墓じまいの流れと必要な手続きは?
墓じまいをいざ検討しようとすると「さまざまな手続きが必要なのでは?」と心配に思いますよね。葬礼や埋葬を規制する法律が存在しているため、墓じまいも、進めていく上で行政手続きが必要な場合があります。
平成30年度衛生行政報告例によると、遺骨を改めて埋葬する改葬数は年々増加傾向にあります。墓じまいは改葬するのかしないのかでは、流れと手続きが異なります。
これから墓じまいを行う方は、円滑に進められるよう、この記事を参考に準備をしてくださいね。
墓じまいの手続きは遺骨の行先で変わる!流れも異なる!
墓じまいは、今あるお墓から遺骨を取りだして更地にしておしまいではありません。お墓から取り出した遺骨の新しい居場所を探して供養することがメインです。
供養方法は大きく分けて3つあります。
- 改めて納骨あるいは埋葬する方法
- 散骨する方法
- 手元に安置しておく方法
改めて納骨や埋葬を行う場合は「改葬」に該当します。改葬は主に、墓地・埋葬等に関する法律「墓埋法」と「刑法」によって規制されています。
第1条によると「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的」で、残された人々や周囲の人々の生活に寄り添った法律と言えるでしょう。
190条では「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄した(中略)者は、三年以下の懲役に処する」と定めており、こちらも宗教的感情を守っています。
法律が定められているということは、行政手続きが発生することを意味します。改葬を行う場合は、きちんと手続きを行う必要性があります。
改葬を行う手続きは、法律で決められています。
第5条
改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長の許可を受けなければならない。
第8条
市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。
つまり、改葬する際の「改葬許可証」の取得申請を怠れば、違法となり罪に問われるかもしれません。正式な手順を踏まなければ許可証は取得できませんので、遺骨を改葬する場合は、確認しながら進めましょう。
手元供養や散骨をご検討する際、条例による規制がないか、必ず確認しましょう。
墓じまいの流れに沿って手続きの方法を確認しよう
行政手続きがどのタイミングで発生するのかについて、墓じまいの手順と併せて確認すれば円滑に処理できるはずです。行政手続き以外にも、費用や方法など多くの人が知りたいポイントを紹介します!
墓じまいしようとしているお墓は、自分一人のものでしょうか?
「遠くて誰も管理できないから…」と思いきや、実はお墓に訪れて手を合わせてくれている人がいるかもしれません。
古いお墓ほど、眠っている先祖が多いので、自分一人で進めることは避け、できる限りお墓に関係する人全てに了承を得られるようにしましょう。
・無縁仏になるのを防げる
・経費を削減できる
・元に戻せないこと
・離檀料や新しい供養先への支払いが高額になるかもしれないこと
メリットとデメリットについてもしっかり説明できるようにしておきましょう。
勝手に墓じまいを進めてしまうと、下記のようなトラブルが想定されます。
多額の違約金が発生する場合がある。
離檀料を請求される場合がある。
墓じまい時は遺骨を敷地内の永代供養墓に合祀する契約の場合がある。
遺骨の新しい供養先によって墓じまいを認めてもらえない場合がある。
改葬する場合に必要な「改葬許可証」の申請には、今のお墓の管理者に発行してもらう「埋葬証明」が不可欠です。
自分たちに代わって今までのお墓を供養し、管理してくれていたのですから、感謝の気持ちを持って相談に臨み、コミュニケーションを大切にしましょう。
お墓がなくなっても遺骨は残るので、新しい供養先を用意しなければなりません。
先祖に思いを馳せつつ、家族や親族の現状を考えて墓じまいを進めましょう。墓じまいを考えるきっかけとなる悩みを解決してくれる供養形態が見つかると良いですね。
次項から、遺骨の新しい供養先を6つに分けて紹介します。
遺骨の新しい居場所:1.新しいお墓を建てる
墓じまいの理由として「お墓が遠い」「行きにくい場所にある」という悩みが挙げられます。そんな場合は、自分や家族が行きやすい場所にお墓を新調することできます。
家族や子孫に継承できるのが大きなメリットです。今のお墓から取り出した遺骨を、そのまま納骨できます。
一からお墓を建てると相当な費用がかかってしまうことです。今まで先祖代々伝わってきた墓石を再利用可能な場合もあるので、まずは石材店に相談してみましょう。
遺骨の新しい居場所:2.納骨堂に納める
施設ごとに特徴が異なり、ある程度年数が経過すると、別の永代供養墓に一緒に供養される場合があります。
納骨堂は施設ごとの特徴によって、金額が異なります。最新式のシステムを導入している施設は高額になりがちです。
金額は、1人用100万円~です。
屋内に従来のお墓そのものがあります。
金額は、1人用100万円~です。
コンピュータでの制御を導入している最新式です。
金額は、1人用30万円~です。
仏壇状の棚に納骨し、ひとつひとつ好きにアレンジできます。
金額は、20万円~です。
棚状タイプで、比較的安価です。
遺骨の新しい居場所:3.永代供養墓に合祀する
永代供養墓の中でも、他の人の遺骨とまとめて埋葬し、一緒に永代供養してもらうお墓は「合祀墓」と言います。
屋外にある永代供養墓は3タイプに分けられます。
金額は、永代供養料40万円~です。
従来のお墓に一番近いタイプです。個別の専用施設に納めます。
金額は、永代供養料20万円~です。
納骨塔やモニュメントの下に個別の納骨区画があるタイプです。
金額は、永代供養料10万円~です。
合同墓とも呼ばれ、遺骨を全て合わせて供養します。合祀型は比較的費用を抑えられますが、一度行うと遺骨を取り出すことはできません。再度改葬を行ったり、分骨して手元供養に切り替えたりすることは不可能です。
他の永代供養墓も、33回忌や50回忌などの節目の供養を終えたら合祀する条件になっている場合があります。
遺骨の新しい居場所:4.樹木葬にする
樹木葬のお墓は、従来の墓石のお墓よりも安価な傾向にあります。
樹木葬にはさまざまな様式があり、実施している施設によって方法が異なります。
永代供養を約束するタイプが多く、土に還っていくイメージから散骨と同じと思われがちですが、樹木葬は、樹木の根元に骨壺を埋蔵したり遺骨を埋葬したりする行為を伴うため、お墓と同じように申請や手続きが発生するそうです。
埋葬方法別の費用相場を見てみましょう。
金額は、8万円~です。
シンボルとなる樹木の下に合祀墓がある。
金額は、30万円~です。
シンボルツリーの下に、個別に埋葬する。
金額は、30万円~です。
利用する家族ごとに墓標を植樹し、根元に埋葬する。
都市や山間部で相場の違いがあり、霊園内の場所によって異なることがあります。
遺骨の新しい居場所:5.自宅で安置する手元供養
お墓から取り出した遺骨を自宅に安置しておくこともできます。先ほど登場した墓埋法や刑法にも、遺骨を自宅で保管することに関する記述はありません。
火葬後にお墓に納骨するまで、自宅の祭壇や仏壇に置いて、別れを惜しんだり、祈りを捧げたりすることからも、問題はないと言えるでしょう。
しかし、お墓から取り出した遺骨をそのまま保管することは難しく、「メンテナンス」が必要です。また、遺骨や骨壺の数が多い場合は、細かくして容積を減らすなどの工夫をした方が良いでしょう。
行政手続きは不要ですが、念のため、今のお墓の管理者に遺骨の身分証である「埋葬の証明」書類を発行してもらうことをおすすめします。
手元に残しておく供養はさまざまな形があり、お墓まで足を運ばなくても、いつでも故人や先祖を偲ぶことができます。気になる費用と合わせて、種類も少し紹介します。
金額は0円ですが、遺骨のメンテナンス費が別途必要です。
金額は、24,000円~です。
金額は、390,000円~です。
遺骨の新しい居場所:6.散骨する
「遺骨をまく」という行為から違法なのではないかと思われがちですが、墓埋法や刑法には明文化されていないため、違法ではありません。
法律だけではなく、宗教や風習に左右されにくく、自由さが大きな特徴です。
全ての遺骨を散骨してお墓を持たずにいることもできますし、一部を残して手元供養を行うことも可能です。
散骨はイメージできても、どのような種類があるのか、費用相場はどのくらいなのか知っていますか?
散骨はまく場所によって種類が分かれ、費用は方法と使用する乗り物によって大きく異なり、オプションによっても金額は変動します。
金額は、5万円~です。
海洋散骨は海洋葬とも呼ばれ、沖合の散骨場所まで船で向かって実施します。波間に漂いながら消えていく遺骨を見ると、自然に還っていくのを感じられることでしょう。
金額は、10万円~です。
海だけではなく、自分の私有地や散骨専用の土地など陸地でも散骨ができます。眺めの良い山間部などの風光明媚な場所や、散骨専用の島もあるくらいです。
私有地での散骨は、法令の確認など注意すべき点が多いため、安易に行わず、専門家への相談をおすすめします。
金額は、24万円~です。
風船だけでなくロケットを利用して宇宙空間に遺骨をまくこともできます。
風船が成層圏で破裂する性質を活かした散骨は費用が抑えられますが、ロケットに遺骨を搭載する場合は、目指す行き先でさらに高額になります。月へ行くロケットは、250万円以上の代金がかかります。
金額は、20万円~です。
セスナ機やヘリコプターに乗り、思い出の場所を巡る空中散歩と同時に散骨ができます。散骨そのものが新しい思い出になることでしょう。
イベント性が強く、チャーターする乗り物に費用が左右されます。
墓じまいの流れ④~⑦は、改葬をするときに必要な書類「改葬許可証」の発行方法についての説明になります。散骨をご検討の方も業者によっては、改葬許可証が必要な場合がありますので、念のため確認しておきましょう。
改葬許可証の申請には、まず「受け入れ証明」となる書類を改葬先に発行してもらう必要があります。
受け入れ証明は、発行する施設によって名称が異なりますので調べておきましょう。
次に、今のお墓がある自治体(市区町村の役所)に、墓じまいを進めていることを伝え、遺骨と同数の「改葬許可申請書」を受け取ります。
ウェブサイトから申請書をダウンロードできる自治体もありますので調べてみましょう。
最後に、今あるお墓の管理者に「埋葬証明」を依頼します。なお、役所で受け取った改葬許可申請書に捺印してもらう必要があるかもしれませんので、確認しておきましょう。
受け入れの証明書と改葬許可申請書と埋葬証明の3つを合わせて自治体(市区町村の役所)に提出し、「改葬許可書」を受け取りましょう。
ただ、改葬許可書の発行には1週間ほど要することもあるので、スケジュールを確認しておきましょう。
ついに、今あるお墓を撤去して更地にします。この手順を行うと、後には引けません。
お墓から遺骨を取り出し、お墓を解体撤去するのは「石材店」の担当です。
自分で石材店に連絡しても良いのですが、寺院によっては石材店の指定があるかもしれません。墓じまいを進める前にお墓の管理者へ確認しておきましょう。
その他にも、事前に確認しておくことがあります。
- 今あるお墓の場所は、重機が入れないような狭い場所ではありませんか?
- お墓が古いかつ大きく、遺骨は何柱あるか知っていますか?
土葬骨があると「火葬」の申請が必要になります。お墓の中の状態をお墓の管理者に訪ね、しっかり確認しましょう。
今あるお墓が寺院にある場合は、法要を執り行ってから撤去作業を進めます。「閉眼供養」と呼ばれ、お墓に宿っている魂を抜き取るのです。お経をあげて供養を行ってくれた僧侶に感謝し、お布施を納めましょう。
お墓から出した遺骨を、納められていた骨壺ごとそのまま保管するのは、たとえ一時的な安置でもおすすめできません。
骨壺の大きさは地域によって異なります。一般的に下記のとおりです。
・関東は、7寸(直径約21.5cm)
・関西は、2寸~5寸(直径約6cmから約15.5cm)
お墓にたくさんの骨壺が眠っていた場合は、安置にかなりのスペースを必要とします。
お墓から出した骨壺は、水浸しだったり、割れていたり、きれいなままの状態で保たれているものは少ないでしょう。中に納められている遺骨は、カビなどの汚れが付着し、人類に有害な物質が存在する可能性もあります。
新しいお墓に納める場合であっても、一度遺骨を洗浄し乾燥させる必要があります。そこで安置場所や衛生管理のためにおすすめなのが、遺骨をパウダー状になるまで破砕する「粉骨」です。
遺骨の洗浄を含め、サラサラのパウダー状にする粉骨は、自力で行おうとすると大変ですので、専門業者に依頼すると良いでしょう。
新しい遺骨の居場所が、改葬に該当する場合は、納骨する際に「改葬許可書」を提出します。
遺骨を新しい居場所に持って行き、新たな形で供養します。手元に残った書類があれば念のために保管しておき、家族と今回の経緯について情報を共有しておきましょう。
これで、墓じまいの全ての手順は終了です。
墓じまいの流れと手続きを把握している業者に相談してみよう
これまで見てきた墓じまいの流れと手続きは、煩雑でなかなか難しいです。全てを自分一人で管理すると混乱してしまったり、手続きが進まず、トラブルの原因になりかねません。
墓じまいについて相談できる業者の力を借りて、スムーズに墓じまいをしませんか?
・葬儀店
・散骨業者
・行政書士
金額は、19万8千円~です。
葬儀店は葬儀のエキスパートで、火葬から仏具まで葬儀に関する相談全般を受け付けています。
金額は、6万円~です。
散骨を検討しているなら、墓じまいもサポートする散骨業者にお願いすると、一貫して請け負ってもらえます。
金額は、6万3千円~です。
新しい納骨先が「改葬」の場合は、行政手続きの代行に特化した行政書士に依頼すると安心です。
お墓に関する悩みを解決すべく墓じまいを行うのですから、あまり抱え込まずに、心穏やかに進められると良いですね。
まとめ
墓じまいは一度終えてしまうと、元に戻すことはできません。お墓をなくすと、お墓に関する悩みは解決しますが、自分たちのお別れのときに「入るお墓がない!」とならないよう、自分たちのための準備も考えておく必要もあります。
墓じまいの手続きと流れを知ったら、自分たちや家族に合った方法をじっくり話し合い、探してくださいね。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |