墓じまいやお墓を建てていなかったり遺品整理などで遺骨の処分方法に頭を悩ませる人は少なくありません。遺骨が必要ないとしても、法律だけでなく倫理的にも放置したり廃棄したりすることはせず、適切に対応することが大切です。
また、遺骨を処分するということは、骨壺や骨箱の処分も必要になります。骨壺や骨箱をそのまま廃棄するということはできません。
遺骨及び骨壺や骨箱の正しい処分方法をお伝えするので、参考にしてください。
遺骨がいらなくなるのはどんなとき?
以下のようなシチュエーションが考えられます。
祭祀承継者がいない、身寄りがいない、お墓の管理が難しいなどの理由で墓じまいを行う人が多いです。
お墓や納骨堂がいっぱいで遺骨が入りきれない場合は、古い骨から処分(供養)することをおすすめします。
遠方で亡くなり、菩提寺以外の寺院で葬儀を行うと納骨を拒否されることがあります。故人の遺骨を菩提寺に納骨したい場合は、遠方でも葬儀を決める前に菩提寺に相談することをおすすめします。
葬儀を執り行ってもらった寺院に会費を払って一時的に預けていた遺骨を引き取って、処分(供養)する場合です。
親をはじめ親族などの遺品整理を行っている途中で思いがけず遺骨が出てくるということもあります。
市町村や警察から独死や不慮の事故や事件などで親戚が亡くなり、遺骨の引き取り連絡がある場合です。これまでまったく知らなかった親戚のためにお墓を建てたり、現在あるお墓に納骨したりするのに抵抗がある場合は処分(供養)を考える必要があります。
遺骨が必要ないからといって、ゴミとして廃棄したり勝手に近所の寺院などに放置したりすることは、法律違反になります。また、墓地ではない場所に埋めることも法律違反なので絶対に行ってはいけません。
190条「死体、遺骨、遺髪、または棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、または領得した者は、3年以下の懲役に処する。」
第4条「埋葬、または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」
刑法に触れる行為であることをしっかり覚えておいてください。
いらない遺骨の供養方法
それでは、いらない遺骨を処分(供養)するにはどうしたらいいのでしょうか?
これからは正しい処分(供養)方法をお伝えするので、状況や予算などに合わせて最適な方法を見つける参考にしてください。
散骨は遺骨をパウダー状に粉骨して行います。散骨の専門業者に依頼すれば、粉骨と散骨共に対応してくれます。
海や山林、宇宙、バルーンでの散骨など様々な場所や方法の業者があります。業者によっては、散骨に同行しなくても委託することができるので、問い合わせるとよいでしょう。
なお、自分で粉骨や散骨する方法もありますが、精神的にも身体的にも大変です。また、場所についても土地の所有者や自治体に許可、海ならば自治体や漁業組合で許可された場所など制限があるため探すのが困難です。そのため、実績があって信頼できる業者に依頼することをおすすめします。
墓石ではなく、樹木を墓標として永代供養をする方法です。自然の里山を活かした「里山型」と「公園型」があります。
墓標が分かりにくい反面、そこにある自然と一体になれるタイプです。
一本の樹木の下に合同で埋葬されるタイプと個別の区画毎に樹木があるタイプに分かれています。
永代供養や納骨堂で供養してもらう方法です。最初に永代供養料を払ってしまえば、合同墓のある寺院、または納骨堂や霊園と提携している寺院がその後の供養を行ってくれます。
納骨堂や永代供養の場合、寺院や納骨堂が定める期間を過ぎたら、他の故人と一緒に合祀墓に埋葬されるので、無縁仏になることがありません。
火葬場で遺骨を処分してもらう方法です。通常より高温で長時間焼くことで、焼け残った遺骨は普通の遺骨よりも粉砕しやすくなります。
小さくまとめやすくなった遺骨は火葬場に併設されている供養塔や提携先の寺院に埋葬されます。ただし、全ての火葬場で対応してもらえるわけではないので、事前に確認が必要です。
賃貸物件の大家として見つけた遺骨はどうしたらいい?
賃貸物件で1人世帯の人が亡くなり、大家や管理会社が借り主の遺骨の処分(供養)に困ることがあります。また、故人の遺品整理をしていると、まれに部屋から借り主が手元に置いていた遺骨が出てくることがあります。
このような場合、故人の親族を可能な限り探し、借り主が亡くなったことと遺骨が遺品としてあることを報告し、引き取りをお願いしてください。
なぜなら、遺骨の処分(供養)は祭祀承継者しか行えないからです。
家庭裁判所に申し立てをして判決がくだされれば大家でも祭祀承継者になれますが、時間と費用がかかるのと同時に故人の仏壇やお墓を承継しなくてはならなくなります。面倒でも故人の親族を探して、引き取りをお願いするようにしましょう。
どうしても親族が見つからない場合や誰の遺骨かわからない場合は、自治体や警察に相談ください。一定期間経過し、引き取り手が現れなければ、自治体や警察が供養をしてくれます。
ペットの遺骨はどうしたらいい?
家族のように一緒に暮らしていたペットの遺骨の処分(供養)はどのようにしたらよいでしょうか?
ペットの遺骨に関しては法律に規定はなく、極端ですが可燃ごみとして廃棄することも可能です。もちろん、自宅の庭など自己所有の土地への埋葬や、散骨も法律違反にはなりません。なお、自分が亡くなったあと墓地へ一緒に埋葬したり、業者に依頼して散骨したりすることができます。
ただし、寺院によってはペットの埋葬や納骨ができないところがあるので、必ず確認してください。散骨の場合は、ペットの遺骨を一緒に散骨したい旨を業者に伝えておきましょう。
遺骨を散骨するなら必ず粉骨しましょう
最近は、遺骨の処分(供養)として、散骨を行う人が増えています。ただ、前述したように遺骨をそのままの形で散骨するのは法律違反になります。
公式の見解ではありませんが「葬送を目的とした、個人が節度をもって実施する散骨は遺棄罪にはならない」とされており、厚生労働省も「散骨は対象としていないので規制の対象にはならない」と述べています。
つまり、散骨を行うには、必ず遺骨をパウダー状にしなければなりません。
自分で粉骨するには、ハンマーなどで砕いたあと乳鉢やすり鉢などでパウダー状にします。日数がかかることもあり、身体的にも精神的にも負担になるので、粉骨を行ってくれる散骨業者に依頼することをおすすめします。
業者によって、宅配での対応や、粉骨に立ち会うことが可能です。自分の状況に合わせ、実績があり信頼できる業者を選択しましょう。
遺骨が入っていた骨壺や骨箱はどうしたらいい?
遺骨を処分(供養)したら、遺骨が入っていた骨壺や骨箱は必要なくなります。小さくすれば自治体の規定に従い、骨壺は不燃ごみ、骨箱と骨箱や骨壺のカバーは可燃ごみとして出すことができます。
また、寺院や霊園、葬儀社や散骨業者に依頼することが可能なので、相談してみてください。
なお、骨壺や骨箱は故人のために造られた物です。どんなに綺麗に残っていても、再利用したり他の目的で使用したりするのは避けましょう。
骨壺や骨箱を自分で処分する具体的な方法は以下の通りです。
まずは、骨箱を解体する前に骨壺を細かくします。
- 軍手
- 保護メガネ
- ハンマー
- 骨壺に名前を書いてある場合は油性ペン
- 土嚢袋などの厚手の袋
- 骨箱(なければ新聞、タオル)
- マイナスドライバー
- 骨壺に名前が書いてある場合は油性ペンで名前や日付などを黒塗りします。
- 骨壺を土嚢袋などの厚手の袋に入れ、骨箱に入れます。骨箱がない場合は、新聞にくるみ土嚢袋などの厚手の袋に入れタオルを当てます。
- 軍手と保護メガネを装着します。骨箱に入れた場合は袋の内側から、入れてない場合はタオルの上からハンマーで叩きます。名前が書いてあるまたは彫ってある部分は判別できないくらいに細かくします。
- 自治体の規定に沿って不燃ごみとして出します。
ハンマーで端から叩き割りましょう。
- 骨箱の角などにある布の継ぎ目を探します。
- 継ぎ目を見つけたら、内側に折り込まれている布をマイナスドライバーで起こします。
- 布張りを引き剥がします。(強引に剥がさないと剥がれません)
- 止めてある釘などに注意しながら、ハンマーで端から叩き壊します。(蓋も同様に壊します)
- 可燃ごみとして出します。
カバーが付いている場合は、折り畳んで可燃ごみとして出します。また、ハンマーを使用する際は、大きな音がするので、周囲に配慮した場所や時間帯を選んでくださいね。
自分で骨壺や骨箱を処分できることはわかりましたが、ごみとして処分することに抵抗がある人もいるはずです。その場合は、遺骨の処分(供養)を依頼した寺院や霊園、散骨を依頼したのならば散骨業者に相談してみてください。
または、菩提寺に相談するのもよいでしょう。多くの寺院や霊園、散骨業者または葬儀社、専門業者、石材店で無料、有料でも数千円で引き取ってくれます。寺院によっては「お炊き上げ」を行ってくれます。
業者に依頼する場合は、産業廃棄物収集業者と正規の契約、かつ作業廃棄物の処分場など適切な場所で処分している会社か確認しましょう。
まとめ
遺骨はゴミとして廃棄したり、そのままの状態で放置したりすることは法律違反であり、刑法に触れる行為となります。また、祭祀承継者に無断で処分(供養)することができません。
骨箱や骨壺も自分で処分するのは大変なので、実績があり信頼できる寺院や業者に依頼することをおすすめします。
菩提寺があるなら、まずは菩提寺に相談しましょう。たとえ引き取ってもらえなくても、的確なアドバイスがもらえるはずです。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |