台風や豪雨災害のニュースで墓石が倒れ、お墓が倒壊した映像を見るたびに「ウチのお墓は大丈夫かな…」と心配していませんか?
それをきっかけに、築年数が経った我が家のお墓をそろそろ「墓じまいしようか」と考える方もいるでしょう。けれど、実際に墓じまいするとなると「どうすればいいのだろう?」「みんなはどうしているのだろう?」と悩むものだと思います。
ここでは墓じまい後、年数が経っても悔やまれないために、どのような墓じまいをしたらよいか、考えていきたいと思います。
墓じまいは年数がかかる場合がある
「お墓の撤去」と一言でいっても、単に墓石を解体して撤去すればいいというものではありません。
埋葬している遺骨を勝手に移動することはできないので、きちんと手順を踏んで取り出した遺骨は、新しい場所で供養することになります。そのため、遺骨の行き先について検討する必要があります。
さらに、墓じまいは個人の問題ではなく、親族などお墓に関わる人全てに関わるため、勝手に業者を決めたり事務的に進めたりすると、親族間でトラブルになったり、気まずい関係になることがあるようです。
墓じまいを思い立ってから完了するまで長い年数がかかる場合もあるので、ゆとりをもって計画するようにしましょう。
墓じまいの一般的な流れは以下の4つです。
親族や菩提寺を説得するのに時間がかかる場合があるので、早い段階から相談するようにしましょう。
遺骨の供養方法は種類が沢山ありますので、自分に合った方法を吟味してください。
お墓を撤去するには、自治体から「改葬許可申請書」、墓地から「埋葬証明書」と「改葬先受入証明書」をそれぞれ入手しなくてはなりません。
また、お墓の撤去工事のために石材店などの業者と契約したり、新しい遺骨の受け入れ先と契約をしたり、事務作業が多くあります。
お墓に関わる親族を招き、僧侶にお経を唱えてもらうのが一般的で、その後、遺骨を取り出し、お墓を撤去することができるようになります。
年数が経った先祖代々のお墓の墓じまい
先祖代々のお墓となると、近しい親族以外にお参りしてくれている遠い親戚がいるかもしれません。親族以外に、古くから関係の深い縁者が存在することも考えられます。
大きなトラブルなく墓じまいをするためには、まずは近しい親族に相談するところからはじめ、可能な限りお墓に関わりのある人全てと墓じまいの話をしましょう。
親族の中には、墓じまいを賛同できない人がいることも考えられます。その人たちの説得に年数がかかると覚悟し、丁寧に事情を説明して理解を求めていきましょう。
なお、墓じまいは「祭祀継承者」でないと進めることができません。昔は長男が継承するのが一般的でしたが、家長制度がなくなった現在、親族で話し合って決めることも多くなり、結婚して姓が変わった娘が継承することもあります。
故人の配偶者や兄弟など、血縁的に自分より故人に近い継承上位者がいる場合は「承諾書」がなければ墓じまいができないということを覚えておいてください。
長い年数、檀家であった場合、先祖代々が菩提寺にお世話になっていたということでしょう。
菩提寺にとって、墓じまいされると檀家を失うことになります。そのため、墓じまいをすることが決まったら、菩提寺に対して配慮が必要です。
事務的な報告として説明するのではなく、今までお世話になったお礼を伝え、「後継者がおらずご先祖様を無縁仏にしたくない」など、墓じまいに至る理由を丁寧に説明して理解を求めましょう。
墓じまいの際は、埋葬証明書を作成していただいたり、撤去工事に関して許可を得たりする必要があります。それ以外にも祭祀や撤去工事日程調整をするなど、実務的な打ち合わせも必要となりますので、仲たがいにならぬように話をする注意が必要です。
ニュースなどで墓じまいが原因で、離檀料として法外な請求をされるという事例を聞くことがあります。どうしても交渉が難しい場合は、第三者である「行政書士」や「弁護士」に間に入ってもらうとスムーズに話が進められることもあります。
墓じまいのためにお墓から遺骨を取り出すためには、お墓のある自治体から改葬許可証を交付してもらわなければなりません。
改葬許可書は、遺骨1体につき1通が必要となりますので、申請するために、まずはお墓に入っている遺骨の体数を数えることが必要です。
しかし、先祖代々のお墓となると、何体の遺骨が納められているか分からない場合が多く、特に戦前からあるお墓や地域によっては土葬しているお墓もあり、調べるだけで年数がかかったという話を聞きます。
さらに古いお墓だと墓石の劣化がひどく、遺骨を納めた納骨室に水が溜まっていて、遺骨を取り出すのが大変ということもあります。
遺骨の体数は、改葬許可証の交付のためだけでなく、改葬先での対応でも必要なことなので、時間に余裕をもって調べましょう。
親が建てたお墓であれば、先祖代々のお墓と違い、お墓に納められた遺骨の体数が把握しきれているでしょう。先祖代々からのお墓ほど手がかかりませんが、親族や菩提寺との話し合いが重要なことに変わりはありません!
核家族化が進んだ昨今、同じ区画でなくても親族で同じ墓所にお墓を建てて、互いのお墓をお参りしているという方も増えています。そのため、墓じまいをするのであれば、このままお墓を引き継ぎたいと考える親族がいるかもしれません。
親族や菩提寺と話し合いをすることで、墓じまいとは別の選択肢を見つけることができることもあります。「なんとしても墓じまいするのだ!」と頑なにならず、お墓に関わる人が納得できる選択方法を見つけたいですね。
墓じまいをするにあたって、トラブルが発生しないために注意しておきたいポイントを3つご紹介します。
墓じまいを納得させ、祭祀継承者として認めてもらいましょう。後々のために書面を残しておくとよいでしょう。
離檀を阻止しようと菩提寺の永代供養墓へ遺骨を移動する提案をされたり、高額請求をしたりする菩提寺があるようです。そのようなトラブルを避けるためには、丁寧な説明と相談をすることにつきますが、どうしても回避できない場合は、経緯を記録し法的手段を講じる必要があります。あくまでも最終手段と考えて、時間をかけて話し合いを進めましょう。
撤去工事は石材店などに依頼しますが、その費用は立地条件に左右されます。専用の機材を用いた作業のため内容が分かりづらく、後日、追加請求されるなどのトラブルが起こることがあります。
・何をどのように工事するのか
・価格は納得いくものか
など、不明点はそのままにせずにしっかり確認して、正しく契約書を交わしましょう。
墓じまいのタイミングは築年数では測れません
墓じまいをしようと思っても、ベストなタイミングが分からないと躊躇してしまいますね。
建物と違い、古くても祭祀継承者が途切れず、墓じまいが不要なお墓もありますし、比較的に新しいお墓であっても、急な転勤や家庭の事情で今のお墓を維持することが難しくなる場合もあります。そのため、建てられた年数で墓じまいのタイミングを計ることはできません。
実際、墓じまいをするタイミングは人それぞれです。一般的に、どんなときに墓じまいを考え始めたのか、主なタイミングの時期をご紹介します。
墓じまいを考えたタイミングの1つは、身内が亡くなり必要に迫られて納骨先を探したときです。
実家のお墓が遠方にあるということで、お参りしやすい場所にお墓を建て直したい。この機会に今のお墓を墓じまいし、新たな場所で身内と一緒に改葬したいと考えるようです。
お葬式には、お墓に関わる親族がほぼ集まるため、墓じまいの相談や話がしやすくなります。話しにくいお墓の話も、お葬式のときだとスムーズに相談できますね。
定年退職や還暦をむかえるなどの人生の節目が、墓じまいを考えるきっかけになる場合もあります。
忙しく働いてきた日々から解放され、定年退職で自由な時間ができ、やっと先々のことを考える余裕ができるということでしょうか。
また、子どもが結婚し家を出て家族の枠組みに変化があるなど、生活が変わるときこそ、墓じまいのことを考えられる機会になるようです。新たに自分の家族をもった子どもたちに、先祖代々のお墓を継承させるべきか考えてのことでしょう。
自分や家族が病気になって墓じまいを決断する人もいます。
特に自分が病気になった場合は、自身の行き先としてのお墓のあり方を考えるようです。元気なときは当たり前にしていたお墓参りが、後どのくらいの年数できるのか。
また、自分自身がお墓に入れば、そのお墓は子どもや兄弟など親族に引き継がせなくてはいけないという思いもあります。お墓を引き継がせるということは、お墓の維持管理や法事、お参りなどを任せるということであり、継承者に負担をかけたくなくて、動けるうちに自分の代で墓じまいをしようと考える方が多いようです。
最近は、地震や台風などの自然災害が多発していて、それに伴う土砂災害などでお墓が倒壊することもあり、そのままにしておけず、墓じまいに踏みきるというケースもあります。
お墓が倒壊してしまった場合は早急な対応が迫られ、十分な準備ができないまま、お墓をどうするか決断しなくてはなりません。
墓じまいというのは、お墓を建てて年数が経ったからするというものではありません。「墓じまいをしよう!」と思ったときが行動するときと考えて、可能であれば余裕があるときに準備することをおすすめします。
墓じまい後の遺骨の供養方法
最近は実家をそのまま継承する人は減り、それぞれの家庭が自分たちの生活に合った場所で、それぞれ家を建てて暮らす形が増えています。このような時代なので、遠方にあるお墓へお参りに行けず、ご先祖様に申し訳ないとの思う気持ちや、お墓の維持管理の負担を子どもたちに負わせたくないという思いから、墓じまいを考え始める人が多いです。
しかし、墓じまい後の遺骨の供養方法は、自分自身が亡くなった後の供養方法でもあります。その意味では「自分が亡くなった後、どのように供養してもらいたいか」自分のためにも真剣に考える必要があるでしょう。
墓じまいをするケースが増えたことで、遺骨の供養方法はさまざまに考案されており、選択肢が増えています。
代表的なものは、以下の6つです。
- 新しいお墓の立て直し(改葬)
- 永代供養墓
- 納骨堂
- 樹木葬墓
- 散骨
- 手元供養
年数が経っても悔やまれない墓じまいができるよう、これらの特徴をご説明しましょう。
年数が経ってもお墓を任せられる後継者がいる場合は、後継者や親族がお参りしやすい場所にお墓を建て直して納骨するのが、シンプルな方法でしょう。
墓じまい後に、別々だった夫婦両家のお墓を1カ所にまとめ、両家のお墓参りや法要を一緒に行うといった形をとる家庭の例もあり、メリットあるアイディアだと思います。
ただし、お墓を新しい墓地用に購入する必要があり、お墓の維持費もが継続的にかかるというデメリットもあります。なお、最近は一部の銀行や信販会社で「メモリアルローン」が提供されています。
新しいお墓を建てることを考えている場合は、ローンについても調べてみるとよいでしょう。
通常のお墓は残された家族が、お墓の維持管理や供養を行いますが、永代供養墓は、お寺や寺院が家族の代わりに行ってくれるため、子孫が引き継ぐ必要はありません。そのため、墓じまい後に後継者がいない人におすすめです。
また、永代供養墓は他人と共同で利用する大きなお墓があり、その1区画をそれぞれの家族が使用するため、墓石や墓地を1家族ごと用意する必要がなく、費用を抑えたい人にも選ばれています。
永代供養墓の埋葬方法は、大きく分けて3つあります。
- 最初から遺骨を他の人と一緒に埋葬する方法
- 一定期間は特定の区画に埋葬し、期間が過ぎたら他の人と一緒のお墓に移す方法
- 永久に特定の区画に埋葬する方法
墓地によって契約内容がさまざまですので、年数が経っても悔やまれないように、希望に合ったプランを選びましょう。
墓地は町から離れていることが多いですが、納骨堂は町の中にあることが多く、駅近や交通の便がよい立地にあり、年配の親族でもお参りしやすいです。さらに、室内にあるので悪天候や気温に左右されることなく、法要やお参りができることは大きなメリットです。
今まで遠方のため数年に1度しかお墓参りができなかった人にとってはとても便利です。そして、お参りに来てくれる回数が増えれば、ご先祖様も喜んでくれることでしょう。
最近、よく耳にする「樹木葬墓」は、墓じまい後の納骨先としてメディアに多く取り上げられて注目を集めています。
昔は、地方や里山にある樹木葬を行える場所で、樹木の根元に遺骨を埋葬する「里山型」という方法が主でしたが、今は専用の区画を設けた墓地の樹木の元に遺骨を埋葬する「都市型(公園型)」と呼ばれる方法が人気のようです。
山の中にある里山型に比べ、アクセスのよい立地と管理の行き届いた区画がある都市型(公園型)は魅力的で、年数が経ち成長した樹木を見て、故人を偲ぶのも素敵ですね。
散骨は、遺骨を粉骨して海や山にまく方法で、墓じまい後の供養方法として若い人に人気があります。また、お墓の購入や維持費がかからないため、後継者がいない人や残された家族にお墓の維持管理の負担をかけたくない人にもおすすめです。
個人で行うこともできますが、散骨が可能な場所は限られていることから、散骨業者に依頼するのが一般的です。
沖合に船で行き、海へ散骨する方法が人気ですが、1隻船をチャーターして家族が同行するプランや、散骨業者に散骨してもらって後から記念の画像をもらうプランなどもあり、サービス内容が充実しています。
ただし、散骨してしまうと手元に何も残らなくなりますので、散骨する分と手元に残す分に「分骨」するなど、年数が経った後に悔やまれないようによく検討してください。
遺骨を手元に置いている人の家に親族が直接お参りに来てくれて、墓じまいしたおかげで親族との親密度があがったとの話を聞きます。
また、仏壇がない家庭が増えているせいか、最近では骨壺のままで供養するのではなく、アクセサリーやフォトフレームにしたり、遺骨を練りこんで花瓶などに加工したり、手元供養のバリエーションが増えています。
しかし、この場合は自分が亡くなった後のこれらの行き先も生前に決めておく必要がありますので注意しましょう。
まとめ
建ててから年数が経つお墓をどうするかは、誰でも悩むものです。
墓じまいはご先祖様の供養にとどまらず、自分が亡くなった後の供養の選択でもあります。年数が経っても悔やまれないために、そして自分自身の供養のために、墓じまいをじっくり考えましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |