墓じまいをする人が徐々に増えてきて、近頃ではメディアでも多く紹介されるようになりました。
「将来を考えて、いずれは墓じまいと考えているものの、きっかけがなく行動に移す踏ん切りがつかない」という人が多いようです。ずっと悩んでいると、そのうち自分も歳をとってしまい、思うように体が動かなくなることもありえます。
それでは実際に墓じまいを始めるには何歳ぐらいがベストなのでしょうか?
今回は、墓じまいの準備に適した年齢とその理由をお話していきます。
実際に墓じまいをしたい歳から逆算して考えてみよう
墓じまいをすることは、自分にとっても家族や親族にとっても非常に大きな決断になります。何かきっかけがないと決断しにくいかもしれませんが、ただ待っているだけだと歳を重ねすぎてしまい、いざというときに動けなくなることがあります。
墓じまいは、思い立ってすぐに実行できることではなく、様々な準備が必要です。準備の量だけ時間もかかるので、できることから始めておきましょう。
まずは「〇〇歳までには墓じまいしよう!」と決めてみるといいでしょう。目標を決め、そこから逆算して準備を進めておけば、不測の事態に焦ることもありません。
少しだけでも行動に移せば、ただ時間だけが経過してモヤモヤすることが減ると思います。
それでは、何歳から墓じまいの準備をすれば最適なのでしょうか?
もちろん墓じまいを行う年齢に決まりはなく、体が動けるときに行動するのが基本となります。しかし、実際に墓じまいをするには、入念な下調べと準備が必要です。
この準備には、相当の時間がかかります。それを踏まえて考えると「60歳代」に墓じまいが行えるよう、その前に準備を始めるが理想的です。
・墓じまいを行うための体力とフットワーク
・十分な認知能力
・子供がお墓の将来を考えている可能性がある
この3つの負担について詳しくご説明していきましょう。
墓じまいをするためには、色々な場所へ実際に足を運ぶ必要が出てきます。そのために「体力」と「フットワーク」が必要となります。
- 親族に了解を得るための訪問
- 今お墓がある寺院や墓所との相談や手続き
- 遺骨の新たな行き先の見学・契約 など
もちろん電話やメールで済ませることもできますが、それでもかなり体力とフットワークが必要になると考えられます。肉体的な体力はもちろんのこと、それ以上に精神的なエネルギーも必要です。
墓じまいがスムーズにできればそれに越したことはありませんが、実際は親族と意見が食い違ってしまったり、今のお墓がある寺院とトラブルになったりと、問題にぶつかることも考えられます。それらを乗り越えていくために、精神的なエネルギーが必要になるのです。
肉体的、精神的にも存分に体力が維持できる60歳代が墓じまいにベストな年齢といえます。
墓じまいを希望する人の中には「自分の遺骨は、思い出の海に撒いてほしい」といった夢を持っている方もいるでしょう。このような、自分の理想を同時に叶える墓じまいをするには、準備を入念に行うことが必要です。
墓じまいの準備は、散骨のリサーチや費用の見積もりなど、緻密に考えなければならないことが多いです。
例えば、「書類を見てもよく分からないから」と内容をしっかり確認しないで契約すると、サービス内容に過不足があった、法外な金額を請求されたなどのトラブルに発展しかねません。このような事態にならないようにするには、判断力や認知力といった頭の思考力が必要になります。
思考力は体力同様、歳とともに衰えていくものです。そのため、墓じまいの準備を先延ばしせず、柔軟に考えることができる年齢のうちに進めることが大切です。
お墓の維持問題は、実は子供も気にしているものです。決断をあまりにも先延ばしにしていると「お墓の管理は大変そう。自分の代で墓じまいしたら、どう思われるかな?」などと、お墓の継承について心配するようになります。
なによりも、このようなデリケートな問題は、子供達からは言い出しにくい話でしょう。もし、墓じまいを少しでも考えているなら「〇年後には墓じまいしたい」と宣言しておけば、子供達も安心するでしょう。
それに加え、遺骨の新たな行き先をリサーチしたり見学に同行したりと、一緒に考えて行動してくれるかもしれません。このように家族と一緒に墓じまいを考えることで、家族との一体感が増して、将来がより安心に感じられるようになるでしょう。
子供と共に身軽に行動するには、やはり体と心が元気なうちがよいです。60歳代というのは、そういう意味でもポイントになる年代です。
墓じまいをするまでに必要な準備とは?
墓じまいは60歳代までに行うとよい理由はお分かりいただけたと思いますが、それを実際に行動するには、どのような準備をしておく必要があるのでしょうか。
そこで、次は「墓じまいを実行するまでにしておくべきこと」について4点をご紹介します。
これを1つでも準備しておけば、いざとなったときにスムーズに墓じまいをすることができます。
墓じまい後の遺骨の行先を決める
そもそも墓じまいは「今あるお墓を閉じて終了」というわけではありません。お墓を閉じたあとは「遺骨を新たな場所に移す」必要があります。
遺骨を移す手続きはお墓を閉じることと同時に行われるものなので、墓じまいの検討をする場合は、まず遺骨の行き先を決めます。インターネットで調べたり、必要に合わせて問い合わせをしたり、実際に見学したりしましょう。
専用のノートを用意して見聞きした情報をまとめておくと知識が深まり、いざというときにも役立ちます。
墓じまい後の遺骨の行き先は、主に以下の3つがあります。
- 永代供養(今まで家族で行ってきた供養を寺院や墓所が代わりに摂り行ってくれる供養方法)
- 散骨(遺骨を細かくパウダー状にして、海や山、宇宙などに撒く供養方法)
- 手元供養(遺骨を自宅におき、自宅で供養する方法)
その内容は日々変わっていますので、定期的にチェックし直すとよいでしょう。
費用を見積もっておく
墓じまい後の遺骨の行き先を決めたら、費用を見積もっておくことも、前もって準備できることの1つです。
墓じまいの費用は、大きく分けて以下の2つがあります。
- お墓の撤去にかかる費用
- 新たな遺骨の行き先にかかる費用
ここでは「新たな遺骨の行き先にかかる費用」について、先に話した墓じまい後の遺骨の行き先を元に説明しましょう。
永代供養墓の管理者との契約金のほか、定期的に一定の管理料を支払う必要があります。
散骨の場合は、遺骨を撒く場所によって大きく異なります。遺骨をパウダー状にする料金をはじめ、海に遺骨を撒く場合はクルージング料、宇宙に撒くには遺骨をロケットに乗せるための料金などがかかります。
遺骨を保管するための骨壺やアクセサリー、遺骨の加工料など、手元での残し方によって大きく変わってきます。
自分の希望する墓じまい方法は、どのくらいの費用が必要なのか、複数の会社で比較すると適格な相場が分かりますので、あらかじめ調べておきましょう。
檀家である場合は了解を得られるか調べておく
墓じまいでトラブルに巻き込まれる事例を耳にすることがあります。
代表的な例は、今あるお墓を管理する寺院や墓所とのトラブルです。特に檀家となっている寺院に墓じまいをお願いする場合、ときに「法外な離檀料や墓石の撤去費用を請求される」ケースがあります。
トラブルに発展しないよう、お墓のある寺院での墓じまいについてを調べておくと安心です。
もし、檀家同士で付き合いがある場合は、寺院内で墓じまいをしたケースがあるか、あった場合は離檀料や撤去費用にいくらぐらいかかるのかなど、聞いてみるとよいでしょう。住職などに正直に「今後のお墓の管理が心配」と相談し、その寺院での墓じまいの手順やおおよその費用をたずねるのもよいです。
ここで大切なのは「感謝の気持ち」です。寺院には、今までとてもお世話になってきたはずです。積み上げてきた信頼関係を大切にしながら、お互い納得する形で墓じまいができるように配慮すれば、トラブルを回避できるでしょう。
親族への理解を得る
墓じまいをする際、寺院よりも大きな問題となりがちなのが親族とのトラブルです。
兄弟や子どもへの了解はもちろん、普段あまり付き合いのない伯父・伯母・従兄など、今のお墓に関わる全ての親族の了解が必要になります。
故人を偲ぶ気持ちは、近親者でも遠い親戚でも変わりません。もしかしたら今のお墓を心の拠り所にしている親戚がいるかもしれません。
特にご年配の方は、墓じまいや散骨などの供養方法を受け入れられない場合もあります。そのため、場合によっては世間話程度に少しずつ墓じまいのことを話すなど、焦らず急かさず、了解を得る努力が必要です。
双方が納得した形に進めるためにも、長い時間がかかると思って、早い段階からじっくり話し合いをしましょう。お墓に関わる全ての親族への理解を得ることは、手間も時間もかかる作業ですが、丁寧に了解を得ることで結果的にスムーズな墓じまいへとつながることでしょう。
まとめ
墓じまいをする年齢に決まりはありませんが、墓じまい自体は家族にとっても親戚にとっても一大事です。自分や家族、そして親戚が納得した墓じまいをするためには、どうしても時間がかかります。それを見越して、年齢に関係なく若いうちから墓じまいについて考え「60歳代」には墓じまいが進められるように準備しましょう!
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |