終活とは、「人生の終わりのための活動」の略称です。最近は雑誌やテレビで特集が組まれ、目や耳にすることが多くなりました。そして、終活ノートとは、エンディングノートとも呼ばれ、終活の中でも最初に取りかかる作業の1つです。
亡くなった後、家族にできるだけ負担をかけないためにも書かなくては…と思いつつ、亡くなった後のことを考えるのは気が重く、つい後回しにしてしまいがちですが、早めに準備することで人生に役立つアイテムになります。そんな終活ノートについてご説明します。
終活ノートとはどういうものか
終活ノートとは、将来、自分が亡くなった時や病気で意思疎通ができなくなった時に、家族が困らないように伝えておきたいことを書きまとめたものです。
少子化が進む現在、残された家族を困らせたくない、負担をかけたくないと思うのは自然なことです。家族に伝えることとして最初に思いつくことは、亡くなった後の葬儀やお墓、財産分与や、遺品のことでしょう。
どんなに元気な人でも、いつ何時、意思表示ができない状態になったり、認知症になったりするか、誰にもわかりません。後々、家族が悩まないように、人生の終わり方についての意思を伝えるツールが終活ノートです。
終活ノートの書き方とは
「終活ノートは、書くのが難しいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。終活ノートを書くことにより、自分の人生を振り返るよい機会になります。
- 緊急連絡先(何かあったとき、連絡してほしい友達など)
- 銀行口座 など
暮らしに欠かせない大事なことを書くことにより、自分自身の備忘録となり、実生活で活用することもできます。つまり、終活ノートは残された家族のためだけに書くものではなく、過去・現在・未来の情報を書くことで、現在の自分の生活で活かすことができます。
項目によっては、家族に相談したり、情報を集めたり、時間がかかるものもありますが、最初はわかるところから書き埋めていきましょう。
そうはいっても、「何を書けばよいのかわからない」という人が多いのではないでしょうか。では実際にどのようなことを書くとよいのか、項目ごとに説明しましょう。
終活ノートは、最初に自分史を書きます。
- 自分の人生を振り返ることができる
- 家族との絆を再確認できる
- 自分が生きていた証しになる
- 書くことで「死」に対する恐怖心が薄れる
あらたまって、自分を再確認することによって、家族に対する感謝の気持ちに気付かされることもあります。自分史を書くことは自分を見つめ直す、とても大事な作業です。
学歴や職務経歴など履歴書のようなものをイメージして書きはじめるとよいでしょう。
- 現住所
- 本籍地
- 資格
- 免許
- 生年月日
- 血液型
- 星座
- 干支
- 簡単な家系図
書かなくてもわかるものでも、基本情報として書面にすることで明確になります。さらに、学歴や職務経歴を書く際には、ただ学校名や年代だけを書くのではなく、どんなことを志してその学校に入学したか。どんなことを目指して仕事したのかなども書いておくと、読む人(家族)に伝わりやすいです。
そのほか、両親や兄弟について、さらに父方・母方の血筋などの家系についても書いておくことをおすすめします。
親族が近くに暮らしていた頃と違い、現在は親戚同士で集まる機会が減り、家族にとっては、父方・母方、どちらの親戚なのか理解できていないということが結構あります。
味や好きなことなども、自分の人柄を表す大事な要素です。
- 子供の頃どんな遊びをしたか
- どんな友達がいたか
- どんな夢や憧れを持っていたか
- どんな部活動をしていたか
- 熱狂したアイドルは誰か
- 夢中になったことは何か
- 得意だった科目は何か
- なりたかった職業は何か
一見、関係ないと思われるかもしれませんが、家族は知りたい内容かもしれません。どこで生まれたのか、その後どんな所に住んだのか、各年代での友達や家族との思い出などを思い返しながら書きだしてみましょう。
家族と一緒に、思い出を話しながら書くのも楽しいでしょう。自分でも忘れていた思い出がよみがえり、やり残したことなどにチャレンジをしようと思い立つ人もいます。
終活ノートを書くことで、人生の質の向上につながることがあります。
メッセージ
夫や妻へ、子供へ、友人へ、それぞれに宛てたメッセージを書いておくと、確実に気持ちが伝わります。終活ノートは家族へのメッセージ要素が強いので、家族と一緒に過ごした時間や出来事などに感謝の気持ちや楽しかった思いを書き残すと、読んだ人は嬉しいでしょう。
終活ノートの中に、このメッセージを書くことは時間がかかると思いますが、決して無駄にはなりません。自分が意思を伝えられなくなった時に頼れるのは、家族や気心の知れた友人たちですから、感謝の気持ちを伝えたうえで、今後の希望を書くとよいでしょう。
今後のことについて、どのようなことを決めておかなければいけないのか、家族や友人に何を依頼しておかなくてはいけないのかを説明します。
終活ノートは、医療関係の備忘録として活用できます。
- 保険証番号
- 持病
- 常備薬
- かかりつけの病院名(内科、外科、循環器科などの科ごとに分ける。各科の主治医の名前)
病歴については、時系列で書きます。現在の状況について「経過観察」なのか、定期的に通院しているなら「月に1回通院」などと記載します。食べ物や薬のアレルギー有無や、何に対してアレルギーをおこすかなども書いておきましょう。
急な事故や病気で病院に運ばれた際は、家族が医療従事者から必ず聞かれる内容ですし、とても重要です。また、病名や余命の告知の可否、延命治療を希望するか、臓器提供や献体希望の有無も明記します。これは、本人にしか選択できませんし、書いてあったとしても家族は悩む事柄で、意思表示がされていなければ、なおさら判断に困るでしょう。
介護が必要になった場合も、希望する介護者や介護施設をあらかじめ選んでおけば、家族は対応しやすいです。
終活ノートには葬儀の希望も書きましょう。記載しておきたい内容は以下の6つです。
既に希望する葬儀社と生前契約を結んでいる場合には「葬儀社の名前」「連絡先」「契約内容」などを書きましょう。そして契約書類も一緒に準備しておきましょう。
喪主をお願いする人には、終活ノートに書くだけでなく、本人に直接依頼しておくとよいでしょう。
葬儀でお別れのあいさつなど、お願いしたいことがあれば喪主同様に前もって依頼し、併せて終活ノートに名前を書いておきましょう。
多くの家族が遺影選びに悩みます。葬儀に使いたい写真を自分で準備、終活ノートに添付しておくとお互いに安心です。
葬儀後の遺骨の行き先についてもお墓以外に散骨という方法もありますので、希望する埋葬方法を決めて調べて記載しておくとよいでしょう。
葬儀や埋葬などの一連の流れをスムーズにするために、親戚リストや学生時代の友人や職場の同僚をリストアップしておきましょう。連絡先などを記入した友人リストで連絡を取る人を明確にしておくと、葬儀の際にスムーズに連絡がとれます。
葬儀の準備は、家族が心の整理もつかぬまま実務に負われることになるため、これらが記載されているだけでも家族の負担は軽減されます。
終活ノートに貯金などもまとめておくと便利です。記載しておきたい内容は以下の7つです。
口座番号や金融機関名なども忘れずに書くようにしましょう。認知症を発症した場合などのため、キャッシュカードのパスワードも書いてあると、家族は助かるでしょう。
督促が来てから家族が知るという事態を防ぐためにも、必ず明記してください。
保険会社名や保険満了時期、保険対象内容なども書きましょう。
急な事故や病気の際に明記しておけば家族の金銭的な負担を減らすことができます。保険関係は、まとめておくと自分の覚え書きとなり、急な災害時に慌てず用意できます。
終活ノートに記載しておきたい内容として、遺言書の有無と形見分けについてもあります。
遺言書の存在がないと思って財産分与をした後に、遺言書が出てくることがあります。このような事案が発生しないよう、遺言書の有無、誰に預けているのかを書いておくことをおすすめします。
たとえば、友人に思い出の品を形見分けでもらってほしいと伝えていたとしても、友人から家族へ言い出しにくいでしょう。本当に受け取ってもらいたい人に形見が渡るよう、終活ノートに明記しておけば、友人も受け取りやすくなります。
デジタル遺品
SNSやWEBに残した記録は、本人が亡くなった後も残り続けます。スマホやパソコンには、写真や動画、住所録などの個人情報が入っているので、そのままにしておくのは気になります。
スマホやパソコンの処分、サイト閉鎖や会員登録抹消は、IDやパスワードがわからないと対応できないことがほとんどです。そこで終活ノートに、パソコンのメールアドレスやIDやパスワードなどが明記してあれば、亡くなった後のデジタル遺品の処分がスムーズに行えます。
また、クレジットやネットバンキング情報・携帯契約内容なども併せて書いておくとよいでしょう。これらの情報は年齢に関係なく、つい忘れがちな情報です。終活としてだけでなく、普段の生活でも便利に活用できます。
終活ノートの入手方法とは
決められた書式のない終活ノートだと市販のノートで問題ありませんが、近年では終活をする人が増えてきたため、いろいろな形で終活ノートを手に入れられるようになりました。入手先は主に以下になります。
- 葬儀業者に資料請求した時に無料でもらえる
- インターネットからダウンロードする
- 本になった状態で販売されている
終活ノートの詳しい入手方法について詳しく説明していきます。
終活ノートはパソコンから無料でダウンロードすることができます。一括でダウンロードすることもできますが、必要なページだけ選んでダウンロードすることもできます。
パソコンに慣れている方や文字を書くのが苦手な方にはおすすめです。
また、最近はスマホのアプリで終活ノートを作成することができます。いつでも好きな時に書いたり、追記したりできるうえに、写真や動画も簡単に取り込めて便利です。
- マイクロソフト社「エンディングノート Officeスタイル カタログ」
- App Storeで提供「エンディングノート:デジタル遺品整理・家族へ終活の記録」
その他、探せばいろいろあります。自分にとって使いやすい終活ノートを見つけてください。
終活ノートというと地味な印象があるかもしれませんが、最近の市販の終活ノートはかわいい柄や、アイディア満載のノートとして販売されています。
終活がブームとなったこともあり、30代や40代など若い世代も終活ノートを準備する人が増えたからでしょう。
自分史に重きをおく、亡くなった後に家族が困らないように情報の記録に重点をおくなど、自分が書きたい項目が充実しているノートを見つけてください。
- ナカバヤシ「プレシャスエンディングノート」
- レイメイ藤井「エンディングノート システム手帳型」
なお、終活を特集した雑誌などに終活ノートが付録としてついていることもあります。終活の特集記事を参考に、ノートへ書き込めて便利です。
形式ばった終活ノートではなく、自分らしい終活ノートにしたいという人は自分だけの終活ノートを手作りするのもよいでしょう。
終活ノートは決められた書式があるわけではないので、どのようなノートに書いても問題ありません。お気に入りのノートを見つけて書いてみてはいかがでしょうか。
市販の終活ノートにない項目を入れることにより、決められた書式では実現できない、ステキな終活ノートができあがるでしょう。
終活ノートのフォーマットを参考に、Wordを使ってオリジナルな終活ノートファイルを作るのもよいですね。
終活ノートの選び方とは
終活ノートはいろいろな方法で入手できることがお分かりいただけたと思います。そうなると、多彩過ぎてどれを選んだらいいか迷う人もいるでしょう。そのような時は、実際に作成した人の感想を聞くのが一番です。
終活ノートを書いている人は意外に身近にもいるものです。おすすめのノートや、必ず書くべき内容、書かなくても問題ない内容など、具体的に教えてもらえるでしょう。
また、気になる終活ノートを見つけたら、通販サイトで購入した人のレビューを確認すると購入した人の生の声が聞けるので参考になります。レビューの中に、そのノートの特徴が書かれていることもあるので、細部までチェックしてください。
知人に相談したりレビューを見たりといった情報収集はとっても大切です。
終活ノートは、1日や2日で書き終わるものではありません。そのため、文字の大きさや書きやすさも、終活ノートを選ぶ大事な要素です。
- 自分史をしっかり書き込んで、家族に伝えたい。
- 残された家族が困らないように、葬儀や医療についての意思表示を細かく書き込みたい。
- 自分の備忘録として、銀行口座や保険、パスワードなど、日頃から利用することをまとめたい。
終活ノートに書きたいことや重点をおきたい内容など、人それぞれです。自分が何をメインに書きたいのか考えて、自分が求める形になるよう、終活ノートを選んでください。
終活ノートと遺言状の違い
終活ノートと遺言書の違いは、遺言書には法的効力があるのに対し、終活ノートは法的効力がありません。また、遺言書は民法の規定に従った形に書かなくてはならず、法律上細かいルールや注意すべき点がたくさんあります。しかし、終活ノートは書式も書く内容も自由です。
終活ノートと遺言書の違いについて詳しく説明していきます。
終活ノートは、市販のノートでもパソコンに打ち込んで印刷しても自由なので、費用がほとんどかかりません。では、遺言書作成はどうでしょう?
それぞれの費用は、次のとおりです。
遺言者が遺言書の内容、日付、名前を自筆で書き、最後に捺印して作成します。証人が不要ですが、民法で定められた形式でなかった場合、遺言書としての効力が認められません。
費用は専門家などにサポート依頼しなければ費用がかかりませんが、法務局で自筆証書遺言書を保管してもらう場合は、保管申請費用が一律3,900円かかります。
公証人に作成してもらう遺言書です。遺言に記載する財産価額が100万円までなら公証役場に支払う手数料は5千円ですが、財産価額によって手数料が変動します。状況によって、その他の手数料が加算される場合があります。
法的効力があり、無効になる恐れが少ない「公正証書遺言」を作成するとなると、時間と費用がかかることになります。
終活ノートは法的効力がない分、書き方や内容を自由に書くことができます。法的効力がある遺言書の書き方や内容に制約があります。では、遺言書の「規定に従った形」とは、どのようなものでしょうか?
自分で作成する「自筆証書遺言」の書き方は次のとおりです。
一部でも代筆があると無効となります。
鉛筆は使わないようにしましょう。
遺言書を作成した年月日を必ず書きます。「吉日」といった書き方は、日付が特定できないため無効になります。
本名をフルネームで記入します。
認め印でも可能ですが、実印の方が望ましいとされています。
終活ノートは封をしているわけではないので「開封」する時期はありません。内容を都度、更新することができ、介護が必要になった場合のことや、延命についての希望が書かれているため、必要な時に内容を読むことができます。つまり、終活ノートは書き換えや内容を読む時期が自由ということです。
では、遺言書はどうでしょう。遺言書を開封する時期は、家庭裁判所の検認後に相続人が全員いる時にしか開封できないという制約があります。遺言書を勝手に開封すると、罰金を支払わなければならないことがあります。
終活ノートとはいつ書きはじめるものか
終活ノートというと、高齢になってから書きはじめるように考えがちですが、そのようなことはありません。若いから書くのが早いということではなく、思い立った時が書きはじめるタイミングでしょう。
先述しましたが、その時の自分の状況や医学の進歩によって、内容を書き換えることが可能です。今は今の希望を、未来では未来の状況での要望に更新するとよいでしょう。年齢によって区別することなく、終活と向き合うことが大事です。
書く項目も人それぞれですから、住所や勤務先など書けるところから少しずつ書きはじめ、自分史や家族へのメッセージは時間をかけ、書き足しながら完成させるとよいでしょう。
最近は、20代から終活ノートを書きはじめる人がいます。
終活ノートは、ネット情報や資産状況、加入している保険など、大事な情報をまとめるツールでもあります。
現代社会は、支払いはクレジット、契約はネットと何をするにも、ID、パスワードが必要です。そのような情報を整理するには、終活ノートの機能がマッチするのでしょう。そのため、成人を機に情報を整理しはじめるようです。
最近では若い人向けのかわいいデザインやすてきなデザインのノートも増え、終活ノートに対するネガティブなイメージが薄れてきました。終活ノートは都度、更新することができるので、むしろ若いうちから書きはじめるとよいでしょう。
若い世代は、日々の生活に忙しく、自分の過去を振り返る機会がなかなかとれません。終活ノートは、過去に起こった出来事をまとめ、現在の情報を整理し、未来につなげます。
自分の過去を時系列で振り返り、形にできるものとして終活ノートは最適です。そのため、終活ノートで過去・現在・未来を見つめ直すよい機会と捉えていることが理由の1つなのでしょう。
終活ノートに自分史を書くことによって、これまでの自分の人生を振り返り、向き合うことができますので「これから自分がどう生きていきたいか」を考える機会として、終活ノートを書きはじめるようです。
終活ノートは、個人情報や財産情報などが書かれているので、保管場所には注意が必要です。難しいですが、他人には見つからず、いざという時には家族がわかる場所に保管しましょう。
- 終活ノートを2冊用意し、財産情報などの内容と介護や葬儀の希望内容に分けて書く。
- 介護や葬儀の希望内容のノートは、すぐに取り出せる場所に保管する。
- 財産情報などの内容のノートは、見つけづらいところに保管し、家族には場所を知らせておき、自分に何かあった時に取り出すよう伝えておく。
まとめ
終活ノートは、ネガティブなものではありません。今までの人生を見つめ直し、これからの人生を悔いなく生きていくために、年齢に関係なく書きはじめることをおすすめします。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |