無縁仏にならないように終活で準備しよう

このままでは老後は独りきりで、孤独死の果てに無縁仏になってしまうかもしれない」と不安に思っている人はいませんか?

そのような思いのある人にこそ「終活」をおすすめします。終活は、これからどのように生きていくかを考え、自分の死後まで見据えた準備です。

無縁仏にならないために必要なのは、いざというときの対応方法を家族や友人などの関係者に伝えておくことです。この記事では、終活でできることを紹介していきます。

そもそも無縁仏とは?

そもそも無縁仏とは?
無縁仏の定義は「弔ってくれる縁者のいない死者のこと」です。継承者がおらず放置されているお墓を含めた意味もあります。

人が亡くなった場合、その遺体を引き取り、行政手続きを行い、火葬の手配をし、葬儀を執り行い、遺骨を供養する人が必要です。

無縁仏になってしまう経緯とは?

人が亡くなった後にはさまざまな手続きが発生します。

亡くなった人が孤独で、親族や親しい友人などの関係者が存在しない場合、遺体を引き取ってもらうことができません。また、親族がいたとしても、関係性や金銭面で問題があり、引き取りを拒まれてしまうこともあるようです。

引き取り手のいない遺体は、無縁仏として扱われます。

無縁仏は増加傾向にある

無縁仏は年々増加傾向にあり、現代の大きな社会問題になっています。地域によって差はありますが、特に身寄りがなく独りで暮らす高齢者が、無縁仏となってしまうことが増えているようです。

一般社団法人が行った2020年の調査によると、自宅内で亡くなったことが後から判明した独り暮らしの人、つまり「孤独死」は4,000人を超えていると発表されています。

さらに、新聞社による調査結果では、国の政令市で2015年度に亡くなった人のうち約3%が、引き取り手がいない無縁仏とのことです。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によると、2015年では全世帯のうち、独りあるいは夫婦のみの世帯が50%以上存在し、2040年には60%を上回ると予測されています。

子どもがいないなどの世帯の場合、孤独死の末、無縁仏につながる可能性があるという警告になるでしょう。

身寄りのない人が終活せずに亡くなったら無縁仏になる?

身寄りのない人が終活せずに亡くなったら無縁仏になる?
元気に過ごしていても、不測の事態がいつ起こるかは分かりません。

子どもや親族がいる人でも、疎遠な関係である場合、単独世帯の人は孤独死から無縁仏になる可能性があります。終活をしておけば、孤独死でも無縁仏になることはなく、自分の意思を尊重した葬儀や遺品整理につながるでしょう。

無縁仏化を避けれるだけではなく、自分にとってより良い生き方を見つけるきっかけにもなります。そのため、「おひとりさま」にも終活はおすすめです。

無縁仏の遺骨は一度行政預かりに

無縁仏となってしまった場合、墓地、埋葬等に関する法律では、第9条に「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。」と定めています。

引き取り手のいない遺体は、行政預かりとなり、警察や行政が親族や関係者を探します。それでも引き取り手が見つからなければ、行政の手によって火葬されるのです。その後、遺骨は自治体の元でしばらく保管されます。

会ったことのない人に迷惑がかかる可能性がある

遺体の身元がはっきりしているのにもかかわらず、引き取り手が現れない場合は、警察や行政が引き取り手の候補となる親族を探し、連絡を取ります。

多世帯での同居が一般的だった時代とは異なり、現代では親戚同士の交流が薄れ、疎遠になっている人が多いようです。そのため、近い血縁関係者であっても、遺体の引き取りを拒否するケースがあるようです。そういった場合、遠い血縁関係者に遺体の引き取りをお願いします。

全ての血縁関係者から引き取り拒否された場合は、最終的に行政対応となりますが、それに伴う費用を請求されることがあります。

終活で自分の死後の準備しておけば、多くの人に迷惑をかけず、スムーズに埋葬又は納骨されるでしょう。

引き取り手がいない遺骨は無縁仏のまま合葬される

身元を捜査しても判明しない遺体を「行旅死亡人」と呼びます。

行旅病人及行旅死亡人取扱法では第7条に「行旅死亡人がいる場合、自治体が特徴などの本人確認に必要な記録を取った後、自治体が火葬と埋葬を行わなければならない」としています。

火葬後、遺骨は一定期間保管されますが、それでも引き取り手が見つからない遺骨は、自治体が無縁墓地に合葬をします。合葬は個々の埋葬とは異なり、遺骨をまとめて納骨あるいは埋葬する供養方法です。

埋葬されると遺骨を取り出すことができません。将来、誰かが探しに来たとしても、取り返すことができないのです。

無縁墓になってしまった先祖代々のお墓はどうなるの?

無縁墓になってしまった先祖代々のお墓はどうなるの?
誰も手を合わせに来てくれず、縁故者がいなくなってしまったお墓を「無縁墓」と呼びます。

無縁墓は増加傾向にあり、自治体や寺院を悩ませる問題のひとつです。しかし、放置されているお墓は、お墓の管理者の権限で撤去することができます。

継承者がいない場合はお墓を解体して撤去される

継承者がいるお墓であっても、墓地の管理者に定期的な利用料が支払われない場合は、無縁墓と判断され、撤去することができます。無縁墓の撤去に関しては、墓地の管理者に一任されています。

墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第3条によると無縁墓の撤去は、官報に情報を掲載し、立て札を1年間掲示して公告、関係者の不在を確認した証明を提出することで、ようやく無縁墓の遺骨の改葬許可がおります。

改葬許可証を自治体に提出し、無縁墓を撤去したら、取り出した遺骨を合葬墓へ移すことができるのです。施設によって異なりますが、撤去した墓石は、通常の石材と同様に産業廃棄物としてリサイクル又は処分されます。

このように、解体撤去するにも費用が発生し、さらには行政手続きも必要になるため、無縁墓はお墓の管理者にとって憂慮する事態となります。

なお、お墓参りをせず放置されていても、利用料がきちんと納められているお墓は、いつまでも無縁墓の対象になりません。しかし、お墓へのアクセスが悪く、お墓参りや掃除に行けない場合は、そのままにせず「墓じまい」などの対策を考えてみましょう。

自分が無縁仏にならないように終活をしておこう

何が起こるか分からないのが人生です。できれば、元気になうちに終活を進めましょう。

終活を行えば、自分の生き方をはじめとし、最期を迎えたい場所や、会っておきたい人などのことを考える機会になり、自分の希望を叶える行動につながります。

自分の遺骨の行き先などを誰かに共有しておけば、自分が無縁仏になることを防げるでしょう。次項から、無縁仏にならないための終活対策を3つ紹介します。

対策①誰かに自分の意思を確実に伝える

対策①誰かに自分の意思を確実に伝える
無縁仏にならないために大切なのは、終活の内容を信頼できる人に共有することです。

自分の死後、自分が終活をしていたことを知っており、意思を尊重して行動してくれる人がいれば、自分の希望通りの葬儀や供養をしてもらえます。

万一の場合にはどこへ連絡するのか、誰に世話をしてもらいたいのか、など改めて考えましょう。

エンディングノートや遺言を残そう

自分の意思や希望は口頭で伝えるより、文字に残しておく方が効果的です。終活の記録帳とも言える「エンディングノート」を知っていますか?

エンディングノートには、自分の基本的な情報から、かかりつけ医や病歴、資産、webサイトのパスワード、親族や友人の連絡先と親密度、そして葬儀の希望に至るまで細かく記入します。

市販されているノートを使うほか、自治体が配布しているものまでさまざまです。自分に合ったノートに書き留めていきます。

なお、亡くなった後の法律関係における意思表示は「遺言」です。エンディングノートは、あくまでも要望を書き綴ったもので、法的な相続の効力がありません。相続するものや相続して欲しい人がいる場合は、遺言書を作成しましょう。

遺言書には種類が3つあります。

  • 自分で自由に書く「自筆証書遺言」
  • 公証人に依頼する「公正証書遺言」
  • 誰にも知られたくない場合に選ぶ「秘密証書遺言」

法的に有効な遺言書は、公証人をはじめとする専門家に相談した方が確実に作成できます。

終活を支援している自治体がある

終活を推奨することで、無縁仏化をなくそうとしている自治体があります。エンディングノートを無償で配布していたり、セミナーを主催したり、支援の形はさまざまです。

中でも、神奈川県横須賀市は、市が個人の終活関連情報を保管する、一歩踏み込んだ制度があります。万一のときの連絡先や情報の開示先、葬儀の希望などを本人の承諾と共に市に登録しておきます。倒れたり、亡くなったりした場合、事前に登録された情報を元に、市が代理で病院や消防、警察に連絡するのです。

無縁仏をなくし、亡くなった人の意思や希望を叶えようとするプロジェクトです。自分が住む自治体で終活の支援をしているか、確認するとよいでしょう。

対策②後見制度や死後事務委任を利用する

対策②後見制度や死後事務委任を利用する
将来、自分に何かが起こり、意思疎通が取れない状況に陥ったとき、頼りにできる人がいますか?

相談できる家族や友人がいない人でも、終活で後見制度や死後事務委任制度を利用すれば、サポートを受けることができます。

後見制度で亡くなるまでサポートしてもらおう

判断能力が不十分になってしまうと、財産の管理やさまざまな契約、遺産分割の協議などが難しくなるかもしれません。それらの手続きを支援してくれるのが「成年後見制度」です。

成年後見制度は、次の2種類があります。

法定後見制度

申し立てにより家庭裁判所によって選任された後見人等が本人に代わって財産や権利を守り、本人を法的に支援する制度です。

任意後見制度

本人が任意後見人を選任して任意後見契約を結び、判断能力が低下した場合に任意後見人が契約に沿って支援する制度です。

死後事務を専門家に委任しておこう

後見制度は、あくまでも「判断能力が不十分になったとき」にさまざまな手続きを代行してもらう制度で、本人が亡くなると契約は終了します。

死後に必要な行政への届け出や寺院などへの連絡という事務作業の手続き(死後事務)は、弁護士や司法書士などの専門家、NPOなどで、生前に委任契約を結ぶと対応してくれます。スマートフォンなどのデジタル遺品整理など、事務作業以外の委任を受け付けているところもあります。

身寄りがなかったり、家族や親戚と関係が疎遠であったり、死後事務に不安がある人は、死後事務の生前契約を扱っているところに相談するとよいでしょう。

対策③遺骨の供養方法や葬儀を生前に契約しておく

自分の死後、どのような葬儀にして、どこに遺骨を安置して欲しいなどの希望がありますか?

希望するお別れや供養の形があれば、エンディングノートなど終活で誰かに伝えておくのはもちろんのこと、業者と生前契約を結ぶという方法もあります。

永代供養墓の種類と費用相場

永代供養墓の種類と費用相場
「自分のことを供養してくれる人がいない」という不安を抱えている人には、永代供養墓がおすすめです。

永代供養墓に遺骨を納めると、親族に代わって、お墓の管理者が供養を永代に渡って行います。心部のビルにある納骨施設から、樹木葬、合祀墓など種類はさまざまです。

先祖代々のお墓や自分専用の納骨場所ではなく、合葬を希望する人も増える中、時代のニーズに合った供養の形と言えるでしょう。

以下に、種類ごとの費用相場を紹介します。なお、費用は施設の立地や規模、設備によって大きな差があります。

永代供養墓の種類と相場
納骨堂:約20万円~

屋内に納骨する場所がある施設です。骨壺をロッカーのような棚に納めるものから、IT技術で制御された仕組みの施設まで、施設ごとに特徴があります。

屋外型永代供養墓:約10万円~

従来のお墓と同様に設置した墓標に個々に納骨するタイプから、モニュメントの下に人を問わず遺骨を合わせて納める合祀(合葬)タイプまでありますが、比較的安価です。

樹木葬:約8万円~

自然葬の一種で、樹木を墓標とするお墓です。霊園の場所や埋葬方法で種類が分かれており、立地で大きく費用が変わります。

散骨の種類と費用相場

散骨の種類と費用相場
遺骨をまくことで自然に還す葬送「散骨」を知っていますか?

散骨は宗教や風習に縛られず、自由に行える葬礼です。全ての遺骨をまくと、お墓を持たずにいる選択をすることもできます。

以下に、散骨の種類と費用相場を紹介しますが、同じ種類でも契約する業者によって費用に大きな違いがあります。

散骨の種類と相場
海洋散骨(海洋葬):約12万円~ 代行委託の場合は約5万円~

沖合で船上から散骨を行います。乗船が難しい場合は、業者に代行委託することができます。

山間散骨(陸散骨):約16万円~ 代行委託の場合は約5万円~

散骨業者や寺院所有の専用地では、陸地でも散骨できます。散骨という行為の性質上、アクセスの悪い場所がほとんどです。自分の私有地でも無料で散骨できますが、周辺への配慮や土地利用の観点から、おすすめはしません。

宇宙葬:約24万円~

ロケットや風船に遺骨を搭載し、宇宙に向けて飛ばす葬送です。

空中葬:約20万円~

セスナ機やヘリコプターに乗り、外洋上で遺骨をまきます。

永代供養墓と散骨どちらが良い?メリットとデメリット

永代供養墓と散骨どちらが良い?メリットとデメリット
永代供養墓と散骨、それぞれのメリットとデメリットをまとめます。

自分に合った方法を探してみましょう。

永代供養墓の場合
メリット

施設に管理を委任でき安心感がある。施設が代わりに供養を行うため、身寄りがいない人でも手を合わせてもらえます。

デメリット

増設できず、納骨数が決まっている場合がある。追加でお墓に入りたいと望んでも、納骨数が限られている場合があるため、確認が必要です。

散骨の場合
メリット

今後の費用が発生せず、自分の代で供養を完全に終えられる。全ての遺骨をまくと、遺骨の管理をしなくてもよくなり、自分の代で供養を終了することができます。

デメリット

散骨に反対されるかもしれない。宗教的な観点から、散骨に良いイメージを持っていない親族がいる場合もあります。

献体して医療に貢献することもできる

自分がこの世を去った後でも、生きている誰かの役に立つ方法があります。それは、大学の医学部や歯学部に登録し、遺体を提供する「献体制度」です。

遺体が研究や教材に使用されることで、亡くなった後で医学の発展に貢献できるのです。献体の条件や遺骨の返却の有無は各引き取り先によって異なるため、確認しましょう。

対策④今あるお墓を処分することも検討する

対策④今あるお墓を処分することも検討する
亡くなった後、先祖代々のお墓に埋葬してもらう人が多いでしょう。

もし、「後継者や縁故者がいなくなってしまうかもしれない」「放置されてしまうおそれがある」と懸念しているなら、終活の中で供養の形を考え直してみませんか?

墓じまいをして無縁墓にならないように供養しよう

今あるお墓から遺骨を取り出して処分し、別の供養方法に変更することを「墓じまい」と呼びます。

墓じまいを行い、先祖の供養に関する悩みを解消すると、終活が進めやすくなるでしょう。より良い供養となるよう、遺骨の新しい居場所を考えることが大切です。

また、寺院にお墓がある場合、墓じまいは菩提寺と檀家の関係を止めることに直結します。今まで家族の代わりにお墓を管理し、供養を続けてくれた菩提寺には感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。

相談なく突然墓じまいを決行すると、トラブルの原因になり、場合によっては離檀料として法外な料金を請求されてしまうかもしれません。墓じまいを検討し始めたら、早々に菩提寺に連絡することが必要です。

なお、墓じまいが済んだ後、疎遠になっている親族からお墓に手を合わせたいと希望されても、どうすることもできません。親族をはじめとする縁故者に相談することも大切です。

墓じまいの流れと手続き

墓じまいの流れと手続き
墓じまいは、遺骨の行き先が改葬の場合、行政手続きが必要になります。

改葬とは?
遺骨をお墓からお墓へ移動させることを意味し、言わばお墓の引っ越しのことです。取り出した遺骨を他のお墓へ埋葬ないしは納骨すると、改葬に該当します。

先ほど紹介した永代供養墓は改葬となりますが、散骨は法律に明記されていない葬送方法のため、改葬に当てはまりません。煩雑になりがちなため、専門家に相談すると良いでしょう。

円滑に進めるには流れを知っておくことが大切です。

  1. 遺骨の新しい供養方法を検討し、資料を集める。
  2. お墓に関わる親族や縁故者全員に相談し、了承を得る。
  3. 今のお墓の管理者に、墓じまいの意思を伝え、手続きや日程を協議する。
  4. 新しい供養方法を決定し、契約する。
  5. 改葬に該当する場合、「改葬許可証」の取得手続きが必要。
  6. (仏式の場合は法要後)今のお墓から遺骨を取り出し、石材店による撤去工事を行う。
  7. 取り出した遺骨を洗浄、乾燥、粉骨(粉砕処理)などメンテナンスをする。
  8. 改葬の場合、「改葬許可証」を改葬先施設に提出。
  9. 遺骨を新しい方法で供養する。

まとめ

1.無縁仏とは、親族などの関係者がおらず、引き取ってもらえない遺体のことで、「弔ってくれる縁者のいない死者」し、行政により火葬され、遺骨は自治体で一定期間保管後、合葬をする
2.弔う人がいない無縁墓も増加傾向にあり、お墓の管理者は、無縁墓を撤去できる
3.無縁仏にならないために、動けるうちに終活を行い、対策を講じておくことが必要
4.終活では、自分の意思を確実に伝えるため、エンディングノートや遺言、後見制度や死後事務委任の利用、供養方法や葬儀の生前契約を行う
5.墓じまいを行い、将来の無縁墓化を防ぐこともできる

終活による事前の準備で、自分の希望の最期を考えましょう。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。