終活と聞くと「不用品の処分」などを思い浮かべる人も少なくないでしょう。

終活は物の片付けのみならず、老後の資金や自分にもしものことがあった時の備えなどについても考えなければなりません。既に生命保険や損害保険に入っている人は、その内容が現在の自分に適しているか確認しましょう。

保険に加入していない人は「終活保険」や「葬儀保険」と言われる保険に入ることで葬儀費用に充てることができますので、検討するのもよいでしょう。

終活で保険を見直してみましょう

終活するほとんどの人が、相続や生活資金について考えます。特に定年退職後の人は、今後の生活資金として備えがどれくらい必要かなどを心配する人が多いようです。

まずは、現在加入している保険がある人は、内容が現在の状況にあっているかなどの見直しをおすすめします。

加入されていない人は、今後の病気やケガ、介護にかかる費用や、葬儀費用を備える意味で、無理なく支払うことができる保険の加入を検討するとよいでしょう。

一般的な葬儀では、100万円以上かかることも少なくありません。保険の見直しや加入をすることで、家族や親族の負担を軽減できることがあるのです。

加入している保険はどんな保険?

加入している保険はどんな保険?
保険の見直しは具体的に何をチェックしたらよいでしょうか?

まずは、今加入している保険について把握しましょう。保険は、次の3種類に分けられます。

保険の種類
1.生命保険

終身保険、個人年金保険、定期保険、養老保険、学資保険など

2.損害保険

火災保険、自動車保険、地震保険、個人賠償責任保険、旅行保険など

3.上記のどちらでもない保険

医療保険、がん保険、民間介護保険、所得保障(就業不能)保険など

定年退職した人であれば、「所得保障(就業不能)保険」は不要になります。このように、現在の自分に不要な保険は削っていきます。

加入している保険の見直しと同時に、万が一の時のために、家族に保険の種類や保険会社などを知らせておきましょう。

家族に共有しておくべき保険の内容
  • 保険の種類、契約形態、特約の内容
  • 保険証券の保管場所
  • 保険会社名
  • 保険料の支払い。金額、支払い期間(死亡後の支払いが必要か)
  • 保険金の受取人
  • 指定代理請求人

終身保険とは?

終身保険とは、生涯保障が続く保険で、死亡または高度障害を負った時に支払われます。毎月の保険料は加入した時から変わることがなく、払い込み満了=支払い期間を選ぶことができます。

支払い期間について
支払い期間を長く設定

月々支払う保険料が安く済む

支払い期間を短く設定

月々支払う保険料が高いが、総払い込み保険料はおさえられる

早めに支払いを終えることで、その分、資金運用期間が長くなり利息を増やすことができる利点があります。

それでは、終身保険のメリットとデメリットはどのようなものでしょうか?

終身保険のメリット

一生涯の保障なので、解約しない限り必ず保険金が支払われることです。保険を解約したり減額したりする場合は、解約返戻金が支払われるので、緊急時の病気や介護、老後の資金にすることができます。

終身保険のデメリット

掛け捨ての保険と比較すると毎月支払う保険料が高いという点です。また、保障の範囲が限られているので、必要に応じて他の定期保険への加入や定期保険特約などに加入し、範囲を広げる必要があります。

損害保険とは?

損害保険とは、自然災害や交通事故、火災など、生活していく際に生じた経済的な損害、損失を補償する保険です。

主な損害保険の種類は次の4つです。

損害保険の種類
1.自動車保険

法律で加入が義務付けされている「自賠責保険」と自賠責保険では対象外部分の補償を補う「任意保険」があります。自賠責保険が相手側の身体に関する補償のみで範囲や金額が限られているのに対し、任意保険は相手側の身体、車や物、自分や同乗者への補償自分の車に対しても補償が可能です。

2.火災保険

火災、落雷、風災、水害、水漏れによる建物や家財の損害に備える保険です。家財は保険の対象にしないことも可能です。

3.地震保険

火災保険では対象外の、地震、津波、噴火による損害に備える保険です。単独加入ができないので火災保険にプラスして加入することになります。

4.個人賠償責任保険

自転車事故、ペットが第三者を傷つけた、故意ではなくお店の物を壊してしまったなど、日常生活の中で起こり得る、第三者に対する法律上の損害賠償義務に対して備える保険です。現在、自転車事故に対する保険は法律で加入が義務付けられています。

加入者が増えている終活保険(葬儀保険)とは?

加入者が増えている終活保険(葬儀保険)とは?
終活保険(葬儀保険)とは、葬儀費用を保険で補うことを目的とし、保険料が比較的安く、また保険期間が1~2年の少額短期保険です。

自分に万が一のことがあった場合、葬儀をはじめとした供養のことで家族や親族に迷惑をかけたくない、そのくらいは自分で用意しておきたいと考える人におすすめです。

終活保険(葬儀保険)のメリットとデメリットは、次のとおりです。

メリット
  • 終活保険(葬儀保険)は79歳まで加入できる場合が多く、契約を更新すると満100歳まで延長できる会社がある。
  • 多くが医師の診断審査不要である。
  • 受け取り人を予め指定することができる。配偶者や子どもなどの血縁関係者のほか、友人や知人などを指定できるものがあります。
  • 保険の請求をすると申請した日から翌営業日には保険金を受け取ることができる。葬儀費用のほか、お布施なども保険金から支払うことが可能です。
デメリット
  • 短期の保険期間のため、保障を延長契約する際は、年齢に応じて保険料が上がる。
  • 少額短期保険は、保険料控除の対象ではない。
  • 少額短期保険は保険契約者保護機構の対象外のため、もし保険会社が破綻した場合、保険が継続されない。

この終活保険(葬儀保険)は、信用のおける保険会社と契約を結ぶことをおすすめします。

また、支払いがされない免責自由(保険金目的の故意の事故や故意による申告書類への虚偽の記入など)が色々あるので、約款を必ず読み、不明点がないようにしましょう。

葬儀社の互助会との違い

葬儀費用ならば、葬儀会社の互助会もあるけれど、終活保険(葬儀保険)と何が違うのでしょうか?

大きな違いは以下の6つです。

①終活保険は掛け捨て ⇔ 互助会は満期まで積み立て
②終活保険はどこの葬儀社でも利用可能 ⇔ 互助会は積み立てた葬儀社のみでの利用
③終活保険は保険金での受け取り ⇔ 互助会は葬儀などのサービスを提供
④終活保険は葬儀費用以外の使用が可能 ⇔ 互助会は葬儀社でのサービスのみ
⑤終活保険の途中解約は事務手続きのみ ⇔ 互助会は解約料が差し引かれる
⑥終活保険は内閣府金融庁が管轄 ⇔ 互助会は経済産業省が管轄

保険金の受取方

保険金の受取方
実際に保険金を受け取る流れと必要な手続きをご紹介します。

生命保険の場合
  1. 保険金の請求(一般的に請求権は3年以内)
  2. 生命保険会社へ連絡(主に電話)し、保険証番号、死亡した人の氏名、死亡日時、死因を伝え、「死亡保険金支払請求書」を送ってもらう
  3. 必要書類を添付し、死亡保険金支払請求書を提出
  4. 通常1週間で保険金が振り込まれる
必要書類
  • 保険証券
  • 死亡診断書
  • 死亡した人の住民票
  • 受取人の戸籍謄本(抄本)
  • 受取人の印鑑証明
  • 振込口座番号
  • 受取人の番号(事故死や自殺の場合は別途書類が必要)
    ※保険会社によって異なる場合があります。
損害保険の場合
  1. 事故や災害の連絡
  2. 保険会社より、事故や災害受付の案内及び保険金請求に必要な書類の案内を送付または電話にて案内
  3. 修理の手配(修理業者の手配がつかない場合は保険会社に相談)
  4. 保険会社より電話または書面にて修理状況の経過、事故状況、損害程度の確認
  5. 保険金請求に必要な書類の提出(送付)
  6. 通常一週間程度で、支払い内容について説明があり、支払いが行われる
必要書類

事故や災害状況の写真、修理外車の見積もりなど必要になる場合があるので用意しておきましょう。また、生命保険同様に保険証番号=保険証券などが必要です。

終活で考える保険と相続

終活で考える保険と相続
終活していくうえで、相続について配偶者や家族と相談する人も少なくありません。

ある程度まとまった金額の預金や土地を含む持ち家などがある人も、相続税がどのくらいになるのか気になるでしょう。また、2015年に相続税の法改正が行われ、基礎控除額が減り、相続税の課税対象者が増えているという調査結果があります。

これらを踏まえたうえで、生命保険を相続税対策の一つとしておすすめします。

生命保険の死亡保険金には、非課税枠が設けてあります。「500万円×法定相続人数」で計算し、非課税枠の範囲内であれば相続財産に加算されません。

ただし、契約形態によっては非課税枠がないものもありますので、保険会社に確認しましょう。

保険に入る前に家族に相談しましょう

ここまで、各種の保険の見直しや、終活保険(葬儀保険)についてお伝えしてきました。

すぐに、プランの変更や終活保険(葬儀保険)、損害保険に加入しようと思った人もいるかと思いますが、年金を受け取る世代の人でしたら、自分だけで決めたり、同じ世代の配偶者と二人で決めることはやめておきましょう。

特に受取人を子どもや他の親族にと考えている場合は、「相続権のある家族」または「受取人として指定する予定の人」も交えて話し合うことをおすすめします。

保険や保険金は、親子や親族で生じる相続のトラブルが生じる可能性があります。そのため、保険について明確にすることで、少しでも争いを避けることができるからです。

なお、どの会社のどの保険がよいか分からない場合は、フィナンシャルプランナーや税制にも詳しいAFPなどのプロに保険の見直しの相談をするとよいでしょう。

まとめ

1.終活の一環として自分が現在加入している保険を把握する
2.高齢になってからは、葬儀(終活)保険がおすすめ
3.保険は相続税対策になる
4.新しく加入する時やプランの変更を行う時は、家族やプロに相談する

終活では、物の整理のほか、加入している保険を正しく把握することが大切です。もし、数年間見直しをしていない場合は、現在の生活には合っていないもの(払い過ぎや足りないなど)があるかもしれません。

長い老後を穏やかに暮らすためにも、自分にもしものことがあった時に家族や親族に迷惑をかけないためにも、終活保険(葬儀保険)への加入を視野に入れ、検討することをおすすめします。

また、検討する際は配偶者をはじめとした家族や親族、またはプロの手を借りて無駄のない保険を選びましょう。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。