墓じまいをする理由として非常に多いのが「将来的にお墓の管理をすることが難しいから」というものですが、その後の供養の内容を考えたことはありますか?
「墓じまいした後もお経をあげてもらって供養したい」と思う人がいる一方で、「お経をあげることにはこだわらず、我が家に合う方法で供養したい」という人も。「そういえば…供養のことを考えていなかった…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、墓じまい後でも亡き人を大切に悼むことができる供養の方法についてご紹介します。
墓じまい後お経をあげない供養方法とは?
今までお世話になっていた墓所が寺院の場合、檀家として年忌法要を優先的に行ってもらえていたものが、墓じまいすることで自動的に、法要をしてもらう権利も手放すことになります。そのことに気付かず墓じまいしてしまうと、自身の後悔につながるだけでなく、親族とのトラブルになりかねません。
実は、墓じまい後の供養には、遺骨の行先によってさまざまな方法があります。
今までどおり年忌法要を行って、お経をあげて供養する方法ももちろんありますが、供養方法の中には、年忌法要にとらわれない新たな供養もあります。供養方法の選択肢が広がることが墓じまいの利点の一つといってもいいでしょう。
ここからは、墓じまい後の供養を満足いくものにするため、具体的な方法をご紹介していきます。将来どのように供養するのが家族にとってベストなのか、考えてみましょう。
墓じまい後の供養方法
そのため、墓じまいをするには事前に遺骨の行先を確保する必要があります。墓じまい後の供養の仕方は、遺骨の行先によって自然と変わっていきます。
まずはじめに、どのような場所に遺骨を移して供養することができるのか、ご紹介しましょう。
この方法では、自宅から近い場所で、今までと同じような方法で管理・供養できるようにすることが可能です。
遺骨を移す際に永代供養料を支払うことで利用できますが、供養する期間は霊園等との契約により変わり、契約期間後は他の家族と合祀されます。お墓を管理する方がいなくなっても無縁仏になることはありません。
散骨場所は海や野山が一般的ですが、最近は宇宙葬といって故人の遺骨や遺灰を専用のカプセルに納めて打ち上げ、宇宙空間へ散骨するといったものも広まってきました。
手元供養には遺骨をそのまま引き取る方法のほか、最近、新たに生まれた方法として、粉骨してコンパクトにし、それをアクセサリーやプレートなどに加工する方法などがあります。
このようなさまざまな方法が生まれている手元供養は、以前に比べると抵抗感の少ないものになってきていると考えられます。
各供養方法のメリット&デメリット
墓じまい後の供養としてこれだけの方法があるということに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
選択肢が増えれば増えるほど迷ってしまうのも仕方ありません。これらの供養方法には、素晴らしい点がある一方でデメリットがあるのも事実です。
メリット・デメリットを比較しておくことは、後悔のない供養をするためにとても大切です。事情によってはメリットがデメリットになり、またその逆もあるかもしれません。
ここでしっかり確認しておきましょう。
お墓の引越しは、いってしまえば「納骨の場所を移すだけ」です。そのため、今までどおり自身でお墓の手入れをし、定期的に手厚い供養をすることができます。
家の近くに引っ越せばそれだけ供養をしやすくなり、将来的なことも含めてお墓の面倒を見ること自体に問題がなければ、とてもよい方法といえます。また、親族と協力して管理していけるようにするためお墓を一つにまとめる、といった理由でこの方法を選ぶ方もいるようです。
「将来的にお墓の管理が難しい」といった理由で墓じまいをする場合は、お墓のケアの量はそれほど変わらないため、あまりおすすめできません。
また、費用がかさむ点もデメリットの一つとして挙げられます。新たにお墓を建立するにあたって、土地や墓石や法要(開眼供養)といった費用がかかります。
同時に今までのお墓を更地にするための墓石の撤去や法要(閉眼供養)を同時に行うため、かなりの費用が必要になります。「お墓を移したら生活が苦しくなった」とならないよう、見積書を用意してもらうなど、費用面でも計画的に、改葬に臨みましょう。
永代供養は供養の負担が少ないことが最大の魅力です。永代供養料を払ってしまえば、管理費は基本的にかからず、契約期間中は管理者がしっかりと供養をしてくれます。
また、お墓選びで問題になりがちな「宗派」についても、永代供養の場合は問われないことが多いのもポイントです。
永代供養墓の種類
・他の家族と一緒に埋葬される「合祀墓」
・区画を分けて複数の家族と一緒に埋葬される「集合墓」
・建物の中に骨壺を収納する「納骨堂」
・通常のお墓と同じように個別に埋葬される「個人墓」
遺骨の管理が個別になるにしたがって、費用も高くなる傾向があります。最近、特に注目されている「樹木葬」は永代供養であることが多く、公営墓地でも採用されることが増えています。
主にデメリットは2つあります。
1.供養は契約期間まで
おおむね33回忌までが一般的で、管理者によっては契約期間が短い場合もあるので注意が必要です。
2.一度、納骨してしまうと取り出せなくなる」ことがほとんどであること
新たな事情でお墓を移したくなったとしても、それがかなわない場合があります。そのため、場所選びがとても重要になります。
遺骨が自然に還ることです。生前、自然をこよなく愛していた方や、亡くなってからお墓の中にとどまりたくないと感じる方には、散骨はとても魅力ある供養方法となります。
また、散骨はお墓を持たない供養方法であるため、散骨後の管理は一切不要。管理費も当然かかりません。
一度散骨したら遺骨はどうやっても回収できないことが挙げられます。
遺骨がどこかにないと、残された遺族にとっては心の拠り所を失うことになりかねない、ということを心にとどめておいた方がいいでしょう。散骨する際は必ず粉骨するため、その一部を手元に残すなどの対策が必要です。
一方で、散骨は現代ではまだ新しい供養の方法であり、周囲の同意が得られない場合があることがデメリットとなります。親族への相談なしに散骨をしてトラブルになったというケースも実際あるようなので、散骨前に必ず親族にも相談しましょう。
また、遺骨を撒く行為はデリケートな問題を多く含み、周りから見られないようにするなど一般の方への配慮が不可欠です。
こういったデメリットもあるので、散骨は専門の業者にサポートしてもらうことをおすすめします。
手元供養は、亡き人を一番身近に感じることができる供養方法です。
墓所にかかわる費用が一切かからず、家の中で供養できるので、経済的なメリットも大いにあります。
骨壺といえば、少し前まで白くて神聖な雰囲気があり、家で供養するにはよい意味でも悪い意味でも大きな存在感を放つものでした。しかし、最近ではインテリアになじむおしゃれなデザインの骨壺が販売されており、ほかにも、アクセサリーやプレートに加工して保管できるなど、手元供養の方法も幅広くなってきています。
散骨と同様、周囲の理解を得るのが大変ということが挙げられます。
家族はいつでも供養できますが、親戚や友人は家族の予定を確認しなければならず、予定が合わなければその手元供養品に手を合わせることができません。そばに感じてお参りする自由がなく悲しいと思う人が周りにいる、ということを念頭に置いておくことが大切です。
また、手元で管理する以上、その方が亡くなったあとの管理や、災害時の対応などについても、あらかじめ考えておく必要があります。将来、「遺骨の行先がなくなった!」ということは避けたいところです。
墓じまい後にお経をあげてもらえるのか
墓じまい後の供養方法については、これだけあることが分かりました。それでは、墓じまいをして遺骨を新たな場所に移したら、今まで行っていた年忌供養はどのようにすればよいのでしょうか?
その方法について、詳しく見ていきましょう。
お墓を改葬した場合は、引っ越し先の新たな寺院・墓所で法要をあげられます。そのため、今までどおりの時期に今までとほとんど変わらない流れで供養することが可能です。
年忌法要だけでなく、お盆やお彼岸の法要にも対応してもらえますし、法要ではきちんとお経をあげてもらえます。「今までどおり」ということは、当然、管理に関してはかなり手間がかかりますし、料金もそれ相当かかってしまいます。
しかし、その分、寺院や墓所がきちんと手間をかけて管理してくれます。「しっかり供養できる」という点では、非常に安心できます。
お寺とのつながりを大切にしつつ、確実にお経をあげてもらえるのが「お墓の引越し」といえるでしょう。
永代供養の場合は、管理者が遺族に代わって年忌法要をしてくれます。そのため、基本的には自身で法要の場をセットする必要はありません。
しかし、中には「お墓参りに行ける元気があるうちは、法要も自分の手で行いたい!」と思う方もいらっしゃると思います。そんな方のために、管理者によっては「個人的に法要をあげてもよい」というルールにしているところも出てきました。
また、寺院が永代供養墓を管理している場合は、その寺院に所属する僧侶が法要を行い、お経をあげてくれることもあります。一旦、永代供養墓に遺骨を移すと取り出せないことが多いので、個人的に法要をあげたい場合は、その可否や追加料金について契約前に確認をとるようにしましょう。
僧侶派遣サービスを利用するのも、お経をあげる一つの方法です。
永代供養で個人的に法要したい場合や、手元供養の方には便利なサービスといえるでしょう。一方、僧侶派遣サービスは増加傾向にありますが、まだまだ派遣エリアが限られているのも事実。
自宅近くに僧侶を派遣してくれるサービスはない場合でも、サービスが拡大していないか、インターネットなどで定期的に探してみましょう。
仏式にこだわらない供養の方法もある
寺院や墓地にお墓を持たないということは、形式的な供養の方法にとらわれなくなる、ということでもあります。だからといって、親族や知人と亡き人を一緒に想う時間がなくなるのは寂しいことです。
実際には、形式にとらわれない供養方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
主な方法を二つご紹介します。
1.お食事会を開く
一番お手軽な方法として、「食事会」の開催があります。その中でもおすすめなのが、ホテルでの食事会です。
実は最近、ホテルでは「法要プラン」を用意しているところが増えています。ホテル特有のきちんとした雰囲気で食事をとりながら、亡き人の思い出を語り合うことができます。
そしてホテルは各種宴会のプロでもあるので、「思い出の写真等を映したい」といった要望にも積極的に対応してくれます。また、遠方からの親戚や高齢の親戚を招待しても、ホテルでの法要ならそのまま宿泊できて安心。
準備期間が必要となったり、食事以外にもサービス料がかかったりと、多少の手間と費用はかかりますが、配慮の行き届いた素敵な食事会が開催できるでしょう。
2.散骨した場合は散骨した場所に赴き偲ぶ方法もある
散骨した場合は、年忌法要の代わりに、散骨した場所に赴き手を合わせる方法で供養できます。特に、海洋散骨を行った場合は、散骨した場所へクルーズへ行くという方法で亡き人を偲ぶ方法があります。
散骨を扱う業者の中には、相乗りでのクルージングのほか、船を貸し切り食事をしながら亡き人を偲ぶというツアーを行っていることも!
このような供養を希望する場合は、散骨をお願いする業者がそのサービスを行っているのか、散骨前に調べておく必要があります。
また、クルーズは天候に左右されるため、高齢であったり船酔いのひどかったりする関係者への配慮も必要です。費用面でも高めになることが多いので、散骨前に調べておくと安心です。
まとめ
墓じまい後でもこのような方法でお経をあげ、供養することができます。しかし、お経をあげるだけが供養ではなく、食事会を開催したり、散骨した場合は散骨場所に赴いたりすることで供養することもできます。
遺骨を移す先がどこであれ、一番大切なのは「故人を悼む気持ち」です。供養は墓じまいが終われば終わり、というものではありません。
どのように供養できれば故人も残される人も満足できるのか、墓じまいをする前にその後の供養内容についてもしっかり話し合っておきましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |