墓じまいの理由とは?
近年、増加傾向にある墓じまいですが、墓石を撤去することが目的ではありません。
「お墓の管理が難しい」「後継者がいない」など、お墓の悩みは多々あります。その解決策のひとつとして墓じまいという方法があるのです。
この記事では、悩みごと別におすすめの供養方法と墓じまいのポイントについて紹介していきます。
墓じまいを決めた理由とおすすめの供養方法について
墓じまいを決めた理由で最も多く挙げられる3つの内容と、それぞれにおすすめの供養方法を紹介していきます。
「アクセスがしにくく、お墓参りに行きにくい」
「お墓の管理を任されているが、遠方に住んでいる」
お墓に関する悩みで多く挙げられるのが上記のような、お墓の立地に関することです。
先祖代々のお墓が山間部や自然豊かな場所にありがちなのは、なぜなのでしょうか?
日本では、墓地以外での埋葬は法律で禁止されており、墓地は都市部より山間部に多く見られます。先祖が見守ってくれるように、眺めの良い高い場所を選び、お墓を建造したのかもしれません。
お墓が遠方にあるという悩みには、今までよりも合掌しやすくなる供養方法がおすすめです。候補としては、以下が挙げられます。
- お墓の新調(墓地の移転)
- 永代供養墓
- 散骨
- 手元供養
それぞれのおすすめの理由を紹介します。
悩みを解決できるアクセスの良い場所、都心や市街地にある墓地や霊園を選んでお墓を新しく建てれば、供養がしやすくなります。
施設により特色が大きく異なり、立地も都市部から寺院の境内までさまざまです。屋内型の永代供養墓はバリアフリーになっている場所もあります。
散骨の最大の特徴は、お墓を持たない選択ができることです。お墓を持たなくても故人を思う心があれば自由に合掌ができます。
納骨や埋葬を選択せずに遺骨を自分のそばに置いておくと、お墓参りに行かなくても手を合わせることがいつでもできますし、法要も可能です。
亡くなった親族の遺骨を納める場所であるお墓は、残った親族や子孫が代々管理し、供養することで続いていくものです。誰も供養せずに放置されてしまうと「無縁墓」になり、そんなお墓が増えている現代なので、他人事ではないと感じる人もいるでしょう。
お墓の所有者と連絡がつかない場合、そのお墓が属している寺院や霊園でも簡単に撤去はできません。墓じまいをして新しい供養方法を選ぶことは、無縁墓になることを防ぐ意味もあるのです。
後継者がいない悩みには、立派な墓標のもとに埋葬する従来のお墓のようなスタイルではなく、自分の代で完結できる供養方法がおすすめです。
自分がいなくなってしまった後でも先祖を供養してもらえるタイプや、お墓や墓標が無縁墓化してしまわないものを選びましょう。
文字通り、親族に代わってお墓の管理者が永代に供養を行う契約をするため、先祖だけではなく、自分を含めて供養してもらえる安心感があります。
遺骨を自然にまいて供養を行い、お墓を持たずにいられます。墓じまいをして、取り出した遺骨の一部を永代供養墓に納骨し、残りは散骨して供養するなど、組み合わせて自分に合った供養方法を見つけましょう。
お墓にかかる費用は、建てたときの工事費や墓石代だけではありません。お墓のメンテナンス費やお墓参りの費用、霊園に支払う管理費、寺院の場合はお布施など、維持管理には永久にお金が発生します。
これらは金額を変更したり、節約したりできません。もし費用負担が大きいと感じているなら、墓じまいで解決できるかもしれません。
お墓の費用負担が悩みの場合、維持管理費がほぼかからない供養方法がおすすめです。お墓の形態をとらずに供養できれば、基本的に管理費は発生しません。
埋葬や納骨とは異なり、遺骨をまいて供養する方法です。遺骨を残さず散骨すると、お墓参りや法要の必要がなく、維持管理費は全くかかりません。
遺骨を自宅に保管しておくことができます。万が一、法要やお参りがしたくなったときに対応できる供養方法です。
墓じまいの理由はその他にもあり、子どもや家族の負担に関する心配も挙げられます。
先祖の遺骨やお墓などの管理を受け継ぐ責任者、祭祀継承者は親族で1人のみです。今までに挙げた理由と重なりますが、受け継いだお墓が管理のしにくい場所にあったり、維持管理費が高額だったりして、祭祀継承者の負担が大きい場合があります。
自分の経験から、子孫や家族に同じ思いをさせたくないと墓じまいを検討するケースもあるのです。
墓じまいをしたいなら親族に理由を打ち明けよう
墓じまいをしようと思い立つ理由は、今のお墓に対する悩みが原因であることがほとんどです。
一人で考え込み、墓じまいを進めようとしていませんか?
墓石を撤去してしまうと、もう後には引けません。まず、本当に墓じまいが必要なのかどうか、親族に相談することから始めましょう。
お墓は一人のものではなく、同じ先祖を持つ親族皆のものです。墓じまいをすることを決めたなら、できる限り、親族全員の承諾を得てから進めることが理想的です。
親族とのコミュニケーションが満足に取れないと、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
墓じまいは、墓石撤去の工事費だけではなく、新しい供養方法にかかる代金や、今までのお墓を管理していた寺院や霊園へ支払う料金など、高額になります。親族間で、墓じまいの費用負担についてはっきりさせておかなければ、後々のトラブルの原因になってしまいます。
墓じまいでは、今まで手を合わせていた墓石を手放す場合が多く、歓迎できないと思っている親族がいるかもしれません。親族の皆が納得できる供養方法を模索することが、先祖への供養になります。
墓じまい後の遺骨の供養方法についてもっと知ろう
墓じまい後の遺骨の供養方法と、それぞれのメリットとデメリットについて知り、親族との話し合いに備えましょう。
悩みがお墓のある場所に関する場合、お墓を移転させて新しく建てなおす解決方法があります。
従来通りの法要や供養が可能なため、親族の承諾を得やすい。
費用が高額な上、管理する祭祀継承者が必要。
家族に代わりお墓の管理者が永代供養してくれるお墓全般を、永代供養墓と呼びます。大きく分けて3つのタイプがあります。
屋内型の永代供養墓です。自分の親族専用の納骨スペースを契約します。中には、IT制御型の施設もあります。
主に屋外にある永代供養墓です。モニュメントや大きな墓標の下に、専用ではなく共同で納骨(合祀)されます。
樹木や草花を墓標とするお墓で、永代供養の約束がされている場合が多く、この分類に入ります。永代供養墓は種類が豊富で施設ごとに特徴が異なり、多種多様です。
施設に管理を任せられ、多くの場合、交通の便が良い場所にある。
増設できず、納骨できる数が限られている場合がある。
なお、個別のスペースを使用するタイプは、使用期間の設定があり、期間を過ぎると合祀される契約が多いようです。多種多様だからこそ、しっかりと確認しましょう。
散骨は自然葬の一種で、パウダー状にした遺骨をまいて自然に還す発想の葬送です。散骨は遺骨をまく場所によって種類が分かれており、自分の手でまくことが難しい場合、業者に代行委託することができます。
海洋散骨は、最も主流な方法と言える、沖合で行う散骨です。乗り込む船のタイプによって、流れや費用が異なります。
陸地でも散骨することができますが、好き勝手にまけるわけではありません。散骨できる場所は、寺院や散骨業者が所有する専用区画となります。なお、島根県には散骨専用の無人島があります。
成層圏で破裂する風船や地球外を目指すロケットに遺骨を搭載し、上空へ打ち上げる宇宙葬も、散骨のひとつです。
飛行機やヘリコプターに乗り、海洋の上空から遺骨をまきます。
散骨は比較的自由な葬送ができることが大きな特徴です。先述したように、お墓を持たない選択が可能となります。
以後の費用がかからず、先祖に感謝しつつ自分で供養できる。
手元に何も残らないことが不安であったり、反対する親族がいたりするかもしれない。
お墓から取り出した遺骨を、埋葬や納骨をしない手元供養という選択もあります。手元供養は主に以下の2タイプに分けられます。
取り出した遺骨を、メンテナンスしてから保管する方法です。従来の仏壇のように安置すれば、いつでも合掌することができ、お墓参りに出向く必要がありません。
代表的なのは、故人といつも一緒にいたいという願いを叶える、遺骨を収納できるパーツ付きアクセサリーです。遺骨そのものを加工して宝石にするという方法もあります。
いつでもどこでも自由に供養ができる。
自分の手元に置いておくことで、自宅で法事を行うことになりかねます。
遺骨の供養方法によって手続きが異なる
行政手続きが必要かどうかは、選んだ供養方法によって決まります。一度埋葬した遺体や納骨した遺骨を、別の場所に葬りなおすことを「改葬」と呼び、法律で定められている行為です。
墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)は、事業者に対してだけではなく国民にも関係する、火葬や埋葬などの葬祭行為について定めています。
墓埋法の第5条に「(略)改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。」と記載があり、改葬する場合には申請が必要です。
お墓の新調(墓地の移転)と永代供養墓の契約は、改葬に該当します。
そのため、手続きも基本的に不要です。
最後に墓じまいの流れと手続きについて紹介します。煩雑になりがちなので、知っておくとスムーズに進めることができるでしょう。
- 親族や今のお墓の管理者に墓じまいについて相談する。
- 遺骨の新しい居場所を決める。
- 改葬の場合は「改葬許可証」の取得手続きを行う。
①改葬先に、受け入れ証明になる書類を依頼する。
②自治体から、改葬許可申請書を受け取り、記入する。
③今のお墓の管理者から、埋葬の証明になる書類に署名捺印をもらう。
④「改葬許可申請書」「受け入れ証明になる書類」「埋葬の証明になる書類」を自治体に提出する。
⑤1週間ほどで自治体から、改葬許可証が交付される。 - 遺骨の取り出しと墓石撤去工事を行い、更地にして墓地を返還する。
- 洗浄や乾燥、粉砕など、遺骨のメンテナンスを行う。
- 改葬の場合は、改葬先へ「改葬許可証」を提出する。
- 新しい方法で遺骨を供養して完了。
散骨や手元供養でも依頼した業者から、改葬許可証の提出を求められる場合があります。なお、墓じまいそのものを請け負う業者や専門家もいるので、相談することにより自分の負担が軽減できます。
まとめ
墓じまいは、家族や子孫のために供養しやすい方法を選択し直す行事です。より良い未来につながるよう、お墓に関わる全ての人とのコミュニケーションを大切にして進めましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |