厚生労働省によれば、供養の方法を見直し、墓石を撤去する、いわゆる「墓じまい」(改葬)が2022年度には全国で151,076件となりました。これは前年度に比べ32,101件増となり、過去最多であるそうです。

厚労省の衛生行政報告例によれば、統計を取り始めたのは1997年度。これまで改葬が最多だったのは2019年度の124,346件でした。

都道府県別で見ると、最も改葬が多かったのは北海道で12,243件、次いで東京都が10,915件、大阪府が7,934件でした。

また、管理する人がいなくなったお墓を「無縁墓」と呼びますが、これを行政が撤去したケースは全国で3,414件に昇ったそうです。

墓じまいをする場合に必要なのは、墓石の撤去解体工事はもちろんのこと、霊園や寺院などの管理者、お墓のある自治体へ「改葬許可申請」を届けなくてはなりません。

東京都のように、無縁墓になる前に墓じまいをしてもらおうと、墓石の撤去費の一部を補助する特例制度がある自治体もあります。

とはいえ、この数字はあくまでも「改葬」全体であり、お墓の建て替え等も含まれるので、全てが「墓じまい」の数字ではありませんが、それでも年々増加しているのは事実です。

新型コロナで加速した?「墓じまい」

「墓じまい」が増加した背景には、少子高齢化や核家族化に加え、新型コロナの影響で遠くの墓参りがしにくい時期があったこと、樹木葬や散骨などの選択肢が増えたことが背景にあるようです。

 

総務省の調査によると、全国には墓地・納骨堂が約88万4千カ所ありますが、市民霊園のように実態がよくわからない墓もあり、実際はこの25倍以上ある、との見方もあるそうです。

朝日新聞の記事によると、「今あるお墓の4割は継承者がおらず、将来的に全国の墓地で無縁仏があふれるおそれがある」(奈良県立医科大学・今村知明教授談)とのこと。

 

今村教授の研究グループは、現在墓を持つ100万人を追跡したシミュレーション論文を2020年に発表した。未婚者の増加や男児の出生比率などから未継承墓の数を推計すると、100年後には、墓を持つ人100万人当たり156万基以上の未継承墓が生じるという結果が出た(朝日新聞2023年12月23日より引用)

 

かつては大家族で、親族が近隣地域に住み、生涯を同じ場所で過ごす人も多かった社会にあわせて作られた日本のお墓事情。今の時代とズレてしまうのは仕方ないのかもしれません。

よくある「墓じまい」のトラブルとは?

「墓じまいをお願いしたら数百万円を請求された」というような声を聞くことがあると思います。

お墓を引っ越したり更地にしたりする場合は、役所で改葬手続きをしますが、申請者が遺骨の祭祀継承者であることを霊園・寺院に証明してもらう必要があります。

「墓じまい」というのは、その寺院の檀家をやめるということ。その際に「離檀料」としてお布施を求められることがあります。

とはいえ、そもそも檀家になる契約書を交わすことはないですし、「離檀料」というものは存在しません。あくまでも役所の書類で進行するものなので、いくらお寺と揉めてもお墓を引っ越すことは可能です。

ただ、マナーとして考えれば、先祖代々のお墓の面倒を見てくれていたのですから、感謝の意味を込めたお布施をある程度支払うのは社会通念上当然ともいえます。ただし、法外な離檀料を求められた場合は、役所やその寺院の総本山に相談するのも良いでしょう。

また、菩提寺が近距離である、お墓を引き継ぐ親族がいる、といった方は、墓じまいをするのと年間の管理費を支払うのとどちらが良いのかを冷静に考える必要もあります。

今や購入トップは「樹木葬」に!

お墓の情報サイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書の「お墓の消費者全国実態調査2023」に驚きのデータが出ました。22年に購入されたお墓のトップは樹木葬が51.8%で、初めて半数を超えたのです。2位には納骨堂が20.2%、一般的なお墓は19.1%で3位でした。

実は2020年の調査で樹木葬が一般墓を上回っておりましたが、今回初めて過半数を超えました。さらに納骨堂に関しても調査開始以降初めて一般墓を上回りました。

合祀・手元供養・海洋散骨等は「その他」に分類されますが、こちらも併せて8.9%になります。

散骨の公的ガイドラインも

2021年3月30日、厚生労働省は散骨のガイドラインを発表しました。これまで法的にグレーだった散骨に一定のルールができ、社会的に公認されたということになります。

陸上・海上で散骨を行う場所の指定、焼骨は粉状に砕くこと、契約内容を明記した約款を整備・公表すること等のガイドラインです。散骨も今後ますます増加していくでしょう。

散骨に関する国の法律はありませんが、自治体で条例がある場合も。よく調べておく必要があります。

また、さまざまなお墓の形を組み合わせる方も多いそう。一部の遺骨を樹木葬・海洋散骨しつつ、残りの遺骨を手元供養する方法も主流になっています。遺骨位牌・遺骨ハーバリウムといった供養用の品目も人気を集めています。

 

新しい時代に合わせた、そしてきちんと「供養できる」方法を考えたいですね。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。