老後の資産を少しでも増やすために定期預金や定期貯金をしている人は多いと思います。

定期預貯金は、普通預貯金より利息が高いので、ただ通帳にお金を入れておくより預貯金額が増えるので、良いように感じます。

しかし、終活の視点から見てみると定期預貯金は解約した方が良い場合があるのです。それは一体なぜなのでしょうか?

今回は、終活で定期預貯金を解約した方が良い理由やお金の管理方法など、お金にまつわる終活に焦点を当ててお話しします。

定期預貯金を解約するのは「もしものとき」のため

「もしものときに多額のお金が必要になるから定期預貯金をしておいたほうが安心」と思う人もいらっしゃるでしょう。もちろん、それも正しい考えです。

しかし、もしものときに「まとまったお金がすぐ必要」になることがあります。定期預貯金は解約するのに手続きの手間と時間がかかります。

そして、もしものときに解約手続きをするのは家族であることがほとんどです。

このような理由から、あらかじめ定期預貯金を解約しておいた方が良いと考えられるのです。

もしものとき①病気やケガ・介護で大きなお金が必要になる

もしものとき①病気やケガ・介護で大きなお金が必要になる
終活で考えるべき「もしものとき」の一つは、病気やケガのときです。

年齢を重ねると、若い頃よりも病気やケガのリスクが高まります。そして、病気やケガの程度によっては回復までに長期化することがありますし、介護が必要になることも考えられます。

そうなると、本人が金融機関に出向き手続きすることは難しいです。また、認知症などを発症して本人の認知力が低下してしまうと、金融機関での手続きが困難になります。

病院への入院・治療、または施設への入所に関する費用を準備するにあたって、すぐにお金を用意できないと手続きをする家族が困ります。

このようなことになる前に、家族がすぐにお金を用意できるよう、あらかじめ対処しておくことが必要なので、定期預貯金を解約しておくと良いでしょう。

もしものとき②亡くなると口座は凍結される

終活で考えるべき、もう一つの「もしものとき」は、亡くなったときのことです。

金融機関では、口座名義人が死亡したことを知ると、即座に口座を凍結します。口座が凍結されると、たとえ家族であっても自由に預貯金を引き出すことができなくなります。

葬儀や入院・介護の費用を預貯金で備えていたとしても、凍結されるとそのお金を使うことができません。

また家族は、葬儀の手配、行政手続き、遺骨の供養、遺産相続など、悲しむ暇がないほど忙しいです。

ただでさえ手続きが煩雑な定期預貯金の解約をあらかじめしておくだけでも、家族の負担が減らせます。

では、なぜ金融機関は口座名義人が死亡したことを知ると、即座に口座を凍結するのでしょうか?その理由と口座が凍結されることによって発生する問題点を説明しましょう。

遺産を守るための口座凍結

遺産を守るための口座凍結
口座名義人が亡くなると故人の預貯金は相続財産となり、一部の遺族が勝手に故人の預貯金を引き出すことがないようにするために、金融機関はすべての口座を凍結します。

つまり、故人の遺産を守り、正しく遺産が相続されるよう手助けしているのです。

遺産相続は、普段は仲が良く「相続で争う心配はない」と思っている家族や親族であっても、もめることがあります。

遺言書に書かれた遺産の分割に納得いかず話し合いが決裂してしまうなど、いろいろなケースが弁護士事務所などのホームページなどで紹介されています。

金融機関が故人の預貯金を凍結することは、故人の遺志を守り、相続する人たちが不利益を受けないことにつながるのです。

口座が凍結されると起こること

口座が凍結されると、キャッシュカードによる預貯金の引き出しはもちろん、その口座が関係しているすべての取引ができなくなります。公共料金や携帯電話の通信料、クレジットカードの支払いなど、重要かつ定期的な引き落としもすべてストップします。

引き落としで大きく影響するのが「住宅ローンなどの支払い」です。口座が凍結されることにより、すべての取引ができなくなることに気づかずにいると、引き落とし不能が続き、差し押さえされてしまうこともあります。

そのため、凍結した口座から何が引き落とされているか早急に確認し、速やかに凍結解除を進めなくてはなりません。

口座の凍結後を解除するには手続きが必要

口座の凍結後を解除するには手続きが必要
口座の凍結を解除するためには、まず遺産分割を確定させる必要があります。それからようやく凍結解除の手続きが始まります。

金融機関によって多少異なりますが、手続きに必要な書類は以下のとおりです。

凍結解除に必要な書類
  • 遺産分割協議書
  • 各金融機関定の払い戻しなどの依頼書(遺産分割協議書と兼用の場合もあり)
  • 故人の戸籍謄本(出生から死亡までの全戸籍)
  • 相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 口座の通帳・キャッシュカード・届け印

すべての必要書類を提出し、問題がなければ2週間程度で凍結解除がされ、口座の解約または名義変更ができるようになります。

もしものときに必要なお金はどうすればいい?

このように、口座が凍結されると、解除するまでの道のりは想像以上に大変です。自分がもしものときに家族が「お金はあるのに使えない!」と困らないよう、すぐに使えるお金を準備しておくことが大切です。

ではどのように準備しておくことができるのでしょうか?具体的な例を4つご紹介します。

1.元気なうちに現金を家族に預けておく

1.元気なうちに現金を家族に預けておく
まず、1番手っ取り早くできる方法は、あらかじめ信頼できる家族名義の口座にお金を移動して預けておくということです。

家族名義の口座にお金を移動しておくメリットとデメリットは、次のとおりです。

メリット

急な出費でも、即座にお金の用意ができる。入院や介護、葬儀など、もしものときには多額のお金がかかります。預けておけば、家族の金銭的負担が減ります。

デメリット

相続対象者が複数いる場合、預けた家族が他の相続人から「お金を私的な目的に使っていないか?」と疑われることがある。そのことによって、家族関係にヒビが入ることもありえます。

無用な争いを避けるためにも、家族に預ける場合はお金の流れを記録しておくようにしましょう。

2.生命保険から支払う

2つ目の方法は生命保険から支払われる保険金を活用することです。

生命保険は金融機関と違い、保険金が凍結されることはありません。要件を満たしていれば、受取人が請求したら指定した口座に保険会社が入金をしてくれます。

凍結された口座を解除するより早く手続きできるため、もしものときのお金として十分に役立つでしょう。

しかし、申請要件を満たしていないと一銭も支払われません。生命保険の支払い要件は非常に細かく、疾病の種類や介護の状況によって支払われる金額が大きく変わります。

適用されると思って申請しても、実際は適用外で保険金が支払われなかったというケースも少なくありません。このようなトラブルがないよう、終活の一環として生命保険の保障内容を家族と確認しておくと良いでしょう。

3.口座が凍結される前に引き出す

3.口座が凍結される前に引き出す
3つ目の方法は、口座が凍結される前にお金を引き出すことです。

口座の凍結は、金融機関が名義人の死亡を知ったときに行われます。では金融機関ではどのような方法で口座名義人が死亡したことを知るのでしょうか?

最も多い方法は「家族からの申告」です。つまり名義人が亡くなっていても、銀行に申告をしていない状態であれば、口座からお金を引き出せる可能性があるということです。

しかし、この方法に問題がないわけではありません。死亡してからの出金なので、相続財産となり相続税の対象となります。そのため、引き出した金額はしっかり記帳し、領収書も忘れずに保管しましょう。

なお、金融機関が新聞の訃報などで情報を手に入れて、家族の申告より先に口座を凍結する場合がありますのでご注意ください。

4.仮払い制度を利用する

4つ目の方法は、制度を使って口座の一部のお金を使う方法です。

口座の凍結によるトラブル解消のため民法が改正され、2019年7月から「預貯金の仮払い」制度が設立されました。

この制度を利用すると、葬儀の費用や相続人の生活費、故人の家賃の支払いなどでお金が必要なとき、遺産分割が成立する前であっても法定相続人が一定の金額に限り故人の預貯金を出金できます。

出金できる金額の上限は、下記2つのうちの低い金額で、預貯金のある口座ごとに適用されます。

  • 死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1
  • 150万円

制度を利用するための提出書類は凍結を解除するための書類よりずっと少ないので、より早く現金が用意できます。ただし、この制度を利用すると相続放棄ができなくなる恐れがあるので、相続放棄を検討している人は注意しましょう。

元気なうちに口座をスリム化しておこう

以上のように、口座が凍結されると解除するには時間と手間がかかります。口座の数が多ければ多いほどその手続きの数が増え、家族の負担が増えることは目に見えています。

家族の負担を少しでも減らすためにも、元気なうちに口座や金融商品を整理して、スリム化を図っておきましょう。

そこで、預貯金をはじめとする金融商品のスリム化の手順例を4つご紹介します。終活の一貫として、ぜひ対応しておくことをおすすめします。

1.金融口座を一覧にまとめておく

1.金融口座を一覧にまとめておく
手順1つ目は、持っている金融機関の口座をリストにまとめます。

リスト化することで、自分がもしものときでも家族が口座を探す必要がなくなり、スムーズに手続きができるでしょう。また、口座以外にも証券や保険といった金融商品もまとめてリストにしておくと、自分の備忘録になり、また資産の把握もできます。

それをもとに残された人生をどう生きるか具体的に計画を立てられますね。

リストにする際は口座ごとに公共料金など定期的に引き落とされているものを記録しておくと、名義変更などの手続きの際に手間が省けます。

なお、暗証番号は安全を考慮して家族が分かる方法で別に保管するなど工夫しましょう。

2.使用していない口座は解約する

手順2つ目は、口座の整理です。

家の中に何年も使用していない口座はありませんか?残高が少ししかない口座でも、自分亡きあと口座は凍結し遺産として管理されます。預貯金額に関係なく、家族の手間が増えてしまいます。

今まで、休眠状態の口座に手数料がかからなかったので解約手続きせず放置している人も多かったと思いますが、今後は手数料が発生する予定のため、使っていない口座は早めに解約しましょう。

また、転居などで支店が家の近くにない地方銀行の口座を持っている人も多いと思います。本人が解約手続きをするのが一番早く、手間も少なく済みます。家族の負担を考え、使用していない口座は自身が元気に動けるうちに解約しておくのがベストです。

3.定期預貯金を整理する

3.定期預貯金を整理する
手順3つ目は定期預貯金の整理です。

すぐにお金が必要でも、定期預貯金を引き出すには解約手続きが煩雑です。そのため、もしものときのお金が足りないと考えられるときは、定期預貯金を解約してお金を自由に出し入れできる状態にしておきましょう。

ただし、満期が近いもしくは金利が他の商品と比べて高い定期預貯金の場合は、無理に解約しない方が良いこともあり、解約するタイミングには注意が必要です。

また、もしものときに解約しやすいように名義を家族に変更する方法もあります。その際は相続時のトラブルを回避するため、他の家族や親族の了承をきちんととり、記録や領収書を保管しておくことが重要です。

4.支払口座をまとめる

手順4つ目は、さまざまな公共料金やローンの支払い口座を1つにまとめることです。

金融機関の口座や金融商品のリスト作成をした際に、支払いのための口座を1箇所にまとめましょう。支払い口座をまとめると、公共料金やクレジットなどのお金の流れが分かりやすくなります。

自身が管理しやすくなるだけでなく、家族にとっても支出の状況が一目瞭然になって管理しやすくなるのがポイントです。

そして、もしものときに家族がどのサービスを請求、または解約する必要があるのかがすぐに分かります。収入やお金の管理状況によって、口座を1~2箇所に減らすことをおすすめします。

口座のスリム化の注意点

口座をはじめとする金融商品のスリム化をするためには、いろいろな手続きが必要になることがお分かりになったと思います。

多くの手続きの中で、ついうっかり忘れがちになるものがあります。その中でも特に忘れてはいけないものを2つ紹介しますので、早めに対策を講じておきましょう。

忘れてはいけない手続き①ネット口座も忘れずに整理しよう

忘れてはいけない手続き①ネット口座も忘れずに整理しよう
手続きを忘れやすいものの1つ目は、いわゆる「ネット銀行」など、インターネット上での取引が中心となっている口座や商品です。

何もしないでおくと、通帳がないために家族が口座の存在に気づかぬまま放置され、正しく相続されない恐れがあります。

インターネットの金融商品は、通常の金融商品より金利が高かったり手数料が安かったりと、利用する側からすると利便性が高いです。しかし、通常の口座と勝手が違うため、もしものときに家族が管理できないことがありえます。

そのため、まずは口座の存在を家族にあらかじめ伝えておきましょう。そして、口座の使用頻度にあわせて、整理や解約を進めることをおすすめします。

忘れてはいけない手続き②クレジットカードも一緒に整理しよう

忘れてはいけない手続き②クレジットカードも一緒に整理しよう
手続きを忘れてはいけないものの2つ目は、クレジットカードの整理です。

加入時のお得なサービスに惹かれて作ったものの、最初の数回しか利用していないというクレジットカードを持っていませんか?

忘れていたカードが亡きあとに見つかると、家族が解約手続きをしなくてはいけません。少しでも家族の手間を省くためにも、自分が持っているカードをすべて洗い出してみましょう。そして、使用頻度の少ないカードは解約するなど整理をして、最低限の枚数に減らしましょう。

残したカードは、リストにしておくことも忘れないでくださいね。

まとめ

1.金融機関は口座名義人が亡くなったことを知ると、遺産を守るために口座が凍結され、遺産分割が確定するまであらゆる取引ができなくなる
2.もしものときに必要なお金は、元気なうちに家族に預ける、口座の凍結前に引き出す、生命保険を利用する、仮払い制度を利用する
3.家族の手間を減らすため、口座をはじめとする金融商品のリスト作成とスリム化が必要

「終活の中で定期預貯金を解約した方が良い」というのは、入院や介護、葬儀といった「もしものとき」に家族の負担を減らすためです。元気なうちに整理などの自分でできることは、対応していきましょう。

自身が亡くなった後に対応しなくてはいけないことは、家族が分かるようにリスト作成をしておきます。できることから少しずつ、始めてください。

著者情報

著者情報
未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。