葬送の方法に多様化が進む今、国内での散骨はもちろん「思い出の国」や「あこがれの海外」で散骨を希望される人が増えています。ただ、外国で散骨をしようと決めても、以下のように不安や心配事はたくさんあります。

  • 散骨は海外でも本当に行われているの?
  • 遺骨を飛行機で運べるのかしら?
  • 日本にあるお墓はどうしたらいい?

ここからは、世界の散骨事情や海外で散骨する方法について詳しく紹介していきます!

国の違いによる埋葬の昔と今

国の違いによる埋葬の昔と今
国の文化や宗教の違いから葬儀の方法はさまざまです。日本では一般的な「火葬」ですが、世界に目を向ければ「土葬」の風習の地域もあります。しかし、土葬にかかる費用や宗教を理由に、火葬を選択する人が増えてきているようです。

土葬の場合

亡くなった人に防腐処理(エンバーミング)が必要となります。また、土葬のための土地購入に加え、墓石や棺などおおよそ1万ドルの費用がかかります。

また、キリスト教(主にカトリック教会)では「死者は復活する」とされ、火葬は禁止されていました。しかし1965年にカトリック教会が火葬を許容したのです。

土葬にかかる費用の「10分の1」程度で行うことのできる火葬は遺族にとっても安心できます。今では火葬も一般的となり、それに伴って「灰状にした遺骨を散骨する方法」を選ぶ人が増えています。

外国で散骨を行う前に知っておきたいこと

自分が亡くなった後は「思い出の地」「思い入れのある国」に散骨してほしい!と願う人も少なくないでしょう。しかし、散骨には国ごとに異なるルールがあり、最低限のマナーも必要です。

いざという時、残された遺族が困らないためにも、海外で散骨するための準備は整えておきたいものです。散骨を行う前に知っておきたいポイントを紹介します。

point1.法律や宗教の違い

法律や宗教の違い

日本の場合

火葬が徹底されている日本において、散骨は節度を持って行う限り、罪に問われることはありません。

外国の場合

国によっては宗教を重んじることから、遺骨を自然に還す「散骨」に対するとらえ方が異なります。その為、希望する国で散骨ができるか調べましょう。法律だけを取り上げた場合、日本と同様に国として規制するものはないようですが「州」や「自治体」により定められたルールがあることが多いです。散骨を希望する国の法令だけでなく、その特定の場所においても散骨ができるかを事前に確認しておきましょう。
また、宗教背景も大切な要素です。散骨という行為が国の人々にどのように捉えられているかを知っておくと、現地で戸惑うことがありません。

例えば、キリスト教のカトリック教会では、葬儀とは新たな魂の旅立ちを祝福する意味を持ち、お祝いとして葬儀を行います。静寂の裡に故人を偲ぶ日本の葬儀のイメージとは全く異なりますね。

法律や宗教の違いを重んじることはもちろん、その国の常識とマナーを守って散骨を行うことを心掛けることが大切です。

point2.散骨する場所

散骨する場所
海外では「海洋散骨」とよばれる海や海岸へ散骨する、また公園や墓地など決められた場所へ散骨する方法が一般的に行われています。

海洋散骨の場合

保護区域として禁止されているエリアがある、海岸から離れた場所に散骨しなければならない等、その地域によって細かなルールが定められている場合があります。

例えば、観光地で人気のハワイは、海岸から3マイル以上沖合でないと散骨ができません。一般的に、散骨が身近な存在となっている国では、墓地に散骨のエリアが設置されていたり、「他人の土地に散骨してはいけない」程度のルールで自由に散骨できたり。

エアーズロックでの散骨について

エアーズロック(別名ウルル)で散骨するシーンが有名な映画がありましたが、エアーズロックは先住民にとって聖地であり、神聖な場所です。散骨するなどという行為は最大のマナー違反です。実は映画でも散骨のシーンは別の場所を利用したそうです。許可を得れば散骨可能な人気の観光地もあります。自分の希望、故人の意向を叶えるためにも、事前に調べておくことをおすすめします。

point3.散骨にかかる費用

散骨にかかる費用
海外でも散骨ができることが分かると、次に気になるのは「費用」のこと。

海外で散骨を行う場合、どのくらいの費用が必要でしょうか?
ハワイで海洋散骨を行う場合、家族4人の参加でおおよそ80万円ほどかかるといわれています。その内訳は、渡航費(3泊5日)60万円が中心です。また、ハワイでは海岸での散骨が禁止されているため、沖へ出るためのチャーターボートが15万円です。さらに海洋散骨の場合は天候に左右されるので、宿泊期間に余裕が必要です。機内へ遺骨を持ち込むために、国内で粉骨処理(3万円)を行っておかなければなりません。

もちろん、渡航費は工夫次第で安くできます。また、墓地を購入し墓石を立てる費用や、すでにお墓を持っていても毎年支払いのある管理料やお布施代と比較してみれば、海洋散骨にかかる費用は決して高いとはいえないかもしれません。

point4.事前に揃えておくべき必要書類

遺骨を海外へ持ち出すのですから、遺族としては遺骨の扱いが気になるところです。

大切な遺骨を機内へ持ち込むことはできるのでしょうか?
答えは「できる」です。手荷物として機内へ持ち込むことができます。ただし、スムーズに検査を通過するため、必要な書類は準備しておきましょう。
持参しておきたい証明書
  • 死亡証明書
  • 埋葬証明書
  • 火葬証明書

または

  • 火葬許可書
  • 埋葬許可証

※場合によっては「粉骨証明書」が必要になる場合もあります。

通常の海外旅行と同じで、空港で行われる手荷物検査で持参した証明書を提示すれば通過できます。

しかし、出国はスムーズでも、入国審査で厳しいチェックを受ける可能性があります。最低でも英訳し、翻訳認証された書類を持参していれば、トラブルは避けられるでしょう。

また、機内にはさまざまな人がいることを忘れないでください。新婚旅行やバカンスを楽しもうとする人など、楽しい気分で搭乗している人もいます。

「座席上の収納棚に入れるから」と骨壺のまま持ち込むのはタブーでしょう。周りの方に遺骨と分からないようにする配慮は忘れずに!

国ごとの散骨事情

国ごとの散骨事情
国により異なる文化や生活環境。なかでも宗教背景により埋葬の方法は大きく異なります。

多様化する葬送ですが、自然に還る意味を持つ散骨について、海外ではどのようなとらえ方をしているのでしょう。観光地として人気の国を例に紹介します。

アメリカ

アメリカにおける散骨は、州ごとに法令が異なります。しかしほとんどの地域で、散骨を制限する法令は定められていません。

一方で、海洋散骨は沖合でまかなければいけないというルールがあり、さらにEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)に報告するようMPRSA(海洋保護法)で定められています。ハワイ州では海洋散骨をする場合、特別な許可は必要ありませんが海岸から3マイル以上沖合で散骨しなければならないというルールが設けられています。

国内の旅行会社では、散骨を現地オプションで扱っているツアーもあります。散骨に対してとりわけ規制のないアメリカですが、世界遺産に登録されているグランドキャニオンは注意が必要です。

周囲にネイティブアメリカンの居住区が点在しています。宗教的な背景から散骨に適した場所とはいえないでしょう。

現地には、散骨を代行する業者も存在します。いろいろな事情で現地へ行けないとき、海外の散骨代行のサービスを利用することもおすすめです。

オーストラリア

火葬の習慣のない先住民との共存を大切にするオーストラリア。散骨において国の規定はありませんが、一部の自治体では散骨のためのエリアが整備され、散骨しやすい環境が整っています。

アクティビティが豊富な人気の観光地「グレートバリアリーフ」は散骨に不向きと思われますが、実は現地に代行業者が存在しているのです。

クルーザーやボートで沖へ向かい、離島周辺で美しい海に囲まれた場所で散骨を行います。熱気球から散骨するプランを扱う業者もあります。

雄大な自然と美しい海を眺めながら行う散骨は、言葉どおり「自然に還る」自然葬ですね。オーストラリアは入国審査が厳しい国といわれています。

申告せず遺骨を持ち込もうとした場合、没収、あるいは罰金を科せられることがあります。事前に入国に必要な書類を準備しておきましょう。

イギリス・フランス

イギリスでは散骨に寛容的である一方で、公有地や公園での散骨は禁止されています。これは自然葬に関する論理規定からくるもので、自然の生態系へ影響を及ぼさないよう厳しい規制が設けられています。

この規制により墓地や教会、火葬場に散骨することとなります。墓地には散骨場が併設されている場合が多く、イギリスならではの草花が咲き誇る美しい環境が整えられています。

フランスでは陸地、主に都市部への散骨はほぼ禁止されており、イギリスと同じように火葬場に散骨する場が設けられています。イギリスやフランスは、陸地への散骨に厳しいルールが定められていますが、一方で海洋散骨は許容されており、粉骨である場合は海岸から300メートル以上離れた場所に、容器(水溶性であることが必須)に入れて海に沈める場合は海岸から6キロ以上離れた場所に、散骨することができます。

ちなみに、セーヌ川への散骨は禁止されています。

本当の星になる?宇宙への散骨

本当の星になる?宇宙への散骨
散骨ができる場所は海外にとどまらず、宇宙で散骨する「宇宙葬」とよばれるプランも登場しました。大きなスケールとロマンを感じる宇宙。

故人にも遺族にとっても夢のような葬送として話題になっています。宇宙葬は2つ方法があります。

1つは大きな風船を使った宇宙葬、もう1つはカプセルに入れた遺灰をロケットで打ち上げる方法です。バルーンを使った宇宙葬は、風船の中に遺灰を入れて空へ放ちます。

風船はやがて成層圏(高度30~35km付近)へ到達し、気圧の変化で風船が破裂、空中で散骨されます。大気圏(高度100km以上)を超えないため、正式には宇宙空間ではないと異論があることも加えておきましょう。

ロケットで打ち上げる方法は高度100㎞以上で行われる宇宙葬です。人工衛星のようなロケットの場合、地球の軌道に乗せて何年も周回し、最後は大気圏に突入して、カプセルはロケットと一緒に燃え尽きます。

宇宙探査を目的としたロケットに遺灰を乗せれば、永遠に宇宙を彷徨うこととなります。

外国で散骨するために

国の文化や習慣、宗教背景により、散骨はさまざまなとらえ方がされています。海外で散骨する際は「散骨させていただく」という謙虚な気持ちで、その国のルールに沿った形で故人を弔わなければならないでしょう。

トラブルを避けるためにも、海外散骨を行う方法をまとめました。

自分で散骨をする

現地へ向かい、自分で散骨を行う場合は日本の旅行会社が提供するオプションを利用する方法が便利です。ハワイなど人気の観光地には、散骨のためのオプショナルツアーが提供されています。

1時間程度のオプションで15万円~(※ハワイの場合、渡航費は別となります)。旅行会社を利用すれば現地の手配も行ってくれます。

海外で散骨したい遺族にとっては、とても便利なサービスといえるでしょう。また、冠婚葬祭を専門とする企業も、散骨を扱う業者が増えています。

故人の希望を叶えるためにも、さまざまな業者を探してみてはいかがでしょう。

海外の散骨代行

海外の散骨代行
できれば現地へ行き、遺族の手で散骨を行いたいところですが、さまざまな事情で行けない場合もあります。そのような方に代わって散骨を行ってくれるサービスもあるのです。

業者によってサービスの内容は異なりますが、散骨の様子を写真や映像にしたり、GPSを利用してどこに散骨したか報告してもらえるようになっていたりするので、日本にいながら散骨の様子が分かるようになっています。

しかし、現地の代行業者へ依頼するには、直接自分で手配が必要です。国によっては日本人が対応してくれる業者がありますので、言葉の問題は心配ありません。

海外での散骨にまつわるトラブルを避けるために

海外での散骨にまつわるトラブルを避けるために
故人の希望とはいえ、家族や親族の中には昔からの慣習を大切にする人もいます。

  • 「墓参りをする先がなくなってしまう」
  • 「日本にあるお墓が無縁墓になってしまう」

など、遺族や故人の友人から不満が出ることも予想できます。

もしお墓があるなら、分骨して一部を海外で散骨する、墓じまいをするなど、お墓の今後についてしっかりと考えましょう。同時に、家族や親族の了解を得ることも必要です。

散骨を希望される人は、お墓にかかる費用や手間がなくなると思いますが、遺族のほとんどはお墓参りをしたいものです。お墓があるならば遺骨を分骨して、一部を海外で散骨する方法をおすすめします。

まとめ

1.埋葬は国の違い、昔と今の違い、両方あるため現状を調べる
2.外国で散骨を行う前に知っておきたいことは州や地域のルール
3.国ごとに散骨事情はさまざま
4.外国で散骨するために大切にしたいのは慣習
5.海外散骨にまつわるトラブルを避けるために親族と話すことが大切

土葬から火葬へと変化している国も多く、葬送の方法として一般的になりつつある散骨。

しかし、文化の違いや宗教背景などを理由に、散骨を禁じられている地域も少なくはありません。

現地のルールをしっかりと調査し、マナーを守って散骨を行いましょう。

日本には散骨に戸惑う人は多く、外国で散骨するとなると親族の同意を得ることが難しいかもしれません。

しっかりと話し合い、事前に同意を得ることが大切です。

著者情報

著者情報
未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。