葬儀後や墓じまいの後の遺骨はどうしたらよいか考えたことがありますか?
もしもの時のためにも遺骨の行き先をあらかじめ決めておきたいですが、行き先を決めるとしても、全てが自由にできるというわけではありません。
実は、遺骨の扱いについては一定のルールがあるのです!
そこで、今回は遺骨を納めるまでの流れとその行き先、注意点など、遺骨の行き先にまつわる基本的なポイントを押さえていきましょう。
遺骨の行き先は好き勝手にはできない
葬儀後や墓じまいをした後の遺骨の行き先について、漠然と「お墓に納めるもの」と考えている人が今でも多くいらっしゃいます。
それは江戸時代、全ての人がいずれかの仏教寺院の檀家になることを強制した「寺請制度」の名残です。その影響で亡くなった後はその寺院のお墓に埋葬されるという習慣が根付き、寺請制度がなくなった現在でも寺院の檀家制度が継続されてきました。
それが近年、檀家を離れ、遺骨の行き先を自由に選ぶようになってきています。
しかし、自由に選べるようになったといっても、好き勝手に行き先を決めてよいというわけではありません。行き先には制約があり、決められた手続きが必要です。
遺骨の行き先については、法律で決まりがあります。
墓地、埋葬等に関する法律の第4条に「埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域にこれを行ってはならない」と定められています。
さらに、刑法の第190条に「死体、遺骨、遺髪または棺に納めてあるものを損壊し、遺棄し、または領得した者は3年以下の懲役に処する」という、死体遺棄罪や死体損壊罪があります。
つまり、遺骨に手を加えたり、自宅の庭などに埋めたりすることは法律に触れる行為です。
これらの法律を守るために、行政手続きを行う必要があります。トラブルを起こさぬよう、正しい手順で手続きをし、遺骨をどうしたらよいかを考えましょう。
遺骨の主な行先
「法律」「刑法」と聞くと怖いイメージを感じるかもしれませんが、手続きをきちんと踏めば問題ありません。
手続きは、遺骨の行き先によって異なります。遺骨の行き先として主に選ばれているのは4種類です。
- 寺院や公営墓地などのお墓
- 永代供養墓、納骨堂
- 散骨
- 手元供養
それぞれの内容を簡単に説明しましょう。
スタンダードな方法であるお墓への納骨ですが、既にお墓を持っている人はそのお墓に納骨します。お墓を持っていない人は、寺院の檀家になる必要があります。
寺院によって手厚い法要や供養をお任せできますが、お墓の建設費や法要のお布施などの費用がかかります。公営や民営の墓地に遺骨を納める場合には、法要時のお布施の他に管理料(使用料)などがかかりますが、寺院よりは安価です。
お墓に納骨の場合の注意点は、お墓の継承問題です。自分が亡き後に、子どもや孫、親戚がお墓の管理を継承できるかどうかが大事なポイントになります。
もし管理ができなくなると、お墓は荒れ果て「無縁仏」となってしまいます。
永代供養墓は「一代限りのお墓」といったもので、一定期間後は他の人の遺骨と一緒に合祀され永代に供養をしてもらえます。
納骨堂は、仏壇式やロッカー式、棚式といった形式が一般的で遺骨を個別に安置しています。
お墓と違い、契約料以外の費用を払う必要がないので、墓じまいした後の遺骨の行き先として人気です。
「自然が好きで海や山に深い思い入れがある」「宗教にとらわれたくない」「お墓の継承者がいない」または「お墓の管理の負担をかけさせたくない」といった理由で散骨を希望する人が増えています。
しかし、全ての遺骨を散骨すると手元に何も残らず、心の拠り所を失う人もいるでしょう。そのため、一部の遺骨を手元に残して置くこと(分骨)もできます。
全ての遺骨を自宅で保管する方法もありますが、遺骨を分けて一部は手元供養、残りは別の行き先で供養する方法も選べます。散骨を希望する場合、手元供養と併用することで心の拠り所を残すことができますね。
ここまでの説明で「散骨や自宅供養は法律に違反しているのでは?」と思う人もいるのではないでしょうか?
実は、墓地、埋葬等に関する法律は、火葬や埋葬に関する決まりがあるだけで、散骨や手元供養については触れられていません。
また、散骨については1991年に法務省が「葬送のための祭祀として節度を持って行われる限り、遺棄罪には当たらない」と非公式のコメントを発表しています。そのため、散骨や手元供養は違法とも合法とも言えないのです。
ただし、散骨については自治体によって、観光地のイメージを守るために条例を設けて規制しているところがあります。また、遺骨を撒いているところを見て不快に思う一般の人もいることから、トラブルに発展しないよう配慮する必要があります。
亡くなってから埋葬するまでの手続き
遺骨の行き先は、多様にあることが分かりましたね。それでは、遺骨を思い通りの場所に納めるため、具体的にどのような手続きが必要なのでしょうか?
ここからは、亡くなってから埋葬するまでの基本的な流れについて説明していきます。悲しみの中にいても、すぐに手続きしなくてはいけないことがありますので、あらかじめ知っておきましょう。
人が亡くなった後、まず「死亡届」を役所に提出しなくてはいけません。死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出することになっています。
用紙は各自治体で用意されている他、自治体のホームページからダウンロードすることもできます。そして、この書類がないと火葬や埋葬ができないので、急いで提出しましょう。
死亡届とセットで提出するのが「死亡診断書」です。この書類は医師が記入するもので、病院で亡くなった場合はその病院で発行してもらえます。
自宅や事故で亡くなるなど医師が死亡を見届けていない場合は、「死亡診断書」の代わりに「死体検案書」が発行されます。行政手続き上は死亡診断書と同じ効果がありますが、発行に時間がかかることがあります。
死亡届(死亡診断書)が受理されると、「火葬(埋葬)許可証」が発行されます。この許可証がないと火葬ができませんので、紛失しないよう注意しましょう。
また、許可証の発行と同じタイミングで火葬場の申請を行う自治体があります。慌てないためにも死亡届の提出時に、火葬について確認しておくとよいでしょう。
火葬許可証を受け取ったら、火葬場に許可証を提出し遺体を火葬してもらいます。
納骨と散骨など、併用した供養をすることが決まっている場合には、火葬場で「分骨証明書」の発行してもらいましょう。
手元供養の場合には分骨証明書は必要ありませんが、いずれ手元供養の遺骨を別の行き先で供養するときに必要となります。念のため受け取り、大切に保管しましょう。
火葬後、火葬したことを証明した「火葬許可証」が返却されます。これが「埋葬許可証」となり、あらかじめ契約しておいた墓所などに提出して埋葬をします。
埋葬許可証があってはじめて、お墓に納骨をしたり散骨をしたりすることができます。火葬から納骨や散骨までに時間があく場合には、紛失しないように気を付けましょう。
墓じまいの場合の手続き
既にお墓に埋葬されている遺骨を取り出して墓じまいをする場合は、亡くなったときとは違う流れになります。勝手に遺骨を取り出すことは法に触れますので、墓じまいに合わせた手続きが必要です。
では、墓じまいの場合の手続きはどうしたらよいのでしょうか?
ここからは、墓じまいの手続きの流れについて、簡単に説明します。いずれ墓じまいを考えることがあるときのために、知っておいてください。
まずは、遺骨の新たな行き先を決めます。情報を集めるだけでなく、故人や家族の意向や親族と相談しながら、時間をかけて決めることが大切です。
そして、既存のお墓がある寺院や墓所から墓じまいの了承を得て、新たな行き先となる墓所などと契約します。契約後、新たな行き先から「受入証明書」または「墓所使用承諾書」が交付されます。
既存のお墓がある自治体で「改葬許可申請書」と「埋葬証明書」を入手し、必要事項を記入ます。これらの書類は、自治体によって1枚にまとまっている場合があります。
また、インターネットからダウンロードできる自治体もあります。墓じまいを検討しはじめたら、先に確認しておくと、その自治体での手続きの流れがつかめてよいでしょう。
既存のお墓の管理者に、墓じまいをすることを伝えて了承を得ます。特に既存のお墓が寺院の場合は、「墓じまい=離檀」となります。
今までお墓の管理や供養をしてくださったことへの感謝の気持ちを伝え、墓じまいをする経緯を丁寧に説明しましょう。了承を得たら、現在遺骨が埋葬されていることを証明するため「埋葬証明書」に署名と捺印をお願いしましょう。
記入を終えた「改葬許可申請書」と「埋葬証明書」、「受入証明書」または「墓地使用承諾書」を自治体に提出します。記入内容などに不備がなければ「改葬許可証」が発行されます。
改葬許可証があってはじめて遺骨の引っ越しが可能になります。そして、遺骨の新しい行き先で必要になるため、大切に保管してください。
以上の手続きが終わると遺骨を新しい行き先に移すことが可能になります。
まず、既存のお墓の閉眼供養を行います。その後、遺骨を取り出しお墓を撤去します。そして、新たな墓所などに改葬許可証を提出して納骨します。
長く地中に安置されていた遺骨には、カビが発生したり溶解したりすることがあり、遺骨の洗浄などのメンテナンスが必要になることがありますので、ご注意ください。
散骨する場合
ここからは、新たな遺骨の行き先が「散骨」の場合について説明します。散骨のメリットは先述のとおりで、自然に還ることができる他、経済面や管理面での負担減が期待できることです。
しかし、散骨後に遺骨を回収することは物理的にできなくなります。遺骨が手元からなくなることで、残された遺族の心の拠り所がなくなり、喪失感にかられることもありえます。
「分骨」をして遺骨の一部を手元に残すなどの方法も検討し、後悔しない散骨ができるようにしましょう。
散骨の流れ
散骨の流れは、先述の供養方法とほぼ同じです。しかし、今はまだ散骨に関する法令が整っていないため、散骨までの流れや必要書類は業者によって微妙に変わることがあります。
そして、法令が整っていないからこそ、散骨までの流れがしっかりしている業者を選ぶことが大事な基準になります。業者に問い合わせる際に流れや書類について、しっかり確認しましょう。
まず、散骨を依頼する業者を選び契約します。費用もそうですが、以下のサービス内容がついているかどうかも確認しておくと安心です。
- 希望する散骨場所に散骨できるのか?
- 散骨までのセレモニーはあるのか?ないのか?
- 海洋散骨の場合、保険や天候不順時の対応はあるのか?
まだ新しい供養方法のため、サービス内容にばらつきがあり、散骨の実績数や周囲への配慮があるかが選択のポイントになります。トラブルを回避するためにも、契約前に複数の業者から見積もりを取って比較するようにしましょう!
散骨をするために必要になるのが、遺骨を細かくする「粉骨」の作業です。遺骨と分からないよう直径2~3mmのパウダー状にすることが散骨のマナーになっています。
まず、粉骨前に遺骨を洗浄します。その後、遺骨を機械または人の手で細かくして乾燥します。
粉骨は自力でも可能ですが、遺骨の全てを細かくするには時間も労力も膨大になるため、業者に依頼することをおすすめします。業者任せにすることに対して気が引ける人は、粉骨作業の立ちあい可能な業者がありますので、そこを利用するとよいでしょう。
火葬や墓じまい後に遺骨を取り出し、洗浄や粉骨が済んだ後、いよいよ散骨となります。
散骨の中でとても人気なのが海洋散骨です。海を愛する人の要望の他、費用面や周囲の人に迷惑がかからない場所として選ばれています。
最近は、墓地が保有する野山への散骨の他、遺骨を入れたカプセルを宇宙空間に打ち上げて散骨する「宇宙葬」も登場していて、夢がたくさん詰まった供養ができます。
手元供養の方法
手元供養は、故人をより身近に感じられる供養方法です。散骨と併用される他、いつでも供養ができ管理費もかからないことから、根強い人気があります。
さらに最近では、オシャレな手元供養のグッズが増えており、バリエーションも豊富です。様々な形で手元供養をすることができるようになりました。
注意点として挙げられるのが遺骨の管理です。災害時に管理が難しい、骨壺などを安置する場所の環境によってカビが発生して不衛生になるといったことがあります。定期的に遺骨をメンテナンスしたり、普段から安置する場所や湿度には気を付けたりしながら管理するようにしましょう。
ここからは、手元供養の方法について具体的にみていきましょう。
まずは、遺骨を骨壺に入れて供養する方法です。
火葬後または既存のお墓から遺骨を取り出した後、遺骨の形が残った状態でも供養できますが、粉骨をして骨壺に納めれば、よりコンパクトな骨壺で供養することができます。
最近の骨壺のデザインは驚くほど豊富で、部屋の雰囲気になじみインテリアの邪魔にならないものなどが用意されています。インターネットなどで色々と調べてみてください。
次は、小さな遺骨または粉骨をした遺骨をアクセサリーに納めて供養する方法です。
- ペンダント
- 指輪
- キーホルダータイプ など
形状は様々で、中身が遺骨であると気づかれないほど自然でオシャレなアクセサリーになっています。
アクセサリーの材質や宝石の有無、デザインなどによって価格は大きな幅があります。毎日身に着けるものになるでしょうから、納得のいくアクセサリーの形を見つけてください。
これまでご紹介した2つの方法は、遺骨を何かに納める方法でしたが、遺骨そのものを加工して別のグッズにして供養する方法もあります。
- 遺骨をプレート状に加工し、名前や写真を印字し額に入れて飾る「遺骨のプレート」
- 遺骨を特殊な物質と混ぜて「美しい宝石」を精製する方法
こちらは遺骨を納めるアクセサリーとは異なり、遺骨自体が人工宝石になっています。加工することで、よりインテリアやファッションになじみやすくなるだけなく、衛生的に保管することが可能になりますね。
まとめ
遺骨の行き先をどこにするのか納得した答えを得るには、事前の下調べや準備がとても大切になります。そして、遺族や周囲の人への配慮も大切です。
時間がかかったとしても、手を抜かずにしっかり向き合って決めるようにしましょう。その先に、満足のいく供養が待っています!
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |