終活といえば、エンディングノートを用意して「葬儀やお墓のこと」「相続のこと」を整理していくのと同時に「物の処分」をすることが大切とされています。
物を処分するというのは、掃除するというよりは「断捨離をする」という意味合いです。それではなぜ、物の処分や断捨離が、終活において大切なのでしょうか?
今回は、物を処分する行為が持つ意味をはじめ、その方法や注意点を紹介します。
大切なものをハッキリ整理するために物の処分を行う
断捨離は、執着を手放すヨガの「断行・捨行・離行」という3つの考え方を、日常の片付けに置き換えて使われている言葉です。
ヨガでは、自分にとって不要な物を断ち、それらを捨て、物への執着から離れることを目指します。 その中で「自分にとって本当に必要な物」を見つめ直していきます。
これは、終活における物の処分と同じことです。 物を整理し不要な物を処分していく作業を通して、「残りの人生において本当に大切な物・必要な物」がはっきりしていきます。 そこに終活として物を処分する意味があるのです。
整理するメリット
大切な物をはっきりさせる意味がある、終活の「物の処分」ですが、その他にも多くのメリットがあります。 それは、どのようなことでしょうか?
ここでは、主なメリットを4つ紹介します。
今、目の前にある物は、過去に購入したり人からもらったり、作ったりした物でしょう。これらを整理することは、自分の過去を振り返ることにもなります。
今ある物の中から自分の大切な物を見極め、不要な物を処分することで、自分の過去も整理されます。そして「これからどうしたいのか」ということが見えてくることがあります。
未来に心を向けられるようになるのが、物を整理するメリットです。
不要な物を処分することで、家の中にある物の数が減ります。 そのことで、家の中の動線を確保できるようになります。
高齢になると、体が思うように動かなり、ちょっとした物でつまずくことがあります。 また、家の中で車いすを使ったり、介護を受けたりするようになるかもしれません。 そのようなときでも、動線が広く確保されていれば安心ですね。
自分が亡き後、残された家族が必ず行うのが「遺品整理」です。 遺品を整理するには、かなりの時間と労力が必要です。 加えて、お金がからむ契約書などの「重要な物」が見つからないと家族が困ります。
生前に物の整理ができていれば亡き後の遺品整理の負担が軽くなり、家族にも迷惑がかかりません。 終活の物の処分は、家族の負担軽減にもつながります。
自分が元気なうちに物の整理をすることで、今自分が持っている資産を把握しやすくなります。
自分が亡くなったあと、家族がいざ遺産を相続しようとしても、資産を証明する書類がどこにあるか分からなければ相続できません。 また、相続後に家族の誰も知らなかった新たな財産が出てきて、トラブルが生じるという事案もあります。
家族が相続による争いを起こさないようにするためにも、終活で物の整理や処分をすることはメリットになります。
このように物の処分をすることは、さまざまなメリットがあります。 それでは、いつから物の処分をはじめるとよいのでしょうか?
なにが今、自分に必要か考えながら処分するため、頭も使います。 大きな物を処分することになれば、体力も使います。
物の処分には、気力や体力、そして時間がかかるということです。 そのことを考えると、50歳ごろからはじめるのが望ましいでしょう。
整理の流れ
ここまでは、物の処分や整理する意味やメリットを説明してきましたが、ここからは実際に物を整理する流れをご紹介していきます。
まずは、整理する区画を決め、その中にある物を全て表に出します。全て出すことが物理的に難しい場合は、ジャンルを分けて、そのジャンルごとに全てを出すようにしましょう。
全ての物を出すことで、今まで自分がどのような物をどれだけ持っていたかが一目瞭然になります。
「同じような物が、たくさんある」「使わないのに持っている」というようなことが把握でき、今後の購入を控えて無駄遣いを防げます。
区画またはジャンルごとの物を全て出したら「必要な物」と「不要な物」に整理していきます。
必要か不要かに分けられない場合は「古い物」「1年以上使っていない物」など、基準を決めるとよいでしょう。
また、必要な物かどうか判断に迷うときに便利なのが「保留BOX」です。 判断に迷ったらひとまず保留BOXに入れ、一定期間空けたあとに再度整理するようにします。 このようにすることで、物の整理や処分がスムーズに進みます。
必要な物と判断した場合は、改めて収納していきます。そのときに気を付けたいのは、動線に注意することと、分かりやすく収納することです。
動線上に収納したり不用意に積み重ねたりしておくと、思わぬ怪我につながります。その上で、よく使う物は手の届く場所や手前の方に、使用頻度の少ない物はラベリングするなどの工夫をすると、自分だけでなく家族にとっても分かりやすい収納になるでしょう。
不要な物は思い切って処分します。
整理のポイント
物を全部出してみたのはいいけど「あまりの多さにどうすればいいか分からない」という人もいるでしょう。
整理のポイントを紹介しますので、参考にしてください。
整理する範囲を広くしすぎたり、一気に整理しようとしたりすると、精神的に億劫になってしまう恐れがあります。そうならないよう、できるところから範囲を小さく区切って整理をしましょう。
全てを整理するには、どうしても時間がかかります。「少しずつでもよいから、整理を続ける」と考えて、無理のないペースで着実に整理することが、成功のカギです。
物を全部出してみると「懐かしい物」「思い出の詰まった物」が多く出てくると思います。 それらを見て思い出にひたることは、自分に必要な物かを判断する上で大切なことです。
しかし、思い出にひたりすぎてしまうと整理に時間がかかり、いつまでたっても終わりません。 そのため、ある程度事務的な気持ちで整理に臨むことが必要です。
判断に迷う場合は、保留BOXを上手に活用し、全体の整理が終わったころに再度確認するなどしましょう。
整理するエリアが広ければ広いほど、大切な物があちこちに散らばる可能性があります。 その対策として「目録」を作成しましょう。
相続に関係する物など大切な物は、目録として書き出します。 何をどこに収納したかが分かると、いざというときに慌てることなく大切な物を用意することができて便利です。
物の整理と並行して目録を作成するようにしましょう。
不用品の処分方法
物の整理をすると「不要品」が出てきます。その処分方法は主に5つありますのでご紹介しましょう。
まずは、行政を活用し処分する方法です。多くの自治体では大型ごみ処理サービスを行っています。
その一番の魅力は、民間の不用品回収よりも安くすむことです。自ら直接ごみ処理場に持っていくと、さらに安くなることもあります。
また、回収方法も指定場所に出しておく方法のほか、自宅に引き取りに来てくれる自治体もあるようです。
対象になる物や費用、手続き方法は、お住まいの自治体に問い合わせましょう。
不用品をリサイクルショップに持っていくのも、一つの方法です。
行政サービスでは処分費用がかかるような物でも「古物商」の許可を持つリサイクルショップだと買い取ってもらえることがあります。自宅に来て査定してくれるリサイクルショップもあるので、処分する前に連絡するとよいでしょう。
ただし、全ての物を買い取ってもらえるとは限りません。物の種類や状態によって、買い取り不可や処分費用の請求されることがありますので、注意してください。
不要品回収業者では、リサイクルショップで買い取りを断られるような物を、ほぼ回収してくれるメリットがあります。
不要品回収業者とは「古物商」のほかに「一般廃棄物収集運搬業」の許可を持つ業者です。
廃棄物として回収する際の費用は、業者によって異なります。自治体のホームページなどで「一般廃棄物収集業」の許可を得ている業者か確認し、信用できる業者を選ぶようにしましょう。
物を処分するというと、捨てたり売ったりすることをイメージしますが、家族や知人などの身近な人に譲ることも、物の整理や処分の一つの方法です。
自分にとっては不用品でも、身近な人にとっては貴重な品と思えるかもしれません。
業者に処分をお願いする前に一度、「終活で処分する物があるけれど、必要なら譲ります!」と聞いてみるのはいかがでしょうか?
最近広く利用されるようになった「フリマアプリ」の活用も、物の処分をする方法の一つです。長く押し入れにしまってある古い物や、価値があるのか分からない意外な物でも、売れることがあります。
アプリへの登録や出品準備、問い合わせ対応や発送準備など手間がかかりますが、物を引き続き大切に使ってくれる人との出会いは嬉しいですね。
家族と一緒に値段決めや仕分けなど、楽しく作業できるのも一つの魅力です。
物の処分の注意点
ここまで、物の整理の流れや処分方法についてお話ししてきました。ここからは終活における、物の処分の注意点を説明していきます。
デジタルデータも忘れずに整理する
物の整理や処分というと、どうしても目に見える物の整理にとらわれがちですが、忘れてはいけないのが「デジタルデータ」の整理や処分です。
デジタルデータの整理や処分とはどのようなことなのか、詳しく説明します。
パソコンやスマートフォンの中には、データやメール内容、メールアドレスなどの連絡先などが多く入っています。
不要なデータ類は、その都度、削除していきましょう。
また、家族にとって必要になるような重大なデータは、フォルダを整理し一か所にまとめておくことをおすすめします。
使用していないSNSや更新していないブログがある場合は、アカウントを削除するようにしましょう。また、自作のホームページがある場合は、その管理をどうするかも決めておくことが必要です。
なお、更新を続けているSNSとそのアカウントは一覧にまとめ、自分が亡くなったあと、どうして欲しいか家族に伝えておくようにしましょう。
SNSやブログ以外にも、使用していないオンラインショップや有料サービスのアカウントも整理していきます。今後も使うサービスのアカウントは一覧にまとめ、使わなくなったらその都度、削除していきましょう。
自分が亡くなったあと、退会手続きをするのは家族です。手続きをするのにあたって、IDやパスワードが必要になることがありますので、これらをリスト化しておきましょう。
ネットバンクやネット証券、ネット保険などは、ほとんど全てをインターネット上で管理しています。手元にカードや通帳がほとんどないため、あらかじめ家族にその存在を伝えておくようにしましょう。
これらのIDやパスワードもきちんと管理し、もしものときに家族が分かるようにしておきます。
書類の整理は慎重に
物を処分していく過程で、多くの「書類」が出てくることがあります。
書類の中には、保険証券や不動産に関する書類など、重要な書類が含まれていることが多々あります。そのため、書類の内容をきちんと確認せず処分することは、非常に危険です。
書類の整理や処分の際は慎重に行い、残す書類は目録を作るなどして重要書類をまとめるようにしましょう。
場合によっては業者の力を借りる
いざ処分をはじめたところ、物が思いのほか多かったり、体力的に厳しかったりすることがあります。
その場合は、生前整理のサービスを行っている業者に依頼するのも一つの手です。プロの目線で処分品を見極めてもらえ、スムーズに整理が進みます。
不要品の回収や部屋の掃除を行ってくれる業者がありますので、状況に合わせて利用するとよいでしょう。
まとめ
終活における物の処分は、残りの人生を大切に過ごし、未来を家族に託すために行うことです。そのため、ただ片付けるだけでなく、家族に分かりやすく整理することが重要です。
時間がかかる作業ではありますが、少しずつ、できるところからはじめましょう!
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |