樹木葬、海洋散骨、手元供養等々、伝統的なお墓から離れる人たちが増えている今日この頃ですが、この時代にあえて「お墓を建てる」選択をしたおふたりのお話を伺いました。

夫婦のための生前墓を購入

KTさん(74歳 千葉県在住)

「出身は宮崎で、大学入学で上京し、そのまま首都圏住まいで現在は千葉県に住んでいます。私は3人兄弟の次男で、地元には兄がおり、姉は愛知に住んでおります。10年前に兄から『墓じまい』の相談で我々姉弟に連絡があり、地元のお墓をしまうことになりました。

兄の子どもたちも福岡と東京におり、この先お墓の世話をすることも難しいという判断でした。

墓じまいはトラブルもなく、スムースに進んだのですが、それでも兄は霊園や役所との細々したやりとりをするのが大変だったようです。すでに60代後半でしたしね。

そんなこともあり、妻との間で『自分たちの墓をどうしようか』という話し合いを始めたんです。

息子と娘がいるのですが、2人とも結婚し、それぞれの家庭があります。どちらも都内と神奈川に住んでおり、遠い距離でもないのですが、この後ずっと同じ場所で暮らしていくかもわからないし、孫の時代はなおさらでしょう。

我々夫婦で出した結論は『永代供養付きの生前墓を建てる』ことでした。とにかく葬儀後のバタバタしたときに遺族が墓の手続きすべてを行うのは厳しいですから。

それに、自分たちの葬儀代金は用意していますが、子どもたちに渡せば相続税がかかります。墓の形になっていれば、『継承』になるので相続税がかかりません。

樹木葬や海洋散骨も魅力的ですが、子どもたちと話したときに『お参りする墓標はあったほうが…』という声もあり、生前墓に決定しました。

 

『生前墓は縁起が悪い』というような説も昔はあったそうですが、調べてみると中国等では「縁起がいい」という説もあり(笑)、気にしないことにしました。

 

孫たちは結婚するかどうか、子どもを作るかどうか、首都圏どころか日本で暮らすのか、全くわかりませんし、子孫に手間を残す方法は避けたかったのです」

 

父への感謝の気持ちから個別墓を

HMさん(54歳 神奈川県在住)

「最近では『お墓は建てない』という人が増えていることは知っていますが、私はあえて両親の墓を建てる選択をしました。特に信心深いわけでもないですし、お盆やお彼岸にいつも墓参りをしていたわけでもないのですが…

 

言ってみれば『故人を尊重し、偲び、追悼するため』です。両親への感謝の気持ちですね。私も大学まで進ませてもらったわけですし、孫が産まれた後もさまざまな協力をしてもらいましたので。

墓標をしっかり建てて、時折きちんとお参りする場所と対象物があることは大切だと思っているのです。

とはいえ、別に壮大な墓を建てたわけではありません。金額にして130万円ほどでした。比較すれば高いですが、納骨堂であれ、樹木葬であれ、それなりの金額はかかります。

色々比較して、数十万〜百万円くらいの差です。1,000万違えば考えるまでもありませんが、この程度の金額差ならしっかりとしたお墓を建てようと思ったのです。

 

でも、この墓を「先祖代々の墓」と考えているわけではないんです。我々夫婦が同じ墓に入るつもりは今のところありません。自分たちのことはこれから考えようと思っています。

 

ウチには1人娘がいて、将来どうなるのかはわかりません。結婚することになって、先方の姓を名乗るのか、現在の姓を名乗るのか、そもそも結婚するのか? いずれにせよ『家に入って、お墓を守る』というのは現代のライフスタイルには合っていないと思います。

 

そんなこともあり、両親の墓には永代供養をつけてもらいました。30年経つと共同墓地に合葬されますが、子孫が絶えても無縁仏にならずにすみますし、安心して供養できます」

永代供養が人気を集めています

いかがでしたか?

「お墓を建てたい」という意識のある方々もまだまだ多いようですね。

でも、やはり人気は永代供養付きのお墓です。約30年間はしっかり供養してもらえ、その後は共同墓地や納骨堂に合葬されますが、「お世話をする人がいなくなる」という事態にはなりません。子孫が同じ場所に長いことすむということが少なくなった現代にぴったりな供養法です。

個別墓の永代供養費の相場はおおよそ40〜50万円。ただし、墓石の種類によってはさらに費用がかかることもあるので、それぞれの場合で詳しくご確認ください。

 

伝統的なお墓から樹木葬、ハーバリウム等の手元供養まで、大切なのは故人を悼む心。ご自分の生活に合わせて、最適な選択肢が増えてきたことは喜ばしいことですね。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。