墓じまいをする際、これまでお世話になった寺院などへのお返し(御布施)はどうしたらいいか悩んでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか?
また、墓じまい自体初めてという方も多いでしょう。
墓じまいの際のお返し(御布施)について、具体的な金額や渡すタイミングなどをご紹介します。また、墓じまいの流れや、必要な書類、どのような費用が必要かなども合わせてお伝えしますので、墓じまいをお考えの方の参考にしていただければ幸いです。
墓じまいとは?
・お墓の承継者がいない
・お墓が遠方にありお参りに行くのが難しい
・お墓の維持費や管理費、御布施などの費用負担が困難になった
また、墓じまいをする際は、お墓に納骨されている遺骨や遺灰などを全て取り出し供養する流れをとります。供養の方法を、いくつか見ていきましょう。
- 他の寺院や公営または自己所有の土地の墓地に改葬する
- 寺院や霊園が永代にわたって供養、管理してくれる永代供養墓、永代供養塔に改葬する
- 納骨堂に改葬する(年間管理費を払い供養、管理をしてもらい、契約期間が過ぎると合同墓に合祀される施設がある)
- 散骨する(海洋、陸地、宇宙、空、海外などへ散布。専門業者がある)
- 手元供養(散骨の際、分骨し遺骨の一部を手元供養する人もいる)
墓じまい後の遺骨の管理についての考え方は人によって違います。相談できる家族や親族と、最適な方法を話し合うことをおすすめします。
墓じまいをする場合、後に記載している閉眼供養が終わったら挨拶状を出しましょう。遠い親族や親族でなくても親しいお付き合いがある方、埋葬されている方の縁者に向けて、次の内容をハガキなどでお知らせします。
- 墓じまいをした場所と時期
- 新墓所(納骨堂)または供養方法
- 墓じまいをした理由
墓じまいの流れ
墓じまいを行うことを決めても、初めてのことで分からないことばかりと感じる方も多いでしょう。ここでは、実際に墓じまいとはどのような流れで行うのかお伝えします。
事前に流れを知っておけば必要な物事に備えることができるので、準備がしやすくなりますね。
- 親族間で話し合う
- お墓の中の確認(遺骨が何体か、大きさ、経過年数、誰の遺骨か、土葬はあるかなど)
- 墓じまい後の遺骨の移転先または供養方法を決める(契約する)
- 寺院など現在の墓地管理者に墓じまい、離檀したい旨を報告(相談)、埋葬証明書を発行してもらう
- 移転先などから受入証明書を発行してもらう
- お墓のある自治体に改葬許可申請書を提出、改葬許可証を発行してもらう(受入証明書、埋葬証明書が必要)
- 墓石の解体、撤去、墓地の整地を石材店に依頼(相談)し、墓地管理者と共に工事日程を決める
- 遺骨を取り出す(魂抜き(閉眼供養)を行う)
- 墓石を解体、墓地の整地を行い、更地にする
- 移転先に改葬許可証を提出し、開眼供養(魂入れ)を行う。または永代供養、散骨などを行う
墓じまいに必要な書類とは?
墓じまいの流れが分かったところで、ここでは墓じまいに必要な書類についてお伝えします。
現在の墓地に遺骨が埋葬されているという証明書で、寺院など墓地の管理者に署名捺印してもらいます。基本的には遺骨一体につき一通必要です。
自治体の様式によっては一枚に複数体の情報を記入できる場合があるので、事前に確認しておくとよいでしょう。300円~1,500円ほどの手数料が必要な場合があります。
寺院などの改葬先(納骨先)または散骨などを依頼した業者から発行してもらいます。遺骨の行先が確保できていることを第三者に証明するもので費用はかかりません。
手元供養する場合は、自治体に認めてもらえるか問い合わせるとよいでしょう。
埋葬証明書、受入証明書を発行してもらった後、改葬許可申請書に記入、改葬許可証を発行してもらいます。改葬許可申請書は、現在お墓がある自治体で用紙をもらい申請します。
改葬許可証は、改葬先の管理者に提出する書類ですので、無くさないようにしましょう。改葬許可申請書や改葬許可証の発行に1,000円程度手数料がかかることがあります。
墓じまいにかかる費用
墓じまいでは閉眼供養(魂抜き)や離檀の際、御布施という形で僧侶にお返しをするのが通常です。
また、遠方から僧侶に来ていただいた場合は御車代、供養後会食を行い僧侶が欠席した場合はご膳料を僧侶に渡しましょう。離檀する場合は殆どの場合が、離檀料(御布施)をこれまでお世話になった感謝の意味を込めて納めます。
御布施のほかに実際にかかる費用にはどのようなものがあるのでしょうか?
閉眼供養が終わったら石材店に墓石を解体、撤去、整地してもらいます。墓石の解体、撤去作業の費用のほか、その際に石材店に行ってもらう遺骨の取り出しに費用がかかります。
改葬で新たな墓地に移転する場合は墓石は廃棄しないので、運搬する運搬費が必要です。運搬代は、移動距離や墓石の重さによって異なります。
移転先では開眼供養(魂入れ)の御布施や、納骨を委託する際の納骨料が必要です。
永代供養を依頼した寺院や納骨堂に永代供養料、位牌も供養をお願いする場合は位牌の供養料が必要で、殆どの場合振込で支払いできます。
場所や散骨式に参加する人数によって金額の違いがあります。また、散骨式の費用とは別に遺骨をパウダー状に粉骨する費用が必要です。
墓じまいには様々な経費や手続きが必要ですので、墓じまいをしたいと思ったときから、周りの人と相談しながら計画的に話を進めましょう。
寺院や僧侶へのお返し(御布施)、御車代、御膳料はどのような袋で渡せばいいのでしょうか?
実際にどのような袋を使うとよいのか、また表書きや裏面の書き方などをご紹介します。
コンビニエンスストアや100円均一ショップなどで販売している、不祝儀袋や、表に御布施と書かれた袋で問題ありません。また、郵便番号が印刷されていない白無地の封筒でもいいでしょう。
白無地の封筒でお渡しするのが無難です。
※封筒の場合は、不幸が重なるといけないという意味で袋が二重になっているものは使用しないでください。
※地域や寺院によって異なる場合があるので、寺院がある地域に住んでいる親族や寺院の檀家代表のような方に尋ねておくとよいでしょう。
使用するペンは、一般的な黒いインクのペンまたは筆ペンで構いません。薄墨のペンや筆ペンはお悔やみの場合のみ使用するペンなので絶対に使わないようにしましょう。
御布施袋以外の袋や封筒を使用する場合は、中央上部に「御布施」(縦書き)と記載します。中央下部には「〇〇家」「〇〇〇〇(フルネーム)」など、渡す側の名前を記載しましょう。
一家全員なのか、個人なのかで書き方を使い分けてください。
御車代の場合は「御車代」、御膳料を包む場合は「御膳料」と書きます。
中袋がある場合は、中袋の裏の左下に名前、住所、電話番号などの連絡先を記載。また、表側中央には「金〇〇圓也」と漢数字で書きます。
中袋が無い封筒などの場合は、袋の裏側にこれらのことを記載します。
お金は、新札を使い、お札の表面が上向きになるように入れます。お香典など弔事の際は使用したお札を裏向きにというマナーがありますが、御布施は新札を使用するのがマナーです。
墓じまいで、殆どの方が「閉眼供養」を行います。
閉眼供養の際は可能な限り、喪服の着用(正装)で参列することをおすすめします。ただし、山の上の方にお墓があるなどお墓の場所が行きづらい場合は、控えめでいて動きやすい服装で参列するとよいでしょう。
閉眼供養を行うのは大変だと思う方もいるかもしれませんが、閉眼供養をしていないお墓の解体作業は行わないということが多いようです。ですので、閉眼供養はできる限り行いましょう。
墓石の解体(遺骨の取り出し)ですが、必ずしも閉眼供養と同日に行われるとは限りません。もし、お墓から遠方の地域に住んでいるなどで同日に行いたい場合は、寺院や石材店と事前によく話し合ってスケジュールを決めましょう。
体調不良や悪天候の可能性を考え、予備日を設けておくと安心です。
さて、墓じまいで実際に悩ましいのがお返し(御布施)の金額ではないでしょうか?
お返し(御布施)の金額は、地域によって異なりますが、1万円~5万円の間が相場です。寺院側からお返し(御布施)の金額は言いづらいので「どれくらい包まれる方が多いですか」など、事前に寺院に確認するとよいでしょう。
御車代は5千円~1万円、御膳料は5千円~2万円が一般的です。御膳料は会食の席を設けていたにも関わらず、僧侶が出席できなかった場合のみお渡しします。
御車代や御膳料の金額については、一般的な金額を参考に親族や家族と相談するとよいでしょう。
お返し(御布施)や御車代、御膳料の準備は整いました。後は供養を行っていただき、お返し(御布施)をお渡しするだけです。
まず、お返し(御布施)は袋のままお渡しせず、ましてや購入したときに封筒や御布施袋が入れてあったビニール袋を使用してはいけません。お返し(御布施)は、取り出し口を左にしたとき、表書きが上になるように袱紗(ふくさ)に包んでおきます。
僧侶の読経が終わりお帰りになるときに、袱紗から出して感謝の気持ちと共にお渡ししましょう。
袱紗には「金封袱紗」「台付き袱紗」「爪付き袱紗」があります。
金封袱紗は、袋状になっているのでそのまま御布施を入れて取り出すことができる便利な袱紗です。
台付き袱紗、爪付き袱紗は、畳んで包む必要があるほか、3万円以上お包みするときに使用します。
離檀とは
檀家は、利用していたお墓が建っている場所を寺院から土地を借りている場合が多く、離檀する場合はその土地を返却する手続きを行わなければなりません。
遺骨は遺体の一部と考えられているので、墓じまいする場合でも勝手に取り出して移動、散骨することは法律上できないので、必ず寺院への相談が必要です。
寺院の過去帳には、お墓の中の遺骨の数、故人の名前、命日、納骨日などが記されています。寺院にはこれらの情報を教えてもらったり、改葬許可申請書への署名捺印、また、埋蔵証明書を発行してもらったりしなければなりません。
長年お世話になった寺院とのトラブルを避けるためにも、早めに敬意をもって寺院に話をし墓じまいと離檀について、相談しましょう。
離檀を希望する中で、最も気になるのが離檀料ではないでしょうか?
ですので、3万円~20万円の間と考えておくとよいでしょう。ただし、寺院によっては受け取らないというところもあるようです。
離檀については寺院と納得できるまでよく話し合い、寺院の離檀料はどれくらいか敬意と感謝をもって尋ねてください。どうしても分からない場合は、檀家代表のような方や寺院と付き合いの長い石材店に相談するとよいでしょう。
現在使用している墓地が寺院の墓地ではなく霊園の場合、離檀料は必要ありません。ただし、撤去費や撤去する手続きの費用がかかることがあるので管理事務所に確認することをおすすめします。
離檀料の意味や、金額についてはだいたい理解いただけたと思います。次に知りたいのは「いつ渡せばいいのか?」ということではないでしょうか。
閉眼供養の際、供養のお礼(御布施)と共にお渡しする場合もあれば、墓石を撤去、解体して檀家として最後のお別れの際にお渡しする場合もあります。
寺院としてはどちらが受け取りやすいのか、離檀について話し合う際に確認することをおすすめします。
檀家は長い年月にわたって寺院にお世話になり、さらに墓じまいで多くの手続きや工事で手数をかけることになります。話し合いや相談もせず突然墓じまいを決め、いきなり檀家をやめてしまうのはトラブルの元です。
極端な話ですが、一方的に突然檀家をやめてしまったり、勝手に墓じまいをしたり、お返し(御布施)は気持ちだけでいいという僧侶の言葉に小銭しか袋に入れなかったりすると、高額な離檀料を請求されるなどというトラブルになりかねません。
こうしたトラブルが起こってしまうと、檀家側は行政書士などの専門家に相談したり、自治体に相談したり、宗派の本山に相談したりという対応をとることになり、あまり気持ちのよい離檀にはなりません。
どうして墓じまいを行うのか、寺院側に時間をかけて話をしましょう。
こちらの意思や希望を寺院側に理解してもらったうえで進行すればトラブルは避けられますし、離檀した後も仏様にお参りに行ったり、ご住職の顔を見に行ったりとよい関係が築けるはずです。
墓石の解体や墓地の整地にかかる費用
墓石の解体、撤去や墓地の整地に加え、遺骨の取り出しも石材店が行ってくれます。
石材店の相場ですが、墓石の解体、撤去や墓地の整地は、作業に必要な人数や機材(クレーン車が必要など)、お墓の形によって異なり、10万円~30万円くらいです。
改葬で、他の場所に墓石を運搬する場合の相場は、20万円~80万円と墓石の大きさや距離によりかなり違ってくるので、よく確認しましょう。
また、撤去、解体した墓石は産業廃棄物としての処理が必要です。見積りが安すぎる業者は産業廃棄物としてきちんと処理していない可能性があります。
墓じまいを行う際は、実績があり信頼できる石材店に依頼してください。石材店を自分で探す場合はもちろん、寺院や霊園から紹介された指定の石材店であっても、必ず見積りを取って、金額や内容を確認しましょう。
寺院などへのお返しや墓じまいについて親族間で話し合いましょう
墓じまいをするとなると、自分や家族だけの問題ではありません。お墓に埋葬されている故人の親族にも話をし、理解してもらう必要があります。先祖代々のお墓であればなおさらです。
話を進めていく中で大切なのは、決定事項として伝えるのではなく相談として伝えるということです。普段はお墓参りをしていない人でもいざ無くなるとなると、心の拠り所が無くなるような気がして寂しくなるものです。
自分の考えを正直に分かりやすく誠意をもって親族と相談しましょう。また、墓じまいと合わせて、埋葬されている遺骨の供養はどうするかを話し合うことも大切です。
供養に対する考え方も、人によって異なります。墓じまいを行いたいと思ったら、皆が納得できるように早い段階から話し合いましょう。
まとめ
墓じまいは決して一人で進められる話ではなく、また、一朝一夕に実施できるものではありません。長い間、墓地を管理してくれた寺院や霊園、これまでお参りに来られた縁者や親族に感謝の気持ちをお返ししながら話を進めていくことが大切です。
誠意をもって話を進めていたにも関わらずどうしても解決できないことがあれば、墓じまいについて実績のある業者や石材店に相談することをおすすめします。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |