引っ越しに伴う買い替えや継承者がいないなど、様々な理由で仏壇の処分を考えている人がここ最近増えています。
しかし、仏壇の処分は一生のうちに何度も経験することではありません。周囲に仏壇の処分を経験したことがある人もなかなかいないでしょう。そのため、どのように処分したらよいか頭を悩ませる人が多いです。
今回は、正しい仏壇の処分方法や処分までの流れ、気を付けなくてはいけないことなどをご紹介していきます。
仏壇の役割や意味を改めて考えてみましょう
仏壇の役割や意味について改めて考えることで、気持ちの整理や感謝の気持ちを持って仏壇の処分ができるはずです。
仏壇は、寺院を小さくして家のなかに安置できるようにしたものです。
多くの人が毎日、仏壇に手を合わせて感謝やその日の反省などを語りかけ、旅行または帰省などで戻ったときは、ご先祖に挨拶します。このように仏壇があることによって、ご先祖や亡くなった家族、仏様を敬う心を自然と持っている人が少なくありません。仏壇は、家族や親族の心のよりどころとして大切なものなのです。
仏壇は、ご本尊(仏様)をお祀りし「ご先祖の家」として、代々引き継がれていました。しかし、近年では宗教観が変わったり、核家族など生活様式が変化したりしてきたことから仏壇を「亡くなった親族(家族)の供養をするもの」として安置する考えの人が増えています。
そのため、仏壇に日々の喜怒哀楽の出来事や悩み、決断したことを報告する人が多いでしょう。また、家族の行事などの際に、故人の好きだったものなどをお供えし、一緒に参加してもらうようにする人もいるでしょう。
このように、いつでも故人から見守られ、心を通わせているような故人と対話する場所としての意味合いが大きくなっていますが、仏壇に対しての考えは安置場所に合わせたサイズを重視する家庭が増えてきています。
仏壇処分を考える理由とは?
故人と対話するための場所として、大切にしている仏壇の処分を考える人の主な理由は以下の通りです。
「子どもがいない」または「遠くに住んでいる」などの理由で仏壇を引き継ぐ人がいない。
「引っ越し先や入居予定の高齢者施設のスペースに合わない」「実家と嫁ぎ先と仏壇が2つになってしまったので1つにまとめたい」などの理由で仏壇の買い替えを考える。
このように、仏壇の処分を考える人には様々な理由がありますが、どのような理由であっても、ご本尊(仏様)、ご先祖、家族や親族の位牌を祀ってきた場所だからこそ、丁寧に処分したい思いがあるでしょう。
適切な仏壇の処分とはどのような方法か説明していきます。
仏壇処分は供養が必要?
それでは、仏壇の処分の適切な方法や注意点をご紹介しましょう。
仏壇の処分を行う前に、必ず行わなければならないのが「閉眼供養(魂抜き)」という儀式です。
通常、仏壇を設置した際には「開眼供養(魂入れ)」を行います。そのため、仏壇に宿ったご本尊(仏様)やご先祖、家族や親族の魂が入ったまま、仏壇の処分はできません。
まず、閉眼供養(魂抜き)は僧侶に読経してもらい、供養することで仏壇をただの木の箱にしてもらいます。菩提寺があり仏壇の処分を依頼している場合には、閉眼供養(魂抜き)を一緒にお願いするとよいでしょう。
菩提寺にお願いする場合は、お布施が必要になります。お布施の金額が分からない場合は、一般的に幾らくらいなのか、直接たずねるとよいでしょう。
菩提寺や寺院ではなく業者に仏壇の処分を依頼する場合は、閉眼供養(魂抜き)を行ってもらえるか確認しましょう。
なお、閉眼供養(魂抜き)を必要としない宗派もありますので、自分の家庭はどの宗派に属しているのかを把握してから菩提寺や業者に確認するとよいです。
親族や縁のある方へ連絡しましょう
仏壇の処分を考え始めたら、親族や故人に縁のある人など普段仏壇に手を合わせに来てくれている人に、必ず声をかけましょう。
後になって仏壇を処分したことを知らされるのは、気持ちのよいことではありません。勝手に処分したことにより、親族間でのトラブルに発展することも考えられます。
仏壇の処分の日程を知らせて、最後に手を合わせる時間を設けることで皆が穏やかな気持ちで仏壇とお別れできるように配慮しましょう。
仏壇を処分する具体的な方法
それでは、仏壇の処分の具体的な方法を紹介します。
仏壇の処分は、業者に依頼する、自分でごみとして出すなど様々な方法があります。これまでお祀りしてきた、ご本尊(仏様)、位牌、家族や親族に失礼にならないように仏壇を丁寧に供養でき、また負担が少ない方法を選択するための参考にしてください。
閉眼供養をお願いすると共に、仏壇の処分を行ってもらえないか相談することをおすすめします。新しく仏壇を買い替える場合は、併せて「開眼供養」をお願いしましょう。長くお付き合いがある寺院がほとんどなので、信頼関係があるので安心して任せられます。
なお、菩提寺にお願いする際は、「閉眼供養」をしていただいた後、お布施を僧侶に渡します。お布施代は寺院または地域によって異なりますが、1万円~10万円程度が相場と言われています。どうしても金額が分からない場合は、僧侶にたずねるとよいです。
また、菩提寺ではなくても仏壇の閉眼・開眼供養をしてくださる寺院があります。近所に寺院がある場合は、相談するとよいでしょう。
仏壇を購入する際に古い仏壇の処分を請け負ってくれる仏壇店があるので、買い替えの場合は問い合わせるとよいでしょう。
仏壇の処分だけでなく、閉眼・開眼供養を対応してくれる店舗もあるので事前に確認してください。全ての流れを仏壇店にお願いすれば、日程の調整や手続きなどがスムーズに行えるメリットがあります。
処分費用は仏壇の大きさによって異なることが多く、相場は1万円~8万円程度です。ただし、仏壇の処分のみのお願いは対応してもらえない場合があります。
仏壇を取り扱っている、または仏壇専門の買い取りを行っている業者やリサイクルショップで引き取ってもらえることがあります。また、仏壇の装飾など美術的価値があるものならば、古美術商などで鑑定後に引き取ってもらえることがあります。
どちらにしても、必ず引き取ってもらえるという確証はありませんので、事前の確認や問い合わせをしてください。なお、買い取り業者(リサイクル店など)ですが、運搬費やその他の諸費用として、むしろ支払う額の方が上回ることが多いです。
また、「閉眼供養」は買い取り業者では対応してくれないと思っておきましょう。
不用品回収業者や遺品整理業者に依頼すれば、仏壇を引き取ってもらえます。
業者によっては、「閉眼供養」の依頼も可能です。その場合、処分費用とは別に閉眼供養の費用が必要になります。
処分費用は仏壇の大きさによって異なり、相場は1万円~3万円程度です。
仏壇の処分専門業者に依頼する方法です。
処分のみを行う業者と、「閉眼供養」「位牌」の他、仏具供養まで全ての処分を依頼できる業者があり、宗派に関係なく対応してもらえます。供養を行っている業者では提携している寺院や僧侶が供養を行い、希望すれば「供養証明書」をもらえる場合があります。
費用は処分と供養が含まれている金額を事前に見積もりでもらえることが多く、相場は2万円~8万円程度です。追加料金が発生する可能性などを、事前に確認しておくとよいでしょう。
菩提寺がない場合、専門知識があり供養をしっかり行ってもらえるこの方法がおすすめです。なお、専門業者に依頼する場合は、実績があり信頼できる業者にお願いしましょう。
「閉眼供養」を行った後、自治体指定の場所に自分で出す方法です。処分費用も500円~2千円程度で、自治体が定める粗大ごみ処分費だけで済みます。
ただし、仏壇を粗大ごみとして回収していない自治体もあります。仏壇を粗大ごみとして出してよいか、必ず確認してください。
自治体のごみとして出すことが可能な場合であっても、そのままの状態では出せず、解体が必要なことがあります。自分で解体した場合は、可燃や不燃などの自治体に従ったごみの分別が必要になります。
しかし、自治体が粗大ごみとして認め、きちんと分別していたとしても、地域のごみ集積所に出すと近所の人の目に触れます。快く思わない人がいますので、粗大ごみとして自分で処分する方法は、あまりおすすめできません。
仏壇の処分専門業者は複数ありますが、問い合わせや作業当日の流れはどこも大体同じです。大まかな流れは、次の通りです。
- 業者へ問い合わせをする(電話、メールで問い合わせを行い、不明点をたずねる)
- 業者からのヒアリング(仏壇のサイズ、仏具や付属品の有無、ある場合は何がいくつあるかなど)
- 見積もりの提出(即日見積もりが出る)
- 日程調整(仏壇処分の日程を決める、予備日があるとよいでしょう)
- 仏壇処分成約、決済(見積もり内容やサービスに納得したら成約、支払い方法を現金、銀行振、カード決済から選択)
- 訪問
- 訪問
- 仏壇の前で合掌(仏壇と最後のお別れです)
- 梱包(近隣住民に仏壇を運搬していることが分からないよう、また傷などがつかないようしっかり梱包)
- 運び出し
- 業者の安置スペースに保管
- 僧侶による閉眼供養(提携している寺院の僧侶による供養)
- 解体処分
仏具などの処分もお願いする場合は、渡し方を確認しておきましょう。
仏壇の処分は最後まで心を込めて丁寧に行うことが大切です。
特に代々引き継がれてきた仏壇には、隠し引き出しがあることがあります。場合によってはそこに家系図などその家族や親族にとって大切なものが入っていることが多くありますので、よく確認してください。
仏具などの引き取りで、そこにしまっておいてくださいという指示があったもの以外で、出し忘れがないか最後まで確認することが大切です。
閉眼供養が終わった仏壇を買い取りに出したり、引き取り業者に出したりする場合でも丁寧に扱いましょう。これまでの長い間、家族や親族を見守ってきていただいた感謝と敬意の気持ちを持って扱うことが大切です。
仏壇の処分について、処分方法や専門の処分業者へ問い合わせしたときの流れを説明しました。
では仏壇にお祀りしてある、ご本尊(仏様)、位牌、その他の仏具はどのように処分したらよいでしょうか?これらについても処分する前に、仏壇同様に感謝と敬意を持って供養してもらってから処分しましょう。
故人の魂が宿っていると言っても過言ではない「位牌」は、可能な限り新しい仏壇に納めましょう。新しい仏壇にサイズが合わない場合は、小さく作り替えるか買い替えることが可能です。
どうしても処分が必要な場合は、菩提寺などの寺院で閉眼供養を行ってもらいます。閉眼供養後、そのまま寺院でお炊き上げしてもらえる場合が多く、行っていない場合でも相談するとアドバイスがもらえるでしょう。
なお、寺院で処分できない場合は仏具店に相談したり、後述の仏壇処分専門業者などに依頼したりするとよいです。
ご本尊(仏様)は、掛け軸になっているものや仏像など形が様々です。どちらにしても位牌同様、閉眼供養とお炊き上げを寺院で行うことが必要です。
寺院でお炊き上げできない場合は、仏具店や仏壇処分専門業者などに依頼することをおすすめします。
位牌やご本尊(仏様)のように閉眼供養を行う必要はありませんが、そのまま処分するのに抵抗があるでしょう。寺院での処分は難しいので、仏具店や仏壇店、仏壇処分専門業者などに相談するとよいです。
仏壇処分専門業者では、仏壇の処分と共に位牌、ご本尊(仏様)、仏具も引き取ってもらえることがあります。また、仏壇の処分ではなく、仏具のみの引き取り、供養、お炊き上げをしてくれる業者がありますので問い合わせて確認してください。
長い間、仏壇で供養してきたご先祖や故人を仏壇の処分後も供養し続けたいと思う人は少なくありません。そのような人におすすめの方法があります。
30センチ幅のスリムな仏壇や机の上や棚の上に置ける仏壇があります。一人暮らしや集合住宅、高齢者施設の個人部屋などに安置して困らないサイズです。
棚などの上に置くのではなく、文字通り壁にかける仏壇です。スペースを取らないのがメリットですが、取り付けには大工や工務店などに依頼する必要があります。
仏壇と異なり、「ご本尊(仏様)」ではなく故人を偲ぶためのもので、遺影や遺骨を安置します。箱型ではなく、オープンタイプのものが多いです。
ミニ骨壺や遺骨ペンダントなどで手元供養をする人が増えています。散骨する前や永代供養墓、納骨堂に遺骨を納める前に分骨して少しだけ手元に遺して供養する方法です。メモリアルステージなどと併せて選択する人が多くいます。
仏壇の処分後、新しく仏壇を買い替える際に、注意していただきたいポイントをお伝えしましょう。
新しく購入する仏壇が決まったら、その仏壇が届く日を確認しましょう。急ぎの場合は、候補を複数日設けるとよいでしょう。
仏壇が届く日が決まったら、開眼供養を行ってもらえるか確認しましょう。時期によっては希望日には行えない場合があります。候補を複数日伝えると、僧侶との日程が合わせやすいでしょう。
新しい仏壇の金額だけではなく、古い仏壇の処分費用も視野に入れてください。処分方法によっては処分費とは別に閉眼供養と開眼供養の費用やお布施が必要となります。お布施の金額が分からない場合は、年配の親族や僧侶に一般的な金額をたずねるとよいでしょう。
新しい仏壇を購入する前に、安置する予定場所の幅や奥行き、高さなどを正確に測りましょう。デザインが気に入って購入したが、安置場所が仏壇より狭くて置けないとなると大変です。見た目だけでなく、適切なサイズの仏壇を購入するようにしましょう。
まとめ
仏壇の処分は、仏様やご先祖が長年家族や親族を見守ってくださったことに感謝し、最後まで丁寧に行うことが大切です。
菩提寺などの寺院で処分が行えない場合は、長年、仏壇の処分に携わり適切な方法で対応してくれる専門業者に相談することをおすすめします。
著者情報
![]() | 未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |