そろそろ終活を始めようと思いながら、何から手をつければよいのか分からないという人も多いでしょう。
終活と言ってもやるべき内容や進め方は、人によって様々です。とりわけ不動産に関する終活は、第一歩がなかなか踏み出せないという人も多いのではないでしょうか。なぜなら相続や財産の問題、住む家の問題などに大きく影響するからです。
家の売却など不動産の終活を始めようとする人は、まずは具体的な目的を明確にしてみてはいかがでしょうか。
家の売却など不動産の終活が重要な理由
まずは「終活とは何か」「不動産とは何か」を確認しましょう。
「自分の死と向き合い、生前準備をすること」です。それを行うことによって、自分の死についてポジティブに考え、よりよい老後を過ごすことができるとも言われています。
終活と言っても、何を中心に行うかについては、人によって様々でしょう。
また、最近は新しい終活の内容が注目され始めています。
例えば、「終活年賀状」という言葉を耳にしたことはありませんか?これは高齢などの理由から、来年から年賀状を送ることを辞退する旨の年賀状を送る終活のことです。身辺整理の一種になりますが、年々実施する人も増えて文例集なども紹介されるようになりました。
このように、終活の方法に変化がある中で、変わらずにあるのは「財産整理」に関することではないでしょうか。財産の中でも不動産は価値が高く、他の終活と比べても大きな決断が必要になることが多いでしょう。
民法の86条(不動産及び動産)には、「土地及びその定着物」を不動産、それ以外をすべて動産とする旨規定されています。
定着物とは、建物や立木など、位置を変えることができないもので家や樹木群などを指し、土地とは別の不動産として取り扱われるのが普通です。
また、不動産は個人または家族に属する総財産の大きな部分を占めていて、財産的価値が高いと考えられてきました。それ故に厳重な取り扱いが求められ、日本では登記制度が発達してきたという経緯があります。
終活をする意義として、ますますクローズアップされているのは、よりよい老後を過ごすことでしょう。
不動産の終活が重要なのは、一歩間違えると残される家族の不利益につながるだけでなく、自分が不本意な老後を送ることにもなりかねないからなのです。
具体的には次の4つの理由を挙げることができます。
不動産の扱いに関しては、自分の希望だけで決められないことが多いでしょう。扱い方によっては家族への金銭的な影響も大きく、周囲との話し合いがより大切になる終活と言えます。
不動産の売却で得たものは、老後資金となります。売却する不動産が今、暮らしている家である場合には、売却後もその家に住み続けるのか、別の場所を確保するのか。老後生活の資金に大きく関係してきます。
選択を間違えると損失が大きくなるので、計画性と慎重さが求められます。
トラブルにならない相続を考えるのも、終活を行う人の務めでしょう。
また、やり方次第で節税できる場合があり、そういった面でも不動産の終活を行うことには大きな意義があります。
家の売却など不動産の終活を行う目的
不動産に関する終活を行う目的には、自分自身の老後のためと、残される家族のためという面があります。具体的には主に次の3つを挙げることができますので、参考にしてください。
日本人の寿命は伸び続けていて、人生100年時代とも言われています。定年を迎えてからの人生が30年以上となる人も少なくないのです。そのため、老後資金はいくらあっても安心できないというのが現実のようです。
実際、老後資金を補うために不動産の売却を検討しなければならない場面も出てきます。売却で得たまとまった資金を、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの入居初期費用に充てるという人もいるでしょう。
また、老後資金を確保する方法として、土地活用があります。土地は売却せずに家を取り壊し、駐車場・トランクルーム・アパート経営に乗り出すといったケースです。
税金や相続のしくみを理解し対応することで、有意義な終活をすることができます。不動産の活用を適切に行えば、老後資金の調達だけでなく、節税・相続対策を行うことができるのです。
例えば、相続税は相続財産の評価額から算出されますが、不動産は現金(取引価格)よりも低い額で評価されます。一般的な例ですが、土地(宅地)に関しては路線価の80%、または固定資産税評価額の70%、家に関しては固定資産税評価額の70%の評価になるようです。
不動産での相続の方が効果的な場合には「不動産を売却しない」あるいは「新規購入する」という選択で節税することになります。
また、不動産は現金と違って分割できないので、生前贈与にすれば自分が引き継いでもらいたい人に渡すことができ、トラブル防止になるメリットもあるようです。
ただし相続額の大きさや相続するタイミングによっては、現金での相続の方が効果的な場合もありますので注意が必要です。
定年後の生活が長くなると、誰もが加齢とともに体力や精神力が衰えていくのは仕方のないことです。住み慣れた家にも高齢者に不向きな部分も出てくるでしょう。それでもそのままずっと住み続けていたいと考える人に、おすすめしたいのが「終活リフォーム」です。
条件を満たせば、介護保険制度の補助金や市区町村による助成金を受けることもできますので検討してください。
また、子どもとの同居を希望する人は、二世帯住宅に建て替えるという選択肢もあります。
あくまでも目安ですが、目的によって以下の選択をすることができます。
- 老後生活の資金調達であれば「売却」
- 希望を叶える相続の対策であれば「生前贈与」
- 節税を主に相続対策と考えるならば「土地活用」
- 老後の生活クオリティを確保するには「リフォーム」や「建て替え」
現時点で考えられる範囲で構いませんので、自分や家族にとって最適な方向性を見つけましょう。
家を売却するメリット・デメリット
「不動産」と言えば多くの人は、現在暮らしている「家」と「土地」になるのではないでしょうか。
家や土地を含む売却のメリット・デメリットを整理してお伝えしましょう。
- 不動産を売却して現金化すると、老後生活の資金として使えるようになる。
- 複数の相続人に相続することを考えたときに、現金は分割しやすい。例えば家を1階と2階に分割して相続することは基本的にはできません。現金化した方が相続のトラブルが少ないと考えられます。
- 売却後は、家の維持費や固定資産税の負担がなくなる。
- 家の売却後には、住む家を確保する必要がある。
- 希望する価格で売却できないことも考えられ、予定の変更を迫られる場合がある。また家や土地を税金のことを考えずに売却すると、「想定していたより手元に残るお金が少なかった」という結果になることもあるでしょう。土地代の急騰などがあり、購入時の金額より売却時の金額が高くなる場合には特に注意が必要です。
- 売却のタイミングによっては税金がかかるなど、売却時期を見極める必要がある。生前の名義変更は、死後にはかからない登録免許税や不動産取得税などが発生するなど、タイミングによる詳細な比較が必要となります。
家や土地以外にも不動産を持っている人は、不動産リストの作成をしておきましょう。いざ売却しようと思ったときに慌てないように、それぞれ関係書類の整理をしておくことをおすすめします。
関係書類には主に次のようなものがあります。
- 固定資産税の納税通知書
- 土地や建物の登記簿謄本
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 建築設計図と測量図
- 建築確認証
- メンテナンスなどの検査済証 など
実際に売却する際には、不動産会社に確認して、必要書類をそろえましょう。
家を売却しない選択
終活において、家を売却しないという選択肢として、リフォームや二世帯住宅への建て替えという方法があります。
年齢が上がれば上がるほど、環境の変化がストレスになる場合があります。慣れた家に住み続けたいと願う人は、案外多いのではないでしょうか。売却による現金化の必要もなく、健康で何の支障もなければ、理想的な選択でしょう。
ただ、住み続けている間にも問題が出てくる場合がありますので、第二案、三案の準備は必要ですね。そのまま住み続けると決めたならば、資金があるうちにリフォームしておくことも、その後の安心につながります。
住宅購入の負担を考えると、子どもにとってもメリットの大きい方法です。また、お互いに見守り見守られる安心感を得られます。
ローンの組み方によっては、親子でローン控除を受けることで節税することができます。そして、小規模住宅等の特例を利用できるので、相続税の軽減が見込めるメリットは大きいでしょう。
二世帯住宅の場合の注意点は、親子で共有登記をすること。1階は親、2階は子どもなどの区分登記にすると特例対象にならない可能性があります。ただし、他に分割を希望する兄弟がいる場合は、トラブルになることがありますので話し合っておきましょう。
売却しても今の家に住み続けることのできる方法として「リースバック」と「リバースモーゲージ」があります。デメリットもありますので併せて参考にしてください。
多くの場合、賃貸契約期間が定められている「定期借家契約」となります。貸し主と借り主の合意がなく再契約を結べなかった場合には、退去しなくてはならないことがあります。
長期にわたる利息の延滞が生じると、抵当権が実行される場合がありますので注意が必要です。
まとめ
不動産に関する終活の第一歩は、目的を明確にすることです。踏み出そうとする人の参考になりましたら幸いです。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |