遺骨をずっと家に置いておくにはどうする?
遺骨は必ず埋葬あるいは納骨しなければならないと思っていませんか?
実は、遺骨をずっと家に置いておくことができるのです。
埋葬や納骨することで自分からより離れてしまうような感覚に陥ったり、お墓が遠方でなかなか手を合わせに行けなかったり、遺骨が手元からなくなると寂しく感じる人は多いでしょう。手元に遺骨を保管することにより供養の幅が広がります。
法律や方法、注意点を把握して手元保管を検討しませんか?
遺骨をずっと家に置いておくために解消したい疑問2つ
遺骨をずっと家に置いておくことを検討すると、「法律に違反しない?」「安置していると体への影響はない?」など心配に思うことがあるでしょう。
関係する法律や、火葬後の遺骨の成分を知って、疑問を解決しましょう!
遺骨をずっと家に置いておくと違法?
この問いは、「墓地、埋葬に関する法律」と「刑法」が関係する法律です。この2つの法律について、詳しく解説しましょう。
墓埋法の骨子自体は土葬が行われていた公布時のままのため、実は現代の事情に即していません。
東京都保健福祉局はウェブページに、「自宅の仏壇に骨壷に入った焼骨を持っているのですが、墓地や納骨堂に預けなければいけないのでしょうか?」という問いがあり、「墓地、埋葬等に関する法律では、自宅での焼骨の保管については特に規定はありません」と回答されています。
遺骨を自宅で保管することの可否については、墓埋法に明記されていないのが現状です。
この刑法には遺骨の取り扱いに関する条文があります。第190条に「死体、遺骨、遺髪または棺に納めてあるものを損壊し、遺棄し、または領得した者は、三年以下の懲役に処する」とあり、遺骨をないがしろに扱うと罪に問われることが明記されています。
しかし、供養のための行為は社会的習俗としての宗教的感情を保護する目的で定められているので問題ありません。遺骨を手元で保管すること自体は、故人を思う供養のための行為なので、違法ではないということです。
なお、第189条では墳墓発掘罪が定められており、勝手にお墓から遺骨を取り出すと罪に問われると書かれています。埋葬済みの遺骨を自宅保管する際は、必ず許可を得てからにしましょう。
遺骨をずっと家に置いておくと人体に影響ある?
遺骨には、どのような成分が含まれているでしょうか?
身近に保管しておくことによって、体に影響がないか気になりますよね。埋葬前の焼骨だけでなく、お墓から取り出した遺骨まで、気になる遺骨の成分について詳しく解説します。
焼骨の成分は、「リン酸カルシウム」が主です。
火葬を行うと、遺骨はリン酸カルシウムに加え、さまざまな重金属を含んだ焼骨になります。焼骨は酸素と結びつくことで、長い年月をかけて自然へ還っていきます。
しかし、含まれている重金属の中には、人体に影響する物質があるかもしれません。
焼骨に含まれている重金属は、元々人体に必要な成分だったもの以外に、火葬炉で付着する金属があります。その金属に「六価クロム」が含まれている可能性があるのです。
必ずしも全ての焼骨に含まれているわけではありませんが、目視では判断できません。
なお、六価クロムは常温では気化しないので、遺骨の入った骨壺を家に置いておいても影響を受けることはほぼありません。
ずっと家に置いておきたい遺骨は、まだ納骨前ですか?
無菌状態の焼骨にカビが生えないよう注意し、骨壺を開けないようにしましょう。
そのまま保管することはおすすめできません。洗浄を行うことで、土や泥、カビやバクテリアを取り除いたきれいな状態で保管できます。また、しっかりと乾燥させ、カビを防ぎましょう。
遺骨をずっと家に置いておくために知りたいポイント3つ
遺骨をずっと家に置いておく際の、遺骨の取り扱い方法について考えましょう。
この章では、以下のポイント3つについて解説します。
- 遺骨をパウダー状にする「粉骨」について
- 遺骨の保管方法について
- 家に置いておく分を取り除いた残りの遺骨の扱いについて
ポイント1.遺骨を小さくするとずっと家に置いておきやすい
遺骨を家に置いておくことを考えると、コンパクトに保管したいですよね。
火葬後に焼骨を拾う量は地域や宗教によって異なり、一般的な骨壺の大きさで見ると関東では直径約21.5cm、関西は直径約6cmから約15.5cmです。家に置いておくには、少々大きいかもしれません。
そのような時には、遺骨をパウダー状にして容積を小さくする「粉骨」という方法があります。
遺骨をパウダー状にするということは、遺骨を粉砕するという意味です。
先ほど、刑法では「遺骨をないがしろにすると罪に問われる」と紹介しました。
粉骨は遺骨損壊に該当する違法行為では?と不安になりますよね。
墓埋法の第1条に「墓地、納骨堂または火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的」とあります。
このように刑法と墓埋法には、「粉骨」という言葉や関連する内容の記載もありません。
あくまでも「供養しやすくするために遺骨の形を変える」という認識のため、粉骨は法律に反していないと考えられます。
分骨は、文字通り遺骨を分けて供養することを指します。全て粉状にしておけば、分骨しやすくトラブルが避けられます。
容積が小さくなり、安置する場所の選択肢が増えます。また、納骨堂などの施設に納めやすくなります。
粉末にした遺骨を元の状態に戻すことは、できません。
遺骨を粉砕する行為そのものを受け入れられない人もいます。粉骨をする前に、必ず親族や関係者とよく話し合いましょう。
遺骨を粉々にすることができるのであれば、粉骨を自分で行っても問題はありません。特別な道具を用意する必要はなく、家庭にあるもので対応できます。
1:洗浄
納骨前の遺骨は問題ないですが、埋葬してあった遺骨は洗浄する必要があります。
2:乾燥
湿っているとくっついてしまうため、パウダー状にするには、しっかりと乾燥させます。また、遺骨以外に混ざっている金属片や副葬品を取り除く作業も重要です。
3:破砕
セラミック状の焼骨は、小さい部分は素手でも破砕できますが、大きな部分はかなり硬く、破砕には時間がかかるでしょう。
自分で行うことは供養になりますが、遺骨を目の前にすると躊躇してしまうかもしれません。心身ともに疲弊してしまうことを考えると、専門業者に依頼する方法をおすすめします。
ポイント2.遺骨をずっと家に置いておく場合の保管方法とは?
遺骨をずっと家に置いておく方法は自由です。宗教やその土地の風習に従うのも良いでしょうし、自分の好きな場所に安置するのも問題ありません。
では、考えられる保管方法を3つほどピックアップしますので、次項で紹介しましょう。
骨壺や専用のケースに入れて祭壇や専用のスペースを設けます。お墓参りに行かなくてもいつでも供養できるのが、自宅で安置することのメリットです。
従来のような「供物台」や「仏壇」に遺骨を安置することもできますが、仏壇の中に保管するのは好ましくないという考え方もあります。
埋葬していた骨壺をそのまま使用して安置せず、中の遺骨を洗浄・乾燥させてから新しい容器や骨壺に納めましょう。寒暖差や湿気を避け、きれいなままで保管できる場所を選んでください。
「いつも一緒にいたい」「見守ってほしい」という思いのある方には、その気持ちを叶える、少量の遺骨を持ち歩けるグッズやアイテムがあります。
身に着けるアクセサリーが主流ですが、自分で用意した瓶やお守り袋のような小さな容器に入れても問題がなく、好きなように持ち運べます。
アクセサリーは、チャームに遺骨を収納できるカロート状のタイプが人気です。
ペンダントやネックレスをはじめ、さまざまな形や素材のものが市販されています。種類が豊富で、遺骨が入っていると思えないようなファッション性の高いデザインもあり、好みのものが見つかるでしょう。
値段は取扱業者やアクセサリーの素材によって大きく異なります。
遺骨だと明らかにわかる状態で家に置くのは抵抗があるものの、寂しさから遺骨を手放したくないという思いの人もいるでしょう。
供養グッズの中には、遺骨そのものを加工して精製する宝石やオブジェがあります。宝石やオブジェは、遺骨のイメージからかけ離れているので、気兼ねなく飾ったり身に着けたりすることができます。
遺骨を元に精製する宝石には、人工宝石からダイヤモンドやサファイヤ、真珠などさまざまな種類があるようです。ダイヤモンドは、遺骨から炭素を抽出して成分を精製して作られます。
また、オブジェは、プレート状のものやインテリアに溶け込むようなガラス細工のものなどが用意され、業者によって多種多様です。
ポイント3.ずっと家に置いておく分以外の遺骨はどうする?
遺骨の一部をずっと家に置いておく場合、残りの遺骨は居場所を考えて別途供養する必要があります。供養先をどうするかは、親族や関係者と話し合って決めましょう。
手元に遺骨の一部を残すことに反対する親族がいる場合、残った遺骨をお墓に埋葬して供養することで納得してもらえるかもしれません。
お墓を新調すると、費用は高額になりがちです。費用負担についても供養方法同様に、親族としっかり話し合いましょう。
代表的なものは、「納骨堂」「合祀墓」「樹木葬」ですが、それぞれに種類が多く、施設ごとに特色があります。特徴を知って、自分たちに合った施設を見つけることが大切です。
特に、管理費などの経費や供養の期間について、しっかり確認しましょう。以下、代表的な3つのタイプを紹介します。
屋内にある納骨用の区画を契約する方法で、施設ごとに仕組みや立地が異なり、価格に大きな差があります。
主に屋外にあり、遺骨を合同で供養する方法です。安価ではありますが、納骨後に遺骨を取り戻すことはできません。
樹木を墓標とするお墓です。個別に納骨するものから合祀型まで、さまざまなタイプがあります。
遺骨を分ける量が多い場合は分骨の手続きが必要
遺骨1柱から、ごく少量取り分けるには問題ありませんが、大きく分ける場合は分骨の手続きが必要です。一部を家に置き、残りを別に供養するケースは「分骨」に該当します。
そして、この分骨は墓埋法に記載されており、法に基づく行為です。
遺骨をずっと家に置いておくことを決めても、自分に何かあった時、継続して家に安置できなくなることがあります。家に安置している遺骨をどうするのか、考えておく必要があるということです。
先述した刑法の第190条で遺骨の遺棄を禁じています。別の供養方法を検討することはもちろん、誰かに引き取ってもらう場合には、中身が遺骨であると気づかずに遺棄されてしまわぬように配慮しましょう。
焼骨そのままの状態で骨壺や霧箱に納められていても、引き取り手が墓埋法や刑法の知識がなく、そのまま破棄すると事件事案に発展するおそれがありますので、なおさら注意が必要です。
火葬場から発行される「遺骨埋葬許可証」を提出します。
「分骨証明書」の発行を火葬場に依頼しましょう。分骨元と納骨先で取り交わす、この「分骨証明書」は決められた様式がなく、行政手続きは不要ですが、市区町村によって取り扱いが異なります。
墓埋法では、分骨の元になる遺骨について証明する書類の発行や、分骨した遺骨を納骨する際の証明書類の提出を定めています。手元での供養を決めたら、分骨証明書を遺骨の身分証として保管しましょう。
「家に置いておく分以外の遺骨をどうする?」という問題に対して、お墓への埋葬や永代供養墓を先ほど紹介しました。
しかし、「お墓を持ちなくないから家での保管を選んだ」という人や「家で保管できなくなったら処分したい」という考えの人もいるでしょう。
そのような場合には、パウダー状にした遺骨を自然にまいて供養する「散骨」という葬送方法があります。遺骨を全て散骨することによって、お墓を持たない選択ができます。
遺棄するのではなく、供養のために自然に還す意識のため、刑法には反しません。
宗教や宗派の決まりや、風習の制約がなく、比較的自由ですが、条例や周辺環境の確認が必要なため、実施の際は散骨を取り扱う業者に相談しましょう。
散骨は場所によって種類が分かれます。
沖合で船上から散骨をする主流な方法です。
散骨専用の土地や島で散骨する方法です。
セスナ機やヘリコプターから、海洋の上空に向けて遺骨をまく方法です。
遺骨を乗せたバルーンやロケットで、地球の成層圏外を目指す方法です。
まとめ
遺骨をずっと家に置いておく場合でも、親族の承諾を得ましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |