粉骨バナー

散骨は自由で遺骨の砕き方の決まりもない

散骨を検討する際、必ず行うのが遺骨を砕いて細かくする作業の「粉骨」です。散骨そのものが自由な葬送方法のため、遺骨の砕き方の方法や手段は問わず、遺骨をパウダー状にできれば散骨は実施できます。

ですが、「遺骨をどうやって砕けばいいの?」「そもそも、なぜ遺骨を細かくしなければならないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。この記事では、粉骨について、法律の問題から自分で行う場合の注意点まで幅広く紹介していきます。

散骨で遺骨の砕き方を考える理由は?

散骨は自由というイメージが強く、遺骨もそのままで良いのではないかと捉えてしまいそうですが、粉骨しておかなければ問題が起こるどころか、法律に抵触する可能性があります。

「そもそも粉骨自体が違法では?」と思うかもしれませんが、粉骨は違法ではありません。むしろ、遺骨をパウダー状にできなければ、散骨は難しいといえるでしょう。

「自分で粉骨してもいいの?」「粉骨する方法が分からない!」という疑問についても、次項から解決していきます。

散骨をするならマナー的に遺骨を砕くことが必要

散骨をするならマナー的に遺骨を砕くことが必要
詳細は次項で紹介しますが、散骨には明文化された規定がありません。節度のある葬礼を行えば、散骨をすることができますが、その節度をもって行うために、マナーを守る必要があるのです。

遺骨をまく行為である散骨に対しては、誰もが良い印象をもっているわけではありません。当事者だけではなく、散骨する場所の関係者やその場に居合わせるかもしれない人々まで、宗教的感情を尊重した散骨を行いましょう。

遺骨をパウダー状に砕くことは、環境はもちろん、散骨する場面に遭遇した人たちへの配慮に繋がります。

例えば、遺骨だと分かる状態で沿岸から海へ散骨したとしましょう。何も知らずに通りがかった人は、事件を疑うかもしれません。

海岸に遺骨が漂着したら、警察が動く可能性もあります。また、その海の風評被害に繋がり、漁業や観光業者から訴えられて裁判沙汰になることもありえます。

火葬後の遺骨、焼骨を粉末にしておくことは、それらのトラブル回避になりますね。散骨する日時と場所の選定や、自然に還る副葬品の使用など、同時に守らなければならないマナーは他にも多々ありますが、粉骨は散骨をする上で重要なことなのです。

遺骨の砕き方によっては散骨が違法になることも

遺骨の砕き方によっては散骨が違法になることも
マナーだけではなく法律面でも、散骨時までに遺骨を粉末状にしておくことは大切です。

東京都福祉保健局はウェブサイト上で、『散骨をしても法律に触れませんか』という設問に対し、『「散骨」について、国は「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある」との見解を示しています』と記載しています。

また、刑法190条には遺骨遺棄罪に関する条文があります。
『死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、また領得した者は、3年以下の懲役に処する』というものです。
遺骨を損壊して遺棄することを禁止しているのですから、遺骨をそのままの形で散骨すると、遺骨遺棄罪に問われる可能性があるといえます。遺棄していると思われない大きさまで、遺骨を粉砕することが必要なのです。『損壊』という定義については、物理的に破壊する行為を指します。

刑法190条は『死者に対する社会的習俗としての宗教的感情』を保護するためにあることから、一般的に、葬礼の一つである散骨のための粉骨は問題がないと捉えられているのです。

散骨の種類と気になる料金相場

散骨の種類と気になる料金相場
散骨を検討している場合、場所や方法によって金額に大きく差があります。方法別に参考費用も合わせて紹介していきます。

海洋散骨 (例)5万円~

海洋散骨は、散骨場所に船で向かいます。乗船するパターンによって金額は変わり、業者に代行してもらうと費用は安くなる傾向です。

山散骨 (例)10万円~

散骨専門に用意された土地や島に散骨を行うこともできます。

宇宙葬 (例)24万円~

ロマンに満ちた宇宙葬も散骨の一種です。バルーンで飛ばしたり、月に向かうロケットに搭載したりするなど、方法により金額に大きな幅があります。

空中葬 (例)20万円~

空中から散骨するため、チャーターする乗り物によって大きく異なります。

自分で粉骨から散骨まで行えば無料

金額が最も抑えられる方法は、自分で全て行うことです。遺骨をパウダー状にすることから、散骨の場所を用意あるいは設定して現地に赴くまで、自力ですれば安く済むでしょう。

ですが、粉骨はかなりの労力を必要としますし、散骨を行う場所の選定は自治体への確認や周辺環境への影響を調査する手間があります。故人や先祖を想って行う散骨が却って大きな負担にならないよう、ある程度の作業は専門家に頼むことをおすすめします。

手元供養のしやすさは粉骨のメリットの一つ

手元供養のしやすさは粉骨のメリットの一つ
粉骨のメリットの一つに、遺骨の容積が小さくなるという点があります。火葬後の焼骨を納める骨壺は意外と大きく、特に関東では7寸(直径21.5cm)が一般的で、自宅に安置するにはかなりの存在感です。

粉骨すれば小さなサイズの骨壺に収まりやすく、自宅にコンパクトな仏壇を設えたり、リビングや居室の一角に故人との思い出を集めた場所を作ったり、身近に遺骨を安置しておけます。すぐに手を合わせられる環境は、故人を想う機会を増やし、悲しみや寂しさを癒して心穏やかに過ごす一助にもなることでしょう。

さらに、パウダー状の遺骨は簡単に身に着けられます。自分で小さな容器に入れて持ち歩くことはもちろん、ペンダントなど遺骨を収納できるアクセサリーが販売されています。

遺骨から抽出した炭素でダイヤモンドを精製している業者もあり、遺骨そのものをジュエリーに加工することができるようです。故人の遺骨を肌身離さず身に着けて一緒にいるというのも、供養方法のひとつといえます。

散骨できる状態にする遺骨の砕き方とは?

散骨できる状態にする遺骨の砕き方とは?
散骨するために焼骨を砕くには、どうすれば良いのでしょうか?

マナー上、遺骨だと判別できない大きさ、パウダー状まで細かくしなければならないと聞くと、特別な機械や施設が必要なのではないかと思いませんか?

特殊な専用器具や道具がありそうな印象も受けます。次項から、方法や手段を詳しく紹介していきます。

遺骨を砕くための特別な道具は必要ない

焼骨を砕くために準備する道具は、特殊な専用器具ではありません。自分の手で直接粉砕しても良いくらいです。

大きく硬い部分は難しいかもしれませんが、7割ほどは素手で破砕できます。焼骨をパウダー状に細かく粉砕できる道具、木槌や乳鉢があるとなお良いでしょう。

遺骨の状態によっては洗浄が必要な場合があり、粉骨業者は超音波洗浄機や乾燥機を使い、手触りがサラサラになるくらいのきれいな粉末に加工します。

焼骨の量と成分について知ろう

粉骨には労力がかかるといいますが、焼骨はいったいどれくらいの量で、どのような成分から構成されているのでしょうか?

焼骨の量は男性で1.8㎏~2.4kg、女性で1.3kg~2.0kg程度

地域によって火葬後に焼骨を拾う際の風習が異なるため、拾う量も違いがあります。全ての焼骨を回収して骨壺に納める場合、7寸(直径21.5cm)以上の大きさが必要でしょう。

焼骨の主成分は「リン酸カルシウム」

火葬により遺骨は主に「リン酸カルシウム」と少量の炭素、様々な重金属が含まれた焼骨になります。酸素と結びついて酸化し、長い時間をかけて徐々に自然に還っていきます。

焼骨には発がん性の有害物質「六価クロム」が含まれることがある

焼骨に含まれる重金属は、人に不可欠な成分以外に火葬炉から放出されて付着するものがあり、中でも人に有害な「六価クロム」が含まれている場合があります。自宅に骨壺を安置していても影響を受けることは少なく、遺骨に直接触れても量的に問題ありませんが、粉骨業者は焼骨の無害化処理を行うケースがあります。
特に粉骨後に散骨を行う場合、有害物質が含まれたものを自然にまかないように配慮する意味で大切な工程だといえるでしょう。

遺骨の砕き方の手順とは?

実際に焼骨を砕く流れは、「洗浄→乾燥→破砕」です。

それぞれの方法や手段について、粉骨業者の作業を中心に次項から詳しく紹介します。

自分で行う場合も、機械や道具は異なるかもしれませんが、基本的には同じ手順です。

1:骨壺から焼骨を取り出して洗浄

焼骨を砕く作業の前に、しっかりとした洗浄が必要です。状態に合わせた方法できれいにしましょう。

火葬から時間が経っていたり、埋葬されたりしていた遺骨の場合、土や泥、湿気によるカビで汚れているかもしれません。火葬時に炭化した箇所や、焼け溶けた副葬品などの大きな汚れはブラシで落とすと良いでしょう。

粉骨業者によっては、細かいところまできれいにすることができる超音波洗浄機を使う場合があります。

2:パウダー状にするために乾燥

2:パウダー状にするために乾燥
湿気を含んだ環境で焼骨を粉砕するとくっついてしまい、パウダー状にすることが難しくなってしまいます。粉骨する前にしっかりと乾燥させておきましょう。

天日干しや乾燥剤の使用、乾燥機を使用する業者もあります。乾燥させたら、骨壺の中の焼骨を全て金属トレイに広げ、遺骨以外の混入物を見つけ出します。

火葬や副葬品はもちろんのこと、故人の体内にあった金属製品も、ピンセットや磁石で丁寧に取り除いておきましょう。

3:細かくなるまで粉砕

3:細かくなるまで粉砕
洗浄と乾燥を経て、ついに粉砕作業を行います。粉骨業者の粉砕方法は主に機械ですが、パワーのある電動粉砕機から、臼のようにすりつぶして砕くミル状のものなど様々です。

機械を使用せずに粉砕するにはどうすれば良いでしょうか?

素手

パウダー状までにはできません。

すり鉢とすりこぎ

すり鉢に細かい焼骨が詰まってしまうかもしれませんが、力を込めれば粉砕することができるでしょう。

木槌か金槌

ダイナミックに叩いて粉々にするので焼骨が飛び散りやすく、小さい焼骨には不向きです。

乳鉢と乳棒

細かくしやすくおすすめですが、一般的に乳鉢の大きさは小さめで、一度に多量を処理できません。

遺骨を砕くことが自力では難しいと思ったら?

自力での粉骨は供養の一つと捉えることもできるでしょう。ですが、遺骨を目の前にすると、故人を思い出して躊躇してしまうかもしれません。

さらに焼骨は大変硬く、全てをパウダー状になるまで粉砕する作業は、大変時間がかかります。自分の心身も粉々になっては本末転倒ですので、業者に依頼することをおすすめします。

粉骨専門の業者に依頼する

粉骨専門の業者に依頼する
粉骨作業を依頼する先は、粉骨を専門的に扱っている業者がおすすめです。粉骨業者を選ぶ際は以下の3点に気をつけると良いでしょう。

  • 1.粉骨の際、立ち合いができるか。
    立ち合いを断られる場合は、器具の掃除や消毒を毎回行っていないかもしれません。他の方の遺骨と混ざってしまうおそれがありますし、衛生的にもよくありません。
  • 2.家族や遺骨に誠意をもって対応しているか。
    遺骨の受け渡しで担当者と対面できるでしょうか。宅配便のみでやり取りしている業者は要注意です。
  • 3.適正な価格設定かどうか。
    メールだけではなく電話でも問い合わせをしてみましょう。値段が安いというところばかりに関心がいっていませんか。
粉骨から散骨まで一貫して業者に依頼する

粉骨から散骨まで一貫して業者に依頼する
散骨を依頼する業者が決まっている場合、粉骨から請け負っているか確認してみましょう。最後まで一貫して担当してもらえれば、心強く、安心感があります。

また、業者による代行散骨を行うなら、焼骨を業者に託すだけで、粉骨から散骨まで全て完了します。移動や体調の問題で、自分の手で散骨を行うことが難しい方におすすめです。

完了後、粉骨証明書や散骨証明書、散骨時の写真などを受け取ります。全てを任せる性質上、業者の選定は慎重に行う必要があります。

代金は、粉骨代を含んでいるかどうか確認しましょう。「六価クロム」除去や、乾燥など、粉骨にかかる作業はオプション扱いとなり、料金が別途発生する場合もあります。

まとめ

1.粉骨する際、砕く方法は自由で決まりはなく、また、砕くことは違法ではない
2.散骨する場合、粉骨することがマナーの一つ
3.焼骨はかなりの硬さがあるため、破砕するには大変な労力がかかる

道具さえあれば自力でもできることや、業者に依頼して粉骨するのが無難であること、粉骨すると遠くではなく手元で供養することが簡単になるということをお伝えしました。

故人の散骨の遺志を叶えるため、あるいは、そばに感じる手元供養を行うために粉骨をすることは、故人を想い続ける気持ちから生まれたものといえるのではないでしょうか。実際に粉骨を行う時が来たら、寂しい気持ちになるかもしれません。

遺骨を扱うことはデリケートな問題です。自分や家族、皆が納得できる方法を、時間をかけて探しましょう。

著者情報

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。