイプは、たくさんの遺骨を納めるには不向きです。
1件あたりのお骨の数が決められている場合は、粉骨して遺骨の容積を減らしても、受け入れてもらえないかもしれないことを念頭に置いておきましょう。
墓じまい終了後の供養は散骨と永代供養墓で違いはある?
墓じまいで散骨することを選択し、全ての遺骨を自然に還すと、今まであったお墓も遺骨もなくなります。手をどこに合わせていいのか戸惑い、不安に思うかもしれません。
遺骨は存在しません、だからこそ、供養も自由なのです。
皆で思い出を語り合ったり、散骨した場所へ行って手を合わせたり、家族で過ごすひとときが供養となるでしょう。新しい心の拠り所として、家族ならではのイベントを作ることをおすすめします。
永代供養墓は、従来と変わらない供養ができます。納骨した施設を訪ねて、手を合わせることは、今までのお墓参りと同じです。
施設を管理している霊園や寺院が供養してくれることもあり、法要などの行事は必要ありませんが、希望すれば、お盆やお彼岸などでもお参りできます。施設によっては、お供えや献花を受け付けていなかったり、焼香が禁止されていたり、お参りのルールがあります。確認の上でお参りするようにしましょう。
まとめ
墓じまいで必ず発生する遺骨の行き先は、関わる親族皆が納得できるよう、話し合いを重ねて決めることをおすすめします。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |