墓じまいの注意点を知ってスムーズにすすめよう
墓じまいは、先祖代々のお墓を新たな形での供養に代えることです。つまり、今までのお墓と永遠に別れることであり、終えてしまうと元に戻せません。
そこで、この記事では墓じまいを悔いなく進めるための注意点を3つ解説します。起こりうる問題事象を先に知って、トラブルなくスムーズな墓じまいにしましょう。
墓じまいを検討中に知っておきたい注意点は3つ
- お墓に関わる人に墓じまいの承諾を得ること
- 墓じまい後の遺骨の行き先で手続きは変わる
- 墓じまいにかかる費用は高額になりがち
それぞれの内容について詳しく説明していきます。
注意点①お墓に関わる人に墓じまいの承諾を得よう
墓じまいは、そのお墓に関わる人全てに影響する重大な決断と言えます。親族やお墓に眠っている故人の知り合いなどの関係者だけではなく、お墓の管理者にも伝える必要があります。
墓じまいをしようと思い立った理由はいったい何でしょう?
「お墓が遠くてお参りに行けない」
「お墓を継承する子孫や親族が誰もいない」
「お墓の管理が煩わしく、自分が亡くなった後に家族の負担にしたくない」
など、決して安易な考えではなく、きちんとした理由があるはずです。
今まで手を合わせ、先祖の魂と対話をする場所だったお墓をなくす決断に至った事情を、親族に相談したことはありますか?
自分も親族も後悔しないためにも、話し合いの時間はしっかり持ちましょう。
親族間のトラブルを防ぐには、今のお墓について抱えている問題を共有することが大事です。問題を解決する選択肢の1つとして、墓じまいも挙げられます。
しかしながら、先祖代々継承してきたお墓をなくすことに抵抗がある人もいるでしょう。墓じまいするのであればと、お墓の管理を代わると名乗り出る人がいるかもしれません。
親族間でしっかり話し合い、納得の上、最終的に墓じまいとの結論に至ったら、次はお墓に納められていた遺骨をどう供養するかなどの相談が必要になってきます。
墓じまいすることが決まったら、今のお墓の管理や供養をしてくださっている寺院や霊園の管理者に感謝の言葉と墓じまいの意向を伝えましょう。
お墓の管理者には後々、書類へ捺印をもらう必要があるので、不和が生じないよう丁寧に話を進めましょう。
今のお墓が寺院の管理下にある場合は、「菩提寺と檀家の関係性」かもしれません。
菩提寺は檀家に代わりお墓を供養してくださり、檀家は菩提寺をお布施で支援するという関係です。そのため、お墓を今ある墓地から撤去する墓じまいは、菩提寺と檀家の関係を終えることになります。
相談することなく勝手に話を進めたところ、実は墓じまい時は菩提寺内の永代供養墓に合祀するというルールがあり、違約金として高額な離檀料を請求されるという事例があるようです。
まずは墓じまいに関する規約の有無や内容を確認、トラブルなく墓じまいの承諾を得られるよう、離檀するまでは檀家として感謝と誠意を持った行動をとりましょう。
注意点②墓じまい後の遺骨の行き先で変わる手続き
墓じまいで必要な行政手続きは、お墓から取り出した遺骨を「改葬」するかどうかで変わります。
改葬には法律で定められた手続きが必要になってきます。
墓じまいでは、お墓から全ての遺骨を取り出さなくてはならないので、遺骨の新しい供養先を用意する必要があります。新しい供養先は4パターンに分けられます。
パターンによって手続きが変わりますので、まずはどのような供養先があるのか説明しましょう。
今のお墓を墓じまいしても、墓石に向かって手を合わせたい、今までと変わらない形で供養したいという人には、新たな場所にお墓を新調する方法が良いでしょう。ただし、墓地の検討や墓石の発注など、全体的に時間がかかることを念頭に置いて準備する必要があります。
永代供養墓は、お墓の持ち主に代わって、寺院や霊園の管理者に永代供養を委託するお墓のことです。自分が亡くなった後、管理や供養をしてくれる人が誰もいないなど、いわゆる後継者問題に悩んで墓じまいをする人におすすめです。
大きく3つのタイプがありますが、さらにそれぞれ種類が分かれており、選択肢が多いのが永代供養墓の特徴です。
屋内の施設に遺骨を納めるタイプで、しくみと立地により細分化されます。
- 室内にお墓があるイメージの「墓石型」
- 屋内に並ぶ仏壇に納める「霊廟型」
- 骨壺を納める棚状の「ロッカー型」
- IT技術を利用した「可動型」 など
3タイプあります。
- 従来のお墓に近い「納骨壇型」
- モニュメントの地下にある個別スペースに納骨する「納骨塔型」
- 他の遺骨とまとめて供養される「合祀型」
自然葬のイメージがありますが、樹木葬はあくまでもお墓扱いです。
散骨は遺骨を自然に還す発想の自然葬で、遺骨をまいて供養します。自分の手で先祖の遺骨をまく供養方法で、昨今は自分が亡くなった後の供養として希望する人が多い葬送方法です。
遺骨の量に制限がありませんので、一部又は全部を散骨することができます。もし、お墓から取り出した遺骨の量が多く、永代供養墓に入りきらない、手元供養(後述します)で対応しきれないといった場合、対応できない分を散骨する併用供養もできるのです。
なお、散骨する場所は「海」「陸」「空」の3つに分けられます。
文字通り、海洋に散骨します。船をチャーターして沖合で散骨、乗船が難しい場合は委託業者が代わって対応することも可能です。
陸地に散骨ができますが、どこにでも遺骨をまいてよいわけではありません。散骨専用の土地がある山間部や、島根県にある散骨専用の島などが存在しており、そこを利用することができます。総じて風光明媚な場所にあるのが特徴です。
宇宙に向かって遺骨を飛ばす「宇宙葬」、上空から海洋に向かって遺骨をまく「空中葬」も散骨の一種です。
墓じまいで取り出した遺骨は、お墓に長く納められていたため、洗浄や乾燥などのメンテナンスが必要となります。メンテナンスさえ行えば、手元で供養することが可能です。
手を合わせる場所を設けて自宅に安置すれば、今までの供養の形に近く、法要がしやすいでしょう。
また、ずっと一緒にいたいと願う人でしたら、ネックレスやチョーカーのチャーム部分に、少量の遺骨を入れておけるカロートがついたアクセサリーを身に着ける手元供養もおすすめです。遺骨そのものを加工する方法もあり、遺骨の成分を抽出し、ダイヤモンドなどの宝石に精製することができます。
手元供養は、墓じまい後の新たな心のよりどころになる方法でしょう。
改葬するなら改葬許可証の取得が必要
供養先を理解したところで、ここから手続きについての注意点となります。
新しい供養先4パターンのうち、お墓を新調する場合と永代供養墓に納骨する場合は「改葬」に該当します。改葬するには、法律で定められた「改葬許可証」を取得しなければなりません。
墓地や葬礼に関する法律である、墓地埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)の第8条に「市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。」と明記されています。
さらに、犯罪や刑罰を規定している、刑法の190条では、「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する」とされています。
つまり、正式な手続きをせずに勝手に改葬を行うと罰せられてしまいます。
選んだ供養方法は「改葬許可証」を取得する必要があるのかをきちんと確認し、墓じまいをスムーズに進めましょう。
改葬許可証の取得は、墓じまいを進めながら同時に行うのことをおすすめします。なぜなら、書類が揃っていないと工事が進められないなど、墓じまいの進行を妨げる可能性があるからです。
行政手続きのおおまかな流れは以下の通りです。
- 改葬先に「遺骨の受け入れを証明する書類」を発行してもらう。
- 今のお墓が属する市区町村役場から「改葬許可申請書」を取得する。
- 今のお墓の管理者に「埋葬の証明になる書類」を発行してもらう。
- 市区町村役場に「改葬許可申請書」「遺骨の受け入れを証明する書類」「埋葬の証明になる書類」の3点を提出する。
- 一週間ほどで「改葬許可証」を受け取れる。
新しい供養先として、散骨あるいは手元供養を選んだ場合の行政手続きは基本的に必要ありません。それは「墓埋法」や「刑法」にも、散骨や手元供養に関する文章について、明確な記載がないからです。
しかし、東京都保健福祉局の公式サイトには、埋葬された遺骨の散骨について「区市町村により取り扱いが異なります(以下略)」とされています。手続きの必要がなくても、散骨する場所や手元供養の安置先の条例について、事前に確認しておきましょう。
注意点③墓じまいにかかる費用は高額になりがち
墓じまいを検討する上で、費用は気になるポイントですよね。お墓の撤去費用や菩提寺へのお布施、さらに新しい供養先など、さまざまな場面で支払いが必要です。
そこで、墓じまいの中で発生する費用の相場を紹介していきます。
お墓の撤去と閉眼供養の費用相場
お墓の撤去は石材店が行います。基本的に、遺骨の取り出しにおおよそ2万円から3万円、墓石の撤去に15万円から50万円が相場です。
重量のある墓石なので重機を使って移動させますが、山の中で重機が入れない、墓地の規模が大きいなど、お墓の状況によっては追加の金額かかり、高額になることがあります。
また、お墓に宿った魂を抜く閉眼供養では、3万円から5万円程度のお布施を渡す必要があります。檀家の場合、寺院の規模によって変動しますが、離檀料として10万円から50万円程度かかるようです。
遺骨の新たな居場所別の費用相場
お墓から取り出した遺骨の新しい供養先によって、かかる費用が大きく異なります。
新たにお墓を購入する場合は、はじめに墓地の使用料を支払います。相場は20万円~200万円ですが、都会になるほど高額になり、数百万単位で金額に違いが出るようです。
また、墓石を新調すると数百万円以上が追加で発生します。
永代供養墓は、施設の立地や契約内容がによって、費用に大きな幅が出ます。
- 納骨堂タイプ・・・50万円~100万円以上
- 屋外型・・・50万円以上
- 樹木葬・・・3万~80万円以上
上記が相場と言われていますが、交通の便のよい施設になると相場より高額になるでしょう。
なお、永代に渡る供養と管理を委託する契約のため、維持費が継続的に発生します。維持費も施設によって異なるため、候補選びの際には初期費用だけではなく、長期の費用を見据えて検討することが大切です。
散骨はまく場所によってそれぞれの手段が大きく異なるため、費用にも差が出ます。
5万円~
乗船する船の種類や人数で費用が変わり、自由な葬送にすればするほど高額になります。業者に委託する場合が最も安価です。
5万円~
こちらも委託散骨が安く済みますが、散骨専用区域で行うと18万円以上はかかります。おすすめしませんが、自分の私有地に散骨するようでしたら特に費用はかかりません。
20万円~
セスナ、ヘリコプターなど、どの乗り物を使うかで費用が異なります。
24万円~
成層圏で破裂する風船を利用すると安く抑えられますが、ロケットで月を目指すとなると250万円以上がかかります。
手元供養として、お墓から取り出した遺骨を自宅に安置すれば費用がかかりません。
しかし、掘り出した状態のままでは安置できません。洗浄や乾燥など遺骨のメンテナンスを行う必要があり、その際に費用が発生します。
また、手元供養として遺骨を加工する方法を選択した場合、加工する手段によって費用が異なります。ダイヤモンドなどの宝石に加工すると、費用は0.25カラット本体で39万円以上です。
墓じまいを相談できる業者別の費用相場
墓じまいには、やらなくてはいけないことが多く、思った以上の労力が必要で全てを個人で行うのは、精神的にも肉体的にも大変かもしれません。全てでなく一部でも業者の力を借りると、スムーズに進められるでしょう。
代行料金や手数料が発生しますので、依頼することも1つの手段として以下を参考ください。
- 行政書士の墓じまい代行・・・6万3千円~
- 葬儀店の墓じまい代行・・・19万8千円~
- 散骨業者の墓じまいサポート・・・6万円~
サポート内容をよく吟味して選びましょう。
まとめ
お墓に関わる多くの人達と費用を含め、墓じまい後の供養方法をしっかり話し合うことが何よりも大切です。未来に繋がる前向きな墓じまいになるよう、3つの注意点を踏まえて行動ください。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |