墓じまいや散骨に必要な許可証とは?
墓じまいを検討していると「役所への手続きはどうなのだろう…」と疑問になりませんか?
日本ではお墓や葬祭に関する法律や条令が制定されているため、墓じまいを進める際に発生する役所への手続きは、お墓から取り出した遺骨の新たな行き先によって異なります。改めてお墓に納める「改葬」の場合は「改葬許可証」が必要ですが、散骨をする場合は基本的に不要となります。
この記事では、墓じまいに関わる役所への手続きに関して知っておきたいポイントを紹介していきます。
知っておきたい墓じまいの流れと手続
墓じまいに関する役所への手続きを知る上で重要なのは、流れを把握することです。煩雑な書類や申請をスムーズに処理していけるように、墓じまいの手順と併せて確認しましょう。
実際に墓じまいを進めている方にもおすすめです。
墓じまいをしようと思った理由で多いのは以下のような境遇です。
「お墓へのアクセスが悪く、頻繁にお参りできないから」
「自分がいなくなった後、お墓を管理する親族が誰もいないから」
墓じまいは、先祖代々続いてきた今のお墓をなくしてしまうことです。更地に戻してしまえば取り消しできません。
親族はもちろんのこと、お墓を覚えてくださっている方にはできる限り周知しましょう。誰か知らない方が突然こられて「お墓参りがしたい」「遺言を聞いた」とおっしゃるかもしれません。
そこでトラブルにならないように、ご遺骨の新しい場所を伝え、了承を得ておきましょう。話し合うことそのものが先祖の供養にもなるはずです。
墓じまいの意向は、今のお墓の管理者には必ず伝えましょう。管理者に相談せずに進めていくと、多額の違約金や離檀料が発生したり、「墓じまいは、遺骨を同じ敷地内の永代供養墓に合祀することが前提」とされていたりする場合があるので、早めの確認が大事です。
特に、寺院にお墓がある場合、墓じまいは菩提寺と檀家の関係を解消することでもあります。代々お墓を供養してくれていた菩提寺には、感謝の気持ちを忘れずに相談しましょう。
遺骨の新たな行き先に提出する「改葬許可証」の申請に欠かせない「埋葬証明」は、今あるお墓の管理者から発行していただきます。滞りなく墓じまいを進めるためにも、管理者との相談と打ち合わせは重要なのです。
遺骨の新しい居場所を決めよう
墓じまいをすると、お墓に納められていた先祖の遺骨が手元に残ります。遺骨の新しい居場所を確保し、改めて供養して、ようやく墓じまいは完了です。
次項からは供養方法である「散骨」「自宅で安置」「お墓を新調」「永代供養墓」の4つを紹介します。
「お墓の継承が難しい」「お墓に行きにくい」など、悩みによって最適な方法は異なります。それぞれの特徴やメリット、デメリット、費用面について確認し、家族と一緒に選びましょう。
散骨と聞くと、「花びらと一緒に、遺骨を海面に向かってまく」というイメージが浮かびませんか?
実は、海で行う散骨以外にも、散骨の方法には様々な種類があります。費用は使用する設備と乗り物によって左右されますが、依頼する散骨業者によって金額は大きく変わります。
波間に漂って消えていくご遺骨は大自然に還っていく荘厳さを感じさせ、感動的な供養になるでしょう。乗船人数や規模によって金額が変わりますが、立ち会わず業者に代行委託すると費用は抑えられます。
注意点として、私有地での散骨は法令の確認と周囲への配慮が必要なため安易に行わず、専門家に必ず相談しましょう。
費用面では、成層圏で破裂する風船を使うと金額は抑えられますが、ロケットで月を目指すと250万円以上は必要となります。
チャーターする乗り物によって費用は異なります。
お墓から取り出した遺骨を保管していても法律的に問題なく、自宅に安置しておくことも可能です。
墓に納められている遺骨の量は、地域や寺院によって風習がありお墓ごとに異なります。また、地域や宗教によって骨壺の大きさにも差があります。
- 関東・・・7寸(直径約21.5cm)が主流
- 関西・・・2寸から5寸(直径約6cmから約15.5cm)が主流
お墓の中で眠っていた遺骨は、バクテリアや人体に有害な物質が付着しているおそれがあるため、そのまま自宅に安置することはやめましょう。遺骨を洗浄した上で新たな容器に入れ替えることをおすすめします。
さらに古いお墓では、土葬骨など再度火葬が必要な場合もあります。
「お墓が遠い」という悩みから墓じまいをする場合には、自分や家族が通いやすい場所にお墓を新調することも選択肢に挙げられます。お墓を一から建てるため費用はかさみますが、子孫に継承ができ、形に残る供養方法です。
永代供養墓には以下のようにさまざまな種類があります。
- 都会にもみられる「納骨堂」
- 最近注目されている自然葬の一つである「樹木葬」
- モニュメントを中心とした「合祀墓」 など
特徴を把握し、家族皆が納得できるところを探しましょう。
永代供養墓のうち、従来のお墓とは一線を画すシステムで管理する施設があります。
施設ごとに特徴があるため、条件や決まりもそれぞれ異なりますが、入れられる遺骨の数に制限があることが多いです。先述したように、手元にある遺骨の数が多いと不向きかもしれません。
また、三十三回忌など年数が経つと、管理者が所有する別の永代供養墓に合祀されることもあるようです。未来永劫そのままでの供養を望んでいる場合は、契約時に期限を確認しましょう。
今人気の自然葬の一つ「樹木葬」も永代供養墓といえます。「樹木の下に散骨を行うのではないか?」と思われるかもしれませんが、それは山散骨となり、樹木葬ではありません。
樹木や草花を植えるため、従来の墓石を設置するお墓に比べると、費用は抑えられます。また、霊園のタイプや埋葬方法によって種類が分かれており、霊園の場所次第で金額が変わってくる傾向があります。
合祀タイプから自ら植樹するプランまで、実施している施設や霊園によって形態が異なります。
遺骨の新しい居場所によって手順が変わる
遺骨の新しい居場所の候補になる供養方法を紹介してきましたが、どの方法を選ぶかによって、墓じまいの手順は変わってきます。手順の違いについて重要なのは、供養方法が「改葬」なのか、そうじゃないかです。
供養方法が改葬の場合、墓じまいの手順に「改葬許可証」が必要になります。しっかりと確認して進めていきましょう。
散骨は古代から行われていましたが、お墓を建立して供養し、法律でお墓や埋葬に関する決まりを設けるようになってからは、ほぼ実施はなかったと考えられます。散骨が改めて注目されるようになったのは、自然回帰の意識が高まっている今の世の中になってからです。
お墓や埋葬についての法律「墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)」には、散骨に関する表記はありませんが、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」という条文があります。散骨は遺骨をまいて供養する葬礼で、埋葬ではないため墓地埋葬法には抵触しないと考えられているのです。
東京都保健福祉局のウェブページでは、散骨が違法かどうかの問いについて『いわゆる「散骨」について、国は、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」との見解を示しています。』と表記されています。
散骨は葬礼の選択肢として広まってはいますが、現在のところ、公的にも散骨の違法性はないとされているのです。
遺骨を安置できる場所があれば、数量を問わず保管しておけます。また、先述したようにお墓から取り出した遺骨は洗浄など保管に適した状態にしてから、新しい容器に納めましょう。
お墓から取り出した遺骨を改葬する際は、新しい納骨先に「改葬許可証」の提出が必要です。
改葬許可証を申請するためには、まず、受入証明となる書類を新しい納骨先に発行してもらいましょう。受入証明書の名称は「墓地使用承諾書」など、施設によって異なります。
「改葬許可証」は新しい場所に納骨する場合に必ず必要
改葬する際に「改葬許可証」を提出することは、法律で定められています。
墓地埋葬法の第5条には『埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。』とあり、改葬には自治体の許可が必要なのです。
第8条でも『市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。』とされています。
遺骨に関する法律として特筆すべきなのが「刑法」です。
刑法190条には、『死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する』として、遺骨の遺棄を禁止しています。墓じまいで取り出した遺骨は、一度は埋葬されていたものです。
刑法189条では、『墳墓を発掘した者は、二年以下の懲役に処する。』とあり、勝手に改葬すると罪に問われてしまうかもしれません。
改葬許可証の取得は、手元にある遺骨が正しい理由と手順を踏んでお墓から取り出された「事件性」や「違法性」のないものであると証明することでもあります。
改葬許可証の取得をする際に「改葬証明申請書」を提出する必要があります。
①まずは、改葬先発行の「受入証明書」を受け取ります。
②墓じまいをしていることを自治体(市町村役場)に伝え、受入証明書を提出します。
③「改葬証明申請書」を受け取れます。
改葬証明申請書の提出時に必要な「埋葬の証明になる書類」を準備します。
役所から「改葬許可証」をもらおう
「受入証明」と「埋葬証明」と「改葬証明申請書」を自治体へ提出し、1週間ほどで「改葬許可証」を受け取ることができます。
墓じまいの手順のうち、大事な作業である「遺骨の取り出し」と「工事」は、お墓のある霊園や寺院によって異なります。当日に滞りなく進められるよう、事前にお墓の管理者と手順や流れを確認しておきましょう。
費用に関しては以下をご参考ください。
- お墓から遺骨を取り出す作業・・・約2万円
- 墓石撤去・・・15万円から50万円
しまうお墓が仏式の場合、お墓に宿っている魂を抜き取るための法要(閉眼供養)を行ってもらいます。お墓を移動するため、遺骨を一度出すことを先祖に報告しましょう。この際、お経をあげてくれた僧侶に「お布施」を渡しますが、金額の相場はありませんので、感謝の気持ちを込めた値段を検討してください。
その後(当日の場合もあれば近日中のことも)に、石材店が撤去工事を行い、墓地を更地に戻して管理者に返還します。
石材店については、属する墓地を担当する指定業者の出入りがあるかもしれません。
お墓の場所が山の中にあって重機が使えなかったり、対応するお墓が大きく遺骨の数が多かったり、土葬された遺体が眠っていたりするなど、特別な対応が必要な場合は、別途料金が発生することもあります。
お墓の管理者に、お墓の現状を聞いておくことも大切です。
散骨をする際は、遺骨を粉状にまで小さく粉砕する、「粉骨」を行う必要があります。
・1つめは、散骨する場面を目撃するかもしれない人たちと環境に対応するためです。散骨に対してマイナスな感情を持っている人に配慮でき、自然にも還りやすい状態になります。
・2つめは、刑法190条(遺骨遺棄罪)に抵触しないようにするためです。遺骨をそのまままくと、遺棄していると勘違いされるかもしれません。
お墓から取り出した遺骨は、新しい納骨先に移動させる前に、自宅で保管することになるでしょう。量が多いと、一時的にでも安置することが難しかったり、新たに契約した永代供養墓に全て納められなかったり、悩みが生まれそうです。粉骨をすれば容積が大きく減るため、サイズの小さな容器に入れ替えられ、問題を解決できるかもしれません。
お墓に埋葬されていた遺骨は汚れていたり、湿気を含んでいたりするため、そのままパウダー状にすることは難しいでしょう。全て自分の手で行えば料金はかかりませんが、心身ともに負担が大きい作業のため、業者に依頼することをおすすめします。粉骨を専門としている業者であれば、サラサラにしてもらえるはずです。
お墓から取り出した遺骨を新しい場所に納める際、「改葬許可証」を納骨先に提出します。
※散骨を選んだ際、業者から提出するよう指示があった場合も提出をしましょう。
墓じまいから散骨まで誰に相談すればいい?
墓じまいを行い、散骨で遺骨を供養することを選んだ場合、全ての作業業者の手配やスケジュール管理を1人で行うと、費用を抑えられますが、お墓に納められた先祖と未来の子孫に想いを馳せながら、心穏やかに進めていけるでしょうか…?
専門業者の力を借りながら、作業や手続きを丁寧かつ円滑に進めて、納得できる墓じまいを目指しましょう。下記の業者は、墓じまいの相談を受け付けています。
- 葬儀店
- 仏具店や石材店
- 散骨業者
- 行政書士
費用だけで比べてみると、墓じまい後に散骨をすることが条件となりますが、散骨業者が最も安価に抑えられています。
- 行政書士の墓じまい代行 6万3千円~
- 葬儀店の墓じまい代行 19万8千円~
- 散骨業者の墓じまいサポート 6万円~
それぞれ得意なことは異なり、葬儀店は葬儀のプロ、仏具店や石材店はお墓の専門家、そして行政書士は役所への手続きの代行に特化しています。
また、散骨は「散骨業者」や「葬儀社」に依頼しましょう。
インターネット上では散骨業者が濫立していますが、大切なご遺骨を託すにふさわしいかどうか連絡を取って確認しましょう。
まとめ
墓じまいが滞りなく進められるよう、必要な役所への手続きを把握し、準備をしておくことが大切です。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |