近年、散骨の需要は高まっていますが、違法性については明確にされていません。節度を持って行うことで容認されているのが現状です。

また、海洋や森林または自己所有の土地や海外など希望する場所に散骨するには様々なことに注意し配慮する必要があります。散骨を希望する場合の節度とは具体的にどのようなことか知っておく必要があります。

そして、注意点なども踏まえた上で親族と話し合いながら散骨方法や場所などを決めることをおすすめします。

散骨の違法性は明確ではありません

散骨の違法性は明確ではありません
散骨について違法性があるか、ないかと問われると答えは「どちらでもない」となります。それは現在の墓地、埋葬等に関する法律「墓埋法」は、散骨という葬法が日本では行われていなかった1948年に制定されたため、散骨について規定や罰則などが設けられていないからです。

墓埋法はあくまでも遺骨を土の下に納める(お墓など)法律なので、遺骨を撒く葬法の散骨を対象としていません。1991年に東京のNPO法人「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県沖で初めて散骨を行った際に、法務省は「葬送を目的として節度を持って実施する分には遺棄罪にならない」としていて、厚生省は「散骨は対象としていないので規制の対象にはならない」と非公式の見解を述べたとされています。

このあと、1997年~1998年の間に12回「これからの墓地等の在り方を考える会」を厚生省が開催しました。散骨については、法的規制の必要性や各自治体の条例などで規制すること、各地域での宗教的な考え方などについてが議論されましたが、明確な結論は出ていないようです。

散骨は推奨されているわけでもなく、法的規制があるわけでもなく「黙認されている状態」と考えてよいでしょう。現在は違法性が明確ではない散骨ですが、このまま需要が高まっていけば何らかの規制が行われる可能性があるかもしれません。

また、散骨とはあくまでも遺骨を粉末状にして撒く行為です。遺骨をそのまま遺棄する(粉末化しないまま撒く)と刑法190条「死体損壊等」の罪(死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し又は領得した者は3年以下の懲役に処する)に問われます。

散骨について疑問に思うことや詳しく知りたいことを個人で調べるのには限界があります。最新の情報や正確な知識を得るために実績がある散骨業者に相談するのも一つの方法です。

散骨に申請は必要ありません

散骨に関する法律がないので、散骨を行う際に許可証や申請書といった届け出は必要ありません。ただし、条例を設けている自治体では届け出が必要な場合があるので確認しましょう。

通常、届け出が必要なのは散骨前に必要な火葬を行うときです。方法は火葬場を予約後に自治体へ死亡届(死後7日以内)を提出して、火葬許可証の申請を行うだけなので簡単です。

火葬許可証と死亡届を同日に申請することが多く、問題がなければその場で発行されます。申請書には、故人の本籍地や現住所のほか火葬場の記入欄があるので、必ず火葬場の予約後に申請を行ってください。

許可証は火葬場で提出するので大切に保管し、火葬当日に忘れないようにしましょう。万が一、許可証を紛失してしまった場合、役所で再発行してもらえるので慌てなくても大丈夫です。

散骨での節度とは

散骨を行う際の節度とはどのようなことかを具体的に6つ紹介します。

1.遺骨を必ず粉骨(2ミリ以下に)する

1.遺骨を必ず粉骨(2ミリ以下に)する
そのままの形で遺骨を撒くのは、法律違反となるので必ず粉骨しましょう。粉骨は散骨業者に依頼すると行ってもらえることが多く、粉骨のみ依頼が可能な業者もあるので相談してみてください。

2.散骨する場所について熟慮が必要

陸地で散骨を行う場合は、土地の所有者の許可が必要で、水源地の近く、観光地の近くでの散骨は避ける。海洋散骨を行う場合、漁場や養殖場、観光船のルート、海水浴場の近く、護岸などからの散骨は避ける。

上記の場所では、衛生面や風評被害だけでなく、散骨しているのを無関係の人が見たときの心情を考え、散骨を行わないでください。また、散骨を希望する地域に条例がないか必ず確認しましょう。

3.散骨の際の服装は喪服ではなく平服で行う

散骨を行う側としては、故人を見送るための儀式なので喪服でという気持ちは分かります。しかし、海洋でも陸地でも一般の方も利用する場所や観光客がいる場所があります。

気分を害してその土地の風評被害に繋がらないように、喪服の着用はやめておきましょう。

4.散骨と一緒に献花や献酒など行う場合は自然に還る方法で行う

4.散骨と一緒に献花や献酒など行う場合は自然に還る方法で行う
献花はラッピングやゴム、リボンなど自然に還らないものや還りにくいものは取り除き、花そのものを献花しましょう。お花屋さんに話をしてお花を選んでもらうのもいいですし、花の部分で作った花輪などを献花するのもいいでしょう。献酒は、瓶や缶ごと行わないことは当然ながら、環境への影響も考えて大量に撒くことは控えましょう。

5.公共の乗り物から散骨は行わない

海洋散骨ではフェリーや定期船または観光船などから、陸地ではもちろんバスや電車、観光バスや高速バスなどからの散骨は行ってはいけません。散骨禁止の場所がそのルート上に数多くあり、他のお客様の気分を害するだけでなく、運行会社には風評被害や後処理などの迷惑をかけてしまいます。

6.水溶性の紙などに包んで行う

6.水溶性の紙などに包んで行う
特に海洋散骨と聞くと、サラサラと風の中に舞うように撒くイメージを持っている方も多いと思いますが、それだと遺骨が撒いている人にかかる場合があります。そのようなトラブルを避けるためにも必ず水溶性(自然に還る)の紙に遺骨を包み、そのまま散骨しましょう。

これらのことを考慮して個人での散骨が難しいと思う場合は、業者に相談することをおすすめします。経験豊富な業者ならば、散骨での「節度」や「散骨に対する最新の条例」などにも詳しく、故人や遺族の希望に添った散骨方法を提案してくれるでしょう。

改葬で散骨するには許可証が必要です

改葬で散骨するには許可証が必要です
既に埋葬されている遺骨があり、墓じまいなどのために散骨を希望する方もいらっしゃるのではないでしょうか?

このような場合は、「改葬許可証」が必要です。

改葬許可証の発行方法

お墓や納骨堂がある自治体に申請し発行してもらうのですが、その際、「受入証明書」や「埋葬証明書(収蔵証明書)」の添付が必要です。

受入証明書とは

遺骨の受け入れ先がある(決まっている)ことの証明となるので、依頼する散骨業者に発行してもらえるか確認しましょう。

埋葬証明書(収蔵証明書)とは

墓じまいするお寺や霊園などから発行してもらうもので、遺骨1体につき1通必要です。

無用なトラブルを避けるためにも、長年お付き合いのあったお寺や霊園に墓じまいしたい理由を伝えるとともに、お世話になった感謝と敬意の気持ちを持って話を進めましょう。改葬での散骨は、必要になる「改葬許可申請」「受入証明書」「埋葬証明書」など難しい準備も多いので、散骨業者に依頼することをおすすめします。

改葬での散骨を行う場合、散骨業者のほとんどが「改葬許可証」の提示を求めるので必ず申請してください。

海洋散骨できる場所

海洋散骨は、散骨を希望する方の中でも希望する方が多い散骨方法です。海洋散骨に適した場所とは、散骨を行う方と海産物や海の観光などで生計を立てている方の間でのトラブルを避けられる場所です。

海洋散骨では、風評被害(漁場、海水浴場、養殖場など)の影響が大きく、一般の人が散骨を目にすることのないように(宗教的、感情的配慮)公海上の所有権のない外洋で行わなければなりません。現在(2020年4月)の日本では、海洋散骨について規制をしている自治体はほとんどないので、希望する海域へ散骨することができるでしょう。

ただし、次にあげる2つの自治体では、海洋散骨について規制しています。

1.静岡県熱海市ー熱海市海洋散骨事業ガイドライン

熱海市では「無秩序な散骨が行われることにより、風評被害等による熱海市のブランドイメージを毀損するおそれがある」としてガイドラインを制定しています。初島を含む熱海市の土地から10km以上離れた海上のみでの散骨の制限や、熱海、初島といった地名などの掲載の禁止などを事業者に対して行っています。

2.静岡県伊東市ー伊東市における海洋散骨に係る指針

伊東市の観光地としてのイメージを守るため、伊東市の陸地から11km以内での散骨の禁止や、伊東市、伊東市沖といった地名などの掲載の禁止を事業者に対して行っています。

これから先、条例や規制を設ける自治体が出る場合があるかもしれません。故人や遺族が希望する海域の自治体が散骨について規制したり、条例を設けたりしていないか必ず確認しましょう。

海外での散骨

海外での散骨
近年では、海外での散骨(海洋、陸地共)を希望する方も増えてきています。故人や遺族の理想になるべく近い形で散骨するために必要なことは、希望する国の規制についてよく調べることです。

海外での散骨で必要になる主な書類は、

  • 粉骨、埋葬許可証のコピー
  • 行き先の国の言葉で書かれた火葬許可証(国によっては外務省の認証が必要)
  • 国によっては大使館や領事館が発行した死亡診断書(行き先の国の言語で書かれたもの)

などです。

他にも用意しなければならない書類がある場合があります。国によって異なるのでよく確認しましょう。

アメリカ合衆国

各州によって独自の法律があるので紹介いたします。

ハワイ州は、海洋散骨する場合、海岸線より3マイル(約4.82km)以上の沖合で散骨することと、散骨後30日以内にアメリカ合衆国環境保護庁に報告する義務があります。また、陸地への散骨は、所有者の許可があれば、個人所有の土地であっても散骨できます。

カリフォルニア州は、遺骨は0.35mm以下まで粉骨すること、海または霊園の一定区域への散骨に限るという決まりです。

ネバダ州は、霊園の一定区域に限って散骨が認められています。

このように、ほとんどの州では第三者に迷惑をかけず、常識の範囲内での散骨を認めています。

ヨーロッパの国々

イギリスではスキャタリンググラウンドという特別な場所での散骨や川で散骨が認められています。

スウェーデンには、芸術作品、小川、共同の献花場所、芝生などがある、匿名制の共同墓地「追憶の森」と呼ばれる場所があります。散骨箇所は管理職員以外は誰も分からないシステムになっています。

スイスの規制は、「私有地に勝手に散骨しないこと」だけです。スイスは樹木葬と散骨の先進国で、ハイキングコースのような場所にある自然の木の根元へ散骨する方法が圧倒的に多くなっています。

フランスでは、セーヌ川や都市部の有名な河川での散骨が禁止されています。海洋散骨は、海岸から300m以上離れた場所なら遺灰だけを撒くことができ、海岸から6km以上離れた場所では水溶性の容器に入れて沈める散骨が認められています。また、火葬場には、無料で儀式を執り行う施設や、施設内に散骨できる場所があります。

カナダの場合は、ケベック州で散骨場所の報告義務があり、人の尊厳を傷つける場所以外での散骨は法律で規制されています。オンタリオ州では、公有地や州立公園で、自由に散骨することができます。

これらは今後、内容が変わる場合があることもありえます。海外で散骨を行う場合は、旅費として交通費や宿泊費、天候の影響によっては延泊費などもかかることを忘れてはいけません。

海外での散骨は、一般の人には分からないことも多いです。海外での散骨を、思い出に残り納得のいく散骨にするためにも、経験豊富な散骨業者に依頼することをおすすめします。

ペットと一緒に散骨できます

ペットと一緒に散骨できます
散骨を希望する方の中には、長年連れ添ったペットの遺骨とともに海洋散骨されることを望む方もいらっしゃいます。ペットと一緒に散骨を希望するのは、跡継ぎのいない自分の供養とともに手元供養していたペットの遺骨のことで親族に迷惑をかけたくないという場合が多いです。

また、通常のお墓では愛するペットと一緒に入れないことが多く、ペットと一緒に散骨してもらえば先に亡くなったペットが天国まで導いてくれるはずという思いから希望される方もいらっしゃいます。散骨する際は、故人同様にペットの遺骨も粉骨しなければなりません。

事前に粉骨して手元供養している場合は別ですが、ペットの遺骨の粉骨及び散骨に対応してくれる業者を選び、生前予約しておくことをおすすめします。また、遺言書に生前予約したことや、予約していない場合でも一緒に散骨して欲しいこと等を記しておくと遺族が希望通りにしてくれる可能性が高くなるでしょう。

ペットと一緒の海洋散骨を希望する場合は海洋散骨で実績のある信頼できる業者に相談することをおすすめします。

山や森林散骨できる場所

山や森林散骨できる場所
登山や森林散策が好きだった場合、登山仲間や親族に散骨してもらい土へ還りたいと思う方がいらっしゃるかもしれません。ですが、山や森林へ散骨をする場合は、所有者の許可が必要です。

私たちが普段目にする山やトレッキングやハイキングの場所、また近所の裏山などは、そのほとんどが国や地方自治体、個人が所有しており、勝手に散骨することはできません。散骨を希望する土地の所有者が分かったら、散骨の許可を取る必要があります。

たとえ散骨の許可が得られたとしても、

  • 水源地域
  • 建造物や施設などの周辺
  • 天然記念物や生態系に影響を与えかねない場所

などでの散骨は避けましょう。

合わせて、山や森林での散骨の節度として、登山道や近くの道路から見える場所で行うことはトラブルに繋がることになるので絶対にやめてください。また、環境への配慮から、お供え物をすることや火事の原因となる線香を供えることも行ってはいけません。

一部の地方自治体では散骨業者だけでなく、個人の散骨を禁止している場合があるので注意が必要です。散骨事業者に対して規制がある地方自治体は現在のところ下記地域になります。

  • 北海道七飯町
  • 長野県諏訪市
  • 埼玉県本庄市
  • 神奈川県湯河原町
  • 静岡県御殿場市
  • 静岡県熱海市
  • 静岡県伊東市
  • 静岡県三島市

散骨事業者とともに個人に対しても規制がある地方自治体は現在のところ下記地域になります。

  • 北海道長沼町
  • 北海道岩見沢市
  • 埼玉県秩父市

近年、規制している自治体が増加傾向にあるため、事前に条例や規制を設けていないか、よく調べるようにしてください。個人で散骨する場所を見つけるのが難しい場合は、散骨業者、山や森林散骨できる寺院などに相談することをおすすめします。

散骨業者に委託して散骨できます

故人が散骨を希望している場合でも、遺族が高齢であったり希望する場所が遠方であったり様々な理由で散骨に立ちえない場合は業者に依頼して「代行散骨」してもらうことができます。

委託散骨を行っている業者は複数あります。散骨までの流れはほぼ同じなのでご紹介します。

  • 散骨を代行で依頼する場合のほとんどがゆうパックなどの配達業者が利用できるので、まずは遺骨を業者に送ります。
  • 業者は代行散骨であっても通常の散骨と同様に丁寧に粉骨したのち、海や山または山林などに遺族の代わりに心をこめて散骨を行い、手を合わせます。
  • 後日、散骨証明書が遺族に郵送されます。

散骨証明書とともに、散骨風景の写真や動画などを送ってくれる業者が多いです。海洋散骨の場合、散骨日に乗船はできないものの、船を見送ることが可能となる業者や希望する副葬品(自然に還るもの)を撒いてくれる業者があるので問い合わせるとよいでしょう。

委託散骨にする場合は提示されている料金の中に粉骨料金が含まれているのか、別途粉骨料金が必要なのかをしっかりと確認しましょう。この料金が含まれているかいないかで費用が数万円違います。

また、委託する場合は他の故人と一緒に散骨されることが多いため、気になる方は場所の間隔をおいて散骨するかどうかも事前に確認していた方がよいでしょう。委託散骨は目にすることができないだけに疑問に思うことや不安に思うことは全て業者に確認し、納得できる場合のみ依頼することをおすすめします。

家族や親族の所有地での散骨する際の注意点

家族や親族の所有地での散骨する際の注意点
散骨を家族や親族が所有する土地で行えば、いつでもお参りすることができます。知らない土地や海に散骨するより気持ちの面でも落ち着くかもしれません。

ただし、自己(親族)所有の土地に散骨する場合でも他の散骨と同様に「節度を持ち」墓埋法などの法律を守って行いましょう。一番大切なのは、粉骨(2ミリ以下に)することです。

粉骨せずに遺骨をそのまま撒くことは死体遺棄罪となるので絶対に行ってはいけません。散骨場所が自宅の庭の場合は、ひっそりと行うことをおすすめします。

なぜならば、散骨したことを隣や近所の方が知った場合、快く思わずトラブルになる可能性が高いからです。散骨場所が山や森林などの場合は、環境に配慮し、生態系へ影響を与えない場所に散骨しましょう。

どのような土地でも、散骨した場所に土を被せると墓埋法違反なので絶対にやめましょう。また、樹木を植える、石などを置くなど墓標を設置すると「自治体の許可なくお墓を作った」として法律違反となります。

家族や親族が所有する土地に散骨する場合は、トラブルにならないように皆でよく話し合って故人も遺族も納得いく散骨を行い、いつでも気持ちよくお参りできるようにしましょう。

まとめ

1.散骨は、現時点で違法ではないので届け出の必要がない
2.散骨する際は節度を持って行うことが大切
3.海洋散骨や、山や森林への散骨にはルールがある
4.海外で散骨を行う場合は、業者に相談した方がよい
5.家族や親族所有の土地に散骨する場合でも、節度だけでなく法律も守る

散骨について現在、国としての法律はありませんが、自治体によっては条例により規制されている場合があります。また、海外での散骨を希望する場合は、散骨を希望する国のルールに従わなければなりません。

家族や親族が所有している土地で散骨を行う際も節度を持ち、法律に従う必要があります。故人も遺族も納得のいく散骨にするために、分からないことなどは、実績があり信頼の置ける専門業者に相談しましょう。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。