近年、「墓じまい」という言葉をよく耳にします。この墓じまいとはどういったものなのかご存じでしょうか?
社会や家族の在り方が変わってきている現代では、墓じまいを行う家庭が増加傾向にあります。
今回は、その墓じまいについて以下のことを手順に添ってご紹介します。
- 墓じまいについて基礎知識
- 墓じまいをするのに適した時期
- 墓じまいを考え始めてから終わるまで、どのくらいの期間を要するのか?
今後、墓じまいが必要になった時のためにも知識を身に付けておきましょう。
墓じまいとは?
しかし、単に墓石を撤去して処分してしまえばいいというわけではありません。なぜなら、お墓についての法律があり、勝手に建てたり撤去したりすれば、法律で罰せられる可能性があるからです。
また、お墓をなくしてしまった後、取り出した遺骨をどうするのかも考えなくてはなりません。そのため、墓じまいとは「法律に決められた手続き」と「遺骨の行き先を決める」必要があるのです。
墓じまいを考える必要性とは?
現代の社会は、少子化や核家族化、都市部への人口の集中など様々な問題を抱えています。
日本における家族は、両親、祖父母、ご自身の配偶者と子供たちといった親子三世代が同居するといった家庭が一般的でしたが、こうした大家族は少なくなってきました。
こうした社会の変化は、お墓の管理においても様々な課題を生み出しているのです。では、具体的に墓じまいを考えなければならないケースについて3つご紹介しましょう。
親子三世代が同居し、親戚や兄弟も同じ地域に住んでいた時代は、お墓の後継者に困ることはありませんでした。長男が家を継ぎ、お墓を守っていくというのが一般的だったからです。
ところが、少子化で後を継ぐ者がいない家庭やそれぞれの事情により、お墓の後継者がいなくなってしまう場合が増えています。お墓の後継者がなく、一定期間放置されたお墓は「無縁墓」として墓地管理者に処分されてしまいます。
後継者がいなくなる可能性がある場合は、早めに墓じまいをしておく必要があるのです。
少子化とともに社会問題になっているのが、核家族化や都市部への人口集中です。仕事の都合や転勤などで住み慣れた土地を離れ遠くに引っ越しをする家族も多くなっています。
当然のことながら、お墓のある地元から遠く離れた場所に住んでいる人も多く、お墓の維持管理のために帰省をすることが困難な家庭もあり、お墓を近くに移したいと考える人も増えています。
こういったケースの場合、お墓の引っ越しにあたる「改葬」を行います。改葬を行うには、元のお墓の墓じまいをする必要があるのです。
少子化が進む現代では、お子様が一人しかいない家庭が増えています。
例えば、一人っ子の長男長女の方が結婚をされた場合、双方の両親のお墓を維持管理する必要が出てきます。同じ地域で生まれ育った場合などで双方の墓地が近くにあれば、管理をしやすいのですが、離れた地域で生まれそだった方の場合、年に数回のお墓参りに出かけるのも大変です。
そういった場合、双方の家のお墓を同じ墓地に移して守っていきたいと考える方が増えているのです。
墓じまいの流れ
墓じまいは、お墓を処分してなくしてしまうことではありますが、単に墓石を解体撤去して墓地を返還すればいいというわけにはいきません。
墓じまいを考え始めてから終了するまでには、さまざまな手順があります。それは、実際のお墓に関する手続きだけでなく、親族や菩提寺などの墓地管理者との話し合いなど、簡単には進められないこともあります。
そこで、実際に墓じまいを行うには、どういった手順で行えばいいのかを見てみましょう。
墓じまいを考えた時、最初にすることは「親族との話し合い」です。
ご自身がお墓の管理者といっても納められている遺骨の血縁者にとっては、墓じまいは関心が高いことですし、理解が得られなければ今後の付き合いにも影響が出てきます。
早めに親族に相談することで、お墓の維持管理を引き受けてくれる親族が出て来る可能性もあり、そうなれば墓じまい自体の必要がなくなります。
墓じまいをすることに親族の了解が得られれば、墓じまい後の遺骨の行き先についても相談して決めましょう。墓じまいをするにあたって、遺骨の行き先を決めておかないと役所での手続きもできません。
お墓に関係する親族の同意と墓じまい後の遺骨の行き先が決まれば、その後の手続きがスムーズに進められるでしょう。
親族との話し合いと同時に進めておきたいのが「菩提寺への相談」です。
お墓が民間墓地や公営墓地にある場合は、不要な手続きですが、菩提寺にお墓がある場合は注意が必要です。
菩提寺にお墓があるということ=そのお寺の檀家であるということです。
墓じまいをするということは、檀家をやめるということになりますので、菩提寺としては避けたいことなのです。そのため、今までお世話になったことへの感謝の気持ちを込めつつ、以下のことを相談し、トラブルにならないようにしましょう。
- いたしかたなく墓じまいをしなければならないこと
- お墓を残すことでお寺に迷惑がかかってしまうこと など
親族間や菩提寺との話し合いがまとまれば、お墓のある自治体の「役所で手続き」を行います。
必要な書類は、自治体や遺骨の行き先によって異なります。まずは、役所に行って必要書類の確認を行いましょう。必要になると考えられる書類は、以下のものです。
この書類は役所でもらうもので、墓じまいには必要になります。遺骨1体につき1枚必要ですので、現在のお墓に何体の遺骨が納められているのか墓地管理者に確認しておきましょう。
お墓の名義人と改葬許可申請者が違う場合は、お墓の名義人からもらっておきましょう。
お墓が公営の墓地にある場合、必要になります。
改葬許可申請書への署名・捺印だけでなく、現在の墓地管理者から作成してもらう必要がある場合があります。
遺骨の新しい納骨場所に発行してもらいます。自治体によっては不要のところもあります。
役所での手続きが完了すると「改葬許可証」が発行され、お墓から遺骨を取り出すことが可能になります。
菩提寺と墓じまいの相談が終われば、墓石の解体をしてくれる「石材店を決める」必要があります。
お寺によっては、石材店が指定されている場合もありますので、お寺に紹介してもらうといいでしょう。お寺に指定業者がない場合は、ご自身で石材店を探す必要があります。
お墓の近くにある石材店に問い合わせを行い、まずは見積もりを依頼します。お墓のサイズや墓地の立地によって撤去解体費用は変わってきます。可能であれば、2~3社の見積もりを取って比較検討してから依頼する石材店を決めましょう。
役所の手続きが済み、解体撤去する石材店が決まったら、「閉眼供養」をして「遺骨を取り出す」作業になります。
石材店のほとんどが、閉眼供養をしていないお墓の解体はしてくれません。閉眼供養を行ってから遺骨を取り出し、石材店に墓石を解体、撤去してもらいます。
墓地が更地になり墓地管理者に返還すれば、墓じまいは終了です。
墓じまいが終了し遺骨を取り出したら「新しい供養先に納骨」をします。
新しい供養先のことを「改葬先」ともいいますが、改葬先で最も多いのが「合祀墓」です。一番身近な合祀墓としては、今までお墓のあった墓地の合祀墓です。
菩提寺に墓じまいの相談をする時、合祀墓での永代供養をお願いできるか確認しておきましょう。宗教にこだわりのあるご家庭にとっては、菩提寺の合祀墓で永代供養をしてもらえるのが一番安心できますね。
宗教にこだわりがなければ、住所地近くの公営墓地や民間墓地での合祀墓も人気があります。その他の納骨先として考えられるのは「納骨堂」「散骨」「手元供養」があります。
ただ、お墓の継承者がいなくなることや経済的な理由で墓じまいを行うのであれば、納骨堂は管理者の選定や維持管理費がかかってくるため、注意が必要です。そんな中、近年、注目を集めているのが「散骨」です。
海に散骨する海洋散骨が主流ですが、山林や空、宇宙に散骨できるなど、散骨場所も多様化してきています。
墓じまいに適切な時期
墓じまいを行うのに法律や宗教的にもいつしなければならないといった決まりはありません。ですが、お墓の継承者が一人で勝手に進められるものでもありません。関係する親族だけでなく、菩提寺や現在の墓地管理者の協力が必要になる場合もあります。
親族への相談を始めてから墓じまいを完了するまでには、数カ月から数年かかる場合もあります。トラブルなく墓じまいを行うために、墓じまいをしやすい時期や避けた方がいい時期についてご紹介します。
墓じまいをする時期についての決まりはありませんが、一般的におすすめだと考えられる時期をご紹介します。
雪の少ない地域に限りますが、お正月明けから3月のお彼岸までの時期
3月のお彼岸後から梅雨入り前の時期
9月のお彼岸後から年末に入る前の時期で雪の降る地域では積雪前まで
実際には、お寺や墓地管理者、石材店、墓じまいに立ち会われる予定の親族など、様々な方のスケジュールを調整して決める必要があります。
上記でご紹介した時期は、比較的、関係者の方が時間を取りやすい時期ですが、天候や手続きによって日程が変わる場合もありますので、余裕をもってスケジュールを立てるようにしましょう。
墓じまいの日程を決めるのに、注意して考えなければいけないのは、避けた方がいい時期です。それは、特に「閉眼供養」や「墓石の解体撤去」の時期です。
この時期は、お寺にとっては繁忙期といえます。お墓を解体する前には僧侶による閉眼供養が必要なので、この時期は避ける必要があります。
一般的にお墓参りを行う方が多い時期です。墓じまいを行っていることを知らずに訪れる親戚や友人がいらっしゃるかもしれません。墓じまい後の挨拶状がお墓参りシーズンに入る前に届くように日程を考えましょう。また、お墓参りシーズンは、墓地を訪れる人も多くなります。墓石撤去の工事を行っている近くでは落ち着いてお参りもできません。
天候が悪い時は、墓石の解体工事は行えません。雨で濡れた墓石を撤去することは大変危険を伴うからです。雨の多い梅雨や冬場の積雪時期は避けるようにしましょう。
墓じまいにかかる期間
なぜ、こんなにも大きな差が生まれてしまうのでしょうか?そこで、それぞれの段階でどのくらいの期間がかかるのか、墓じまいの手順に添ってご紹介しましょう。
親戚やお寺との話し合い” />
墓じまいに要する期間で、最も読みにくいのが親戚や菩提寺との話し合いです。
先祖代々続くお墓の場合、相談すべき親族が多く一度の話し合いだけで話がまとまらないことが考えられます。親族の中で墓じまいに反対の立場の人がいると、相談も長引いてしまい理解を得られるまでに何年もかかる場合があります。
付き合いが長いほど時間をかけて相談をするべきでしょう。菩提寺にとっては、経済的なことも関わってくるため慎重に行う必要があります。お寺との話し合いがうまくいかず高額な離檀料を請求される場合も考えておきましょう。
親族と菩提寺への相談期間の他には、新しい供養先を探す期間がありますが、特にこだわりがなければ、数日で決めることができます。
墓石を解体撤去してもらう石材店を選定する期間は、数日から1カ月程度です。お寺や民間霊園では指定の石材店がある場合がありますので、必ず探す必要はありません。
ご自身で石材店を探す必要がありますが、墓地管理者に石材店を紹介してもらったりネットで検索をすれば比較的簡単に見つけることができます。
ご自身で石材店を決める場合は、数社の見積もりを取ることをおすすめします。見積もりは、数日で行ってくれるところがほとんどですので、見積金額に納得ができたら契約を行います。ネットには墓じまいをセットで請け負っている業者もあります。
トラブルを避けるためにも菩提寺との相談が終わってから石材店を決めるようにしましょう。
役所での手続きは、自治体にもよりますが、書類に不備がなければ1週間程度で終えることができます。
墓地のある自治体の役所で手続きが必要ですので、遠方に住んでいる場合は、帰省の時に役所に行く必要があるため、年末年始やお盆など役所の休日に注意する必要があります。
郵送でのやり取りになりますので、もう少し時間の余裕を見ておきましょう。申請書類は役所のHPからダウンロードすることもできますが、すべてを郵送で取り寄せて郵送のみで手続きを行うのであれば、2週間程度はかかると考えておきましょう。
自治体によっては遺骨の新たな納骨先で発行してもらう「受入証明書」が必要な場合があります。できるだけ早く手続きを済ませたい場合は、あらかじめ役所に必要書類を問い合わせておくといいでしょう。
墓石を解体撤去する前に、閉眼供養を行う必要があります。閉眼供養は、僧侶がお墓の前で読経を行うのですが、1時間もかかりません。
閉眼供養が終了すると遺骨を取り出せるようになりますが、「改葬許可証」が必要になりますので、役所の手続きが終わってから日程の調整をするようにしましょう。
墓石の解体撤去にかかる日数は、墓石の大きさや墓地の立地によって変わってきますが、小さいお墓や工事のしやすい墓地であれば1日で終わりますし、山間にある墓地や大きなお墓でも3日もあれば終えることができるでしょう。
まとめ
墓じまいにかかる期間の長短は、親族の話し合いの期間によって変わってきます。墓じまいの必要性を感じ始めた時は、できるだけ早い時期にお墓に関係する親族と話し合いをもち、理解を得る必要があるといえるでしょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |