墓じまいは先祖代々に関わる大きな決断です。ただ、「やり方がわからない…」という声は多いのではないでしょうか。
トラブルなく墓じまいをするには「現在の墓地」や「遺骨の新たな受け入れ先」と契約書を交わす必要があります。では、契約書を作成するためには、どのような準備をすれば良いのでしょう?
ここでは、墓じまいの手続きや流れについて説明した上で、必要書類についてお伝えします。
墓じまいに必要な契約書作成の準備とは?
遺骨の行き先が決まったら、それを親族や菩提寺に説明し、その話し合いは議事録のような形で書面に残すことをおすすめします。墓じまいは先祖代々に関わる大事業であり、親族や菩提寺とトラブルになればスムーズに進みませんので、書面にすることでお互いに確認でき、双方の安心につながるからです。
また、お墓の撤去をする石材業者などについてヒアリングしておくと、業者の選定をする上で後々便利です。
昔は、名義人の配偶者や子供が継承するのが一般的でしたが、先祖代々のお墓となると親族の中で名乗りをあげる人が出てくるかもしれませんので、親族と協議をして「同意書」を取りましょう。
ここまでお伝えした通り、関係者に理解してもらうまでにかなり時間がかかります。その後、契約する遺骨の受け入れ先を確定し、契約書を交わすることになります。
そして、この契約書作成前の準備期間は、十分に余裕を持つ必要があります。
遺骨の受け入れ先の候補をいくつかあげて、それぞれのサービスや契約内容をしっかり吟味し、落ち着いて選びたいですし、時間的制約から慌てて決めるものではないからです。さらに、改葬許可が下りるまで時間がかかる場合もあります。
「墓じまいは、時間のかかる作業の積み重ねなんだ」と肝に銘じてくださいね。ご先祖様とじっくり向き合う時間と思い、楽しむくらいの心の余裕を持って、ことに当たりましょう。
今あるお墓をなくすには契約書が必要?
墓じまいでは、大きく分けて3つの契約書が必要です。
今までお世話になった墓地の管理者と契約を解除する書類です。
新たに遺骨を移す先と契約する書類です。
現在の墓地を更地に戻し返却するために石材店などに依頼する書類です。
その他、檀家から離れる場合に、菩提寺から離檀料を請求される場合もあり、契約書とは異なるかもしれませんが、そのやり取りも書面で残しておくようにしましょう。
墓地や家などの不動産を「買う」といいますが、実は墓地の購入は「所有権」ではなく「使用権」を得ることであり、不動産ではありません。
そのため、墓地は「祭祀財産」といわれ、不動産と違い相続税はかかりませんが、売ることも貸すこともできず、あくまでも墓地として利用するのみです。使用権は永代にわたって代々受け継げます。
個人名義のお墓は、亡くなったご本人や、その親族が持っている土地に建てたお墓のことで、昔からあったお墓だけの特例のようなものです。
法律上、家を建てて良い土地のことを「宅地」と呼び、その他は「山林」「畑」などに分類がされていますが、現在は「墓地埋葬法」などの法律により、個人所有の土地を「墓地」に地目変更することが許されておらず、個人の土地にお墓を新設することができません。
お墓は「祭祀財産」として分類するのが一般的ですが、個人名義のお墓に関しては、土地の相続という取り扱いになります。そのため、祭祀財産ではなく「不動産」となり、相続税も発生することになりますので、個人名義のお墓の墓じまいの際は注意が必要です。
墓じまいに必要な行政手続き
改葬許可書発行までの流れを説明しましょう。
- まず、現在のお墓のある市区町村役所から「改葬許可申請書」を入手し、現在の墓地の管理者から「埋葬許可証」を発行してもらいます。
- 次に、改葬先から「受入証明書」を発行してもらいます。
- それら3つを現在のお墓のある市区町村役所に提出すると「改葬許可証」を発行してもらえます。
そして、発行された許可証を現在のお墓に提示することにより、初めて遺骨の取り出しができるのです。
改葬許可証が発行されたら、今度は「石材業者」に撤去の相談をし契約を交わします。石材業者は、お墓を建てたときの業者でも良いですが、墓地で提携している業者がある場合もありますので、墓地の管理者に確認すると良いでしょう。
お墓をめぐるトラブルの中で、お金のトラブルがもっとも多いといわれています。一式の見積もりだけで内容がわからなかったり、契約書自体を交わしていなかったりという声を聞きますが、トラブル回避のためには「契約書」が重要です。
正式な契約書を交わさないと、思った以上の金額を請求されたり、石材店は工事途中に変更が多くて困ったり、工事をしてもお金がもらえなかったりという問題につながります。見積もりの内容がわからなければ、わかるまで説明を受け、きちんと契約書を交わしましょう。
必要書類が揃い、もろもろの契約が済んだら、墓じまいを行う段階です。まず、お墓から遺骨を取り出すために「閉眼供養」を行い、その後に「お墓を解体して更地にする」という流れになります。
菩提寺、墓地の管理者、工事業者、親族の出席者と「墓じまいの工程や日程」についてはしっかりと打ち合わせしておきましょう。
ここで、墓じまいに必要な書類についてまとめます。
改葬許可書を発行してもらうための申請書であり、各自治体により様式が異なり、現在お墓がある市区町村役所から入手する必要がありますが、お墓が遠方の場合などは、インターネットでダウンロードすることもできます。
この墓地に確かに納骨されているという証明書として現在の墓地の管理者に作成してもらうもので、書式は任意ですが、自治体で用意された書式を利用しても良いでしょう。
遺骨の行き先の墓所などが、確かにこの遺骨を受け入れますと証明する書類で、書式は任意です。
改葬許可申請書、埋葬証明書、受入証明書を合わせて、現在のお墓のある市区町村に提出し、役所から発行してもらう書類です。
墓じまい後の供養方法で契約書等は変わるの?
ここまでは、お墓をなくすために必要な契約書や書面についてお話してきましたが、墓じまいにはまだ続きがあります。それは「新しい遺骨の預け先」です。
遺骨の預け先には、以下のような方法があります。
- 新たにお墓を購入する方法
- 供養墓へ納める方法
- 納骨堂に納める方法
- 散骨や手元葬などといった第三者に遺骨を預けない方法
こちらの方法は、それぞれ契約や必要書類が異なります。選択肢が広がって良い時代になったともいえますが、自分に合った選択をする必要があり、悩まれる方も多いことでしょう。
ここからは、墓じまい後の遺骨の預け先によって違ってくる契約書や必要書類、注意点などについてご説明します。是非、参考にしてください。
まず、新しくお墓を購入する際、契約に必要な書類は、「戸籍謄本」「戸籍抄本」「住民票」「印鑑登録証明書」「埋葬許可書」「墓地使用許可証」です。
その墓地によって必要な書類が異なる場合がありますし、書類以外でも不明点はしっかり確認し、納得した上で契約しましょう。
次に、墓石を購入するために契約書を交わし、実際にお墓を建立することになります。その際に必要な書類は、「埋葬許可証」「墓地使用許可証」「工事届」です。
埋葬許可証は、死亡届と引き換えに自治体から発行される書類のため、どこにあるかわからなくなって困る方もいます。そんな場合は「骨箱」を確認してください。無くさないように葬儀社や火葬場の担当者が、骨箱に入れてくれることが一般的だそうです。
永代供養墓の形態は様々ですが、大きく分けると2つあります。
- 最初は普通のお墓と同様に個別のお墓に入り、決められた期間を過ぎると、合祀墓に遺骨を移動するという方法
- 初めから合祀墓へ納骨する方法
最初に個別墓に入るのであれば、必要書類はお墓を購入する場合と変わりませんが、契約内容が多岐にわたっており、同じ墓地であっても、契約書の内容は人それぞれとなりますので、注意が必要です。
例えば、最初に個別のお墓に入る場合は、1人用か家族用かと種類があります。また、いつ合祀墓へ移動するかについても、17回忌、33回忌、50回忌の後など様々で、それによって金額が変わりますのでよく検討してください。
永代供養墓は、様々な契約があるだけに、それに伴う規約にも注意が必要です。
- 合祀墓に納骨したら、もう二度と遺骨を取り出すことができない
- 紛失などの事故があった際の責任
- 永代供養の解約可否
- 解約できたとして残りの期間の永代供養料返金可否 など
墓じまいのことで頭がいっぱいになっていると見落としがちなことが多いです。後々トラブルにならないために、規約をきちんと読み、内容をしっかり把握してから契約書を交わしましょう。
天候や暑さ寒さに左右されずお参りでき、駅から近い便利な立地の施設も多いことから、近年とても人気があります。17回忌や33回忌までなど定められた期間、遺骨を納骨堂に納め、その後は合祀して供養されるため、後継者がいない方も安心して選べる方法で、永代供養墓の個別墓が室内にあるイメージです。
・運転免許書等の身分証明書
・戸籍謄本や住民票
墓石の工事などがないので工事届は不要となりますが、受け入れ先の納骨堂によって必要な書類が異なる場合があります。
また、契約書の内容や規約に関しても、しっかりと確認した上で契約を行いましょう。
散骨や手元葬では、改葬許可証が原則不要となりますが、墓じまいするお墓の管理者の理解を求めるのに時間がかかることがあります。
・運転免許書等の身分証明書
・戸籍謄本や住民票
海外で散骨する場合は英語に翻訳した粉骨証明書、埋葬許可書の準備が必要です。
契約書は永代供養墓や納骨堂のように期間設定がありません。手元に残らないので、遺骨との最後のお別れとなるため、後悔がないようサービス内容を検討して契約しましょう。
手元葬をされる場合は、契約を行わないので必要書類がありません。しかし、いずれは手元にある遺骨の供養方法を選ばなければなりませんので、その時に備えて、埋葬許可書を入手・保管しておくことをおすすめします。
墓じまいをするのではなく、名義変更してお墓を継承する場合について少し説明しておきます。
墓地の名義変更は、契約書にあたる墓地使用許可証を用意し、使用権継承届と一緒に墓地に提出すれば終わりです。書類さえ整えば難しくはないのですが、契約によって、使用者が亡くなってから〇カ月後までと名義変更できる期間が決められていたり、継承者の範囲を限定していたりします。
住民票や戸籍など、使用者との関係を証明する書類が必要になる場合もありますので、あらかじめ墓地へ確認しておくことをおすすめします。
なお、血縁上「上位継承者」や「同位継承者」がいる場合は、その方たちの承諾書も必要です。承諾者が行方不明や病気などで意思疎通ができなくなり承諾書が提出できない場合は、申立書が必要ですのでご注意ください。
墓じまいの手続きは業者に委託することができる?
現地に行かなくても、郵送やFAXなどで手続きができる墓地もありますが、墓じまい自体は、関係者との相談に始まり、契約書やその他の書類の準備、実務的な工程管理と、やらなければいけないことがたくさんあります。
忙しい日々の生活の中で時間も労力も割くのは難しく、つい後回しにして機会を逸してしまうという方が多いのではないでしょうか?
墓じまいの手続きは業者に委託することができますので、思い切って代行業者に依頼するというのも1つの方法です。
生活様式が変わり、お墓と生活圏が遠く離れてしまったという方が多く、需要の高まりと比例して様々な代行サービスが行われていますので、利用してみてはいかがでしょう。
墓じまいをする代行業者の業種も様々で、請け負ってもらえる部分が少し違います。
- 行政手続きのみを代行する弁護士や行政書士
- 行政手続きは行わず、遺骨の取り出しや墓石の解体工事を請け負う石材業者
- 専属の行政書士がいて、行政手続きからお墓の撤去工事まで、墓じまいの一切の工程を請け負う業者
- 行政手続きの書類の発行からすべて行う業者
行政手続きからすべてを行ってもらうと高額な費用がかかりますが、それだけの値打ちはあるでしょう。
その他、改葬先の「墓地」「納骨堂」「散骨業者」などが墓じまいの代行サービスをしている場合もありますので、希望に合ったサービスをしてくれる業者を選び、契約書をしっかり確認して契約してください。
まとめ
墓じまいで起こるトラブルを回避するために、契約書はとても重要です。墓じまいの準備期間は余裕を持ち、契約書の内容をしっかり把握して改葬先の契約をしましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |