終活でお墓の悩みを解消しよう!墓じまいという選択肢
終活をする上で避けて通れないのが、お墓の問題です。
「お墓が遠方にあり、お墓参りが大変」
「子どもや親族がおらず、お墓を継承してくれる人がいない」
「お墓の管理を負担に感じているので、家族には同じような思いをしてほしくない」
という悩みが多く見受けられます。
このような悩みを解消する方法のひとつに、墓じまいという選択肢があります。その気になる費用から法律面まで、知りたいポイントを中心に紹介します。
墓じまいとは?お墓を撤去すること?
墓じまいとは、文字通り「今あるお墓を撤去すること」ですが、それだけではありません。
墓じまいでお墓から取り出した遺骨は別の方法で新たに供養する必要があります。別の供養方法を考えることは、今あるお墓の問題を解消し、先祖の供養をより良い形で継続するための行為です。
厚生労働省(令和元年度衛生行政報告例)によると、お墓の引っ越しにあたる改葬の件数は1年間に12万件以上とされ、改葬は珍しいことではないようです。お墓に関する悩みがあるようでしたら、まずはお墓の在り方について考えてみましょう。
終活で墓じまいを行うメリットは、以下の2点が挙げられます。
「先祖代々引き継がれているお墓を守っていかなければならない。」
「自分の死後に誰か継いでくれる人を見つけなければ…」
という義務感と焦りはありませんか?
墓じまいをすることで、そのようなプレッシャーから解放されることもあります。
今、お墓の管理をしていて人でお墓の存在が負担になっていると感じる場合は、墓じまいをすれば、次の世代には負担をかけずに済みます。
逆に墓じまいのデメリットとして、次の2つが考えられます。
墓じまいは、無料で行えるものではありません。流れや手順については後述しますが、墓じまいを行う場合はまとまったお金が必要になります。
それは、墓石の撤去費用やお布施など、今のお墓の管理者に支払う代金のほか、新しい供養先との契約費、遺骨の加工あるいは洗浄代などがかかります。
新たに供養先に選んだ施設が、追加での納骨や埋葬を想定している契約であれば問題ありませんが、お墓を撤去した後、親族から「先祖代々のお墓に入りたい」と言い出されても、入る場所がありません。
墓じまいの流れを知って終活を進めよう
墓じまいを進めていくと、手続きが発生し煩雑になることがあります。スムーズに対応できるよう、流れを知っておきましょう。
墓じまいで考えられるトラブルは、親族間に端を発するケースが多くあります。墓じまいを思い立ったら、まずは次の項目について、親族間で相談しましょう。
- 本当に誰か継承する人がいないか
- 墓じまいの費用負担をどうするのか
- 遺骨をどこに移動させるのか
- 今後、法事をどうするのか
- 手元供養を考えている場合は、誰がどのくらいの量を保管するのか
突然、会ったことのない遠い親戚から、墓じまい予定のお墓に入りたいと言われたという事例もあります。お墓に関わる全ての人と話し合いを持つようにしましょう。
今のお墓を管理している寺院や霊園の了承を得よう
今のお墓を管理している寺院や霊園に相談せずに墓じまいを行うと、法外な契約違反料を請求されることがあります。
寺院とは、檀家と菩提寺という関係であることがほとんどです。菩提寺は檀家のお墓を供養し法要を行い、檀家はそのお礼としてお布施を渡すことで菩提寺を援助します。そのため、墓じまいをすることは、菩提寺と檀家の関係を解消することになります。
寺院によっては、墓石の撤去は敷地内の合祀墓に納骨することが条件というところもありますので、必ず確認や相談をするようにしましょう。
墓じまいをすると、お墓から取り出した遺骨が手元に残ります。この遺骨の次の供養方法を決めてから、墓じまいを進めるようにしましょう。
お墓から取り出した遺骨を、別のお墓に納骨又は埋葬することを「改葬」と呼び、お墓の引っ越しとも言える行為です。
墓地埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)の第5条に「埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。」と記載されています。
そのため、遺骨の新しい供養先が改葬に該当する場合は「改葬許可証」の交付を受け、改葬先に提出する行政手続きが必要です。改葬許可証の取得手続きについては、後程取り上げます。
次項では、新しい供養先の改葬儀のほか、どのような方法があるのか、紹介しましょう。
お墓が遠方にあり、お墓参りが大変などの理由で墓じまいを考えている場合には、アクセスが良く、平地でお参りがしやすい霊園へ遺骨を移動する方法があります。
しかし、お墓を新しく建てるには、少なくとも100万円以上の費用がかかります。
永代供養墓は、管理者が親族の代わりに永代で供養を行う契約付きのお墓です。継承者がいなくても、施設に管理と供養をしてもらえる安心感があります。
永代供養墓は「納骨堂」と「屋外型」に分けられます。主なお墓の形態と相場は、次のとおりです。
屋内にある納骨専用スペースを契約し、納骨するタイプのお墓です。次の4種類に分けられます。
- ロッカー型…骨壺を棚に納めるタイプ(例)20万円~
- 霊廟型…仏壇状の納骨堂(例)1人用30万円~
- 墓石型…屋内にある個々の墓石を利用(例)1人用100万円~
- 可動型…IT技術で制御された施設(例)1人用100万円~
次の3種類に分けられます。
- 合祀型…全ての遺骨をまとめたお墓(例)永代供養料10万円~
- 納骨塔型…塔の地下に個々のスペースを利用(例)永代供養料20万円~
- 納骨壇型…個人の墓標の下に納骨(例)永代供養料40万円~
樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標とするお墓です。樹木葬はあくまでもお墓であり、墓じまいの遺骨を移す際には改葬扱いになります。
樹木葬の形態は立地に大きく左右され、施設によって多種多様です。庭園のような霊園から、里山そのものが樹木葬用の墓地となっている場所まであります。
費用面では、墓石を手配しないため比較的安価と言えるでしょう。
代表的な樹木葬を埋葬方法別に紹介します。
- 合祀型…シンボルとなる樹木の周りに合祀。(例)8万円~
- 個別型…個々に区切られたスペースを利用。(例)30万円~
- 区画型…埋葬ごとに樹木を植樹。(例)30万円~
「お墓がないと恥ずかしい」「入るお墓がないから、早く探さなければ」と思っていませんか?
お墓を持つことは義務ではありません。供養方法は個人の自由なので、お墓を持たない供養方法を選ぶこともできます。
手元に保管して遺骨を供養することを「手元供養」と呼びます。
手元供養の方法は、自宅で安置することだけではありません。容器に収納して身に着けたり、遺骨を供養グッズに加工したり、結晶化させてジュエリーにしたりと方法はさまざまです。
刑法の第190条で遺骨の損壊は禁じられていますが、「故人の供養のためであるならば、違法ではない」と考えられています。
墓じまいで取り出した全ての遺骨を手元供養にすると、お墓を持たずにいられます。
お墓を持たずにいる方法として「遺骨を全て手放す」という選択もあります。散骨は、粉状に加工した遺骨を自然にまいて還す葬送方法です。
宗教や風習にとらわれず、ルールを守れば自由な形で行うことができます。
まく量に決まりがないため、全ての遺骨をまけば、お墓が不要です。一部を残し、手元供養と併用することもできます。
散骨は自然に遺骨をまいてしまうので、後になって遺骨を取り戻すことができません。親族と十分に話し合って、決めるようにしましょう。
では、散骨について、種類別に紹介します。
- 海洋散骨…沖合にて散骨するため船を利用。(例)5万円~
- 山散骨…散骨専用の土地で実施。(例)5万円~
- 空中葬…飛行機やヘリコプターから海上に散骨。(例)20万円~
- 宇宙葬…風船やロケットに搭載した遺骨を打ち上げ。(例)24万円~
改葬に必要な「改葬許可証」を取得するには?
改葬することを決めたら「改葬許可証」が必要です。
墓埋法の第8条に「市町村長が、第5条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与える時は、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。」とあり、法律で定められています。
改葬許可証の取得には、次の書類が必要です。
- 改葬先が発行する「遺骨の受け入れを証明する書類」
- 今のお墓が属する市区町村役場が発行する「改葬許可申請書」
- 今のお墓の管理者による署名捺印がある「埋葬の証明になる書類」
これらの3つの書類を揃え、自治体に提出すると1週間ほどで、改葬許可証が交付されます。
各書類の様式をWEBサイトからダウンロードすることができる自治体もあります。手続きが難しいと感じる場合、弁護士や行政書士などの専門家に相談すると良いでしょう。
なお、手元供養や散骨を選んだ場合は、改葬許可証の取得の必要はありません。しかし、作業を委託する業者によっては改葬許可証の提出を求められることがありますので、業者に確認するようにしましょう。
墓地を返還するには、更地に戻す必要があります。
墓石は重量があり、自分で動かすことは難しいので、お墓の撤去は石材店に依頼することをおすすめします。寺院や霊園によっては、業者を指定していることがありますので、業者選びの際は、まず寺院や霊園に相談してからにしましょう。
なお、仏式のお墓の場合、お墓から魂を抜く法事(閉眼供養)を行います。閉眼供養を担当した僧侶には、お礼を込めてお布施を渡します。
墓じまい完了後の終活は?他に何をする?
墓じまいを終え、新しい供養方法に変更したら、葬儀や相続について考えやすくなりますね。
葬儀は、家族が悲しみの中、いろいろなことを決めなければならないケースがほとんどです。終活で葬儀の形式について、家族に希望を伝えておくだけでも、いざという時、家族の負担軽減になります。相続についても終活で準備を行い、手配しておくと安心です。
また、終活は自分が亡くなった時に備えて進めるものですが、自分が望む生き方について考えることも大切です。思い出作りの家族旅行や、先延ばしにしていたやりたいことなどをどんどん実行しましょう!
まとめ
墓じまいは、個人の終活の問題だけでなく、親族や関係者にも影響します。皆の将来にとって、より良い選択となるように時間をかけて話し合いをしましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |