日本では、お正月(松の内)に合わせて新年のご挨拶や前年の感謝や近況報告などを兼ねて年賀状を出す風習があります。しかし、近年は高齢による理由で「終活年賀状」で年賀状を辞める旨を伝える人が増えています。

終活年賀状とは、どのようなものなのでしょうか?文面は何を書けばよいのでしょうか?そして、受け取り側はどうしたらよいのでしょうか?

今回はこれらの「終活年賀状」についての疑問を簡単に説明します。

終活年賀状とは?

年始の挨拶として欠かせない年賀状ですが、年々、年賀状の出荷枚数が減っているとの報道を目にします。近年は、SNSなど年賀状以外の方法で年始の挨拶を済ませる人が増えているのが原因でしょう。また、それとは別の理由で年賀状を辞めることを決める人もいます。

しかし、急に年賀状が届かなくなると「何かあったのでは?」と受け取り側が心配するかもしれません。そのため、「終活年賀状」を前もって出す人が増えてきました。

終活年賀状とは?
長年、年賀状を送っていた人が「来年から年賀状を出さない(出せない)」との文章を添えた年賀状で、年賀状じまいとも言われます。
終活年賀状を出す理由

終活年賀状を出す理由
年賀状を出さなくなることを知らせるために終活年賀状を出します。

日本人は礼儀正しい人種なので、「来年から年賀状を辞退します」との挨拶として終活年賀状を出すようです。では、どのような理由で年賀状を出すことを辞めようと考えるのでしょうか。

年賀状を辞める主な理由
  • 高齢のため、年賀状作成が大変になってきた
  • 金銭面の負担
  • 家族が代筆してくれているが、代筆者も高齢になってきた
  • いざというとき、家族の手を煩わせたくない
  • 付き合いが薄くなった人たちとの関係を整理するため

同年代の仲間が先に他界し、届く年賀状の枚数が減ったときなども年賀状の辞めどきと感じるのではないでしょうか。そこで、ほとんどの人が身体や心が元気なうちに、終活年賀状を出すことを決めるようです。

しかし、終活年賀状を出したからと言って、その人との付き合いが終わるわけではありません。終活年賀状には、その旨をきちんと書き留めましょう。

文面については、後述で説明します。

終活年賀状は出さないと失礼?
年賀状を辞める方法は?
年賀状を出すことを辞めるには「自然消滅で減らす」「終活年賀状を出す」の2つの方法があります。

まず、下記のような相手には、こちらから年賀状を出すのを辞めれば自然消滅で年賀状の送付を減らすことができるでしょう。

  • 義理だけでやり取りしている相手
  • こちらからだけ、毎年年賀状を送付している相手

相手から届いた年賀状には、「寒中見舞い」という形で返信しましょう。もし、相手も義理だけで年賀状を出してくれている場合は、そのまま返事がこなくなるでしょう。こうすることにより、自然消滅で年賀状が減っていきます。

こちらからだけ年賀状を出している相手は、実は年賀状のやり取りを望んでいないかもしれません。返事(電話、メールSNSなども含む)がないのならば、相手も自然消滅を望んでいるのかもしれません。

なお、年賀状を出し続ける人に対しても、頃合いを見て「年賀状を出さない」または「年賀状を減らしている」など伝えると、最終的に全ての年賀状を辞めることができるでしょう。

年賀状の自然消滅は失礼にあたりませんか?
突然、年賀状を出さなければ「失礼」「不快」と、感じる人がいるかもしれません。または何かあったのではないかと、心配する人もいるかもしれません。年賀状のやり取りだけの相手であっても、年に一度のやり取りが楽しみと思っている方もいます。そのため、義理だけでやり取りしている相手以外は、年賀状の自然消滅は避けた方がよいでしょう。先述しましたが、事前に「年賀状を出さない」または「年賀状を減らしている」など伝え、相手に無用な気遣いや誤解を与えないようにしたいものです。

年賀状の数を減らしたり出すことを辞めたりするのであれば、「終活年賀状」を出すことをおすすめします。

終活年賀状を出す適切なタイミングとは?

終活年賀状を出す適切なタイミングとは?
終活年賀状は出した方がよいということが分かりましたね。では、終活年賀状を出すことを決める適切なタイミングはいつがよいのでしょうか?

それは、送り側の考え方や環境によって異なります。

1.年賀状を作成するのが大変になったとき

今は、パソコンで年賀状を作れたり、郵便局にスタンプが置いてあったりします。しかし、それでも作成するのが負担に感じるようになったら、終活年賀状を出すよいタイミングでしょう。

2.引っ越しをしたとき、病院や施設などに入院・入所することが決まったとき

以下のような機会に人間関係を整理するのもよいタイミングです。

  • 夫婦二人なので掃除などが楽になるよう、今より狭い所に引っ越しする
  • 子どもと同居することになった
  • 故郷に帰ることにした
  • 高齢者施設に入所することになった
  • 体調不良などで入院することになった
3.定年退職したとき

長年会社に勤めていると、上司や部下、同僚、よっては取り引き先などと年賀状のやり取りをしている人もいるでしょう。退職を機に、終活年賀状を出すことで人間関係を整理し、今後もお付き合いを続ける人を選別することもよいタイミングになります。

親の代わりに年賀状を作成し、宛先や内容だけ親が確認しているという代筆の場合は、どのタイミングで終活年賀状を出したらよいでしょうか?
以下のような状況になったときは親に代わって終活年賀状を出すよいタイミングです。
・親が体調を崩したとき
・親が認知症になったとき
・親が元気な内に、子どもに迷惑をかける前に人間関係を整理したいと言い出したとき
・自分も高齢になってきて、年賀状を代筆するのが負担になってきたとき
・親が介護施設などに入ることが決まったとき

代筆者が終活年賀状を出す場合は、「代筆であることを明かすor明かさない」「具体的な状況を書くor書かない」など、いくつかの選択肢があります。

親に文面内容を相談できる場合はよいですが、病気などで確認できない場合は、他の家族と相談して決めましょう。親の現状を正直に書き記すことにより、終活年賀状を送った相手が快く納得できることが考えられます。

なお、終活年賀状を出すことを躊躇する人もいます。適切なタイミングで丁寧な終活年賀状を出せば、相手に不快な思いや無用な心配を与えないこと、今後の年賀状をスムーズに辞められることをきちんと説明して納得してもらいましょう。

終活年賀状に添える文章とは?

終活年賀状に添える文章とは?
終活年賀状を出すことを決めたのはよいものの、どのように書き記せばよいでしょうか?

年始の挨拶の最後に「来年から年賀状は出しません」などといきなり書くことは失礼にあたるため、よくありません。これまでの感謝や理由などと共に、翌年から年賀状を出せないお詫びの気持ちなどを書き添えましょう。

次項で、さまざまなケースに合わせた文章のヒントを紹介するので、参考にしていただけると幸いです。

高齢が理由で終活年賀状を送る場合

高齢になったことにより、年賀状を出すことが負担になった場合は、終活年賀状にその旨を記すとよいでしょう。

年齢的な衰えや負担は誰にでもあることです。正直に伝えることで、ほとんどの人が理解してくれます。

では、その場合はどのような表現が好ましいでしょうか。以下に表現例をいくつか挙げますので、こちらを参考に文面を作成してください。

終活年賀状に記す表現例
  • 手元がおぼつかなくなり~
  • 寄る年波を感じるに至り~
  • 寄る年波には勝てず~
  • 年齢を重ねるにつれ~
  • 私も高齢のため~
  • 高齢になってきて~
  • 文字の読み書きが辛くなり~
  • 視力の衰えを感じ~
  • 米寿(または卒寿など)を迎え~

代筆者が終活年賀状を出す場合も同様の表現が使えます。

そして、理由を伝えたあとに「翌年から年賀状を出さない=辞退すること」を記します。この辞退を伝える一文は、理由がどの場合であっても書かれてあると好ましいです。

年賀状を辞退する一文例
  • 本年(今年)をもちまして、年始のご挨拶をご遠慮させていただこうと考えております。
  • 本年(今年)をもちまして、年始のご挨拶状を失礼させていただこうと考えております。
  • 本年(今年)をもちまして、新年のご挨拶状を最後とさせていただきます。
  • 今後は年賀状を控えさせていただこうと思っております。
  • 毎年の年賀状も今年限りで失礼させていただきたいと思っております。

なお、今回紹介した文章や言葉は、あくまでも一例に過ぎません。ぜひ参考にしていただき、自分らしい言葉で心のこもった終活年賀状を作成してください。

親の代筆で終活年賀状を送る場合

親の代筆で終活年賀状を作成する場合の文章をご紹介します。あくまでも一例に過ぎないので参考にしていただき、その家族らしい終活年賀状を作成してください。

親の代筆であることを明かすことで、「自筆できないくらい年賀状を出すのが難しい」または「代筆者も大変なのだ」と理解してもらえるでしょう。

終活年賀状には、新年のご挨拶や文章のあとに相手の健康や幸福を願う言葉など、通常の年賀状と同じように書き始めます。その後、以下の文を続けるとよいでしょう。

両親のどちらかが認知症になった場合

母または父の(名前)が高齢となったため息子または娘の(名前)が年賀状をしたためさせていただきました。
(名前)は認知症の症状などか自ら年賀状をしたためることが難しくなって参りました。
今後の年賀状についてはご遠慮させていただきたいと思います。
今までのご厚誼に心よりお礼申し上げるとともに 皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

両親のどちらかが施設に入所した場合

母または父の(名前)が(理由:高齢によりや介護が必要なためなど)、●●にある(施設の名前)という施設に入所いたしました(いたします。)
(名前)はおかげさまで元気に過ごしています。
自ら年賀状などをしたためるのは難しく、娘または息子の(名前)が代わって年賀状をしたためさせていただきました。
このような状況ですが、 いただいたお便りは大変喜んで読んでおります。
どうか今後も変わらぬお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

両親のどちらかが入院している場合

母または父(名前)ですが 昨年●月より、●●(骨折などの簡単な病名)のため●月より入院生活を送っております。
ご連絡が遅くなり誠に申し訳ございません。
おかげさまで、現在では容体は安定し、 母または父も回復を目指して日々励んでおります。
本年もこれまで同様、ご交誼のほどお願い申し上げます。

感謝やお詫びの気持ちを表すには?

感謝やお詫びの気持ちを表すには?
終活年賀状には、「これまで長年に渡って年賀状のやり取りをしてきたこと」「年賀状以外でもお付き合いしてきたことについての感謝」「今後、年賀状を出すことを辞めるお詫びの一文」を添えましょう。

以下に終活年賀状の例文を紹介します。これらを参考に、自分らしい感謝やお詫びの言葉を付け加えてください。

年賀状のやり取り以外あまりお付き合いのない人への感謝の言葉
  • 長年に渡りあたたかい賀状を賜りありがとうございました。
  • 長い間お付き合いいただき本当にありがとうございました。
  • 今まで年賀状のやり取りしていただきありがとうございました。
年賀状のやり取りだけでなく今後もお付き合いをしていきたい人への感謝の言葉
  • 今後も変わらぬお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
  • 今後も変わらぬお付き合いをお願い申し上げるとともに~
  • 今後とも今までと変わらぬお付き合いをいただければ幸いです。
年賀状を辞めるお詫びの言葉
  • 突然のお知らせとなりますが、どうぞご了承くださいませ。
  • 勝手ではございますが、どうかご容赦くださいませ。
  • 誠に勝手なお願いとなり、非礼を深くお詫びいたします。
  • 誠に勝手ではございますが、来年以降はお心遣いなどなさいませんよう、よろしくお願い申し上げます。
  • 来年以降は年賀状を頂戴してもお返事できないと思います。
  • 誠に勝手ではございますが、ご了承いただければ幸いです。

終活年賀状を出すと気持ちにも時間にも余裕ができる

年賀状を辞めるメリットは大きく分けて2つあります。

1.金銭的負担が減る

年賀状を出すには当然のことですが、はがきを用意=購入しなければなりません。年賀用の官製はがきは現在63円で、10枚用意するだけでも600円以上です。

また、印刷を頼んだら印刷代、自宅のパソコンで作成した文章や写真をプリンターでプリントしてもインク代や電気代がかかります。

1枚辺りにかかる料金は僅かでも、枚数が多くなれば多くなるほど出費がかさみます。年賀状を辞めれば、年賀状にかけていた分の費用の負担がなくなります。

2.自由時間が増える

年賀状の作成は、パソコンでデザインができたり、郵便局で無料のスタンプを押せたりしますが、どちらにしても手間がかかります。年賀状用の市販のソフトウェアを購入したとしても、その中でどのデザインにするのかを決めなければいけません。たとえ、パソコンで作成しても、手書きの一文を添える人もいます。

一枚ずつ手書きの文を添えるのは、労力と時間がかかります。終活年賀状を出すことにより、年賀状を早く作成しなくてはならないといったストレスが軽減されます。

違った形で周囲とのコミュニケーションを取るのを忘れずに

違った形で周囲とのコミュニケーションを取るのを忘れずに
終活年賀状に年賀状を辞める理由やこれまでの感謝などを書いても、受け取った人によって感じ方が異なります。相手によっては「これからどのようにお付き合いすればいいだろう?」と困惑するかもしれません。

送付者が一人暮らしの場合、孤独死などにならないかを心配してくれる人もいます。人によっては、すぐに電話などで連絡してくるでしょう。

体も気持ちも元気だけれど年賀状を送るのを辞めるだけという場合、終活年賀状を受け取った相手が無用に心配しないで済むよう、違った形でコミュニケーションを継続しましょう。電話やメール、SNSの利用、互いの同意があり都合がつけば外で会うのもよいですね。

終活年賀状を受け取ったらどうする?

終活年賀状を受け取ったらどうする?

もし自分の手元に終活年賀状が相手から届いたらどうしたらよいのでしょうか?
基本的には翌年から年賀状を出すのを控えることをおすすめします。

親しい間柄や普段から年賀状以外でもお付き合いがある場合は、電話をして事情を確認するとよいでしょう。メールアドレスや、ラインのアカウントなどが書かれている場合は、そちらに連絡して構わないという意思表示です。忙しくない時期を見計らって連絡するとよいでしょう。

また、年賀状を辞退するだけであって、お便りを受け取るのは嬉しいという文が添えられていることがあります。その場合は、これまでと同様に年賀状や手紙を送ってくださいとのことでしょう。

どうしても年賀状や便りを出したいときには「返事は結構です。」「読んでいただくだけで幸いです。」などといった文面を添えて送れば、相手に気を使わせないです。

まとめ

1.終活年賀状とは年賀状を翌年から出さないことをお知らせすること
2.終活年賀状を出す際は、丁寧かつ相手側に心配かけない文章を心がける
3.これまでの感謝と年賀状を出さなくなるお詫びの言葉を忘れずに
4.終活年賀状を出すことでストレスのない年末年始を過ごせるようになる
5.終活年賀状を出してもコミュニケーションは続けよう

終活年賀状は、感謝の気持ちやお詫びの言葉などを添えて出せば決して失礼にあたるものではありません。また、親しい人とのコミュニケーションが終わるわけでもありません。

健康上の理由でなく、年賀状作成がストレスだったり負担に感じたりしている人は、なおさら早めに終活年賀状を出して、ゆったりとした気持ちの年末年始を過ごしていただきたいです。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。