遺骨なしで供養できるの？お墓なしでも大丈夫？

今までは人が亡くなるとお墓に埋葬するのがあたり前と考えられていましたが、最近では「遺骨なし、お墓なしの供養方法」を選ぶ人が増えています。

核家族化が進んだこと、生涯独身者が増えたことなど、生活スタイルが変わったことが原因と考えられています。しかし、どのような生活スタイルであっても人が亡くなった後のことを考えずにいられません。

ここでは、お墓がなくても遺骨を供養できるのか、その場合にはどのような供養方法があるのかを説明していきます。

遺骨なしで先祖供養はできる

遺骨を守ることが先祖の供養だと思っている人が多いと思いますが、遺骨を守る風習は比較的新しい考え方です。

昔は遺骨ではなく位牌（いはい）を供養するのが一般的でした。そのため、いざ墓じまいをしようとすると「お墓に先祖の名前はあるものの遺骨がない」ということが散見されます。

また、現在は火葬が一般的ですが、明治時代以前はほとんど土葬だったため、遺骨の入った骨壺が見当たらず、土の中に遺骨が眠っていることもあります。

墓じまいのときに菩提寺に相談しながら、遠いご先祖様は1つの位牌で供養するなど整理するのはいかがでしょうか？

なお、墓じまいでは遺骨を取り出すためには「改葬許可証」が必要ですが、遺骨がない場合は不要になります。

ここで、昔の遺骨なしの供養について説明しておきます。

庶民がお墓を持つようになったのは明治時代からで、江戸時代は位牌のみを供養していました。位牌を供養している人が亡くなれば、その位牌の供養は完了という価値観だったそうです。

昔の庶民には「家」制度がありませんでしたし、魂が抜けた遺体は抜け殻と考えられていたこともあり、現在のように遺体や遺骨に対して重視していませんでした。そのため、先祖代々からのお墓に遺骨がないということがあるのです。

当時は自分が見知った親族の位牌だけを供養するだけでよかったのですが、明治時代以降は位牌だけでなく仏壇、そのうち位牌と仏壇がセットで、さらに遺骨も含めてと、供養する対象が徐々に増えていきました。

長い間、遺体をそのまま埋葬する「土葬」がメインでした。そして古くは縄文時代に行われた体を曲げて墓穴に埋葬する「屈葬」という方法がとられ、その後に体を伸ばして埋葬する「伸展葬」に変化しました。

飛鳥時代に道昭という僧侶が火葬され、その後、持統天皇も火葬されたとの文献が残っており、この頃から火葬が行われるようになったと言われています。しかし、庶民には広まらず、特権階級だけで火葬が行われていたようです。

明治3年、法律で全ての葬儀は寺院の僧侶などが行うよう決められ、その後、衛生上の観点から火葬が義務化されました。そのため現在の日本では火葬を必須とし、葬儀後に遺骨をお墓で供養することが一般的になっているのです。

近年はお墓なしで遺骨供養したいと思う人が増え、供養に対する考え方が変わってきています。お墓を新たに持つことや、すでにあるお墓を引き継ぐことができない人が増えたということが理由です。

お墓を新たに作ると150万円～200万円前後が必要と言われていて、経済的理由から購入に踏み切れない人が多いようです。

すでにお墓がある場合でも、少子化でお墓を引き継ぐ子どもがいない、後継者がいたとしてもお墓参りやお墓の維持や管理などの負担をかけたくないなどと考えるようです。

昔と違い、お墓がある地元を離れて都会で生活する人が増え、お墓参りに時間や労力がかかってしまうので、致し方ないでしょう。

お墓なしで遺骨供養するさまざまな選択肢

お墓なしを要望しても、遺骨をきちんと供養したいと考えている人がほとんどです。

「墓地埋葬等に関する法律」により、許可された場所以外に遺骨を埋葬することはできないので、好きなところに許可なく埋葬すると法に触れてしまいます。そこで、お墓以外の遺骨供養方法として以下の6つ選択肢が考えられます。

火葬した遺骨は引き取ることが基本ですので「火葬後に遺骨を引き取らない」という選択方法は例外です。訳あって遺骨を引き取れない場合、理由と火葬場の許可が必要になります。

それでは、「遺骨を引き取らない」以外の5つの遺骨供養方法について、詳しく説明していきます。

霊園や寺院が運営するお墓の中には、個人でお墓を建てるのではなく、複数名の遺骨を合同で埋葬してくれる「永代供養墓」があります。

個人のお墓と違って、霊園や寺院などの管理者が永続的に永代供養墓の供養をしてくれるのでお墓の継承者がいない人に人気です。

個人でお墓を建てずに済むため費用負担が少なく、安いところでは3万円前後、相場としては数十万円前後です。

最初から合同墓に埋葬することもできますし、一定期間は個別のお墓に入り、期間終了後に合同墓へ埋葬する契約もあります。最初から他の人と一緒のお墓に入ることに抵抗がある場合は、契約内容を確認し、希望に合った選択をするとよいでしょう。

「納骨堂」という建物内に遺骨を納める方法で、初めから他の人と同じ場所に遺骨を納めることもできますし、一定期間は個別に安置し、その後他の人と同じ場所に納める方法もあります。永代供養墓がマンションのような共同住宅になったと考えていただくと、わかりやすいかもしれません。

建物内に納骨堂があるため、天候や寒暖に左右されることなくお参りできることが利点ですし、交通に便利な駅近の立地にあることがとても魅力的です。

最近は遺骨の納骨方法も、ロッカー式・棚式・仏壇式・暮石式・自動搬送式など多様にあり、業者がさまざまな工夫を凝らしているので、今後もニーズに合ったサービスの提供が期待できます。

「樹木葬」は、お墓の代わりに樹木を墓標とするお墓のことで、霊園や寺院などの許可を得た場所に木を植え、その下に遺骨を埋葬する方法です。

埋葬方法もいろいろあり、普通のお墓同様に個人で1つの区画に遺骨を埋葬する、同じ区画に複数人の遺骨または骨壺に入れて複数人の遺骨を納めるなどがあります。個人の区画を持つ場合は、継続的にその区画を代々継承することもできますし、一定期間を過ぎると合同で埋葬されるようにすることもできます。

樹木葬の相場は、一般的に30万円～70万円前後と言われていますが、業者によってサービス内容が異なります。業者選びは、契約内容や料金などを比較して検討しましょう。

「散骨」は、遺骨をどこにも納骨せず、海・川・山などの自然にまいて遺骨をなしにする供養方法です。

現在は、「墓地、埋葬等に関する法律」でお墓以外に遺骨を埋葬してはいけないと決まっていますが、散骨は想定されておらず違法でも合法でもありません。

「死者を弔う目的で相当の方法で行えば死体遺棄に該当しない」とされ、海や許可された私有地などにパウダー状に遺骨を粉砕してまくなど注意点はあるものの、埋葬しない供養方法として容認されています。

散骨方法は、業者に委託する形式と自分で散骨する方法が選べます。

しかし、散骨は「節度を持って行われる限り問題はない」とされており、また自治体によって散骨が認められていない場所があるため、散骨場所の選定が大変です。そのため、自分で散骨するより業者に委託する方がよいでしょう。

散骨は需要が伸びてきている供養方法のため、業者が増えサービスの種類も多岐にわたり、料金は5万円～数十万円と内容によって幅があります。

手元に遺骨を置いておきたい人には、火葬した遺骨を骨壺などの入れ物に入れて仏壇などに置き、自宅で供養する方法があります。生前同様に朝晩の挨拶をしたり、話しかけたりでき、故人をより身近に感じられる供養といえるでしょう。

どこかに納骨するのではないので料金がかかりません。

宗教にとらわれず自分なりの供養が行えることから、現在1番ポピュラーな供養方法でしょう。しかし、継承者がいない場合、後で保管場所に困ることになりかねませんので、いずれ遺骨の供養方法を改めて考えなくてはなりません。

また、自己管理のため、急な災害に見舞われ壊れることが考えられますので、先々のことを考えたうえで検討してください。

手元に遺骨を少量残す方法

お墓や永代供養墓などへ納骨した人や海や山などに散骨した人の中には、遺骨が身近にないことに寂しさを感じる人がいます。

特に散骨の場合、命日やお盆、お彼岸などに手を合わせるべき対象がなくなります。永代供養墓に合同で埋葬した場合は、遺骨を取り出すことができません。

かと言って、全ての遺骨を手元に置く場所がないということもあるでしょう。そのため、最近は一部の遺骨を納骨または散骨し、残りの遺骨を手元に残す方法を併用して選ぶ人が増えています。

少量の遺骨を手元に置く方法は大きく分けて3つあります。

それでは、それぞれの方法を詳しく説明していきます。

アクセサリーにする方法は、ペンダントトップの中にパウダー状にした遺骨を納め、身に着けるのがポピュラーです。

以前は筒状のロケット形のものがほとんどでしたが、今はデザイン性にすぐれ、三日月形や円形など形がさまざまあり、誕生石をはめ込んで装飾品として楽しむまでに進化しています。

何より現代人は忙しく家にいる時間が限られているので、故人といつも一緒にいたい、寂しい思いをさせたくないなどという気持ちに寄り添った供養方法といえるのではないでしょうか。

コンパクトなデザインがほとんどなので残りの遺骨は、自宅に別の形で安置する、永代供養墓などに納骨する、散骨するようになります。

最近は遺骨を納骨したり散骨したりする代わりに、自宅で供養する新しい供養方法として、遺骨そのものでプレートを作る方法があります。

「エターナルプレート」と言われるそのプレートは、パウダー状にした遺骨が70％含まれた「ファインセラミック」と言われるもので衛生的で耐火性・耐食性にすぐれ温かみを感じる質感です。遺骨のイメージが全くないシンプルな形状に出来上がっています。

名前や出生～死亡年月日などの文字以外に、写真やイラストを配置できます。また、カラーバリエーションがあり、ありきたりではない自分だけのプレートが作れます。

仏壇が不要になり、自宅のどこにでも置けるのは、和室が少なくなった昨今の住宅事情を考えると嬉しいことですね。

遺骨を骨壺に入れ仏壇に安置し、お線香をあげて供養したい人もいるでしょう。そのようなニーズにこたえて、最近は洋室にマッチするコンパクトな仏壇も増えています。

また、机に置けるミニ仏壇もあり、骨壺も昔のように大きなものだけでなくコンパクトでカラフルなものがあります。

遺骨を手元に置いて供養できる環境が整ってきているということは、残された人の悲しみを癒やす大きな力となり、選択肢が増えるのでよいことですね。

お墓なしで遺骨供養するメリット・デメリット

契約内容によって違いがありますが、平均料金から考えると個人でお墓を建てるより、散骨や永代供養墓や手元に遺骨を置くと費用がかからず、大きなメリットになります。

しかし、お墓を建てるには費用がかかるからと、安易に他の供養を選択することはおすすめできません。個人でお墓を持たないということは、まだまだ一般的な遺骨供養の方法ではないので、親族に受け入れられないことが考えられ、トラブルに発展するデメリットとなります。

永代供養墓や散骨などを選び供養する遺骨なしとする場合は、親族に納得してもらうために話し合いを行う、後悔しないために他の供養方法と比較するなど、先々を考えて決断してください。

まとめ

お墓がなくても遺骨を供養することができます。また、遺骨が手元になくても故人への思いがあれば供養になります。

遺骨をどのように供養するのか、自分に合った方法を検討ください。