「遺灰」と「遺骨」という言葉を正確にご存じでしょうか?
なんとなく使っているけれど説明しようとすると「ちょっとわからない…」という方が多いのではないでしょうか?
遺灰と遺骨は同じようなものと思われがちですが、形状、扱い、法的なことまで多くの違いがあります。最近注目されている散骨は「遺灰」でなければできない供養のひとつです。
今回は、遺灰と遺骨の違いと遺灰にするメリットや注意点について詳しくお話します。
遺灰と遺骨は形状も扱いも違います
一般的なご家庭では、家族が亡くなると自宅や葬儀場で告別式を行い、火葬場で火葬を行いますが、火葬後に燃え残った骨のことを「遺骨」といいます。
「遺骨」をご遺族の方で拾って骨壺に収めることを「骨あげ」「収骨」と呼びます。遺骨は箸で拾える大きさを維持している骨です。
それに対して「遺灰」は、灰といわれるように形がほとんどなく、灰やパウダー状になった遺骨の一部です。ここでは「遺骨」と「遺灰」について、見た目だけでなく、扱いの違いについてご紹介します。
火葬が終わると通常は、ご遺族の方によって形の残っている「遺骨」が拾われますが、その後に残った灰状のものが「遺灰」です。生前、骨が弱かった方やご高齢の方の場合、骨が崩れて遺灰が多くなることもあるようです。
日本での火葬は、火力を調整して、骨が残るように配慮されているようですが、海外の火葬では、ほとんどが燃え尽きて灰状になってしまう国も多くあるようです。日本の場合は、遺骨の収骨後に残った遺灰は火葬場で集められ、あらためて供養を行った後は供養塔に収められます。
供養塔がいっぱいになれば、共同墓地などに埋設されることとなります。この場合の遺灰は、ご遺族の方もどうなっているのか意識されていない場合がほとんどのようです。
続いてもうひとつの遺灰についてご紹介します。
収骨した遺骨は、一般的には骨壺に収められ、四十九日までは自宅で供養を行い、その後、お墓や納骨堂などに納骨することになります。しかし最近では、遺骨の粉骨を希望される場合が増加傾向にあります。
この遺骨を粉骨した状態のことも遺灰と呼ばれるのです。最近の供養の形として注目を集めている「散骨」は、遺灰でないとできません。
また、散骨だけでなく手元供養の場合でも遺骨を粉末状の遺灰にする必要があるため、粉骨の需要が高まってきているのです。
遺骨は「墓地・埋葬等に関する法律」で規制がありますが、遺灰に規制はありません。
遺骨の場合、その取り扱いについては、「墓地、埋葬等に関する法律」によって規制があり、この法律があるため埋葬する場合は自治体に許可されている墓地や霊園でなければ行うことができません。たとえ私有地や自宅の敷地内であっても、墓地や霊園以外に埋葬することはできず、法律違反になって罰せられることになります。
ただ、埋葬する場所は法律で規制されていますが、絶対に墓地や霊園に埋葬しなければならないというわけではなく、自宅に置いて手元供養を行う場合は、問題ありません。分かり易くいうと、埋める場所は決められているけれども、埋めなければ大丈夫ということなのです。
宗教的な理由で埋葬したくない方や、経済的な理由でお墓を持てない、納骨堂の管理費がないといった方もあるでしょう。その場合、法的な問題は何もないので、安心してください。
では、「遺灰」についての法律はどうなっているのでしょう?
実は、遺灰について法律の定めはありません。遺灰にする方の多くは散骨を希望されていますが、散骨は埋める行為ではないため、法律によって禁止されている行為ではないのです。
火葬後の遺骨の供養方法
火葬後の遺骨の供養方法には大きく分けて3つあります。
昔から多くのご家庭で行われてきた方法で、墓地や霊園、納骨堂に収める方法です。
近年では、故人の希望や思想、世界観から注目されている自然葬は、海洋散骨、山林葬、ガーデニング葬など様々な方法があります。
お墓の継承に関する問題や経済的な問題、故人を近くに感じたいなどの理由から手元供養も増加傾向にあります。
この3つの方法について詳しくご紹介します。
亡くなった方の供養の方法として一般的なのが、お墓や納骨堂に遺骨を納める「納骨」です。納骨といっても現代では「社会情勢」や「家族のあり方」の変化に伴い、いくつか方法があります。
家族や先祖代々受け継がれているお墓に収める方法です。昔から行われている方法ですから、お墓をお持ちの家庭なら意識的に注意を払うことも少なく納骨をすることができます。
しかし、お墓を持っていない家庭やお墓の継承者がいなくなってしまう家庭も増えてきていることで、他の納骨方法が増加しています。それは「納骨堂」や「合祀墓」に納骨する方法です。
お墓を建てる必要がなく、維持管理をする継承者が必要になります。その為、お墓同様に継承者がいなくなってしまった場合、無縁墓になってしまう可能性があります。
遺骨が他の方の遺骨と混ざってしまうため、故人やご遺族の意向をよく話し合って決める必要があります。
近年、注目を集めているのが「自然葬」という供養方法で、散骨も自然葬のひとつです。遺骨や遺灰を自然に還すという意味合いから人気が出てきている埋葬方法といえるでしょう。
自然葬にも散骨場所や埋葬方法によっていくつかの種類がありますので、それぞれの特徴についてご紹介します。
海に散骨される方法で国内外の著名人が行ったことや、メディアで取り上げられたことで、注目を集めています。自然葬の中では一番多く行われている方法でもあります。
お寺や霊園が管理している山林に散骨する方法です。山林での散骨は、「墓地・埋葬等に関する法律」も関わり、散骨したところに土をかけることができなかったり、目印となる墓標を置いてはいけなかったりと注意が必要です。
散骨方法としては、あまりメジャーではありませんが、大空や宇宙に散骨する方法です。日本では、小型機や大きなバルーンでの空中葬が行われていますが、海外では、ロケットで打ち上げたり、人工衛星に搭載したりする宇宙葬も行われています。
こちらは、自然葬ではありますが、散骨ではないとの認識が一般的です。ガーデニング葬や樹木葬は、霊園が管理する敷地内の花壇に散骨を行うか、墓標の代わりになる樹木の周りに埋める方法です。埋めたり土をかけたりという行為が加わるため、埋葬という位置づけで考えられていて、自治体の許可した場所でしか行えません。
※散骨を行う場合は、遺骨を粉骨して2mm以下のパウダー状態(遺灰)にする必要がありますので、注意しましょう。
遺骨の全部または一部を自宅に置いて供養する方も増えています。納骨を行わずに、亡くなった方の遺骨を自宅に置いて供養を行うことを「手元供養」といいますが、手元供養が増加傾向にあるのは、社会的背景も影響しているでしょう。
遺骨のすべてを自宅に置いて供養する場合は、骨壺に入れた遺骨を仏壇などに安置して供養を行います。宗教的な事情がある方もいらっしゃいますが、増加の一因には家族のあり方の変化が考えられます。
核家族化が進んでいる現代では、お墓のある地元から離れて暮らす家庭も多くなっており、転勤などでなかなかお墓参りに訪れることが難しく、管理ができないということから、お墓をなくす人が増えているのです。
また、遺骨の大部分は納骨や散骨を行い、一部の遺骨を手元供養する方も多くいらっしゃいます。手元供養の方法も様々で、火葬後の骨壺に入れたままの方もいらっしゃれば、小さな骨壺に入れる方、遺骨をダイヤモンドやアクセサリーに加工して身に付ける方もいらっしゃいます。
故人をいつも身近に感じることができるメリットもありますが、いつまでも悲しみから抜け出せなかったり全部を骨壺に入れて置く場合には場所を取ったりするなどのデメリットもあります。
遺灰にするメリット
以前は「遺骨のまま埋葬」したり「手元供養」を行ったりする方法が一般的でしたが、近年では「粉骨をして遺灰にする」という選択が増加しています。
遺骨を入れる骨壺には様々なサイズがありますが、地域によって収骨の方法が違うことが一因です。収骨方法には2種類あり、主に東日本で行われている「総収骨」と西日本で行われている「部分収骨」があります。
総収骨の場合は7寸の骨壺を使用するのが一般的ですが、直径21.7cm、高さ25.5cmという大きさがあります。この大きさの遺骨を粉骨して遺灰にすると、どんなメリットがあるのか3つご紹介しましょう。
昔は大きな骨壺を仏壇に置いて手元供養を行うのが一般的でしたが、社会の変化により仏間のない家も多く、マンションなどでは部屋数も限られることから、大きな骨壺を置くことが困難になっています。そのため、遺骨を粉骨して遺灰にして手元供養を行う方が増えているのです。
遺骨を粉骨すると、容量は3分の1から4分の1程度になることからコンパクトに手元供養ができるようになります。小さくまとまった遺灰は、タンスや棚の上で小さな仏壇や仏具セットで供養することができます。
命日やお彼岸、お盆の時以外は引き出しに保管することもできるというメリットがあります。また、遺灰を真空パックにすることによってカビの増殖を抑えることもできます。
火葬直後の遺骨は高温で燃やされているので無菌状態ですが、骨壺は密閉されているわけではありません。保管場所や保管状態によっては、遺骨にカビが生えてしまうこともあるのです。
大切な遺骨を守るためにも、遺灰にすることは、とても有効な手段といえます。
近年、注目されている散骨という供養方法は遺骨のままでは行えず「遺灰」にする必要があります。
日本の法律では、遺骨を墓地や霊園以外の場所に埋蔵することは禁止されています。そして、遺骨をそのまま墓地や霊園以外に撒けば「遺棄罪」に問われてしまいかねません。
散骨を行うには、遺骨を2mm以下に粉骨しパウダー状の遺灰にする必要があるのです。散骨業者では「散骨と粉骨を同時にしてくれる業者」と「粉骨だけをしてくれる業者」があります。
散骨方法や散骨業者が決まっていないのであれば粉骨だけ行って、ゆっくりとご遺族で散骨方法について話し合うとよいでしょう。ご遺族の希望があれば業者に粉骨をお願いし、一部を手元供養として残しておいて残りを散骨するという方法もあります。
散骨はやり直しができない上に、手元に遺骨がすべてなくなってしまうと不安になる方もいらっしゃいます。故人の遺志を考えて散骨をしてご遺族が悲しくなってしまうという不安があれば、ほんの少し遺灰を手元に残しておくとよいでしょう。
近年、社会問題になっている「孤独死」ですが、孤独死された方の遺品に遺骨が出て来ることがあります。こうした遺骨は、先立たれた奥様やご主人であることがほとんどです。
後片付けを行う業者は扱い方にとても困るそうです。原則的には、法定相続人の方に引き渡されますが、遺骨の処分に困った相続人が受け取りを拒否したり、親戚間で押し付け合いトラブルになったりといったこともあるようです。
永代供養に出されることも多いですが、相続人の方に費用負担を強いることになります。こういった悲しい状態にならないようにするためにも、遺骨を遺灰にしておくことをおすすめします。
遺灰であれば一緒に火葬してもらうことも可能だからです。
遺灰にするときの注意点
遺骨を粉骨して遺灰にするメリットをお話しさせて頂きましたがいかがでしたか?
遺骨を遺灰にするのは、亡くなったばかりの時とは限りません。亡くなられた方の希望で散骨を予定している場合もありますが、ご家庭の事情でお墓を処分してから遺骨を取り出して粉骨をすることもあります。
複数の方のご遺骨が納められているお墓を処分する場合、多くの遺骨を取り出すことになり、保管も大変になるでしょう。遺灰にするご事情は様々ですが、粉骨する際の注意点を3つご紹介します。
粉骨を行う場合、亡くなられてからどれぐらいの時期に行うのがよいのでしょうか?
「この時期までに行わないといけない」といった決まりごとはありませんが、可能な限り「火葬後の早い時期」が望ましいでしょう。なぜなら、火葬直後の遺骨は無菌状態だからです。
火葬は高温で燃焼されるため、遺骨は無菌状態で骨壺に収められています。骨壺に収めてから何度も骨壺を開けたり触ったりしなければ、菌が入ることはありません。
ただ、密閉されているわけではありませんから保管場所によっては、カビが生えることもあります。火葬後すぐというのは気持ちの整理もできないと思いますので、四十九日が終わってから粉骨する方が多いようです。
お墓の処分を行い「お墓から取り出した遺骨を粉骨する場合」は注意が必要です。
墓地や霊園は屋外に作られていることがほとんどで、納骨堂に納骨された遺骨とは性質がまったく異なります。屋外ということは雨水が墓石に流れ込んでしまうため、墓地に埋葬された遺骨は土の中のバクテリアや大腸菌、カビなどの菌類が大量に付着している可能性があるのです。
そのため、お墓から取り出した遺骨をそのまま自宅に安置することはおすすめできません。そのままの状態で粉骨をすれば菌類を含んだ遺灰となってしまいます。
まず、しっかり乾燥させましょう。
遺骨が完全に乾燥できて、菌類の付着がなくなってから行うようにし、真空パックにして保管するとよいでしょう。
また、お墓から遺骨を取り出す際に「改葬手続き」が必要になる墓地や霊園もあります。その場合は、改葬先の欄に「手元供養」や「自宅供養」と記入するようにしましょう。
散骨を行う予定の方は「散骨業者」を決めてから粉骨して遺灰にするようにしましょう。
- ご自身で散骨ができる私有地をお持ちの場合
- 船舶を所有し、法的に問題のない海域まで行ける場合
上記のような方は粉骨を依頼するだけで大丈夫ですが、そうでない方が大多数ですよね。
散骨できる場所は、自治体によって規制があり、知識がないまま勝手に散骨を行うとトラブルになることも考えられます。
また、散骨業者によっては粉骨した遺灰を受け付けていない業者もあります。これは、持ち込まれた遺灰に事件性がないと証明するのが難しいこともあり、粉骨から散骨までをひとつのサービスとしている業者がほとんどだからです。
散骨業者は、法律や自治体の条例なども熟知していますから安心して任せることができます。
散骨で一番多いのが海洋散骨ですが、
- チャーター船で同行して散骨する方法
- 同行せずに委託して散骨してもらう
など、散骨の方法も様々です。
どうしても、ご自身で粉骨する必要がある場合は、散骨業者に遺灰を受け付けてくれるか確認してから行うようにしましょう。
まとめ
散骨を行うには遺灰にする必要がありますが、それ以外でも遺骨を遺灰にするメリットがあります。故人を供養する際には遺骨を遺灰にすることを選択肢のひとつとして考えてみましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |