無宗教でも終活したい!葬儀はどうすればいい?
日本では、お盆(仏教)やクリスマス(キリスト教)など、さまざまな宗教色のイベントを取り入れる家庭が増えています。特定の宗教を熱心に信仰している人から見たら、異なる宗教のイベントを取り入れることは不思議なことです。
実際、最近の日本では、「お墓は仏教だが、自分はこだわっていない」「特定の宗教にとらわれたくない」などの無宗教の選択を望む人が増えています。しかし、無宗教だと「葬儀ができない」「遺骨をお墓に納骨できない」と不安に思いませんか?
実は、無宗教でも葬儀ができます。また、菩提寺のお墓とは別の形で遺骨を安置・供養することができます。
ここでは、「無宗教の終活」「無宗教葬の流れからその後の供養」について紹介します。
終活とは?無宗教でもできる?
終活とは「人生の終わり方について計画すること」「これからの生き方を考えること」です。
全ての人が宗教や信仰に関係なく、終活を行うことができます。
終活では「自分の最期に向けて考えていくこと」と「生き方や自分の信条について見直すこと」です。どのように生き、何を大切にしたいのかを明確にすると、終活が進めやすくなります。
また、自分の意思を明確に示せるエンディングノートを用意するのもおすすめです。「延命治療の可否」「最期の場所」などについて記録されていると、家族が決断を迫られた時の助けになるでしょう。
人は亡くなった後、自分の葬儀や遺品整理に直接携わることができません。残された家族や関係者が中心となって手続きや申請を行います。
自分の意思を伝えることができないので、しっかり事前に準備をしましょう。
- 亡くなった後に叶えて欲しいこと
- 最期の瞬間にして欲しいこと
手続きや葬儀を手配してくれると家族や関係者に、分かりやすく記載したものを残しておくことをおすすめします。
無宗教で葬儀がしたい!終活で準備しよう
希望すれば、宗教にとらわれない「無宗教葬」が執り行えます。無宗教葬は僧侶や牧師不在の、自分たちで考える自由な形の葬儀です。
自分の葬儀を「無宗教葬」で行いたい場合は、終活準備の際に家族へ意向を伝えておきましょう。
無宗教での葬儀は法律的に問題がある?
法律では、特定の宗教に基づいた葬儀をしなければならない決まりはありません。
墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)第1条では、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。」とされています。
しかし、自由な葬儀をするとしても、周囲の感情に配慮した弔いを執り行うようにしましょう。
火葬をするには行政手続きが必要です。
- 「死亡届」を医師から受け取る
- 「死亡届」を市区町村に提出
- 市区町村が「火葬許可証」を交付
- 「火葬許可証」を火葬場に提出
- 火葬の実施
※火葬許可証がないと火葬はできません。
火葬許可証があれば、葬儀を行わなくても火葬をすることができます。しかし、火葬には禁止事項があります。
墓埋法の第3条では「埋葬又は火葬は(中略)死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行ってはならない。」とされています。そのため、死後24時間以内は火葬ができません。
無宗教葬の流れと内容例
僧侶や牧師などの宗教従事者が不在の無宗教葬では、葬儀に決まった方法や流れはありません。残された家族で、葬儀の内容、段取り、終了後のフォローまで全てを決めることができます。
終活で自分の葬儀について、希望や意向を家族に伝えておけば、自分で自分の葬儀をプロデュースすることが可能です。自分の葬儀で行って欲しい演出について、家族と話し合ってみましょう。
この章では、式次第と内容の例を紹介します。
故人にまつわる音楽で弔う葬儀を「音楽葬」と呼びます。歌手や芸能人の葬儀で行われることがあり、テレビなどの報道で目にしたことがあるでしょう。
- 故人の好きな音楽を葬儀中に流す
- ミュージシャンの生演奏
- 参列者で合唱
- 故人自身が演奏・歌唱した音源を披露
など、さまざまな演出方法があります。音楽をバックに参列者が思い出を語り合える、温かな葬儀になるでしょう。
故人の写真のスライドショーや紹介動画を、葬儀で披露する演出があります。参列者に故人のことをより深く知ってもらい、見送る弔い方法です。
残された家族にとっても、故人の知らない一面を再発見する機会になります。
特定の宗教には、その宗教に準ずる葬儀・儀式が一般的です。
- 仏教・・・焼香
- キリスト教・・・献花、献香
- 神道・・・玉串奉奠
無宗教では、このような形式にとらわれず、自由な弔いができます。ロウソクを灯して弔う「キャンドル葬」もそのひとつです。祭壇に飾られたロウソクに参列者が献灯。ロウソクの灯りが作り出す美しく厳かな雰囲気が、参列者の心を静めてくれます。
葬儀会場に、故人の趣味や作品、功績などを展示するコーナーを設け、人柄を紹介するのも、ひとつのアイデアです。
故人のお気に入りに触れることで、参列者同士の会話が生まれ、温かい雰囲気の式になるでしょう。
故人に縁のある関係者が多い場合、直葬や密葬を行った後、改めてお別れ会や偲ぶ会の席を設けることができます。
通夜や葬儀を行わず、亡くなった場所からそのまま火葬場へ移動して火葬すること
身内やごく親しい人だけで済ませる葬儀。最近では「家族葬」とも呼ばれる
お別れ会や偲ぶ会は、僧侶や牧師が出席して弔う式、宗教色のないイベントのような会など、形式が自由です。
無宗教葬について紹介してきましたが、全ての会場が無宗教葬を受け入れているわけではありません。そこで、無償教での葬儀が行える会場を見つけることが必要です。
自分で探すこともできますが、無宗教葬を請け負っている葬儀会社や葬祭業者に相談することをおすすめします。無宗教葬を請け負っている業者自体は数多くありますが、対応できる内容は業者によって異なります。
終活で希望の演出や葬送を家族で話し合い、葬儀の方向性が決まったら、複数の葬儀会社から見積もりを取りましょう。
終活で知っておきたい無宗教葬のメリットとデメリット
無宗教葬は宗教色がない分、従来の葬儀と大きく異なります。無宗教葬をスムーズに進めるために、メリットとデメリットを知っておきましょう。
終活で葬儀を計画する際の参考にしてください。
無宗教葬の代表的なメリットを2つ挙げます。
終活で計画した内容を家族に伝えておくと、自分の希望に合った葬儀が行えます。また、残された家族は故人の希望で見送ることができ、気持ちが楽になります。
特定の宗教の場合、僧侶や牧師などに葬儀を執り行っていただいた謝礼を渡します。無宗教葬では、この費用が発生しません。
無宗教葬で考えられるデメリットと解決策は、以下の2点です。
宗教者を呼ばず、読経や典礼も何もない葬儀に対し抵抗を感じる人もいます。参列者には事前に無宗教葬であることを伝えておくとよいでしょう。また、先祖代々のお墓が寺院にある場合、菩提寺に相談が必要です。
自由であることが無宗教葬の魅力ですが、式次第を全て自分たちで考えなくてはなりません。故人の遺志であったとしても、業者とのやり取りや会葬者への対応などは家族が行います。終活できちんと事前準備しておけば、家族の負担が軽減されるでしょう。
終活で無宗教葬後の供養について考えておこう
無宗教葬に限らず、葬儀、火葬後には、遺骨が手元に残ります。遺骨の居場所をどうするのか、決めなくてはいけません。自分の遺骨をどのように供養して欲しいか、終活で考えておきましょう。
墓埋法の第4条では「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」とされています。
刑法の190条では「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。」とされています。
「無宗教葬=自由」ではありません。墓地以外の場所に埋葬したり、遺骨を遺棄したりすることは、法律違反となり罰せられます。
無宗教でも、お墓を持つことができます。「納骨堂」「合葬墓」「樹木葬霊園」の中には無宗教でも受け入れている施設があります。
それでは、納骨堂、合葬墓、樹木葬について詳しく紹介しましょう。
屋内にあり、個々の納骨用区画を契約する施設になります。
- 墓石型・・・従来のお墓が屋内にあるような仕組み
- 霊廟型・・・仏壇が並び、その中の1つに納骨できる仕組み
- ロッカー型・・・棚に骨壺を納めるタイプ
- 可動型・・・お参りする際に家族の遺骨を呼び出せる最新式
屋外にあるモニュメントや大型の墓碑の下に、遺骨を共同で納めるお墓のことです。
草木を墓標とするお墓のことです。
- 合祀型・・・中心にシンボルとなる樹木があり、合葬をするタイプ
- 個別型・・・家族専有の区画を契約し、墓石の代わりに樹木を使用するタイプ
- 区画型・・・埋葬した遺骨と同じ数だけ植樹をするタイプ
いずれも契約時に永代供養を約束する「永代供養墓」がほとんどです。
先祖代々の墓地があっても、無宗教葬や直葬を選び、読経を受けず戒名を授からないと、このお墓に埋葬することができないことがあります。
無宗教葬後、家族と同じお墓に埋葬を希望する場合は、菩提寺や霊園に事情を説明、相談が必要です。改めて戒名を付けてもらい、菩提寺での四十九日法要を依頼するなど、従来通りお墓に埋葬してもらえる方法を考えてもらえます。
無宗教で自由だからこそお墓を持たない選択肢もある
無宗教葬を経て自由だからこそ、このまま無宗教を貫き通したい人には、お墓を持たずにいる方法があります。
- 遺骨を手元で保管
- 散骨
供養する気持ちがあれば、お墓の有無は問題ないです。
遺骨を手元に保管して供養することを、手元供養と呼びます。
仏壇を用意する必要がなく、宗教や風習にとらわれない自由な形で故人を偲ぶことができます。無宗教葬後の遺骨にふさわしい供養方法ですね。
手元供養の方法として、代表的なものが2パターンあります。
- 自宅の好きな場所に安置
- アクセサリーパーツに入れたり遺骨そのものを加工したりして、いつも身に着ける
なお、手元供養のメリットとデメリットは以下のとおりです。
- お墓参りに行かなくても、いつでも合掌できる
- 費用は初期投資のみ
- 親族が反対する可能性がある
- 紛失のおそれがある
散骨は、粉状にした遺骨をまいて、自然に還す供養方法です。自然葬のひとつで、宗教や風習に関係なく行えます。
周辺環境への配慮などマナーを守る必要がありますが、無宗教葬と同じく比較的自由な葬送です。
船で沖合に向かい、海に散骨を行う方法です。自力での乗船が難しい場合は、業者に代行委託することもできます。
陸地でも散骨ができますが、業者や寺院が所有する散骨専用区画、島根県にある専用島など、散骨を許可された場所で行いましょう。私有地で行う場合は、条例の確認が必要です。
風船やロケットに遺骨を搭載し、成層圏外を目指して打ち上げる葬送です。月や宇宙の果てを目指すこともできますが、費用は高額になります。
ヘリコプターや飛行機に乗り込み、海洋の上空で散骨を行います。
まとめ
無宗教葬は自由な点が魅力です。無宗教葬を希望すれば、終活中に自分で計画を立て、自分で自身の葬儀をプロデュースすることができます。
それには、家族の協力が必要不可欠です。理想とする形で終活を終えられるよう、家族と話し合いながら準備しましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |