自由で無宗教といったイメージのある散骨ですが、散骨後の供養についても残された家族のやり方に任されています。
散骨を終えてから「自分の心の中で故人は生き続けている」という思いだけで、安らかな気持ちになる方もいますし、一方で「子や孫にも故人を忘れないでいてほしい」「できれば供養をしてもらいたい」という思いを持つ方もいます。
それらをかたちにするために「永代供養」の考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。こちらでは、永代供養墓についてや散骨と併せて行うのに必要な分骨についての手続き方法などをお伝えしていきます。
散骨の儀式や供養の仕方は人それぞれ
広い意味だと亡くなった人をしのび、冥福を祈る行為すべてを指します。
そういう意味でも散骨の際に行われる儀式も供養のひとつになります。お葬式などを済ませてから散骨を行う場合もありますが、そのお葬式も散骨の場で行われる儀式・セレモニーも全て「供養」ということになりますね。
では実際、散骨の際の儀式・セレモニーはどのような手順で行われているのでしょうか?
ここで海洋散骨を例に具体的に見てみたいと思います。
一般的な海洋散骨のプランは、大きくわけて3通りあります。
- 船をチャーターし、家族、友人など親しい人だけで貸し切って散骨を行う「貸切プラン」
- 複数の家族で散骨を合同で行う「合同プラン」
- 船に乗れない家族に代わって、業者が散骨を行う「代理プラン」
そして、散骨は、次のような流れで行われる場合が多いです。
- 出航
船に乗れない場合は、希望により見送ることができます。 - 散骨の儀式
散骨と同時に献花、献酒、献水、黙祷などが行われます。
以上を終えて帰港します。後日、記念のアルバムなどとともに散骨証明書が送られてきます。
ほかにもオプションとして、
- 船上会食
- 水溶性カードにメッセージを書いて海に流す儀式
など、遺族に寄り添ったプランなども用意されている場合があります。
- 「貸切プラン」が20~30万円前後
- 「合同プラン」が10万円前後
- 「代理プラン」が5万円前後
といわれていますが、船の大きさや散骨場所、同乗人数などで大きく変わってきます。
また、散骨の儀式には僧侶を呼ぶ「仏式海洋散骨」もあります。全て無宗教で行われるわけではありません。もし仏式などを希望する場合は、扱っている業者を探して依頼しましょう。
散骨を行った後に、どう供養するかは故人の希望をもとに残された家族の意思に委ねられています。散骨は自由に決められてよいところもありますが、場合によっては寂しさや心もとなさを感じる方もいるのではないでしょうか?
海洋散骨では幸い、記念クルーズなどで故人をしのぶなど業者に依頼して供養を行うことも可能です。この様に法要にあたるような儀式など様々なプランが用意されているのも散骨の特徴のひとつといえるでしょう。
もちろん業者に頼まずに、
- 自宅に遺影を置く
- 自分の好きな時に供養する
- 所縁の人を集めて会食する
など、自由に故人をしのぶ方もたくさんいます。
どの方法が気持ちの落ち着く供養になるのかは人それぞれです。どちらにしても散骨はお墓の管理に悩むことがなく、自由に供養を行えるということに変わりはありません。
ただ、その供養はもしかしたら「自分の代で終わるかもしれない…」そんな不安を抱く方もいるのではないでしょうか。「自分より後の世代に自分の先祖の記憶を引き継ぎたい」という散骨とは一見矛盾するような思いですが、それでも散骨を選択したい人に対して現在、お寺などで広がりを見せている「永代供養」という考え方の中からヒントを探してみましょう!
多様化する永代供養墓
最近、霊園などの広告でよく見られる、永代供養(えいたいくよう)の文字を皆さんはご存知でしょうか?「永代供養墓」とも紹介されていて種類も多く、一見して理解することは難しくなっています。
「永遠。長い年月。とこしえ」という意味になりますが、ここでは永遠というより長い年月というくらいの意味でとらえておきましょう。
また似たような言葉で「永代使用」という文字もお墓の広告にはよく見られますが、永代供養との違いについてもご説明します。
「永代使用」と「永代供養」の違いは契約のかたちになります。
平成12年度に出された厚生労働省「墓地経営・管理の指針等について」では、
- 永代使用は代々墓が承継されていくことを想定=墓地使用権型
- 永代供養は承継されないことを想定=埋蔵管理委託型
として説明されています。
- 契約者(本人と承継者)が永代、つまり長い年月にわたってお墓の土地を「使用」することを「永代使用」
- 契約者が永代、つまり長い年月にわたって、埋葬者の「供養」をお寺などの管理者にお願いするのが「永代供養」
ということができます。
永代供養墓は近年の核家族化や少子化など家族形態の変化や都市部への人口集中などの社会変化から生まれた「新しいお墓のかたち」の供養方法ということもできます。
永代供養墓を選ぶ人は年々増えているわけですが、その理由はどんなところにあるのでしょう?
- お墓を継承する人がいない
- お墓が遠くて管理しきれない
- お墓に関する費用を負担できない
などが主な理由と考えられます。
これらは散骨を選択する人の理由にかなり近いですね。散骨と同じように社会の変化とともに需要が増大した永代供養墓は、宗教や設置者によって呼び方や言葉の定義も違います。そして様々な種類が用意されています。
もう少し永代供養墓について整理してみましょう。
改めて墓地にはどんな種類があるのかを確認してみましょう。
- 地方公共団体が経営主体となり、申請に対する行政の許可によって使用が認められる公営墓地
- 檀家のために設置された寺院墓地
- 公益法人や宗教法人が経営する宗旨宗派を問わない事業型墓地
というように主に3種類にわけることができます。
そして永代供養墓は寺院墓地をはじめ、今やどの墓地においてもその需要に応えようと増えているようです。神社も例外でなく、神道では永代祭祀墓と呼びますが、永代供養のお墓がもちろんあります。
また近年、ロッカー式など、様々なタイプが増えた納骨堂ですが、墓地、埋葬等に関する法律に「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、都道府県知事の許可を受けた施設」と定義、規制されています。納骨堂は、一時的な保管といった趣旨の利用からお墓代わりに利用されることが増えて、屋内にあるスペースにお骨を収蔵するお墓ととらえることができます。
そんな納骨堂にも永代供養としての契約が増えているのです。
繰り返しになりますが、永代供養墓は本人や継承者に代わってその設置者の存在が続く限り、供養をしてくれるお墓です。とはいっても、同じ場所にお骨がずっと納められて供養されるのではありません。
どのタイプであっても、取り出しやすさが考慮された状態で一定期間は納められています。そして、期間終了後には合同のお墓に移動するケースがほとんどです。
まずお骨を安置する場所が、屋外か屋内かでわけられ、入る人数によっても個人か夫婦などの少人数の合同か、他人との合同か、などで分類されます。そして一定期間というのは、仏教の考えに合わせて、7年、13年、33年というのが多いです。
期間終了後に移される時には、骨壺から出すのかそのままか、合同墓は他人と一緒か知り合いだけなのか、など様々な設定があります。
永代供養墓にかかる費用については、保管期間、形態、墓地の立地条件などにも影響されますので、大変複雑になっています。実際にある神社の永代祭祀墓(永代供養墓)の例を見てみましょう。
- 個別墓に30年、その後家族や知り合いだけの合葬墓へ祀られる(骨壺から出して土に還す)場合は70~80万円
- 納骨堂に30年、その後合祀墓へ移す(骨壺のまま移す)場合、2人用契約は60万円、1人用契約が40万円。
そして神社によっては、「御霊まつり」として契約者の自由参加のもと年数回永代供養が行われています。お寺においても同じで、永代供養墓を契約するとお寺主導で行われる永代供養に参加できる場合が多くあります。
散骨と永代供養 僧侶・お寺との関わり
仏教離れといわれて久しい昨今、お寺では多様化した需要に応えようと永代供養墓を設置しており、供養の仕方を工夫してきたことが伺えます。
一般的なお葬式においても、お寺との繋がりのない人には葬儀業者からの依頼で僧侶が派遣されるなど、かなり前からお寺や僧侶の柔軟な対応は行われてきました。お寺の敷地内にも関わらず、無宗教の永代供養墓を契約可能としてきたことはお寺の柔軟な対応の表れでもあります。
そして、散骨という葬送の場においてはどうでしょうか。散骨が広く行われるようになった当初、伝統的な仏教と散骨の関わりは少なかったように思われます。最近では散骨に僧侶が参加したり、お寺が散骨場所を用意してくれるなど、散骨とお寺や僧侶の関係が明らかに変わってきたといえるでしょう。
その理由のひとつとして、檀家数の減少などで苦慮するお寺の事情がまずあると思われます。また、自然信仰を内包している日本仏教に散骨を受け入れる土壌があったことも変化の理由のひとつとして考えられますね。
永代供養として散骨儀式を行う僧侶や神職
散骨が広く行われるようになってから現在まで、お寺や僧侶は散骨にどのような関わりを持ってきたのでしょうか?
まず、散骨儀式の執り行いを挙げることができます。実績のある散骨業者の多くは、お寺や僧侶との繋がりがあります。依頼者が希望すれば仏式の散骨儀式を執り行ってもらえます。葬送全般を扱う葬儀業者が、散骨も取り扱うようになり、その繋がりで僧侶が散骨に関わるという場合もあります。
また、散骨への派遣を受け付ける僧侶たち自身のサイトなど、僧侶個人からの様々な発信も見られます。儀式に関わるだけでなく、散骨、粉骨、墓じまいなどをトータルに行うNPO法人の代表として積極的に散骨に関わる僧侶もいるのです。
また僧侶だけでなく、神職も散骨の儀式を執り行っているケースがあります。散骨のために業者が買い取った島の紹介サイトでは、慰霊所で儀式を執り行う神職の姿と神事の様子を見ることができます。
お寺が行う散骨と永代供養
現在、山林に散骨をする森林葬を行っているお寺が全国的にあるようです。ただ、お寺の名前を公表していない場合もあり、実態が見えない点もありますが、それだけ散骨にお寺が深く関わるようになった表れなのだと思います。
ところで、最近話題の「永代供養送骨サービス」をご存知でしょうか?
ゆうパックでお骨をお寺に送り、永代供養をお願いするもので散骨スぺースにすぐ散骨する場合は3万円ほどで、10年間納骨堂で保管後、散骨スペースに散骨する場合は10万円ほどで供養を行ってもらえるようです。
- お墓を建てる費用を準備できない
- お墓参りに行けず、管理ができない
- 後継者がいない
- 後継者にお墓の管理や維持費で負担をかけたくない
そんな事情を抱える方々がこのサービスを利用しているそうです。お骨を郵送ということに少し抵抗があるかもしれませんが、希望すれば立ち合いもできます。
何より永代供養という安心感が得られる、お寺の新しい取り組みですから、葬送方法の一つとして、これから更に需要が高まるのではないでしょうか。
散骨と永代供養 その思いを生かす方法
現代の私たちにとって「永代」とは実感としてどれくらいを指すのでしょうか?
昔からある公営墓地などで家族墓と先祖墓が一区画内に建てられているのをよく見かけます。現在、そこにお墓参りをしている人の中で、どれくらいの人が先祖墓に祀られているご先祖様の記憶を持っているのでしょうか?
自分に繋がるすべてのご先祖様に対して感謝をして供養することはもちろん大切なことですが、それでも生前の記憶となると家族墓に祀られている、せいぜい曾祖父母くらいまでしか分からないというのが現実ではないでしょうか?
「永代」とは現代の私たちにとっては、もしかしたらこの程度の感覚であるのかもしれません。つまり自分の孫か曾孫くらいまでは故人を覚えておいてほしいということです。
散骨を選択する人の中にも、子どもや孫の世代くらいまでは何らかの供養をしてもらいたいと望む人はいるのではないでしょうか?供養するためには何らかのかたちがあると子どもや孫にも伝えやすいかもしれませんね。
「散骨」と「永代供養」どちらの思いも生かすためには、ひとつの方法としてお骨を分骨し、散骨と永代供養を併せて行うということが考えられます。
散骨と永代供養のために分骨する
亡くなった方のお骨を2箇所以上の別々の場所に分けて納骨し、供養することを言います。散骨と同時に永代供養をするために、かたちを残したいと考えている人は分骨をする必要があります。
分骨は悪いことなのではないかと心配になるかもしれませんが、大丈夫です。分骨は縁起が悪いという説もありますが、それは迷信であるといわれています。
仏教では昔から分骨が行われていてお寺の仏舎利にはお釈迦様のお骨が分骨されています。ただ、様々な意見を持つ人がいますので、その点は家族や周りの人とよく話し合っておくことをおすすめします。
火葬場で、火葬当日に分骨する手続きの一例は、次の通りです。
- 事前に、葬儀業者を通してまたは直接火葬場に対して、「分骨証明申請書」(※場所により名称が異なる)を記入し申請を行います。
※複数必要な場合は、必要分だけ申請することを忘れずに。 - 骨壺は自分で用意します。
- 火葬後それぞれ骨壺にお骨を納め、「分骨証明書」の発行を受けます。
- 散骨の場合は必要ありませんが、永代供養墓などに埋葬する場合には「分骨証明書」が必要になりますので大切に保管しておいてください。
このような分骨の手続きについては、各地方公共団体や斎場のホームページなどに掲載されていますが、あらかじめ散骨業者に相談しておくのがよいでしょう。
埋葬後の分骨について、手続きの一例は次の通りです。
- 現在お骨を埋葬している墓地の管理者と分骨先の墓地管理者にあらかじめ相談し、了解を得ます。
- 現在お骨を埋葬している墓地管理者に「分骨証明書」を発行してもらいます。
- あらかじめ石材店などに作業依頼をして儀式が必要な場合はお寺などに依頼をしておきます。
- 遺骨を取り出してその場で分骨します。本骨はそのお墓に戻します。
- 分骨先の墓地管理者に連絡しましょう。分骨証明書を持参の上、分骨したお骨を墓地に納めます。
こうしてみると、埋葬後の分骨は手続き的にも費用的にも火葬直後より負担が大きいようですね。火葬後すぐに分骨できるように、生前にしっかりと話し合って準備をしておくことをおすすめします。
まとめ
散骨や永代供養墓を選択する人の理由は近いものがあり、供養の仕方のこだわりから両方を選択する人もいます。散骨しても永代供養はできるのです。
そのためには、分骨することが必要になりますので、あらかじめ周囲と話し合って準備しておきましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |