「終活」という言葉を近年、耳にすることが増えてきました。そして、墓じまいとともにシニア層に支持されるようになってきています。
言葉は広がっても、実際に何をすればよいのか、イメージできない人もいるでしょう。そのため、最近では「終活アドバイザー」の存在が注目されています。
では、終活を専門家に頼らず、一人でできないものなのでしょうか?そこで今回は、終活と終活アドバイザーについて、説明していきます。
終活は「終活アドバイザー」と一緒に行うのが〇
終活は、人生の最後に備えて準備や手続きをすることです。もちろん一人でできますが、専門的な内容のものも多く、一人で進めるには時間と手間がかかります。また、決断に迷ったり悩んだりしたとき、相談された家族でも判断に困ることが出てきます。
そのようなときに、頼りになるのが「終活アドバイザー」です。経験豊富な知識で疑問や不安を解決してくれ、客観的視点で納得のいく終活をサポートしてくれます。
終活の意味とメリット
終活をする意味は、自分の人生を見つめ直して残りの人生をどう生きていくのかを決めていくことに、大きな意味があります。
元気なうちに何をしたいか?もしものときはどうしてほしいか?
自分自身で再確認し、それを明確化することで、残された人生を無駄なくメリハリのあるものにします。また、意思表示ができない状態になったとしても、自分の希望が家族に把握されていれば安心ですね。
この2つのメリットについて詳しく説明します。
人生、何が起こるか分かりません。急な病気になるかもしれませんし、介護が必要な状況になることもあり得ます。
そのようなときに、家族や知人が「何をどうしたらいいのか」途方にくれることのないよう、準備しておくことが大切です。例えば、以下のような状況です。
- 保険証や銀行の通帳はどこにあるのか
- 持病や服用している薬があるか
あらかじめ整理し場所が分かるようにしておけば、周囲の混乱が少なくなります。このような周りの人に対する配慮も「終活」の一つです。
「終活」は、葬儀やお墓のことなど、自分が亡くなった後のことを考えることと思っていませんか?
「残された人生をより豊かに過ごすための計画をつくる」ことが、終活の本来の目的です。今の資産状況を把握し、医療や介護、葬儀、お墓のことを決めておけば、自分の亡き後のことを心配する必要がありません。
また、後回しにしていた、やりたかったことにチャレンジする機会にもなります。終活を通して自分の資産や気持ちの棚卸しを行い、残りの人生を前向きに生きましょう。
終活の中で考える内容
終活で考えておく内容は、大きく分けて以下の4つです。
- 1.葬儀・お墓のこと
- 2.財産や相続のこと
- 3.医療・介護のこと
- 4.その他、身の回りのこと
それぞれの内容について詳しく説明していきます。
最近は葬儀や埋葬の選択肢が増えています。
- スタンダードな仏式の葬儀
- 家族葬
- 音楽葬などの宗教者を呼ばない葬儀
- 一般的な菩提寺のお墓に埋葬
- 永代供養墓に納骨
- 散骨
- 手元供養
終活で、費用を含めてリサーチし、希望の葬儀、埋葬方法を見つけてください。そして、葬儀や供養方法の希望が決まったら、家族にその意向を伝えましょう。
財産や相続はデリケートな問題で、トラブルになると骨肉の争いが生じます。家族の知らない財産があり、遺産分割後に見つかり、問題になることもあります。
また、ネットバンクを含む銀行口座で通帳が見つからなかったことで、資産が誰にも気づかれずに放置されてしまうということもあります。
家族から相続の話はしにくいものなので、元気なうちに財産を整理、リスト化などして管理することをおすすめします。必要に応じて遺言書を作成するのもよいでしょう。
人はいつ、病気や事故、認知症などで意思表示ができなくなったり、自分で判断することが難しくなったりするか分かりません。そのため、終活で医療や介護のことをしっかり調べましょう。
希望の医療や治療方法、入居したい介護施設などがある場合は、家族に意向を伝えておきます。終活で運転免許証や保険証の裏面のドナーカードを再確認し、希望項目を記載しておくのもよいですね。
自分が亡くなった後、残された人にとって大変な作業の一つに「遺品整理」があげられます。
想いのつまった品を目の当たりにすると、なかなか整理が進まないそうです。家族の負担を軽減させるためにも、終活で不用品の整理をしておきましょう。
また、価値のあるものを知らずに処分されたり、譲りたい相手とは別の人に渡ってしまったりすることがないように以下のようなリストを作成することをおすすめします。
- 財産のリスト
- 形見分けのリスト
終活の進め方
終活の進め方に決まりは特にありません。自分の希望や調べたことをノートなどに記録して進めるのが一般的です。
終活で自分の希望や調べたことを記録したノートのことを「エンディングノート」と呼びます。
1.自分自身のこと
2.これからやりたいこと
3.葬儀・お墓のこと
4.財産や相続のこと
5.医療・介護のこと
6.その他、身の回りのこと
今は、書店や文房具店で市販されている「エンディングノート」もあります。書き方に悩むようでしたら、それを活用するとよいでしょう。
エンディングノートに財産や相続のことを書くことができますが、法的な効力はありません。あくまでも「希望」となりますので、家族が納得しない場合は、民法で定められた「法定相続分」に沿って分配されます。そのため、財産の分け方に希望がある場合は、エンディングノートとは別に遺言書を作成しましょう。
遺言書は公証人と作成すると間違いがありません。エンディングノートには、遺言書が存在することを書き、家族に分かるようにすると安心です。
身の回りの整理も終活の一環として行います。身の回りの整理内容は以下の4つです。
1.銀行口座や保険などのリスト化
2.資産の整理
資産によっては、後の財産分与のために売却して現金化します。
3.資産以外の日用品などの断捨離
本人にとって宝物でも、家族にとっては不要なことがあります。
4.デジタルデータ
注意が必要なのは、パソコンやスマホ内の情報やSNSを含む「デジタルデータ」です。削除や解約をしないと永久にデータが残りますので、アカウント情報(IDやパスワードなど)のリスト化をしたり、整理をしておきましょう。
葬儀方法について、希望があるようでしたら自分で信頼できる葬儀社を探して生前契約を済ませておくよいでしょう。内容によってサービスを提供していない葬儀社もありますので、リサーチだけでも時間がかかることがあります。早めに準備を始めましょう。
また、葬儀の参列者リストなどをエンディングノートに書き留めたり家族にも事前に相談したりしておくと、いざというときに家族の負担が軽減されます。
菩提寺などに既存のお墓があり、遺骨はそこに納骨するのであれば問題はありませんが、お墓がない人は終活でしっかり考えましょう。
- 前もって生前に建てる
- 自分の遺骨の納骨に合わせてお墓を建てる
家族、親族の意見も聞かなくてはいけませんので、時間に余裕を持って準備するようにしましょう。なお、遺骨の供養方法はお墓に納骨すること以外にも、いろいろとあります。
どのような形で供養してもらいたいか、終活で考えてみてください。
終活を支える「終活アドバイザー」
ここまでの説明で、「終活」はやるべきことが山ほどあると、うんざりしてきていませんか?これを一人でやろうとすると、途方もない気持ちになることでしょう。
そのようなときに頼りになるのが「終活アドバイザー」です。終活のプロフェッショナルとして、終活に悩む人に寄り添い、適確な助言や提案をしてくれます。
ここからは、終活アドバイザーについて、説明しましょう。
終活アドバイザーとは
終活アドバイザーとは「NPO法人ら・し・さ」が運営している「終活アドバイザー協会」の認定資格です。終活に必要なことを体系的に学び、検定試験を合格した人が所持しています。
資格保持者は終活の専門家として、「終活が必要な人」や「終活を行う人」の身近な相談相手となります。また、終活の進め方や、身の回りの困りごとに助言をしてくれます。
終活アドバイザーはこんなことを学んでいる
それでは、終活アドバイザーは一体どのようなことを学んでいるのでしょうか?
その内容を少し覗いてみましょう。
「残りの人生を自分らしく、よりよく生きる」ことが、終活をする大きな目的の一つです。
終活アドバイザーは、以下の内容などを学んでいます。
- 終活が必要な背景を熟知
- よりよく生きるために必要なこと
- 元気なうちに整理しておくべきこと
- 財産管理のポイント
また、終活アドバイザーは自らのエンディングノートを作成しています。その体験を通して「自分と大切な人の“これから” を想像する視点」を身につけています。
「残りの人生を自分らしく生きる」ために、様々な社会保険制度を活用することができます。
- 年金制度
- 医療保険
- 介護保険の制度
終活アドバイザーは、これらの社会保険制度について、しっかり学んでいます。そして、手続きや制度を上手に利用したライフプランを提案、助言してくれます。
終活アドバイザーは、「人生の終わりのとき、どのような手続きが必要か」「残された人のその後の生活はどうなるのか」を学んでいます。その内容は以下になります。
- 葬儀やお墓について
- 残された人がどのような手続きを経て葬儀・納骨をする
- トラブルが生じやすいになりがちな相続について など
終活アドバイザーは、終活を考える人とその家族のことを考えて、「もしものときの手続き・残される家族へ想いを託す方法」を詳しく教えてくれます。
終活アドバイザーはこんなことをしてくれる
終活アドバイザーの仕事は、大きく分けて次の4つです。
- 1.終活に関する相談
- 2.エンディングノートのアドバイス
- 3.専門家の紹介
- 4.行政手続きの手伝い
それぞれの内容について具体的に見ていきましょう。
「終活」について先述しましたが、やることがたくさんあります。どこから手をつけるかは、その人の現状によってそれぞれ異なるでしょう。
終活の知識豊富な終活アドバイザーでしたら、その人に合った終活の進め方を提案してくれます。また、経験から客観的な視点で適確な助言を仰いでくれます。
終活アドバイザーに現状を話し、終活の進め方や不明点・疑問点を相談しましょう。
終活アドバイザーは、「エンディングノート」に関わる知識やノウハウを学んでいます。そのため、エンディングノートの重要性、書き方や活用方法を分かりやすくアドバイスしてくれます。
終活アドバイザーが、自治体や地域の集まりに出向き「エンディングノートの書き方講座」を開催しているところもあります。まずは、お住まいの地域で開催されていないか確認し、参加してみるのもよいでしょう。
終活で考えることの中に「財産・相続のこと」「医療・介護のこと」があります。各分野の専門家に相談したり手続きしたりする必要が出てきます。
弁護士や司法書士、税理士や金融関係者など
医療関係者やケアマネージャーなど
終活アドバイザーは、悩みを解決するためにはどの分野の専門家と相談すべきか、的確に見極めてくれます。そして、必要に応じて専門家を紹介してくれます。
終活の内容によっては、公的サービスが受けられる場合があります。
終活アドバイザーは、どのような公的サービスがあり、どのような状態のときに利用できるかを熟知しています。その人の状況に適したサービスを見極めて、提案してくれるでしょう。自治体窓口に同行してサポートしてくれる終活アドバイザーもいますので、心強いですね。
これらのことから、終活アドバイザーは終活についてのよき相談相手でありパートナー的存在です。
終活アドバイザーはどこにいるのか
終活アドバイザーは、単体で仕事をしている人より、他の仕事のスキルアップで資格を取得している人が多いようです。では、どのような業種で終活アドバイザーが働いているのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
最近では終活の一環として、生前に葬儀の相談を済ませておく人が増えています。そのため、葬儀会社のスタッフに終活アドバイザーがいることがあります。
終活アドバイザーとしての視点で、希望の葬儀内容を考えると同時に、「残りの人生を自分らしく、よりよく生きる」ことに関しても相談にのってくれるでしょう。そのためにも、葬儀のことは生前に「終活」として進めておくことをおすすめします。
介護のプロである介護福祉士や訪問介護員、ケアマネージャーが終活アドバイザーの資格を取得していることがあります。
普段から介護で顔を合わせているので、家庭や本人の状況をしっかり把握しているため、どの終活から手をつけるべきか分かっています。
気心知れたスタッフでしたら、本人だけでなく、家族も一緒に相談しやすいでしょう。
終活で、複数開設している銀行口座を一つにまとめる人がいます。そのため、金融機関によっては、ファイナンシャルプランナーや終活アドバイザーの資格を取得している人が勤務していることがあります。
金融や税制、保険や年金など、お金に関する相談のほか、日々の生活設計や葬儀や相続のことなどが相談できるので、より安心です。
口座を開設している金融機関に、終活アドバイザーを取得している人が勤務しているか、確認してみるとよいでしょう。
終活で作成する「エンディングノート」には、法的な効力がありません。法的効力を求めるには「遺言書」を作成する必要があることを先述しました。
遺言書は、民法の規定に従った書式でないと無効とされてしまいます。有効の正しい遺言書を作成するには、弁護士や司法書士、行政書士といった、法律の専門家の手助けがあると安心です。そのため、法律の専門家の中に、終活アドバイザーの資格を取得している人がいます。
自ら「終活アドバイザー」になるという選択
先ほど、終活は「残された人生をより豊かに過ごすための計画をつくる」ことが本来の目的で、「やりたかったことにチャレンジする機会になる」と説明しました。そして、終活で「医療・介護」から「葬儀」や「資産」に関することまで、幅広く考えてきました。
この機会に自ら、「終活アドバイザー」の資格取得にチャレンジするのも一つの手です!その勉強は、そのまま自身の終活に役立つはずです。
終活アドバイザーになるためには
終活アドバイザーの資格を取得するには、講座を受講し、検定試験に合格する必要があります。講座とは、どのようなものなのでしょうか?
ここから、終活アドバイザーとして活躍できるようになるまでの流れを解説しましょう。
以下のような流れで受講することができます。
- ユーキャンの「終活アドバイザー講座」を申し込む
- 受講料を支払う
- テキストや問題集を、エンディングノートが教材として送られてくる
- 学習開始
学習内容は、テキストや添削課題での勉強やインターネットサービスでのミニテスト、講義動画などです。1日30分~1時間勉強した場合の標準的な受講期間は4カ月です。
仕事や家庭の事情で時間が取れない人でも8カ月まで延長受講することができ、自分のペースで勉強を進められます。
終活アドバイザー講座には4回添削課題があり、そのうちの4回目が「終活アドバイザー検定試験」となります。
検定試験は、自宅で受験することができます。試験はマークシート方式で、合格ラインは全体の6割以上の得点です。
万が一不合格になったとしても、終活アドバイザーに必要な知識が着実に身につくまで、受講期間内であれば何度でもチャレンジできます。
終活アドバイザー検定試験に合格したら、終活アドバイザー協会に登録申請をして入会します。これが受理されると認定証が授与され、晴れて「終活アドバイザー」として活動ができるようになります。
終活アドバイザー協会の入会にかかる入会金は4,000円、年会費は6,000円です。終活アドバイザーを名乗って仕事をする場合は、会員であることが必須要件になります。
終活アドバイザーになるメリット
終活アドバイザー講座では、テキストなどで必要な知識を身につけられるだけでなく、実際にエンディングノートに書き込みながら勉強します。つまり、学びながら自分の終活を進めることができるのです。
何かを学ぶということはやりがいになり、さらに終活アドバイザーを仕事にすれば、自身の新たな生きがいにつながるでしょう。
終活アドバイザーの勉強や資格取得は、自分の終活だけでなく、自分以外の人の終活にも貢献できるということです。
まとめ
終活は、自分の今までとこれからを整理して書き留めることで、残りの時間をより大切に、思いっきり過ごすことができる手助けとなります。また、終活することで、残される人へ想いを伝えることができます。
「終活はまだ早い!」と思わず、思い立ったときから気軽に始めてみましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |