墓じまいが注目を集めるようになり、「せっかく墓じまいするなら無宗教でしたい」と思う人が増えています。
墓じまいは、お墓を閉じるというイメージがつくと思いますが、その上で無宗教というのは、具体的に一体どういうことなのでしょう?そして、無宗教での墓じまいをするためにはどうすればよいのでしょうか?
今回は、無宗教での墓じまいにまつわるあれこれについて、その魅力や注意点などを説明していきます。
無宗教の墓じまいは自由度が高い供養になる
無宗教の墓じまいは、宗教的な慣例にとらわれない自由な供養ができるようになることが、最大の魅力だといえます。
決められた時期に法要を行い、その都度、場を設けたり僧侶を手配したりお布施を用意したりする必要があります。
教会で神父、または牧師による追悼の礼拝を行うことになります。
無宗教の墓じまいにすることは宗教者を呼ばすに宗教色のないオリジナルの供養をすることができるのです。
そもそも「無宗教」とはどういうもののことどのようなものなのか、ご存知でしょうか?
それとよく似た言葉に「無神論」がありますが、無神論とは神様などの超自然的なものが存在しないことを主張することです。無宗教は神様の存在を否定するものではないので、無神論とはその概念が異なります。
よって、無宗教とは宗教自体を否定する考え方ではありません。
無宗教での供養の仕方
故人を供養する方法といわれると仏式の方法を思い浮かべる人がほとんどだと思います。遺骨の眠る寺院や墓地で、周年回忌やお盆、お彼岸といった決められた時期に法要を行い、僧侶にお経をあげてもらうというものです。
江戸時代の「寺請制度」で全ての家が寺院の檀家になっていた名残もあり、現在も多くの人が仏式での供養をしています。
それでは、このような形式にこだわらない無宗教での供養には、どのような方法があるのでしょうか?
ここでしっかりイメージやポイントを押さえておきましょう。
まず、故人の遺骨を納める「納骨」についてです。
最近は墓じまいの需要の高まりもあって、無宗教で利用できる施設が増えてきました。しかし、まだ仏式での納骨しかできない施設が多くあるのも事実です。そのため、納骨の場所は宗教不問であるかを確認する必要があります。
無宗教でも納骨できる施設の代表格は「公営墓地」です。
自治体が管理しているため宗教不問であることがほとんどです。そのため、納骨後の供養の方法も自由に決められます。
最近は、民間の墓地や霊園でも「宗教不問」と明示しているところが増えてきました。宗教色のあるお墓を閉じたとしても、供養できるお墓が欲しい、という人におすすめです。
なお、公営墓地は管理費が手ごろなため、とても人気があるので、申し込み情報をこまめにチェックしましょう。
遺族の代わりに供養を行ってくれる永代供養墓は、なかなかお参りに行けない人や経費を抑えながらお参りのできる場所を確保したい人におすすめの場所です。
この永代供養墓、寺院や霊園が管理している永代供養墓であっても、檀家になることなく無宗教でも納骨できる場合があります。管理者がたとえ宗教団体だからといっても、諦めずに情報を集めてください。
無宗教でも対応してくれる永代供養墓が見つかるはずです。
散骨する場所は海や樹木だけでなく、最近では宇宙に向けて散骨するサービスも誕生しています。ポイントは、遺骨を自然に還す考えのため、お墓を持つ必要がなくなるという点です。
散骨方法によって費用は異なりますが、お墓にかかる管理費は共通して発生しません。また、宗教にとらわれない供養のため、散骨後の供養方法も自由です。
故人や遺族の想いを重視した供養が、可能な方法といえるでしょう。
この方法も宗教にとらわれない供養ができるのはもちろん、いつでも供養ができることも魅力です。
手元供養する遺骨は、骨壺やアクセサリーに保管する方法をはじめ、最近では遺骨そのものをアクセサリーやプレートに加工する方法も登場しました。
また、手元供養は「遺骨は故人が好きだった自然に還したいが、手を合わせる場所や心の拠り所となる場所も残したい」という散骨を希望する人が、併用して選ぶ方法としても人気があります。
無宗教での供養は納骨先を選べるだけでなく、その後の供養の方法も自由です。
仏式でいう位牌の準備や周年回忌などの定期的な法要といった慣例にとらわれることなく供養できます。
例えば…
- 3年に1度、故人にゆかりのある人と海洋散骨した場所にクルージングするという方法
- 近くのホテルで数年ごとに食事会をするという方法
- 音楽が好きな故人のためにライブ形式にするという方法 など
故人や遺族の気持ちを尊重した形で供養することが可能です。
故人を偲び想うことが供養ですので、その気持ちを共有できる方法を見つけることが大切です。
実際の墓じまいの流れは同じ
今まで、自由度が高い無宗教での供養方法について説明してきました。
今後は無宗教の供養をしたいと決めた場合、最初に行うことになるのが「墓じまい」となります。ここでいう墓じまいは平たくいうと既存のお墓を撤去し、更地に戻すことです。
墓じまいの手続きや流れは、その後の供養方法が無宗教かどうかにかかわらず、ほぼ同じです。ここで、実際にどのような流れになるのか、ポイントをしっかり確認しておきましょう。
行政手続き
遺骨を勝手に動かすことは、法律上認められていません。遺骨を新たな場所に移動させるためには、行政の許可が不可欠です。
それには、自治体によって名称は様々ですが「改葬許可申請書」を提出する必要があります。
この申請書を提出するには、既存のお墓の「埋葬証明書」や、遺骨の新たな行き先の「受入許可書」を一緒に提出することが求められる場合があります。そのため、事前に提出に必要な書類は何かを調べ、同時進行で各所と調整を進めることが大切です。
新たな遺骨の行先を決める
既存のお墓を閉じて遺骨を動かすには、先に遺骨の新たな行き先を決めておく必要があります。
遺骨の行き先が散骨や自宅であればそれほど問題にはなりませんが、墓地や永代供養墓に移動したい場合は、そのお墓が宗教不問か必ず確認しましょう。無宗教受け入れ可能で、交通の便やサービス内容など、自分の希望に合致するお墓の候補から選択することが、スムーズに行き先を決めるコツになります。
また、散骨を希望する場合は、遺骨を撒く場所によって内容も料金も大きく変わります。どのような場所に散骨したいのか、手元に一部残したいのか、希望を整理しておきましょう。
既存のお墓を閉じる
新たな遺骨の行き先が決まり、行政の手続きも終了したら、既存のお墓を撤去することが可能になります。
既存のお墓が寺院にあり檀家の場合、お墓を撤去して更地にするまでに寺院との間で行う手続きや法要があります。その内容は宗派や寺院によって異なりますが、その中でも共通して行われる代表的なものを2つご紹介します。
寺院に既存のお墓がある場合、原則として家がそのお寺の檀家になっているということを指します。
既存のお墓を撤去するには、檀家から離れるための「離檀」という手続きが発生します。法的な決まりはありませんが、現状では「離檀料」をお布施として納めて離檀するケースが多いようです。
寺院によっては離檀料の金額が決まっていたり、逆に不要であったりしますので、まずは寺院に誠意を持って離檀と墓じまいの考えを伝えるようにしましょう。
寺院から墓じまいの了承を得たら、お墓から故人の魂を抜くための「閉眼供養」を行い、遺骨を取り出します。閉眼供養は法要のため、離檀料とは別にお布施を納めます。
そして、閉眼供養をした後で、墓石を撤去します。墓石の撤去を担うのは石材店です。まずは、寺院と関係のある石材店があるか、相談しましょう。
寺院が指定する石材店がない場合は、自分で石材店を探します。その際は、複数の石材店から見積もりをとり、信頼できる石材店を選ぶようにしましょう。
なお、墓石の撤去は閉眼供養のお布施とは別に費用が発生します。
無宗教で墓じまいするメリット
無宗教で墓じまいをするメリットは、大きく分けて2つに集約できます。このメリットと自分が思い浮かべている無宗教での墓じまい像が一致しているか、比較・確認してみてください。
無宗教の墓じまいは、仏教やキリスト教といった宗教観にとらわることなく、自分の思い通りの供養ができることが最大の魅力です。
遺骨を納める場所は、離檀して寺院の檀家でなくなるので、選択肢が広がります。遺骨の行き先も、お墓という概念にとらわれることなく、散骨や手元供養といった方法を自由に選べます。
また、故人を偲ぶ機会も、宗教者を呼ぶ必要もなく、クルーズや食事会といった、その家族に合った方法で行うことが可能です。無宗教での法要に注目が集まりつつある今、そのサービス内容も充実してきたため、より理想に近い供養ができるようになったといえます。
つまり、今後の家族にあった供養の方法を、自分たちで選ぶことができるのです。
お墓を撤去するにはそれなりの費用が必要となりますが、その後の供養は費用が抑えられることが大きなメリットになるでしょう。
永代供養墓や公営墓地へ遺骨を移す場合はお墓の管理料が必要ですが、寺院での管理と比較すると費用がだいぶ抑えられます。そして、散骨や手元供養であれば、管理料が必要ありません。
さらに仏式の場合は、法要のたびに僧侶をお招きし、お布施やお車代を用意する必要があります。無宗教になれば、墓じまい後の供養に宗教者を呼ぶ必要がなくなり、費用負担を抑えることができます。
将来の経済的負担を考えると無宗教の墓じまいは、賢い選択肢のひとつになるはずです。
無宗教で墓じまいする場合の注意点
無宗教の墓じまいのメリットを紹介しましたが、デメリットはあるのでしょうか?
何事にもメリットがあればデメリットもあるように、無宗教の墓じまいにも当然デメリットはあります。まだ無宗教での墓じまいを行う人が少数なので、無宗教で墓じまいをする場合に考えられるデメリットと注意点を以下で説明しましょう。
自分の思い通りに供養方法を決められるのが、無宗教で墓じまいをするメリットだと紹介しましたが、このことを逆に返せば「供養方法の全てを自分でプロデュースしなければならない」ということになります。
檀家であったときは、周年回忌もその法要も、寺院が全てプロデュースしてくれますが、その関係がなくなれば、自分で供養をプロデュースしなければなりません。また、永代供養墓では問題ありませんが、それ以外の方法で供養する際は、遺骨を自分で管理することになります。
これらが無宗教で墓じまいするデメリットであり、注意すべき点と考えられます。お墓を閉じた後の供養をしっかり対応できるよう、長期的な視点でしっかり環境を整えましょう。
無宗教での墓じまいは、まだまだ少数派です。そのため、家族が賛成したとしても、親族皆が賛成するとは限りません。
親族の中には、お墓は代々守るべきものと考えている人がいるかもしれませんし、檀家でなくなることや散骨や手元供養をよく思わない人もいるでしょう。そのため、無宗教での墓じまいに納得できない親族がいる場合には、時間をかけて丁寧に説明・説得しましょう。
なお、お墓の問題は「家同士」の問題でもあるので、慎重な対応が必要です。普段連絡していないし、既存のお墓にも来ていないようだからと勝手に墓じまいすると、トラブルに発展します。特にあまり連絡をとっていない親族には、最大限の配慮を心がけましょう。
墓じまいは、その方法のリサーチからはじまり、行政や寺院、新たな遺骨の行き先など、直接出向いて手続きすることがたくさんあります。そして親族への説明などの気を遣う局面が多くあります。さらに、その後の供養についてもプロデュースする必要があります。
そのため、気力と体力が充実していないと、墓じまいは順調に進められません。墓じまいする年齢に決まりはありませんが、心身共に軽やかに動けるときにしておいた方が得策です。
「墓じまいには時間がかかる」ことを念頭に置き、元気なうちに少しずつ準備をはじめましょう。
まとめ
墓じまいをすることで、宗教的慣例にとらわれない自由な供養が可能になります。供養の方法を自分自身で決められる、魅力と可能性を持った供養ができるといえるでしょう。
注意点としては、供養の方法をプロデュースし続ける必要があること、親族から理解を得るのに時間がかかる場合があること、気力や体力が必要になるので、元気なうちに準備をはじめる必要があります。
供養とは故人を偲ぶことですので、その気持ちが伝わる方法をぜひ考えてみてください!
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |