墓じまいでお骨をどうするか迷ったら散骨がおすすめです。
墓じまいを検する中で避けて通れないのが「手元に残る先祖のお骨をどうするのか」という問題です。この記事では、墓じまい後の遺骨の対応例として、散骨をご紹介します。
また、散骨以外の対応として、永代供養墓に改めて納骨したり、自宅で安置したりする選択肢もあります。家族に合った方法を見つける一助になるよう、散骨以外の方法も含めて紹介していきます。
墓じまいは「お骨を供養する方法をどうするか」改めて考えること
墓じまいは「墓石を撤去し墓地を更地にして、単にお墓をなくしてしまうこと」ではありません。墓じまいでお墓を取り除けば、お墓から外に出した先祖のお骨が手元に残ります。
墓じまいを進めることで、これらの問題は解消されるかもしれませんが、手元にはお墓の下で眠っていた先祖のお骨が残るのです。先祖に感謝しながらお骨を改めて供養するまでが、墓じまいといえるでしょう。
墓じまいの前にお墓の中にあるお骨を確認しよう
新たな供養先が、従来のお墓や納骨堂などの永代供養墓では「改葬」扱いとなります。
後述しますが、改葬には行政書類である「改葬許可証」が必要です。お骨1柱につき1枚必要となるため、お墓の中にあるお骨の数をはじめ、それぞれのお骨が誰のものか明らかにし、不明な場合は調べる対応が必要となります。
納骨されている故人の名前は、たいていは墓石に刻まれていますよね。もしも墓石から判別できないときは、骨壺の蓋に記名されているというケースもありえます。
万が一、不明なお骨が出てきてしまった場合は、お墓の管理者(寺院や霊園の管理事務所)に訊いてみましょう。
お墓に焼骨を納骨する際、火葬場の押印がある「埋葬許可証」を提出しているため、お墓の管理者は納骨されている方のお名前を把握しているはずです。
何百年という歴史を持つお墓だと、誰のお骨か分からないこともあるかもしれませんが、墓じまいで出てきたお骨全ての名前について、把握しておくとよいでしょう。
例えば、寺院では1周忌や13回忌など節目となる法要を行いますが、ある地域では33回忌や50回忌で「弔い上げ」をする風習があります。
「弔い上げ」では、お墓の中に納められている骨壺からお骨を取り出し、お墓内部にある土がむき出しになっているスペースにそのまま埋葬して土に還すのです。「弔い上げ」や、お骨を複数箇所に分ける「分骨」などで、お墓に納められている骨壺の数が少ないこともありえます。
反対に、お墓の内部が骨壺でいっぱいという場合もあります。
お墓に納骨されていたお骨を取り出してみると、お骨の多くが汚れていたり、骨壺が水浸しだったり、カビが付着していることがあります。お骨の状態によっては、次の改葬先に納められないかもしれません。
散骨をする場合は、パウダー状になるまで粉砕することが条件となりますが、そのためには洗浄と乾燥が必要です。
古いお墓や山間部では、土葬で埋葬されていたお骨が眠っているかもしれません。土葬骨は、火葬が必要な場合があります。
お骨を小さくする粉骨で保管しやすくしよう
お骨が入っている骨壺は、地域や宗教によって大きさが異なります。
関東は7寸(直径約21.5cm)、関西は2寸から5寸(直径約6cmから約15.5cm)
墓じまい中に、安置する場所に困ってしまうかもしれません。そこでおすすめなのが、お骨を粉砕してパウダー状にする「粉骨」です。容積が減り、お骨を合わせて保管することもできます。
散骨ではマナーの観点から粉骨が必須ですが、改葬する場合でも粉骨を求められることがあります。
粉骨はお骨を損壊しているわけではなく、形を変えて供養しやすくしているという感覚です。刑法190条は『死者に対する社会的習俗としての宗教的感情』を保護するためにあります。供養のための粉骨は罪に問われることはないのです。
ちなみに、東京都福祉保健局によると、「散骨」について、国は、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。(以下略)との見解を示しています。とあり、散骨も違法ではありません。
1.散骨することができる
散骨するためにはマナーの観点から粉骨をする必要があります。
2.手元に残しておきやすい
粉骨すれば、容積が圧倒的に小さくなり、自宅に安置できる大きさにすることができるでしょう。
3.分骨しやすくなる
親族や友人など、故人と縁のある人々でお骨を分け合えやすいです。
1.精神的に受け付けられない人がいる
お骨を砕くという行為そのものが、亡くなった方への冒とくであると感じる人もいます。そういう方の宗教的感情を傷つけてしまうかもしれません。
2.元に戻せない
粉骨したお骨を元の形に戻すことはできません。
3.消失しやすい
散骨できるほどの細かさで、風に吹かれれば飛んでいってしまうでしょう。パウダー状になっている分、紛失してしまう可能性は高くなります。
粉骨は自力で行うことができます。特別な道具は必要なく、お骨を粉状にできれば何を使ってもよいです。
実際の方法と手順について以下に紹介していきます。
- 洗浄する。
お墓の中の骨壺に安置されていたお骨は、土やカビで汚れているかもしれません。火葬で炭化していたり、副葬品が焼き溶けていたり、納骨時から大きな汚れのある部分はしっかりと落としましょう。 - 異物を除去して乾燥させる。
体内にあった金属製品などの異物を除去しなければ、粉砕できません。また、遺骨に湿気があると、粉砕しても塊になってしまいパウダー状になりにくいです。 - 根気強く粉砕する。
お骨は火葬から時間が経っていても、大きな部分は硬く、粉砕するには多くの時間と気力を必要とします。ハンマーや木槌、すりつぶすための乳鉢などを使って、粉状を目指しましょう。
粉骨業者は、電動粉砕機やミル状の臼などの機械を使用します。自分自身で行えば費用がかからず済みますが、専門業者に依頼すれば、ダマのないサラサラのパウダーになるでしょう。
お墓から取り出したお骨の量が多い場合は特に、業者を利用することをおすすめします。
墓じまい後のお骨をどう供養する?考えられる3つの方法
お墓から取り出したお骨には、新たな供養先が必要となります。代表的な選択肢は以下の3つです。
- 散骨
- 永代供養墓
- 自宅に安置する
散骨は、粉状にしたお骨を自然に還すように「まく」葬送となり、お墓ではありません。永代供養墓は、納骨堂や樹木葬など種類も場所も多岐にわたり、改葬となります。自宅に安置し、手元で供養することもできます。
墓じまいを進める前に、それぞれの特徴を理解し、親族と話し合って決めましょう。
散骨とは、ナチュラル志向をはじめ、考え方が多様化した現代で注目されている自然葬のひとつです。パウダー状にしたお骨を散布し、自然に還します。
宇宙に向けて飛ばす方法もありますが、基本的に散布後は自然に任せ、周囲と溶け込んで一体化させるイメージです。お骨を埋める行為ではないため、埋葬ではありません。
埋葬ではないことから、散骨にははっきり明文化された法律がなく、決まりにも宗教にも縛られない葬送を行うことができるのです。
散骨はお骨を散布する場所によって種類を分けられます。
費用はそれぞれ利用する乗り物や設備によって変わりますが、散骨業者によっても金額に差があるため、業者の選定は事前にしっかり行いましょう。
海洋散骨は、沖合で散骨を行う、散骨の中では最も主流の方法です。乗船する船によって値段が異なりますが、業者に散骨を代行委託する方法が最も安価です。
散骨は自由な葬送ですが、どこにでも気軽に散布できるわけではありません。陸地での散骨を希望する場合は、業者や寺院が所有する専用の土地や、島(島根県にあります)で行います。
こちらも業者による代行が比較的安価ですが、自分の所有地であれば無料です。
お骨を搭載した風船やロケットを打ち上げ、宇宙に届けます。風船を利用すると費用を抑えられますが、ロケットを月に向かって飛ばすプランの場合、250万円以上の費用がかかります。
海洋の上空から散骨を行う方法です。利用する飛行機やヘリコプターによって金額が変わります。
永代供養は、納められているお骨を寺院や霊園が永代に供養することです。永代供養を約束してくれるお墓が、永代供養墓なのです。
「自分の死後にお墓参りをしてくれる人がいなくなってしまうけれど、できれば誰かに供養してもらいたい」という願いを叶えてくれるお墓といえるでしょう。
しかし、供養の期間は永久ではないことが多く、霊園や寺院によって異なります。種類とそれぞれの違いを知り、希望に合うお墓を探しましょう。
永代供養墓の種類は幅広く、納骨堂と呼ばれるものや、永代供養が付加されている樹木葬も該当します。
費用は、霊園や寺院の設備や付帯サービス、立地によって変わるため、上限はありません。都会の納骨堂と、山間部の霊園では金額に大きな差があるでしょう。
ここでは納骨するタイプごとに、おおよその費用相場を併せて紹介します。
一般的なお墓と同じように、墓石などの墓標を個別に設置します。一定期間が過ぎると、他の方々のお骨と合わせて施設内の合祀墓に移され、墓標は撤去されます。
モニュメントとなる墓標の下に、個別の納骨区域がある形態です。単独墓と同じく、一定期間が過ぎると合祀されます。
集合墓のようにモニュメントがあり、納骨をまとめるタイプを指します。初めから合祀されているため、最も費用を抑えられる傾向です。
樹木葬は「樹木を墓標とする墓地に埋葬」します。お骨をまいて供養する散骨とは異なり、自然葬でありつつお墓を建てることでもあるのです。
そのため、永代供養をしている霊園や寺院の下で行えば、永代供養墓となります。場所、埋葬方法、墓標とする樹木など、種類が多いのも特徴です。
墓標を樹木としていることから、お墓建立費用を抑えたい方にも人気があり、前述した永代供養墓と同様に、合祀を選ぶとより費用が安くなります。
お骨を自宅に安置しても問題ない?
お墓から取り出した骨壺やお骨を次の供養先に移す間、あるいは供養先がまだ決定していない状況などにより、お骨を自宅に安置することがあるかもしれません。
保管してそのまま供養を行う選択をしたら、お骨はしっかり洗浄することをおすすめします。お骨にはバクテリアや菌などが付着していたり、有害な物質が存在していたりするため、直接触れるのは避けましょう。
墓じまい後のお骨をどうするか迷ったら散骨をおすすめする理由
墓じまいをして出てきたお骨は、散骨をして供養することをおすすめします。
散骨は今後の管理が必要なくなることから、永代供養ともいえるでしょう。お骨は手元からなくなりますが(一部を残して散骨することもできます)、お墓を持たずにいることもでき、お墓の後継者問題や立地の悩みを解消できます。
想い出や縁のある場所を選び、自分たちの手で供養する散骨は、墓じまいの締めくくりに合う葬送方法ではないでしょうか。
墓じまい後に散骨を行うメリットを2点紹介します。
散骨を希望する理由のひとつに、「子孫に迷惑をかけたくない」ことがあります。(生命保険株式会社の調査による)お墓の管理をする人がいなくなってしまう悩みから、墓じまいを行う方もいるでしょう。
現代社会の家族の在り方は大きく変化しており、親族が遠方にバラバラで住んでいたり、お盆やお彼岸の時期にお墓に行けなかったりする事情もあります。散骨は管理すべきものがないため、子孫や親族の負担を減らせます。
お墓に納められていたお骨が大量にあった場合、新しい供養先を見つけるのは困難を伴うでしょう。永代供養墓の多くがスペースの関係上1件あたりのお骨の数を決めており、粉骨してお骨をひとまとめにしたとしても全てを納められないことがあるからです。
また、永代供養墓は納骨後も管理費や維持費など、費用が発生することがあるため、検討する際は、納骨時以外の代金も調べておきましょう。散骨すれば、新たにお墓を設けて契約する必要はありません。そのため、今後かかってくる費用を抑えることができるのです。
墓じまいを散骨で終わらせることのデメリットを2点紹介します。
墓じまいも散骨も、一度行うと後戻りはできません。墓前で行っていた行事や法要が難しくなるかもしれません。
散骨した場所への訪問など、新たなイベントで供養しましょう。お墓や故人に関わる全ての親族に、墓じまいと散骨の意図を伝え、承諾を得ておくことをおすすめします。
先祖と対話する場所だったお墓がなくなってしまうと、喪失感が生まれるかもしれません。新たに心の拠り所となる供養方法を見つける必要があるでしょう。
全てのお骨を散骨せず、一部を残しておくこともできます。
お骨の一部を散骨して手元供養
散骨をすることでお墓を持たずにいられるようになりますが、今まで手を合わせていたものが消えてなくなると、淋しく落ち着かないと感じるかもしれません。散骨は決まりのない自由な葬送で、まく量も個々の判断で決定できます。
一部のお骨をまかずに残しておくと、手元で供養ができておすすめです。散骨のためにパウダー状に粉砕したお骨は容積が小さくなり安置しやすく、手を合わせる場所が欲しい方は、自宅で供養することもできます。
最近では、インテリアに合わせたシンプルなデザインでお部屋の雰囲気になじむ仏壇や骨壺もあり、自宅で供養する在り方も変化しているのです。
ジュエリーやアクセサリーに加工して肌身離さず身につけることもでき、いつでも一緒にいたいという思いを叶えることができます。お骨を収納できるパーツがついたものや、お骨そのものから成分を抽出して精製するダイヤモンドのような宝石まで、デザインも用途も多種多様です。
墓じまいで散骨をするための特別な準備は?
散骨は明文化された法律が存在しないため、行政手続はありません。
東京都福祉保健局はウェブページ上で「他のお墓や納骨堂などに遺骨を移す場合は、区市町村による改葬許可が必要となりますが、散骨のために取り出す場合は、区市町村により取扱いが異なりますので、必要な手続などを区市町村に確認してください。」と記載しています。
しかしながら、お墓に眠っていたお骨を散骨する場合は、お骨そのものに事件性がないことを証明するため、業者から「改葬許可証」を求められることがあります。
改葬許可証の取得には、今のお墓の管理者に発行してもらう「遺骨引き渡し証明書」が必要です。墓じまいから散骨まで行うにあたり、自分で全ての交渉や手続をこなすのは労力がかかります。
また、散骨は法律がないとはいえ、トラブルを招かないような散骨場所の選定をしなければならず、専門の知識が必要ともいえるでしょう。散骨は専門業者に相談することをおすすめします。
まとめ
墓じまいも散骨も、一度行うと元に戻すことはできません。先祖や家族だけではなく、未来の子孫にとってプラスになる選択を導き出せるよう、親族でしっかりと話し合って決めましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |