今、自分の最期をどのように迎えるかを考える「終活」に関心が集まっています。

日本人の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳と言われています。一方、健康寿命は男性72歳、女性74歳で、平均寿命との差は10年ほどです。

このような背景もあり、元気なうちから「終活」を始める人が増加しています。終活にはさまざまな活動がありますが、何をするかによって費用が大きく変わってきます。

今回は、終活で行う内容と、それにかかる費用相場をご紹介します。

終活とは?

終活に関心が集まる背景には、以下のような社会の変化があげられます。

  • 超少子高齢化
  • 認知症高齢者の増加
  • お葬式やお墓の多様化
  • 遺産相続トラブルの増加

急な病気やケガ、認知症などになった場合に、終末期医療や延命治療の意向を自分で伝えることができなくなったらどうするか、考えておく必要があります。

また、自分が亡くなった後の葬儀やお墓、遺産や相続などを生前に決めておけば、残されたご家族の精神的負担、経済的負担の軽減につながります。

終活は、残りの人生を自分らしく有意義に過ごすための準備であり、残されたご家族への思いやりでもあるのです。

終活では何を行うのか?

終活では何を行うのか?
終活で考える内容は大きく分けて2つあります。

①残りの人生のための準備について
  • 残りの人生をよりよく過ごすために、暮らしを見つめ直す
  • 終末期の医療・介護に備える

残りの人生で何をやりたいか、やり残したことがないかを考えてみます。身の回りの不要なものを処分し、身軽にしておくことも大切です。

また、終末期の医療や介護費用は、何より備えておきたいことの一つです。

②亡くなった後のための準備について
  • 葬儀やお墓の準備
  • 遺産や相続の準備
  • 遺品の処分方法を決めておく など

亡くなった後のことは、できる限り決めておき、費用も用意しておきましょう。残されたご家族の大きな負担軽減になります。

以下に、一般的に終活で行うことの例をご紹介します。

  • エンディングノートの作成
  • 不要品の整理
  • 財産の整理
  • 遺言書の作成
  • 葬儀やお墓の準備
  • ペットの行き先を決めておく
  • デジタル遺産・遺品の整理

終活にはいくらかかる?費用の相場は?

終活にはいくらかかる?費用の相場は?
終活の予算には600万円程を用意しておくとよいと言われています。

大まかな項目別に見ると、以下のようになります。

  • 葬儀やお墓・・・400万円
  • 医療・介護関係・・・100万円
  • 遺品整理や相続関係・・・20万円~25万円

終活では、人によって準備すべきものが変わります。ご自身には何が必要で、どのくらいの費用を準備すべきなのか試算しておきましょう。

足りないと感じたら、すぐに費用の工面を考えられるのが、終活を行うメリットの一つです。また、終活を行っていくと、さまざまな疑問や自分だけでは解決できない問題も出てくるでしょう。

一人で解決できない終活の内容例は以下になります。

  • 遺産を少しでも家族に多く残すための資産運用について
  • 医療・介護費を確保するための不動産の現金化について
  • 家族が相続でもめないように分配する方法について

今回は専門家に相談した場合の費用についても紹介していくので、ぜひ参考にしてください。

生前整理にかかる費用

生前整理にかかる費用
生前整理の対象は、家財などの身の回りのものだけではなく、お金、保険、土地、家、場合によっては仏壇や位牌、お墓なども含まれます。非常に多岐にわたるので、元気なうちに生前整理をすることがポイントです。

生前整理でしておくこと
  • 不要品の処分
  • 財産の整理や財産目録の作成
  • デジタル情報の整理と一覧作成

もっとも労力を要するのが不要品の処分です。ご自身で不要品の処理を行う場合、大きな家財の処分は有料になりますが、ほとんどは無料で処分できます。

一方、作業のすべて、または一部を業者に依頼する方法もあります。費用は、住まいの間取りや家財の量・内容などによって変わってきます。

業者に依頼する場合の料金相場
  • 1K~1LDK・・・4万円~10万円程度
  • 2DK~3LDK・・・10~20万円程度

最近は終活ブームの増加で、悪徳業者によるトラブルが増えています。見積もりや納品書を取り寄せ、内容をよく確認するなどしてください。

医療・介護に必要な費用

医療・介護に必要な費用
医療・介護のために備えておきたい費用は、100万円程と言われています。状況に応じて費用は大きく変わるので、保険などで柔軟に対応できるようにしておくと安心です。

1.医療費

入院・手術費の他に、検査、薬、通院費などもあります。保険適用なら「高額療養費制度」で自己負担額は一定金額ですが、緩和ケア病棟など保険適用外で高額な費用になるものがあります。

2.介護費

施設利用と自宅介護で費用は変わります。

施設利用費

介護度、利用日数・時間などによって数百円~数万円と金額は大きく変わります。

  • 保険適用施設:10~20万円程
  • 保険適用外施設:20~30万円程 (ともに月平均)
自宅介護費

自宅介護用の備品準備やバリアフリー工事が必要になる場合があります。

  • 車椅子:自走式4~10万円、電動式30~50万円
  • 介護ベッド:15~50万円
  • 手すりの取り付け:1つ1万円、など

また、病気やケガ、認知症など、ご自身で判断や意思表示ができなくなる場合に備え、意思表示の仕方を検討しておきましょう。

主な意思表示方法
  • 事前にご家族に伝えておく
  • エンディングノートなどに記しておく
  • 成年後見制度を利用する

葬儀やお墓の準備にかかる費用

葬儀やお墓については、一般的に400万円程が必要と言われています。家族に費用の負担をかけないよう、生前にご自身で用意したいと考えている人が多いようです。

終活をきっかけに、葬儀やお墓について、どのような形式を望むか、ご家族はどのように考えているかなどを話し合うことをおすすめします。

それでは、葬儀とお墓のそれぞれの種類や相場について、説明しましょう。

葬儀の準備費用

葬儀の準備費用
一般的な葬儀において必要な費用は200万円程と言われています。

葬儀代の内訳
  • 葬式代 120万円程
  • 葬儀の飲食費 30万円程
  • 葬儀の返礼品費 30万円程

少しでも安価にすませたいという場合は、通夜・告別式を行わない、家族のみで執り行う「家族葬」などの方法もあります。しかし、式を行わない場合でも、火葬や納骨に20万円前後は必要です。

死亡保険などに加入している場合は、保険内容や保険金額を確認しましょう。今は、数千円の保険料から掛けられる葬儀保険がありますので、それを検討するのもよいでしょう。

その他、「遺影」をご自身で準備する人が増えています。ヘアメイク付きの遺影撮影プランなど内容もさまざまで、相場は2万円前後です。

お墓の費用

お墓の費用
終活として、生前に準備する人が増えているのが「お墓」です。事前に準備しておくことで、次のようなメリットがあります。

  • 自分の希望のお墓にできる
  • 家族の精神的、経済的負担を軽減できる

費用は、お墓の形態によってかなり幅があります。

お墓の相場
  • 一般墓・・・140~200万円程
  • 納骨堂・・・50~150万円程
  • 樹木葬・・・30~100万円程

その他、墓地・霊園の管理費も必要です。

墓地・霊園の管理費の相場
  • 公営霊園・・・4000円~1万円
  • 民間霊園・・・5000円~1万4000円
  • 寺院墓地・・・1万円前後

お墓選びでは、これから管理を担うご家族の負担にならないことが大事なポイントになります。ご家族と話し合いながら、納得のいくお墓を選びましょう。

遺産整理や相続の準備にかかる費用

遺産整理や相続の準備にかかる費用
遺産相続は、相続人が被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に手続きをする必要があります。スムーズに相続を行うために、終活で遺産の分割方法を決めておくことをおすすめします。

では、どのような準備が必要なのでしょうか。終活による遺産相続準備の流れをみていきましょう。

保有する金融資産の一覧化

預貯金口座、株式などの資産をリストアップしておきましょう。

分割できない資産の相続方法の検討

不動産や自動車など、分割できない資産がある場合、誰がどのように相続するのか検討しておくとよいでしょう。

相続税の準備

一定額以上の遺産相続には相続税がかかります。遺産が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の人数×600万円)を超える場合は納税義務が発生します。相続税と金融資産を確認しておきましょう。

遺言書作成にかかる費用

遺言書は、次の3種類があります。

1.自筆証明遺言書

自分で自筆によって書く遺言書。費用はほぼかかりません。

2.公正証書遺言

弁護士などの専門家が作成する遺言書です。遺産の金額に応じて作成費用が変わります。

3.秘密証明遺言

内容は自分で作成し、証人2人以上に本人のものであると証明してもらう遺言書です。手数料などで数万円が必要になります。

遺言書の書き方にはルールがあり、不備があると無効になる場合があるので注意が必要です。確実に法的有効な遺言書を作成したい場合は、専門家が作成する「公正証書遺言」を作成することをおすすめします。

遺言書作成を依頼した場合の費用
  • 弁護士・・・10~30万円
  • 司法書士・・・7~15万円
  • 行政書士・・・5~7万円

自宅保管して紛失した、死後家族に見つけてもらえない、といったことがないよう遺言書の保管方法も、しっかり検討しましょう。

終活費用を準備する方法

終活費用を準備する方法
終活には、それなりにまとまった金額が必要になることがわかりましたね。では、どのように費用を準備したらよいのでしょうか。

預貯金の整理

使っていない口座がある場合は、一つにまとめるなど整理しておきましょう。

生命・損害保険の見直し

終活を機に、保険の内容を見直しましょう。これから必要な費用が保障されているか確認することが目的です。保障を手厚くしたい場合は、「葬儀保険」を追加するのもよいでしょう。

不動産・有価証券の整理

不動産は相続時に分配が難しくトラブルになりやすいものです。有価証券も相続する頃には資産価値が減っている場合もあるので、終活で整理しましょう。

不要な自家用車、時計や貴金属なども、できるだけ生前に売却して現金にしておくのも一つの方法です。

終活に関する相談をしたいときは?

終活に関する相談をしたいときは?
終活に関してわからないことがある場合、さまざまな相談先があります。

  • 弁護士
  • 行政書士
  • 葬儀社
  • 遺品整理などの専門業者
  • 終活カウンセラー

相続、遺言、保険などは手続きを間違えると希望通りにならないことがあるので、弁護士などの専門家に相談するのがベストです。

一方、終活は何から始めたらよいかわからない、誰にどのように相談したらよいのかわからない人は「終活カウンセラー」に相談するのもよいでしょう。終活に関する幅広い知識で、悩みや状況に応じて、個々に合わせたアドバイスや情報提供をしてくれます。必要に応じて専門家を紹介してくれる場合もあります。

また、最近は終活イベントや終活セミナーも多数開催されています。葬儀社などのライフエンディング関連企業の主催が多く、費用は無料または低料金で参加できるところがほとんどです。

まとめ

1.終活とは、残りの人生を有意義に過ごすための準備であり、ご家族の負担を軽減するための思いやりでもある
2.終活に必要な費用は600万円程。特に葬儀やお墓、医療・介護でまとまった費用が必要になる
3.生前整理、遺産整理や相続の準備は自分でできることも多いが、必要に応じて専門家のサポートも活用しましょう
4.終活にはまとまった費用が必要。不動産・金融資産の整理、保険の見直しなどで準備する
5. 終活に関する相談は、士業や葬儀社などの専門業者、終活カウンセラーに相談する

終活にはある程度まとまった費用が必要になります。どのような費用がどのくらいかかりそうなのか把握し、少しずつ準備を進めていきましょう。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。