葬送の方法は時代とともに多様化し、散骨を希望する人が増えています。しかし、業者や個人の無秩序な散骨により被害を受けている住民や不快に思う人も少なくありません。

そもそも散骨は合法なのでしょうか?
遺骨を撒く行為は、違法にはならないのでしょうか?

散骨に関連する法律や、自治体で定められた条例を調べておきましょう。そして故人を穏やかに弔うためにも、散骨を行う前に知っておきたいガイドラインをまとめました。

法律から見る散骨とは

1948年5月に埋葬等に関する法律が定められました。土葬や火葬後に墓地へ埋葬するための規定であり、戦後の混乱の中、安易な土葬による伝染病の広がりを避けるために作られた経緯があります。

当時は散骨などの自然葬を想定していなかったので、散骨に関する明確な規定は存在していません。それが「散骨は合法でも違法でもなく、ルールとして規定されていないもの」であり、グレーゾーンといわれる所以なのです。

散骨に関連する法律

散骨に関連する法律
散骨に関連する法律をいくつか紹介します。まず知っておきたいのは、日本における葬送の軸となる厚生労働省が管轄の「墓地、埋葬等に関する法律」です。

1948年に施行された法律で、土葬と火葬、さらに埋蔵や納骨について定められています。

  • 埋蔵
  • 分骨
  • 改葬

など、一般的な葬法について厳しい規制をしている一方で散骨に関する規定はありません。

そのほか、法務省が施行する刑法第190条では「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する(墳墓発掘死体損壊等)」と定められています。

そして、海洋散骨に関連する法律には、国土交通省が定める船員法第15条に「船長は、船舶の航行中船内にある者が死亡したときは、国土交通省令の定めるところにより、これを水葬に付することができる(水葬)」とされています。

また、遺骨には、産業廃棄物に指定された六価クロムが含まれている場合があります。これは火葬場の設備によるもので、本来は人体に含まれる成分ではありません。

除去処理を行わず散骨した場合、「廃棄物処理法」や「海洋汚染防止法」に抵触してしまいます。業者によっては、遺骨をパウダー状に粉骨する際に除去処理のサービスを行っている場合もありますので、詳しく確認をするとよいでしょう。

法的に規制されていない散骨

散骨に関連する法律を並べてみましたが、関連する法律はあるものの散骨を規制する法律として存在していません。「違法でも合法でもないグレーゾーン」であり「節度を持って行えば自由である」と解釈され、現在では葬送の一つとして散骨が行われています。

日本で初めて「自然葬」と呼ばれる散骨が行われたとされるのは1991年です。「遺骨遺棄」に違反すると問題になりましたが、当時の法務省が「葬送を目的とし節度を持って行う限り、墓埋法は散骨を規制するものではない」という意味を示す見解を述べたといわれています。(※公式な記録は残されておりません)

この見解を元に、国内では散骨が自由に行われるようになりました。

一方で1998年、現在の厚生労働省が立ち上げた「これからの墓地等の在り方を考える懇親会」の報告書に記された「それぞれの地方の実状を踏まえて、地方自治体の条例で定めることが適当ではないか」という提言から、一部の自治体が散骨に関する条例を発令しました。

自治体によって法規制の対象となる場合も

国の法律では規制がなく、原則自由に行える散骨と解釈できますが、実際に散骨が原因でトラブルが発生した地域があります。

  • 地元住民への配慮なく散骨を行う個人や業者
  • マナーを無視した散骨ビジネスの広がり

など、無秩序な散骨が多発し、その後に自治体で条例が定められました。

原因となったトラブルと共に、地域ごとのガイドラインを紹介します。

北海道長沼町の場合

2004年に札幌のNPO法人が長沼町幌内の山林に公園を建設しました。一部に散骨用の敷地を設け「樹木葬森林公園」として計画されました。

ただ、地元住民に説明がなかったことと、地下水を飲水できない農産物への風評被害を心配したことから、反対運動が起こったのです。同時に、運営概要から霊園と同等の費用を徴収することが判明し、樹木葬と称した無届けの霊園であると判断され、2005年5月に町議会で「長沼町さわやか環境作り条例」が発足されました。

長沼町さわやか環境づくり条例より抜粋
  • 第11条 何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。
  • 第17条 焼骨を散布する場所を提供することを業とした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

条例では、第11条で業者も個人も散骨を行うことが禁止されています。同時に、第17条では散骨業者への罰金規定も定められています。

静岡県熱海市の場合

2014年、熱海市の山林で民間業者が散骨場建設を計画しました。住民の反対運動が起こったことから熱海市は民間業者へ中止を要請しました。

すると、初島沖に海洋散骨をした後の海水を持ち帰り、散骨上に海水を散布する方法を散骨業者が提案したのです。散骨に関する規定がない中で無秩序な散骨により熱海のブランドイメージを損なう恐れがあると、熱海市独自で海洋散骨に関するガイドラインが定められました。

熱海市海洋散骨事業ガイドラインより一部抜粋
  • (1)熱海市内の土地(初島含む)から10キロメートル以上離れた海域で行うこと。
  • (2)海水浴やマリンレジャーのお客様の多い夏期における海洋散骨は控えること。

熱海市内の土地から10キロメートル以上離れた海域とは、事実上、熱海市や近隣の海域において海洋散骨ができないことを示しています。

  • (5)事業を宣伝・広報する際に「熱海沖」、「初島沖」など「熱海」を連想する文言を使用しないこと。

ブランドイメージを損なわないよう策定されたガイドラインです。

そのほか条例を定めている自治体

そのほか条例を定めている自治体
他の地方でも独自で条例を定めている自治体があります。トラブルを原因に定められたもの、また多様化する葬送に対応するために定められた条例も見受けられます。

北海道七飯町

焼骨について法に想定していない葬法(焼骨を土中に葬る、若しくは焼骨を収蔵する以外の葬法)が行われることを想定して、2006年に「七飯町の葬法に関する要綱」が策定されました。罰則はないものの、事前に計画書を提出し、地元住民の許可が必要となるため、散骨業を行う業者にとって事業を行うことが困難になります。

北海道岩見沢市

基幹産業である農業を守るため、2008年「岩見沢市における散骨の適正化に関する条例」が施行されました。散骨業者だけでなく、個人で散骨する場合も届け出が必要です。
散骨場以外での散骨は禁止され、違反した事業者に対して罰則が定められています。

長野県諏訪市

墓地、納骨堂又は散骨場を建設する場合は、周囲の自治会に説明会を開き、各自治会の同意書が必要であることが定められています。2004年「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則」施行。

埼玉県秩父市

2008年「秩父市環境保全条例」より、第36条にて「墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」と定められています。散骨業者はもちろん、個人で散骨を行うことも禁止されています。

埼玉県本庄市

2010年に施行された条例で、散骨場を設置する業者は事前に市長の許可が必要であること、また近隣全員の同意が必要と定められています。

静岡県御殿場市

2009年に散骨業者へ向けた条例で、近隣への説明会を開催し、同意が必要であること、また市長の許可が必要となっています。違反すると懲役、または罰金が科されます。

静岡県伊東市

漁業や観光産業のブランドイメージを守るため、2016年「伊東市における海洋散骨に係る指針」が策定されました。陸地から6海里(約11.11キロメートル)以内の海域で散骨しない、「伊東市」や「伊東市沖」などの文言を使用しないなど、罰則はありませんが、実質上、散骨は禁止されているといえるでしょう。

東京都

条例ではありませんが、東京都福祉保健局より散骨に関するFAQが開示されています。地元の自治体に確認すること、また人々の宗教的感情に十分に配慮することが書かれています。

神奈川県湯河原町

2014年に施行された「湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例」は、散骨場を設置する場合の規制で、罰則はないものの近隣住民全員の同意が必要です。

ほとんどが業者に向けた条例ですが、個人で散骨を行うことを禁止している自治体もあります。

散骨ガイドライン

1991年に近代の日本で初めて公表された自然葬が行われてから、「節度を持って行えば散骨は自由である」との認識が広がりました。同時に散骨ビジネスと呼ばれる利益を優先した業者や、秩序のない個人での散骨が行われるなど、現地でトラブルが発生しています。

特に観光地におけるトラブルは、ブランドイメージに影響し、観光を主とする自治体では大変なダメージを受けるといえるでしょう。散骨に対する感情は人それぞれです。

故人を弔う葬送として希望する人がいる一方で、古くから継承されたお墓に埋葬する風習も大切にされています。故人を穏やかに見送るためにも秩序を守って散骨を行いたいもの。

自治体の条例や法人が定める指針を元に、散骨ガイドラインをまとめてみましょう。

粉骨の義務

粉骨の義務
散骨するためには、火葬した遺骨を1~2ミリ程度に粉末化しなければなりません。火葬した遺骨をそのまま撒くことはできません。

法で定められている訳ではありませんが、焼骨が大きい場合に殺人事件として扱われたり、ときには刑法190条に触れたりしてしまいます。パウダー状に粉骨するのは、世界共通のルールとして認識されています。

では遺骨を粉骨するにはどうしたらよいのでしょう?

家族で遺骨を砕く場合もありますが、粉骨を行う専門の業者に依頼する方法が一般的です。(2~3万円程度)また、遺骨には「散骨に関連する法律」で記したとおり、六価クロムが含まれている場合があります。

専門業者では、パウダー状に粉骨すると同時に六価クロム除去処理も施してくれるので、依頼することをおすすめします。

散骨の場所

自治体の定める条例や規定に基づき、決められた場所以外での散骨は禁止です。自治体が定める条例の大部分は散骨業者へ向けたものですが、遺族として散骨を行う場所の規定は知っておきたいものです。

条例の多くは、居住区や建物からの距離、海洋散骨の場合は海岸からの距離が定められています。また観光産業を主とする地域では地名を出さないなどのブランドイメージ保持のためのルールです。

散骨業者の中には、ブランドイメージを保つために散骨場所を遺族以外に明らかにしないという、徹底した配慮を行う業者もあります。

  • 国有林などの国
  • 行政で管理している土地
  • 他人の私有地
  • 一般的に立ち入ることのできない場所
  • 公共施設
  • 観光地

などは、常識的な観点から散骨場所に適さないことは明らかです。

娯楽を目的に訪れたテーマパークで誰かが散骨していたら楽しい気分は一気に冷めてしまいますよね。

「節度を持って行えば散骨は自由である」が意味するのは、「常識的な範囲で、他人に迷惑をかけず、ひっそりと行うこと」であり、自由だからどこに散骨しても大丈夫と考えるのは間違いです。周囲に配慮することを優先して、故人を弔いましょう。

海洋散骨のルール

海洋散骨のルール
海洋散骨については、人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上で散骨を行うことが必要といわれています。

  • 河川
  • 河口付近
  • ダム
  • 浜辺
  • 防波堤

などや、その近辺で散骨を行ってはいけません。

河川は、近隣住民の水源になっている場合があります。また、一般市民の目に触れる場所で散骨を行うことを特に避けましょう。

粉骨が風に吹かれて一般市民にかかるなどのトラブルを防止するため、散骨に立ち会う者以外がいない場所で散骨を行う必要があります。また、散骨業者が所属する団体では、散骨のためだけに船舶を利用することが定められ、フェリーや遊覧船など一般の船客がいる船舶で散骨を行わないルールが定められています。

フェリーや遊覧船などは、娯楽のために利用される方がほとんどです。周りの方の気分を害するような行為はタブーです。

業者だけでなく、散骨する遺族も、周囲への配慮は忘れないようにしましょう。

山や陸地への散骨のルール

粉骨を土中に埋めたり、墓標を立てたりすることは墓地以外では禁止されています。「墓地、埋葬等に関する法律」により、墓地以外の場所に遺骨(粉骨)を埋めることはできません。

また、山や陸地へ散骨する場合は、粉骨を撒かなければなりません。共有施設や個人所有の敷地内、観光地や国が管理する国有地、国有林に散骨はできません。

山に散骨する場合、山の所有者を調べる必要があります。また、観光地のような人が集まる場所や、観光地までのルートで散骨を行うことはマナー違反。

レジャー目的で訪れた人の心情を害することのないよう、節度を持って散骨を行いましょう。

自然への配慮

自然への配慮
自然に還らないもの(プラスチック、金属、ガラスなど)を撒いてはいけません。そして、献花、献酒は周囲の状況に配慮しましょう。

近年、マイクロプラスチックが世界で話題となっています。粉骨を入れたビニール袋をそのまま海に投げ入れたり、大量の花束をラッピングされたまま献花したりするのはやめましょう。

海洋汚染はもとより、海岸へ流れ着いた漂流物となることも避けなければなりません。

献酒も環境破壊の原因となる場合があります。水に溶ける成分でできた袋を使用する、献花は花びらだけを撒くなど、粉骨と一緒に撒くものに対しても配慮が必要です。

散骨を希望する理由は「自然に還ること」「自然と一体になること」です。故人を美しい自然に還すためにも、環境に配慮することを忘れずに散骨を行いましょう。

近隣住民への配慮

散骨するにあたり、心情を害さないよう住民や他の人への配慮が必要です。

「無秩序に散骨が行われ、風で遺骨が飛んでこないか?」
「公園と称した散骨場が近所に計画されている…」
など、住民の心情に影響を及ぼした実例が数多くあります。

墓地や霊園が建設される場合は、自治体の厳しい審査が行われますが、散骨の場合は「節度を持って行えば自由である」ことが前提です。トラブルに発展するケースがことも、想像できますね。

自治体が散骨に関する条例を定めるきっかけは、住民とのトラブルがほとんどです。近年の葬送が多様化したことに伴い、散骨に関する条例を定めた自治体もあります。

散骨を行う場合は、事前に散骨したい場所のルールを調べておくことをおすすめします。また、条例が定められていない地域でも、散骨に否定的な人はいます。

地元の方や、その場を訪れた方に不快な思いをすることがないように、喪服着用は辞退し、遺影や献花はそれとわからないように持ち運ぶなどの配慮をしましょう。

家族、親族への配慮

家族、親族への配慮
葬送の方法が多様化し、自然葬の一つ、「散骨」を希望する人が増えています。しかし、家族や遺族は故人を偲ぶ先がないと不満に思う人がいるのも事実です。

先祖代々のお墓を守る家庭やお墓を持つ家庭では、故人の遺骨はお墓に納骨するのが一般的なので、散骨するとなると親族間でトラブルに発展するケースがあります。

「残されたお墓は誰が守るのか?」
「お墓参りができない…」
などの不満が親族から出ることもあるでしょう。

墓じまいまで行う場合は、親族はもとよりお寺とトラブルになるケースもあるそうです。散骨を行う場合は親族へ事前に相談し、意見をしっかりと聞きましょう。

また、すべてを散骨するのではなく、分骨し一部だけを散骨する方法もおすすめです。

まとめ

1.散骨に関連する法律がありますが散骨自体の法律ではありません
2.自治体によって規制の対象となる場合もあります
3.海洋散骨のルールがあります
4.山や陸地への散骨のルールは特にトラブルを避けるために守りましょう
5.近隣住民、および家族や親族への配慮が必要です

散骨を行いたい人が増える一方で、散骨は合法でも違法でもない「グレーゾーン」です。しかし、利益を得ようとする散骨業者が現れ、無秩序に行われる散骨が横行し、トラブルが多発しました。

環境や地域のブランドを守るための条例、自然を重視したルール、住民や親族への配慮など、散骨を行う前に知っておきたいガイドラインをまとめました。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。