「墓じまいをして自分の遺骨を散骨してほしい!」と考え、実行する方が少しずつ増えてきました。

理由は様々ですが、「墓じまいをして散骨すれば、お墓の管理に関する費用がかからなくなる」と考えている方もいらっしゃるようです。

確かに墓じまいをして散骨すれば、お墓に関する費用がかからなくなりますが、その後の費用は本当になくなるのでしょうか?また、散骨するにはどのくらい費用がかかるのでしょうか?

今回は、このような墓じまいと散骨の費用にまつわる内容について詳しく見ていきましょう。

墓じまい・散骨・その後の供養にそれぞれ費用がかかる

実際に墓じまいをして散骨するまでには、大きく分けて3つの費用がかかります。

  • お墓を更地に戻す「墓じまい」の費用
  • 希望する場所に遺骨を撒く「散骨」のための費用
  • 散骨をした「その後の供養」にかかる費用

この3つを全て行うためには、それぞれ多くの手続きとそれ相当の費用が必要になります。その流れや手続き方法を具体的に把握しておくことで、その費用をより深く理解でき、安心して墓じまいと散骨が行えます。

ここから、この3つの費用について具体的に説明していきます。

墓じまいの流れと費用

墓じまいの流れと費用
はじめに、墓じまいの費用について説明します。

「墓じまい=お墓の撤去」なので、撤去費用だけ見積もっておけばよいと思われがちですが、お墓の撤去費用以外にも、手続き上、どうしても発生する費用や寺院に支払う費用などが発生します。

それらを見ていく前に、まずは墓じまいの流れを知っておきましょう。

墓じまいの流れ

墓じまいは、次のような流れで行うとスムーズに行えると言われています。

  1. 親族の同意を得る
    まずは、親族に墓じまいをしたい旨を報告し、同意を得ましょう。
  2. 遺骨の移転先を決める
    墓じまい後の散骨以外に一部の遺骨をどこかに納める場合は、その行き先を決めて契約後には受入証明書を発行してもらいます。
  3. 既存のお墓の管理者に相談する
    2と並行して、既存のお墓の管理者に墓じまいを考えている旨を相談しておきましょう。
  4. 役所で必要な書類を入手する
    既存のお墓がある市区町村の役所で「改葬許可申請書」「埋葬証明書」を入手します。
  5. 既存のお墓の管理者に墓じまいの許可を得る
    墓じまいの了承を得たら「埋葬証明書」への署名捺印をしてもらいます。
  6. 埋葬証明書を役所に提出して既存のお墓を撤去する
    お墓を撤去する前に「閉眼供養」を行い、遺骨を取り出します。
墓じまいに必要な費用

墓じまいの流れを把握したところで、実際にどこでどのような内容の費用が発生するのか、1つずつ見ていきましょう。

なお、今回は遺骨の全てを散骨する場合を想定しています。遺骨の一部を別の霊園等に納める場合は、これから説明するもの以外にも新たな霊園等との契約にかかる費用が発生しますので、注意してください。

離檀料

離檀料

離檀料とは?
既存のお墓が寺院にある場合に発生するもので、檀家から離れる時に渡すお布施のことです。これは事務的な手続きにかかる費用ではなく、今までお世話になったお寺に対して感謝の気持ちとして支払う慣例的な費用。そのため、決まった金額はありません。
離檀料の相場とは?
寺院にもよりますが、数万円から多くても20万円ほどだと言われています。

なお、公共の霊園などの墓じまいでは基本的に離檀料は発生しませんが、霊園の規定で別の費用がかかる場合がありますので、事前に調べておきましょう。

閉眼供養

閉眼供養

閉眼供養とは?
お墓の解体作業を始める前に僧侶の方にお経を唱えていただく儀式のことです。「魂抜き」とも言われますが、それは「遺骨を埋葬している墓石には、亡くなった方の魂が宿っている」と考えられているためです。閉眼供養することで墓石がただの石になり、解体して更地に戻すことができるようになります。
閉眼供養の費用とは?
閉眼供養の費用は、お布施として支払われることがほとんどです。お布施も気持ちを込めて支払うものなので、決まった金額はありません。費用の性質としては離檀料とよく似ていますが、離檀料とは別に支払うことが多いので注意してください。

墓石の撤去・区画整備

墓石の撤去・区画整備
墓じまいは墓石を撤去し更地にしたところで終了です。閉眼供養料はあくまで儀式に対する費用で、実際に墓石を撤去し更地にするための費用は別に発生します。

その墓石の撤去などの作業は主に「石材店」が行い、寺院からその石材店を指定されることもあります。

墓石の撤去費用はどれくらい?
お墓の面積によって異なり、1平方メートルあたり10万円~15万円ほどが一般的な相場です。また、お墓の設置場所によっては撤去の際に重機などを使うこともあるので、追加で費用がかかる場合もあります。見積書をしっかり確認して支払いの準備を進めましょう。

行政手続き

行政手続き
墓じまいをするためには行政手続きが必要です。遺骨を自由気ままに移動することは認められておらず、違法に遺棄されないようにするためにも、行政による許可が必要になります。

そのとき「改葬許可申請書」や「埋葬証明書」といった書類が必要になりますが、お住まいの市区町村によってはこれらの書類の発行に手数料がかかる場合があります。住民票や納税証明書を入手するときと同じようなイメージですね。

「改葬許可申請書」や「埋葬証明書」の発行手数料はいくら?
役所のホームページなどに記載がされています。事前に確認しておくと、スムーズな手続きができますので、手続きの流れと合わせて調べておきましょう。

散骨の流れと費用

散骨の流れと費用
ここからは、墓じまい後の「散骨」にまつわる費用について説明します。

散骨の費用を知るためには、墓じまい同様、その流れを把握しておくことが大切になります。「遺骨を自然に還す」といっても、それに至るまでに多くの準備を必要とし、その都度費用が発生するからです。

ここで散骨の流れをしっかり確認しておきましょう。

散骨の流れ

散骨は、主に以下の流れで行われます。

  1. 希望する散骨の場所や方法を決める
    遺骨を撒く場所は海? 山? それとも宇宙? いろいろあるので調べましょう。また、その方法についても個別に行うか、合同のツアーに参加するか、完全委託するかなども決めておく必要があります。
  2. 専門の業者に散骨の申し込みをする
    散骨は個人でもできますが、遺骨を私有地に撒いたり、散骨する場面を近隣住民に見られたりなどのトラブルにもつながる可能性もあるため、ぜひ専門業者に依頼しましょう。
  3. 粉骨する
    遺骨をそのままの状態で撒くのはマナー違反。散骨するには遺骨を細かなパウダー状にする必要があります。
  4. 散骨する
    散骨方法によっては、その日の天気で延期になる場合もあるので注意しましょう。
散骨に必要な費用

散骨の流れが分かったところで、実際に散骨するまでにどのような費用が発生するのか、細かく見ていきましょう。

散骨の専門業者では、粉骨にかかる全ての工程がセットになった料金になっている場合がある一方で、サービス内容を個別に選んでカスタマイズできる場合もあります。

工程を理解してどのサービスが必要なのかを見極めておくと、業者選びにも役立ちます。

粉骨

粉骨

粉骨とは?
遺骨をパウダー化することです。散骨する時には必ず行わなければなりません。そして、ただ細かくパウダー化すれば良いというわけではなく、パウダー化する前に長年お墓に眠っていた遺骨の汚れを取り除き、洗浄した上でしっかりと乾燥させる必要があります。想像以上に手間がかかる作業です。また、遺骨には微量ながら六価クロムという有害物質が含まれていて、オプションで六価クロムを除去してくれるサービスを提供している業者もあります。
粉骨の費用とは?
人の手で粉骨するか、機械で粉骨するかによっても変動しますし、粉骨の立ち会いに費用がかかる業者もあります。いろいろな業者を比べてみるとよいでしょう。
散骨の方法別で費用を比較

散骨の方法別で費用を比較
散骨する場所や方法によっても、かかる費用は大幅に変わってきます。

海洋散骨

散骨の中でも人気が高い「海洋散骨」には方法が3つあり、それぞれ費用が異なります。

1.親族だけで船を出してもらう単独での散骨(費用相場:20~30万円)
2.他の遺族と合同で船に乗る合同の散骨(費用相場:10万円前後)
3.遺族は立ち会わずに完全に業者に委託して行う散骨(費用相場:5万円前後)

樹木葬

樹木葬には2つの種類があります。

1.墓地型
遺骨を埋葬後に樹木を植える方法なので散骨とは異なります。費用相場は50万円です。

2.自然型
こちらは樹木の根元に遺骨を散骨する方法です。費用相場は、墓地型よりも安いとされていますが、散骨する樹木は霊園の中にあることが多く、その場合は霊園の施設利用料として年間1~2万円程度かかることがあります。

宇宙葬

最近登場した宇宙へ散骨することができる方法です。ロマンを感じる素敵な散骨方法です。費用は他の散骨方法に比べるとかなり高額になります。
・月面への散骨(費用相場:250万円前後)
・遺骨をロケットに搭載し、宇宙空間に打ち上げる場合(費用相場:50万円前後)

墓じまい後の費用は全くかからないわけではない

墓じまい後の費用は全くかからないわけではない
ここまでで墓じまいと散骨の費用についてご説明しましたが、その後は何もすることがない…と言えば、そうではありません!実際には、亡き人を偲びながら供養し続けていくことになります。

離檀してお墓がなくなることで、周年回忌のような仏教のしきたりに縛られることはなくなり、費用も抑えることができる一方で、今までお寺が率先してやってくれていた供養を、自分たちの納得のいく方法で自分たちが行う必要があります。

ここからは、散骨後の供養の方法にはどのようなものがあり、どのような費用が必要なのか、ご紹介していきます。

遺骨の一部を手元供養する場合は追加で費用がかかる

遺骨の一部を手元供養する場合は追加で費用がかかる
散骨する場合、遺骨の全てを自然に還すのではなく、一部を手元に残して自宅で供養する場合があります。

その場合は、自宅で供養するための「アイテムを購入」するために費用が必要となります。そして、その費用は手元に残す遺骨の量やその方法によって変わってきます。

現在、様々な方法で手元供養できるようになっていますので、その方法の一部をご紹介します。

遺骨を収納するものが必要

自宅で供養する方法としてスタンダードなものは、粉骨した遺骨をそのまま納められる「骨壺」や「ペンダントなどのアクセサリー」を購入して供養するというものです。

その費用は、骨壺やアクセサリーの大きさや材質によって様々で、リーズナブルな価格からとても高額なものまであります。

種類も豊富に揃い、最近ではオンラインの販売も多く行われているので、お気に入りの商品を見つけるためにも一度サイトをチェックするとよいでしょう。

遺骨を加工する場合も

最近では粉骨した遺骨そのものをさらに加工して「プレート」や「アクセサリー」を作成する方法も出てきました。

遺骨をそのままの形で保管すると、地震などの衝撃で納めていた遺骨をこぼしてしまう可能性がありますが、遺骨をさらに加工して固めることで、このデメリットをなくすことができます。

費用は、作成料にさらなる加工料がかかる可能性があり、取り扱い業者もそれほど多くないので、遺骨を納めるアイテムより高額になります。

周年回忌に代わる行事にも費用がかかる

周年回忌に代わる行事にも費用がかかる
墓じまいをして寺院の檀家から離れると、今まで頼まなくても檀家として優先的に行えていた週年忌法要などができなくなります。

法要があるから親族が定期的に集まれていたのに、離檀したことで集まれなくなることを避けるには、自分たちで法要に代わるものを用意しなければなりません。

その方法として、一番お手軽にできることは「食事会」を開くことです。最近ではホテルなどで「法要プラン」として格式のある食事を提供し、故人を偲ぶサービスが展開されています。費用は食事内容や映像を流す等のオプション、サービス料など、会場により大きく異なります。

また、海洋散骨をした場合は、数年後に散骨をした場所までクルージングして供養することもできます。クルージングは参列する親族や、食事の有無によっても金額が大きく異なりますが、一人あたりの費用はホテルでの食事会より高額になります。

失敗しない墓じまい&散骨にするためには?

ここまで墓じまいと散骨にかかる費用について具体的に説明してきました。既存のお墓がある場所によって墓じまいの費用は変動しますし、どのように散骨して、その後供養するかによっても大きく変わってきます。

墓じまいや散骨の内容はもちろんのこと費用面でも納得いくものにするためには、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。

ここでは4つのポイントをお話ししていきます。

Point1.今までお世話になったお寺に誠意を尽くす

Point1.今までお世話になったお寺に誠意を尽くす
墓じまいのトラブルとして最近よく取り上げられるのが、離檀料をめぐるトラブルです。

離檀料は今までお世話になった寺院への感謝の気持ちを表すもの。そのため、極端なことを言えば「支払う必要はない」とも言えます。

しかし、檀家ではなくなるとしても代々お世話になった寺院と良好な関係を保つために、離檀料を支払うのはある意味必要なこととも言えます。そのため、離檀料については寺院とよく相談した上で決めるようにしましょう。

離檀料の相場は、高くても20万円ほどと言われています。

寺院から法外な金額を請求されてしまい、話し合っても折り合いがつかない場合は、一人で抱え込まずに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

Point2.見積りに含まれる金額を確認する

Point2.見積りに含まれる金額を確認する
例えば、お墓を撤去する際の費用の請求について、見積書にはなかった「重機の使用」や「作業員の増員」「謎の手数料」が加わり高額になっていた…。

このようなことが起こらないように、追加で費用が発生することがあるならそれはどのようなものか、見積書をとる時点でしっかり確認しておく必要があります。

それには、事前に費用の相場を知っておくことが必要です。業者に問い合わせをする前に、作業内容やその料金をインターネット等で比較しておきましょう。

Point3.信頼できる業者を探す

Point3.信頼できる業者を探す
墓じまいは、一生に一度あるかないかのことですので、問い合わせた業者が「信頼できる業者なのか」はとても分かりにくいと思います。中には墓じまいブームに乗った悪徳業者がいるかもしれません。

信頼できる業者かどうかを確認する1つの方法は、住所をインターネットで検索して実態があるか確認することです。また、実績がどの程度あるのかなどを問い合わせたり、口コミを確認したりするのも良いでしょう。

サービス内容と照らし合わせて、納得のいく業者を選ぶようにしましょう。

Point4.複数の業者を調べる

Point4.複数の業者を調べる
商品を購入したり契約を結んだりする前に、複数の業者から見積書をとるとより適正な価格が分かってきます。

墓じまいや散骨についても同様のことが言えます。複数の葬儀社や石材店などから見積もりをとることで、業者によって見積書にある項目や、その費用について比較ができ、質問もしやすくなります。

魅力的なサービスだからといって1社目で決めるのではなく、複数の業者から見積書をとるようにしましょう。

まとめ

1.墓じまいをして散骨するには、墓じまいのための費用、散骨のための費用、その後の供養のための費用、が必要になる。
2.墓じまいには、離檀料や閉眼供養料、墓石の撤去費用、行政手続きの費用が必要となり、散骨には粉骨に関する費用と散骨方法に応じた費用が発生する。散骨後にも、供養方法に応じた費用や周年忌供養に代わる食事会の費用が発生するため、墓じまい後に全く費用がかからなくなるわけではない。
3.墓じまいや散骨にまつわるトラブルを回避するために、離檀料をめぐるトラブルには誠意ある対応をとり折り合いがつかない場合は弁護士等に相談する、信頼できる業者を探すために住所や実績・口コミを積極的に調べる、複数の葬儀社や石材店等に見積もりをとるようにしましょう。

墓じまいと散骨には様々な手続きとともに、多額の費用が発生します。しかし、それらは将来の家族にあった供養を実現するためです。

納得のいく墓じまい・散骨をするためにも、費用もしっかり比べながら家族にあった業者や方法を見つけてください。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。