終活とは、人生の最期を迎えるための準備活動です。家族や身近な人に思いを伝えることができるものであり、自身の人生を有意義にするためのものでもあります。
今回は、終活の目的や特徴、何を行ったらいいのかを説明しながら、生前に決めておきたいお墓の選び方、霊園について紹介します。また、現代において無視できない「おひとりさまの終活」や「デジタル終活」についても言及します。
終活とは?
終活は「人生の終わりについて考える活動」を指します。終末期の不測の事態や、自身が亡くなった後のことについて、家族や身近な人に自身の思いを伝えることを目的としています。
「終活は高齢者がすること」「自分にはまだ先のこと」「死を連想させるから嫌だ」と、考えている人が少なくありませんが、現代社会では終末期や亡くなった後に対応してくれる身近な人がいないというケースが増えています。病気や認知症になり、家族や身近な人に自身の希望や意志が伝えられなくなることもあります。
終活は、死に向けた準備をするという意味ではなく、「これからの人生を有意義に生きていくための準備」です。この機会に終活について考えてみましょう。
終活のメリットとデメリット
・人生の振り返りができる
・やり残したこと、残りの人生でやりたいことがわかる
・家族に思いを伝えることができる
・身辺整理ができる
・死後の不安解消になる
・ご自身が亡くなった後、家族の負担軽減になる
・遺産相続のトラブル回避ができる
・気持ちが落ち込むことがある
・死に向き合うことで恐怖や不安を感じる
・悩みが生まれる
・家族と意見のすれ違いや対立を生むことがある
終活は、残りの人生をより充実させるとともに、最期の時を不安なく過ごす助けになります。気持ちが落ち込むなどのデメリットもありますが、時間をかけて終活を行うことで、死に対する恐怖や不安が解消できるでしょう。
終活を始めるのに早いも遅いもありません。ただ、終活を始める人の年齢の多くは「65歳頃」です。社会的リタイアを機に、終活を始める人が多いようです。
終活は年齢を問わず、若いうちから準備を始めることをおすすめします。早めに終活の準備を始めると、以下のようなメリットがあります。
- 葬儀やお墓の費用は高額になることが多いため、早めに準備することで負担を軽減できる
- 自身の希望を伝えたり、家族と話し合ったりする時間が十分にとれる
早めに準備を始めることにより、自身が納得した最期を迎えられることでできるようになります。まずは、できることから始めましょう!
終活では以下の内容を行います。
- エンディングノート作成
- 財産の整理
- 遺言書作成
- 不要品の整理
- 葬儀やお墓の準備
- ペットの行き先を決めておく
- 個人情報の整理
- デジタル遺品の整理
ネット社会の現代では「デジタル遺品の整理」と呼ばれる、とても重要な終活内容があります。それは、パソコンや携帯電話に登録されている電子マネーの管理、有料制サイトやサブスクリプションの解約手続きなどです。
手続きがされないと、本人は亡くなっているのに料金の請求が継続され、ある日、莫大な滞納請求が遺族に届くということが起こります。解約の手続きにIDやパスワードが、必要なことがあります。そのためのアカウント情報やパスワードなどを、誰にどのように伝えるか決めておく必要があります。
まず、エンディングノートとは何かというと、終活の際に自身の希望や家族への気持ちを伝えたり、亡くなった後に必要な手続きに関する情報などを記したりするノートのことです。
エンディングノートの記載内容は基本的に自由ですが、下記が記載されていると、葬儀などの手配、参列者への連絡がスムーズに行えます。
- 葬儀やお墓の希望
- 口座などの資産情報
- 親族の連絡先
市販のノートやメモ帳など何に書いてもいいのですが、最近は書店などで冊子として販売されていたり自治体で配っていたりします。
遺言書には、遺言内容の他、作成日の記載、作成者の署名、捺印が必要といった民法で定められた規程があります。規程に沿った遺言書でない場合、無効になることがありますので、専門家などに相談しながら作成することをおすすめします。
生前整理は、残りの人生で「必要なもの」と「不要なもの」に分けて、身辺や財産の整理をすることです。
不動産や財産などを、まず一覧化します。一覧化することにより、家族だけでなく自身も財産の把握ができます。そして、必要に応じて「財産の相続を検討」「不動産の売却」などをすすめていきます。
相続するほどでもない家具や日用品、衣類などは、少しずつ断捨離をするとよいでしょう。
自身が入るお墓は用意されていますか?
もし、お墓がない場合は自身の遺骨をどのようにするのか考える必要があります。新たにお墓を準備する場合には、費用についても考えなくてはいけません。
お墓の種類別に見た初期費用の相場は、以下のとおりです。
- 一般墓・・・200万円前後
- 納骨堂・・・50~150万円前後
- 永代供養墓・・・合祀タイプ3~20万円、個別納骨タイプ20~150万円
- 樹木葬・・・30~100万円
生前にお墓を決めましょう
すでにお墓がある場合はよいですが、まだお墓を持っていない場合は、生前に決めておくと家族の負担軽減になります。なお、お墓は「生前に建てておく方法」と「自身がお墓に入るタイミングで建てる方法」が選べます。
自身がお墓に入るタイミングで建てる場合には、生前契約をし、墓石のデザインなどを決めておくとよいでしょう。
しかし、本当にお墓は必要ですか?新しく建てたお墓を継承してくれる人がいますか?
最近は、お墓の継承者がいる場合でも、子どもや孫の世代に負担をかけないように、お墓を持たずに別の供養方法を選ぶ人が増えています。遺骨はお墓に納骨しなくても、さまざまな供養方法がありますので、終活で遺骨の供養方法を家族と一緒に検討してください。
墓地・霊園の種類と選び方
遺骨をお墓に納骨する場合には、墓地・霊園にお墓を建てます。ここでは、墓地・霊園を選ぶ際に考慮したい点を紹介しましょう。
自身が高齢になっても無理なく行けるか、家族が将来もお参りできるか、移動時間や交通費に無理はないか、電車やバスだけでなく車を利用する場合の利便性なども確認しましょう。
霊園の多くは宗教を問いませんが、決まっているところもあるので確認しましょう。
主に「永代使用料」「管理費」「墓石代」が必要になります。墓地・霊園や石材店などによって費用は変わるので、事前の確認が必要です。
民営霊園では石材店が指定されていることが多いので注意が必要です。
駐車場、お墓掃除のための水道、売店・休憩所、法要施設などがあるか、植え込みや芝の手入れや清掃が行き届いているかなどを事前に確認しましょう。
寺院墓地は、宗教法人である寺院が管理運営する墓地のことを指します。
特徴は、宗教・宗派に制限があり、他の霊園などに比べて費用が割高な点です。
自分の宗派にあった手厚い供養が受けられる一方で、檀家になることで、寺院の行事への参加や、お布施や寄付を納めることが求められます。
このような寺院とのおつきあいが永く続くことは、お墓を継ぐ子どもや孫たちにも大いに関わってくることなので、ご家族とよく相談して決めたほうがいいでしょう。
民営霊園は、公益法人や宗教法人、宗教法人から運営委託を受けた民間会社が管理運営する墓地のことを指します。
特徴は、寺院墓地とは異なり宗教・宗派を問わないこと、自由度が高く好みに合わせて墓地選びができる点で、公営霊園に比べて設備やサービスが充実している傾向があります。その分、価格は割高なところも多いので、複数の霊園を下見して比較検討することをおすすめします。
・宗教的な制約がほとんどない
・国籍を問わない
・申し込み制限が少ない(先着順、随時申し込み可、遺骨がなくても購入可など)
・設備・サービスが充実している(霊園内がバリアフリー、循環バスや送迎バスがあるなど)
・生前にお墓を建てることができる
・墓石のデザインや区画の広さを自由に選べる
・多様な形式がある(樹木墓地、公園墓地、ペットの遺骨と一緒に埋葬できるペット共存型墓地など)
・費用が割高
・石材店が決められていることが多い
公営霊園は、都道府県や市町村などの自治体が管理運営する墓地のことを指します。
特徴は、民営霊園に比べて費用が安く、永続性が保証されていて安心な点です。基本的にはその自治体に住む人に提供されるものになります。返還墓地があって初めて募集されることが多いため、募集頻度が少なく、倍率は非常に高くなります。公営霊園を希望する場合は、早めに準備をすすめる必要があります。
・費用が割安(一部、民営霊園より高い場所あり)
・宗教的な制約はない
・石材店を自由に選ぶことができる
・応募条件が厳しい
・抽選制、利用希望者が多く高倍率(募集がないと申し込めない)
・生前にお墓を建てることを禁じている自治体がある
・以前に他人が埋葬されていた墓地の場合がある
公営霊園の応募条件には、その自治体での居住年数などが問われ、申し込みは1区画まで、○年以内にお墓を建てなければいけない、といった条件が一般的です。募集時期や条件は自治体によって異なるので、事前によく確認しましょう。
おひとりさまの終活準備について
現代で増え続けている独居の高齢者、いわゆる「おひとりさま」にこそ、終活が必要でしょう。
おひとりさまの終活のキーワードは「つながる」「託す」です。つながることは、孤独死の回避だけでなく、健康寿命を延ばすことにもなります。知人や頼れる人に遺志を託しておきましょう。
例えば、急に倒れたら、入院することになったら、認知症になってしまった場合に、自身の代わりに意志を代弁したり、手続きを代行したりしてくれる人が必要だからです。
- 任意後見制度の利用を検討する
- 葬儀やお墓の生前契約をしておく
- 遺産や所有物の行き先、処分方法を決めておく
病気や認知症などでご自身の判断能力が不十分となった時には、財産管理や介護・医療関係の事務手続き代行を依頼できる「任意後見契約」を結ぶことができます。
自身が亡くなった時に、死亡届の提出や火葬や納骨などの事務的手続きを依頼できる「死後事務委任契約」もあわせて準備するとよいでしょう。
まとめ
終活には、残りの人生をより豊かに生きていくためのヒントがつまっています。
人生の最期を考えると、気分が落ち込む人もいるでしょう。しかし、自身の人生を振り返りながら、残りの人生に何が必要か考えていくことで、恐怖や不安から少しずつ解放されていくのではないでしょうか。
「今とこれからを大事に生きるための終活」を始めてみましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |