終活という言葉も定着してきましたが、「難しそう」「大変そう」「具体的に何をするのかわからない」などの理由から先送りにしてしまい、行動に移せない人もいるのではないでしょうか?

定年を迎えたり、子供が結婚したり、人生の節目で重い腰を上げる人が多いようですが、病気をきっかけに終活をはじめる人も少なくありません。

しかし、終活は決して難しいことではなく、健康なうちにはじめることで人生を安心して過ごせるものだということをご説明します。

病気に備えて終活する理由

病気に備えて終活する理由
終活とは「終末活動」の略です。「自分の人生の終末」のためにする活動のことで、就職活動を「就活」と略すのと同じような造語です。

最初は自分の葬儀やお墓について生前に準備する意味で使われていましたが、今では、病気のときの医療や介護についての要望・身辺整理・遺言・相続の準備なども含まれるようになりました。

最近は終活に関する書籍が増えて、葬儀社や行政書士などが主催する講演会も開かれるなど、終活ブームといっても過言ではありません。

人はいつ、病気になるかわかりません。そのため、病気のリスクを考えて終活をはじめる人も増えています。

もし、病院で余命宣告をされたら、自分が亡くなった後のことを落ち着いて考えられる人は少ないでしょう。そのようなときのために備えておくことが「終活」です。

終活で病気に備えてすること

終活をして、もしも病気になったときに備えておくというのは、自分がいなくなった後に家族が困らないように、自分の思いや財産をはっきりさせておくということです。

何をするか決まりはありませんが、一般的には次の5つです。

  • 荷物の整理(断捨離)
  • 財産の整理
  • 葬儀やお墓に関すること
  • 医療や延命についての希望
  • 家族への思いを伝える など

具体的にどのようなことをおこなうのか、項目ごとに説明しましょう。

終活で断捨離して生活空間を整える

終活で断捨離して生活空間を整える
断捨離は終活の中でも達成感が大きい作業です。

断捨離の手順は次のとおりです。

  1. 部屋別や、家電・本・衣服など分野別に、「いるもの」「捨てるもの」「いらないけど捨てられないもの」に分ける
  2. 「捨てるもの」は処分をする
  3. 「いらないけど捨てられないもの」は一旦保留にし、期間を空けて再度、「いるもの」「捨てるもの」「いらないけど捨てられないもの」に分ける
  4. 「いるもの」としたものも、期間を空けて再度、確認をする

断捨離によって生活空間を整えることで、万一のときに家族が困りません。また、自分自身の心が前向きになり、病気になりにくい健康的な生活を手に入れることができるでしょう。

終活で財産を把握する

財産には、預貯金や土地・建物・有価証券だけではなく、美術品・骨董品・車といった換金価値のがあるものが含まれます。

財産の整理の手順は次のとおりです。

  1. 財産を目録にする
  2. 使用頻度が少ない銀行口座は解約して1つの口座にまとめる
  3. 土地や不動産などは売却して現金化する
  4. 借り入れがある場合は、整理をしておく

財産を整理することで、終活として急な病気の入院費やお墓・葬儀の費用などの試算や計画が立てやすくなります。

もしものときに家族の負担軽減になります。さらに、今まで後回しにしていた自分の「やりたいこと」に使える費用がうまれることがあります。

終活でお墓や葬儀の準備

終活でお墓や葬儀の準備
お墓は生前に準備しておくことをおすすめします。

しかし、最近は一般的な先祖代々に継承するお墓ではなく「散骨」や「永代供養墓」など供養方法のバリエーションが増えています。

既に先祖代々のお墓があったとしても、遠方にあるため管理が難しい場合は、お墓の終活ともいえる「墓じまい」や、その後の供養はどうするのかなどを終活で決める必要があるでしょう。

自分が亡くなった後、家族にどう託したいのかを考えて、遺骨の供養先を決めてください。身近な人に相談したり、インターネットや書籍で調べたりして供養方法を決め、業者から資料や見積もりをとり、契約するという流れが望ましいでしょう。

葬儀についても「家族葬」や「密葬」など希望があれば家族に伝えておきましょう。葬儀の連絡をしてほしい友人や親せきの名前をリストアップしておくと、家族がスムーズに連絡できます。自分で気に入った写真を遺影として準備しておく人も増えています。

終活として病気に備え遺言書を書く

遺言書は、昔からある終活の代表的なものです。

「遺言書を書くほどの財産はない」と思う人が多いようですが、誰に何を受け取ってもらいたいか明確にしてあると、残された家族がいらぬ争いをおこさなくて済みます。

遺言書は大きく分けると、自分で作成する「自筆証書遺言」と公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の2種類です。

遺言書は記載方法に細かい規定があり、不備があると法的に無効となります。公正証書遺言は諸費用がかかりますが、家族間のトラブルを回避するためにも、法的に有効な遺言書の形に作成してもらうことをおすすめします。

病気に備えて終活ノートを書く

病気に備えて終活ノートを書く
終活ノートは「エンディングノート」とも呼ばれ、終活の最初に書きはじめる人が多いようです。

遺言書と違って法的効力はありませんが、意思疎通ができなくなったときの対応や亡くなった後のお墓のことなどを家族に託すメモになります。病気に備えて、治療の希望を書いておくと、いざというときに家族が治療方法を決断しやすくなるでしょう。

それでは、終活ノートに、どのようなことを書くのかご説明します。

自分に関する基本的な情報

終活を進めるうえで、終活ノートは大事な役割を果たす基本となります。

しかし、終活ノートに書く内容は現在・過去・未来など多岐にわたり、すぐに書けることばかりではありません。そのため、書きやすい項目から書きはじめるとよいでしょう。

一般的な終活ノートは、まず下記の個人情報から書きはじめます。

  • 氏名
  • 現住所
  • 生年月日
  • 血液型
  • 保険証 など

分かりきっていることでも、1冊のノートにまとめて書いてあると、いざというときに家族はこのノートを見れば、各種書類の記載のときにスムーズに対応ができて助かります。

友人の連絡先や、もし葬儀やお墓の生前手配などがすんでいれば、業者の連絡先も記載しておきましょう。

加入中の保険について確認

加入中の保険について確認
葬儀には平均200万円ほどかかるといわれています。貯金で賄えない場合は、死亡時のための保証や貯蓄を目的とした「終身保険」や「葬儀保険」に入っておくと安心です。

終活ノートに今、加入している保険を書いておくと、保険請求のときに家族が困りません。この機会に、保険の見直しをするのもよいですね。

また、病気で余命6カ月以内の宣告を受けた場合に死亡保険金の一部を受け取れる「リビングニーズ特約」というものもあります。生きているうちに保険金を受け取り、治療費の補填や旅行などのやりたいことに使うことができます。

医療や介護の希望

医療や介護の希望
病気で意思疎通が困難になった場合に備えて、医療や介護などの希望を書くようにしましょう。いざというときに、終活ノートに意向が書かれているだけでも、家族の決断の負担が軽減します。

ぜひ書き記しておきたい内容の一例は、次のとおりです。

  • どのような医療を受けたい
  • どのような看護を受けたいのか
  • 延命処置を希望するのか
自分史

自分史は、人生の履歴書ともいえるものです。生まれてから現在に至るまでの人生を振り返り、それを踏まえて、これからの人生をどう生きるか考える資料となります。

どこで生まれ、どこの学校に入り、どんな仕事をし、どんな夢を持ち、どんな仲間がいてと、詳しく思い出しながら書いていくことにより、後回しにしていたやりたいことが思い出され、再チャレンジしたくなる気持ちが湧くかもしれませんね。

家族へのメッセージ

家族へのメッセージ
終活ノートは、家族へのメッセージを残すこともできます。

終活として自分史をまとめて人生を振り返ると、おのずと家族へ伝えたいことや託したいことが出てくるものです。面と向かって楽しかったことや感謝の気持ちを伝える方がよいのですが、いまさら恥ずかしい、そんな時間を作るのは難しいといった理由で避けてしまう人が多いでしょう。

終活ノートに書いておけば、いずれ家族が目を通し、家族へ伝えたいことや託したいことを届けることができます。

デジタルデータ消去

最近はSNSや、買い物の決済もカードや電子マネーが普及していて、それぞれにIDやパスワードを登録しています。サービスを退会しようとしたとき、IDやパスワードを忘れて困ったことはありませんか?

デジタルデータのIDやパスワードなどはリスト化し、終活ノートに書いておきましょう。普段の生活での自分の忘備録として活用できますし、いざというときは家族がその契約を解約するときに役立ちます。

終活しておけば病気になっても安心

終活しておけば病気になっても安心
病気になると、日常生活で考えてこなかったことに突然直面することになります。毎日のルーティンや予定した行事ができなくなり、入院費や治療費を賄えるのか不安になり、入院したら家はどうするのか、ペットの世話は、植木の水やりは・・・不安と心配ばかり、考えたらきりがありません。

しかし、終活しておけば慌てずに治療に専念できますね。病気になったときのために、どのようなことを想定しておけばよいのかを考えましょう。

癌などの病気で余命宣告を受けた場合

癌は日本人の死因の第一位であり、死に直結する病気と思われてきましたが、医療の進歩に伴い、現在は必ずしも治らない病気ではありません。

たとえ余命1年といわれても、それ以上に生きることも、今までとおりの生活ができる可能性もあるのです。「余命」とは「寿命」ではなく、癌のような深刻な病気になったときに、病院が患者に伝えるため、過去のデータから割り出した目安の期間でしかありません。

したがって、余命宣告を受けてから終活をはじめても間に合わないことはありません。それでも、元気なときに終活しておけば、治療に専念できますし、治療方法を選択することもできるでしょう。

余命宣告を受けたときに抑えておきたい終活のポイント

余命宣告を受けたときに抑えておきたい終活のポイント
余命宣告を受けたら、まず自分が入っている保険は、いつどのようなときにいくら支払われる保険なのか確認しましょう。

医療費がかかりますし、毎月の生活費もあります。リビングニーズ特約があるか、先進医療特約はあるかなど資金計画をするうえで大切です。

次に治療や介護方針を検討します。

例えば、癌治療には放射線治療や重粒子治療など保険適用外の治療方法があります。どのような医療を受けたいのか、どのような介護を受けたいのか、延命処置を希望するのかなど、自身の意思表示が重要です。

その後、先述した財産の把握、葬儀の生前準備、使っていないネットサービスの解約やID・パスワードのリスト化など、残された家族が困らないよう準備をしましょう。

終活で考える在宅医療のメリット

在宅医療とは、医師や看護師・理学療法士などの医療従事者が、患者の自宅や入居している福祉施設に訪問して医療活動を行うことです。

終活の観点から見た在宅医療の大きなメリットは、住み慣れたところで医療を受けられ、病気であっても自分らしい生活が送れるということです。日常生活に様々な制約がある入院生活より、精神的な負担が和らぐでしょう。

在宅医療は、次の2つの診療方法があります。

  • 計画的に訪問し治療や指導をおこなう「訪問診療」
  • 病状の変化から不定期におこなう「往診」

一般的な試算では、介護用ベッドを購入するなど初期費用がかかりますが、治療費は抑えられます。

在宅医療のデメリット

在宅医療のデメリットとして一番大きなものは、家族の精神的、肉体的な負担が大きいことです。

病気の状態にもよりますが、24時間ついていなければいけない場合もあるでしょう。緊急時には、医療機関に連絡をとるなどの判断を家族が担うことになります。

在宅医療では、患者本人の精神的な負担は減ると思いますが、医療機関にあるような設備はなく、積極的な治療は受けられません。

病気のときに在宅医療を望むのであれば、関係者全員の意思統一が必要になりますので、終活として、きちんと話し合いの場を設けましょう。

認知症や介護が必要になった場合

認知症や介護が必要になった場合
終活を考えるうえで、介護の問題は避けられません。最後まで自分のことは自分でしたいものですが、できなくなった場合に備えて、終活として介護の問題を考えておくことは重要です。

まず、認知症や病気で介護が必要になったときに、在宅介護を望むのか、施設への入所を望むのか、自分の考えをまとめる必要があります。

在宅介護の場合
  • 「現在家族と同居しているのか」「先々同居できるのか」「訪問ヘルパーを頼めるのか」など考える。
  • お風呂や食事、買い物など、日常生活について具体的にシミュレーションをする。
施設に入所の場合
  • 家族による介護の心配はなくなるが、他人との共同生活で自分の時間があまり持てなくなる可能性がある。

考えをまとめたら、家族とよく話し合いましょう。

まとめ

1.終活で保険を見直し、リビングニーズ特約をつければ、病気で余命宣告されたときの出費に備えられる
2.終活で預金や月々の支払い(公共料金・ローン)をまとめておけば、病気の治療費について家族に相談するときに役立つ
3.終活ノートに、病気のときの介護や治療方針を書いておけば、家族が悩まなくてすむ
4.終活のため断捨離をしておけば、病気で入院中に家族が出入りしても安心
5.病気で余命宣告されても長生きできることが多いので、人生を前向きに生きる終活をする

終活は病気になってからでも遅くはありませんが、元気なうちからはじめることをおすすめします。終活をしっかりしておけば、安心して病気に向き合え、心おきなく家族に後を託せます。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。