供養と聞くと、一般的な四十九日や一周忌、三回忌をまず思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は、法事や法要を行うことだけが、供養ではありません。

大切なのは故人の希望と同時に、家族や親族の気持ちに添う方法を見つけることです。今回は、供養の方法を8つと、4つの散骨方法をご紹介しています。

故人の希望通りに、散骨や供養をしてよいものか、悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

供養の方法に決まりはありません

故人の遺骨を散骨したあと、「供養はどのようにしたらいいのだろう」と頭を悩ませる方もいらっしゃるでしょう。散骨を選んだのには、故人の遺志というほか、お墓を作る費用または将来お墓の世話をしてくれる人がいないなど様々な理由があるかと思います。

供養の方法には「こうしなければならない」という決まりはありません。ただ、家族や親族の心の拠り所として、何らかの形でお参りなどをして故人を偲ぶ方が多いのも事実です。

また、人によっては元々お付き合いのある宗教家に相談、報告が必要な場合もあるでしょう。どのような場合も、家族以外の親族にも散骨することを伝え、話し合いをすることをおすすめします。

ここでは、散骨後の法事や法要、手元供養、分骨、自宅に祭壇や仏壇を設ける供養についてご紹介します。故人の遺志も尊重しつつ、家族や親族の気持ちにも配慮した最善の供養方法を選択するために参考にしてください。

遺骨が無くても「法要」「法事」はできる

遺骨が無くても「法要」「法事」はできる
遺骨を全て散骨してしまっていても、法事や法要を行えます。法事や法要とは元々、仏教の儀式です。

しかし、法事や法要を節目として気持ちの整理をする方も多いのが現実です。食事会を催して、故人の思い出を語り合うのもよいでしょう。

元々お付き合いのある寺院などがある場合、相談すれば儀式を執り行ってもらえるかもしれません。散骨した海が見えるレストランなどを会場に選ぶと、それも供養になることでしょう。

少しだけ遺骨や遺灰を残す手元供養

少しだけ遺骨や遺灰を残す手元供養
遺骨を全て散骨せず、手元に一部を遺すことを手元供養といいます。小さな骨壺や、アクセサリーとして中に納めることができるものなどが販売されているので、遺族が一番よいと思う形で手元に遺すことをおすすめします。

骨壺やアクセサリーを仏壇に置いたり、写真や季節の花と一緒に置いたりすれば、お墓の変わりのように好きな時に手を合わせることができます。お墓を作らないので、家族や親族で分骨という形で供養したいという方にも適しています。

いつでも故人を身近に感じたいというのであれば、アクセサリーにして身に着けておくとよいでしょう。故人の遺志を尊重しつつも、遺族の心情に配慮できる方法です。

遺骨の一部を菩提寺の墓地に納骨

菩提寺や先祖代々のお墓がある方は、散骨したい思いを菩提寺に伝え、相談しましょう。墓地によっては、遺骨を納めることが使用条件である場合があり、また、遺骨のない仏壇やお墓などには供養はできないといわれる場合があります。

全てを散骨せず、分骨という形でお墓に納めるということで先方と話し合ってみてください。また、親族の中には全て散骨することを快く思わない方や、お墓に納めて戒名などをつける費用を惜しんだと考える方がいることがあります。

散骨が故人の遺志でも、分骨して納骨することで、トラブルを避けられることが多いのです。分骨は、一般的な供養をしたいなどの遺族の思いを叶える方法でもあります。

写真などを飾って祭壇や仏壇を設ける

写真などを飾って祭壇や仏壇を設ける
散骨をしたあとで、故人が亡くなったことを知って手を合わせにくる方がいらっしゃるかもしれません。また、故人を偲ぶ場所が欲しいと思う方もいるでしょう。

そのような場合は、故人の写真や思い出の品を飾る祭壇や仏壇などを設けることをおすすめします。散骨したことを知らない方が訪ねて来ても、手を合わせる場所があれば供養ができると納得してもらえるでしょう。

祭壇は、敷物の上に思い出の写真や品、花、ろうそく、線香などを配置したオリジナルのものでかまいません。既製品の小さな仏壇も販売されているので、参考にしてください。

手作りでも、既製品でも、故人のことを偲べるようになっていることが大切です。

日本では海洋散骨が主流

日本では海洋散骨が主流
近年、映画の題材に取り上げられたり、著名人の供養として行われたりしたことから、散骨や散骨の方法が知られるようになりました。ある葬儀会社の調べでは、散骨を希望する場所として、海洋散骨が多いという結果が出たそうです。

また、海洋散骨のセレモニーを行っている会社によると、年々、海洋散骨の件数が増えているそうです。海が好きだった人や、長期間海外にいた人、お墓の管理をしてくれる跡継ぎや親族がいない人のほか、家族や親戚にお墓のことで迷惑をかけたくない人などが主な希望者のようです。

海洋散骨をした際の主な供養方法を5つ紹介するので、海洋散骨を考えている方は参考にしてください。また、法要の際のルールをご紹介いたします。

数年毎に散骨する供養

海洋散骨を行う際、一度に全て散骨するのではなく、法要とともに数年ごとに散骨する方法があります。散骨するために儀式を含め海洋散骨を頼んだ業者に、数年ごとに散骨することを伝え、水溶性パックを希望の回数分、分けてもらいましょう。

数回に分けて散骨することにより「手を合わせる対象がなくなってしまい寂しくなった」などという後悔をしなくてすみます。数年ごとに、法要とともに散骨することで、家族や親族をはじめ故人とお付き合いがあった全ての人が、ゆっくりと気持ちの整理をすることができるでしょう。

海洋散骨には法律をはじめとする様々なルールがあるので、法要ごとに、海洋散骨の業者に相談することをおすすめします。

海に向かって故人を偲ぶ

海洋散骨を業者に依頼して行うと、正確な緯度と経度を教えてもらえることがほとんどです。しかし、散骨を行った現地まで個人で行くのは容易なことではありません。

散骨をした海が見える場所や岸から、海に向かって手を合わせるのも供養の方法です。業者に、陸地から故人を偲ぶのに最適な場所はどこか、聞いておくことをおすすめします。

また、海は世界中繋がっていると考えて、海や海周辺に出かけた時に故人を偲ぶのもよいでしょう。

メモリアルクルーズを利用する

メモリアルクルーズを利用する
海洋散骨を行う業者のほとんどが、散骨後の供養として法要クルーズを行っています。一般的に法事と呼ばれる一周忌や三回忌など、故人の親族や親しかった人にとっては大事な節目となる年に行うクルーズです。

散骨した正確な緯度と経度が分かっていれば、散骨したポイントや付近を航行します。散骨した業者が異なる場合でも、法要クルーズを行ってくれる業者もあります。

皆で故人の思い出を語り合うよい機会となるでしょう。

チャーターだけでなく合同のクルーズも選べる

メモリアルクルーズのチャーター便は、船の定員人数内であれば何人でも乗船可能です。定員人数は業者やプランによって異なるので、よく確認してください。

チャーター便は、散骨した正確な緯度と経度が分かっていれば、そのポイントまで航行してもらえるほか、追加料金を支払えば会食することが可能です。一方で、様々な理由から少人数での参加を希望する方もいらっしゃると思います。

そのような場合は、合同で法要クルーズを行っている業者もあるので、そちらへの参加をおすすめします。合同クルーズの場合は、散骨場所を順番で航行する場合と周辺海域にて合同で法要を行う場合があるので、依頼する業者に確認しましょう。

一般の遊覧船や定期船から故人を偲ぶ

散骨した場所が一般の遊覧船や定期船の航路の近く、または航路から見える場合があります。このような場合、遊覧船や定期船に乗船して故人を偲ぶのもよいでしょう。

遊覧船や定期船を利用する方が、法要クルーズを利用するより費用を抑えられる場合があります。ただし、遊覧船や定期船は、観光や仕事などで利用する方がほとんどです。

服装はもちろんのこと、実際に手を合わせるなどの行動も周囲の方への配慮が必要です。

法要のときはルールを守りましょう

散骨については、法律での規制はとくにありません。ただし、一般社団法人日本海洋散骨協会では加盟している海洋散骨の業者に対し、ガイドラインを設けています。

散骨する際のガイドラインではありますが、海上や海の側で供養する際にも適用されるものがあります。桟橋やマリーナは他の利用者の心情に配慮し、喪服は避け、平服とし、献花や献酒は袋に入れるなどして目立たないようにしましょう。

数年ごとに海洋散骨を行う場合、遺骨は1ミリから2ミリの細かいパウダー状にしておき、何かに包む場合は水溶性のものにしましょう。献花や献酒は海洋汚染を避けるため、大量に撒くことはできません。

業者で用意されていることが多いので、持ち込んでいいか・持ち込めるとしたらどの程度かを確認しましょう。簡単ですが、主なガイドラインは以上です。

詳しい内容や分からないことは、業者に確認し気持ちよく供養を行えるようにしましょう。

山への散骨

山への散骨
山が好きな方や登山家だった方が、遺族や登山仲間に頼んで山への散骨を希望されることがあります。散骨自体を禁止する法律はありません。

山への散骨は、まず、散骨を希望する山の所有者を調べ、原則として散骨の許可を得なくてはいけません。日本の山のほとんどが、国有地、都道府県所有地、私有地など様々な種類に分かれており、それぞれの許可を得るのは大変です。

実際に散骨が可能な場合も、水源地域、建造物の側や施設の周辺、天然記念物、生態系に影響を与えるような場所での散骨はマナーとして避けなければいけません。様々なトラブルや規制を避けて、山へ散骨する方法として、山への散骨を行っている業者や、寺院に依頼することをおすすめします。

業者であれば、自治体への届け出や手続きなどを代行して行ってくれます。また、山への散骨を行っている寺院のほとんどは、寺院で所有している土地での散骨になるので安心です。

山で散骨した場合の供養

山への散骨を専門の業者や寺院で行った場合、散骨する際に自分の足で立ち会うことができます。業者や寺院が所有する専用の土地であれば、散骨することで周囲に迷惑をかけるということもありません。

業者によっては、散骨地点を地形図などで渡してもらえることもあります。また、専用の土地に立ち会って散骨を行えば、どの辺りに散骨したかということも分かりやすいでしょう。

寺院や業者によっては、お墓をお参りするかのように自由にお参りすることが可能です。お墓はありませんが、散骨した場所で納得のいくまで故人を偲ぶことができます。

もし、散骨した山などに入れない場合は、山の麓で手を合わせるのもよいでしょう。

バルーン散骨や宇宙散骨

バルーン散骨や宇宙散骨
バルーン葬とは、専用の大きな風船の中に、粉末化した遺骨をバルーンに入れ、空に飛ばす方法です。実施場所と実施日が決定したら、遺灰を遺族がバルーンの中に入れ、バルーンを飛ばします。

2時間~数時間後、成層圏付近で気圧の関係で3~4倍に膨らんだバルーンは膨脹し、遺灰は空中に散骨されます。バルーンに納める遺灰は全て・一部どちらも可能です。

宇宙葬とは、カプセルに遺灰の一部を入れ、ロケットでアメリカ合衆国の宇宙基地から人工衛星などとともに宇宙に飛ばす方法です。業者やプランにより異なりますが1g~7gの遺骨を、送られてきたカプセルに入れます。

短いものでは5週間、長いものでは240年間、軌道を周回すると試算されているそうです。打ち上げの瞬間の動画を送ってもらえるほか、アプリで衛星の現在地を確認できます。

昼夜を問わず空を見上げ、手を合わせれば、故人を偲ぶとともに供養になるでしょう。

まとめ

1.海や山、空や宇宙など、故人の希望の場所に散骨し、供養することは大切です。
2.全て散骨してしまう前に、家族で納得のいくまで供養方法について話し合いをしましょう。
3.家族で話し合って決めた供養方法は、親族の方にも、納得してもらえるようにしっかりと説明する必要があります。
4.お世話になっている菩提寺などがある場合は、報告や相談を怠らないようにしてください。

とくに菩提寺がある場合には、これまで通り、菩提寺と気持ちよくお付き合いするため、また、先祖代々のお墓を使用するためにも相談が必要です。そして、法事や法要は故人のためでもありますが、遺族の気持ちの整理をするための心の拠り所となっている部分もあります。

故人の遺志と遺族の気持ち。双方にとって、最良の方法を選択するようにしましょう。

著者情報

著者情報
未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。