まずは散骨について理解しましょう

散骨とは、自然葬の一種で、亡くなった後にお墓ではなく、海や山など故人が好きだった場所へ遺骨をまくという供養のことです。近年、永代供養のように代々受け継ぐということを避ける方が増えているようです。

理由は様々です。お墓を持つ初期費用や、その後の永代供養等にお金をかけたくないというのも1つのポイントです。

またご自身が親世帯の墓終いを経験し、子供に負担をかけたくないという方も多いようです。子供のいない方は、お墓を立てても後継者がいないため散骨を選ぶことも。

特定の宗教を持たない人も増えており、亡くなった後は自然へ還る自然葬という考え方が広まっていることが普及の大きな要因と思われます。

散骨の基本費用、法律との関係や守るべきルール

散骨の基本費用、法律との関係や守るべきルール
散骨はお墓を持つより費用がかからない供養といわれます。海洋散骨は特に費用がかからず人気があり、20~30万円前後が相場のようです。

散骨は違法ではありませんし、許可書も不要です。必要書類も通常の埋葬でも必要なもののみですので、難しいことはありません。

トラブルにならないために守らなくてはならないルールはあります。特に重要なのは遺骨をまく場所です。

散骨してよい場所は公海上や私有地や墓所となっています。他人の私有地や漁業権のある海や川などは不可。

自治体によっては散骨を禁止しているところもありますので注意が必要です。また、遺骨は後々事件とならないように粉末化する必要があります。

葬儀から散骨までの流れ

葬儀から散骨までの流れ
亡くなった後、自治体の役場に死亡届を提出し火葬許可書をもらい火葬します。これはお墓に埋葬する場合と一緒です。

違うのはその後、粉骨するということ。粉骨の値段は3万円前後です。

ただし、お墓に埋葬する場合とは異なり、遺骨をすべて散骨してしまうと何も残りません。分骨し遺骨の一部を手元に残したい場合は、火葬の際に前もって火葬場に申し出れば、分骨証明書を書いてもらえますので申し出るとよいでしょう。

すでに埋葬した遺骨を散骨をする場合

墓終いや、埋葬後に故人の遺書が見つかったなど、埋葬後に散骨をする場合は、埋葬しているお寺や墓地などに連絡をするほか、親族への報告も必要になります。お墓や仏壇、そして遺骨の所有権は祭祀承継者となり、通常は配偶者や長男・長女などですが親族同士で話し合いをし、書面にしておくと後々トラブルにならないですみます。

なお、すでに埋葬された遺骨を他所へ移す場合は改葬許可書が必要ですが、散骨は改葬ではないため不要です。

散骨に必ずかかる費用と散骨の種類

散骨は業者へ依頼してすることもできますし、散骨業者に任せずに、個人で散骨することもできます。どちらも、必ずかかるのは遺骨を粉末にする費用です。

もちろん自分で粉骨すれば費用はかかりませんが、精神的な負担が大きいためお勧めしません。粉骨して水溶性の袋に入れるところまでで、2.5万円~3.5万円前後のようです。

すでに埋葬されていた場合には、骨壺やお位牌などの処分費用もかかります。値段は業者へ確認しましょう。

散骨の中でも海洋散骨が主流の理由

散骨の中でも海洋散骨が主流の理由
散骨の中でも、海洋散骨を希望する方が多いようです。理由としては散骨するエリアへの規制が少なく、トラブルになりづらいことが考えられます。

遠洋での散骨が一般的ですし、海水浴をしている隣で散骨などはもちろん控えてください。遠洋で広い海に抱かれるように葬られるということを想像すると、やはり素敵です。

自然が好き、海が好きといった方や、宗教にとらわれない最期にあこがれる方が多いことも理由の一つでしょう。海へ散骨する際は、近親者だけで花びらを手向けながら海へ沈んでいく故人をしのぶこともできますので、心に残るセレモニーとなることも選ばれる理由と思われます。

ここからは、海洋散骨についてさらに詳しくご説明しましょう。

海洋散骨のメリットとデメリット

海への散骨のメリットは、お金がかからないということです。一般的にお墓を立てる費用は約200万円といわれています。

葬儀にも同額程度かかるといわれていますから初期費用としてかなりの額が必要です。それに対して海洋散骨の場合は、約1/10に収まるといわれています。

さらにお寺との付き合いもなく霊園への管理費・維持費の支払いも不要ですから、かなりリーズナブルといえます。海への散骨のデメリットとしては、命日やお彼岸やお盆、逢いたくなった時などにお参りに行くことが難しくなることです。

それを回避するために、遺骨を少し手元に置いたり、ペンダントなどに加工したりする方もあります。

海洋散骨の実際

海洋散骨には大きく分けて3種類あります。家族だけで船をチャーターして、ゆったり供養をする個人散骨と、複数の家族と合同で船をチャーターして供養する合同散骨、それに、散骨業者に委託して散骨してもらう代行委託散骨です。

船をチャーターして家族でお見送り

家族と1隻の船をチャーターし故人とお別れをする場合、粉骨と船のチャーターだけを業者に依頼し、家族で個人的に散骨をすることもできますが、出航日程の制約がある場合もあります。金額や手間を考えると、やはりすべて業者に依頼する方が一般的です。

散骨業者にお願いすれば、セレモニーとして演出、進行してもらえますし、献花の花びらなども用意してくれますので安心です。散骨中の写真撮影やドリンクサービスなどを用意している業者もありますから、家族のみで心ゆくまで故人とお別れができます。

後日、散骨証明書や撮影した写真などを郵送してもらえ、船のチャーター費用も含めて25万円~30万円前後(税別)のプランもあるようです。

2家族合同でお見送り

2家族以上、複数のご家族合同で船を利用することで少しリーズナブルに海洋散骨することもできます。セレモニーの進行や献花などの演出は変わらず利用できますが、1家族当たりの人数は2人程と少なくなります。

また、乗り合いで船を利用するため、参加者が集まらないと出航できない場合もあるようですので注意が必要です。業者にもよりますが、散骨に際し1家族ごとにお別れの時間をとってもらえる場合もあります。

値段は2人を一組として12万円前後(税別)からあります。参加人数は追加料金で多少、増やすこともできるようです。

遠方から親族を迎えるよりも、家族だけのお別れの時間を作れるかもしれません。

代行委託散骨

散骨業者にお任せする便利な代行委託サービスもあります。故人が好きだった思い出の海へ遺骨を還したいけれど、その海は遠方だったり、残された家族が入院中であったり、理由は様々ですが散骨に立ち会えない場合にお任せするサービスです。

遺骨の引き取りは郵送や、業者が直接来てくれるところもあります。きちんと献花をして散骨した上で散骨証明書や、散骨の際に撮影した写真を後日、送ってくれる業者も多いようです。

残された家族が立ち会えないからといって個人の意思に添えない…と諦めずに済みます。価格も5万円前後(税別)とリーズナブルです。

また、船酔いで乗船できない家族は、出航地のデッキからお見送りもできます。

海以外の散骨について

散骨には、海洋散骨以外にも色々な方法があります。許可された私有地である里山に散骨する方法や、樹木葬に近いのですが決められた樹木葬の墓所に、骨壺に入れず散骨する方法などです。

他にも空から散骨する方法もありますし、個人が好きだった海外に散骨する方法もあります。それから、まだあまり聞きませんが、宇宙葬という方法も。

故人の遺志を反映するために様々な供養の仕方が考えられています。その値段も内容も多種多様です。

季節を感じる樹木葬

樹木葬は、墓石のかわりになる樹木の下に遺骨を埋葬します。海への散骨とは異なり、一定期間、供養にかかる値段が発生する場合がありますが、自然葬でありながら埋葬後にお参りできるメリットがあります。

一代限りのお墓がほとんどのため、後継者のいない方に選ばれています。逆にお墓を継承したい方にはデメリットとなります。

値段は海への散骨より高めで、30~70万円前後(税別)が相場のようです。

空から旅立つ空中散骨とは

空から旅立つ空中散骨とは
空中散骨という散骨方法もあります。ヘリコプターで空から海上へ散骨するやり方で、海に散骨する方法の一つです。

まだこのサービスを行う業者は少ないようですが、故人の故郷や自宅の上を旋回することもできますので、個人が自然に還るまでのお別れの時間を、思い出の地の上空で、家族で過ごすことができます。値段はヘリコプターのチャーター費や献花費用や写真撮影などを含み、4名1時間のフライトで50万円前後(税別)です。

海外への散骨

海外への散骨
海外での散骨を希望する場合、散骨を禁止している国もありますので、よく調べる必要があります。手配方法は旅行会社を経由してオプショナルツアーで申し込むのがほとんどのようです。

値段ですが、例えばハワイの海に散骨する場合、1時間程のツアーで15万円前後(税別)からあるようです。献花などセレモニーのオプションをつけていくと30~40万円前後(税別)程になりますし、これ以外に旅費も必要です。

10万円前後(税別)の値段で散骨を委託できるサービスもあるようです。海外の場合はGPSを利用して散骨した場所を正確に把握でき、家族が後から「同じ場所に散骨してもらいたい」という要望に応えることもできます。

まるでSFのような宇宙への散骨

まるでSFのような宇宙への散骨
宇宙に行くことが実は夢だったと思っていた方も、亡くなった後に夢を叶えられる宇宙葬という散骨方法があります。故人の遺灰を納めたカプセルをロケットで宇宙に打ち上げるというものです。

風船で空に打ち上げる方法と違い、成層圏を超えて宇宙へ飛び立ちます。遺灰を人工衛星に搭載して打ち上げるプランでは、宇宙空間に到着後から最長240年間も軌道を周回し、位置もいつでも確認できます。

遺灰の量によって異なりますが値段は95万円前後からです。宇宙飛行プランというものもあります。

遺灰を納めたカプセルをロケットに搭載し打ち上げるというプランです。値段は45万円前後からですので海への散骨に近い値段といえます。

自分で散骨することもできます

色々な散骨方法と値段を紹介しましたが、業者を頼まず、自分で海などに散骨することも可能です。手間と時間はかかりますが、自分で散骨すれば安価にできます。

まず海などに散骨するために遺骨を粉骨する必要がありますが、自分でするには精神的な負担は想像以上のようです。業者に頼めば3万円程ですので、ここは業者に委託することをお勧めします。

そののち、例えば、海へ散骨のために個人でボートをチャーターする方もいますし、お金のかからない思い出深い私有地に散骨する方もいます。最近では、海・山と散骨場所を1か所に決めず、故人が好きだった思い出の場所を巡りながら、少しずつ散骨する散骨旅行が流行っているようです。

多様化する中、節度を守って散骨したいものです。

散骨後に故人をしのぶサービス

散骨後に故人をしのぶサービス
散骨すると、分骨しない限りは故人にお参りする場所がなくなります。お墓がなくても故人に会いたいという気持ちから生まれたサービスが「法要クルーズ」です。

命日、1周忌、三回忌など法要の時に、散骨をした場所で故人をしのびたいという方のためのクルーズです。海洋散骨と同様に、1家族だけで船をチャーターする方法もありますし、リーズナブルなサービスで合同散骨の船に同行する方法もあります。

1家族でチャーターをする場合は15~25万円前後(税別)。チャーター費用や献花代、写真撮影代は含まれていませんが、散骨とほぼ同じ内容です。

合同散骨に乗船する値段は一人1万円前後(税別)です。気軽に逢いに行けますね。

身近になった自然葬

海洋散骨は、その人気とともに参入する会社も増えています。イオングループでも海洋散骨のサービスを各種揃えています。

各社サービスも充実し、ただ海に散骨するだけではなく、献花や写真撮影など、心に残る供養を演出してくれる会社が増えました。その意味でも海洋散骨は数ある自然葬の中で、選ばれた供養といえるでしょう。

金額面だけでなく希望の叶う散骨を選べるようになったということは、身近になった証拠といえます。

まとめ

1.多種多様になった終活事情の中、自然葬がクローズアップされています。
2.一言で散骨といっても、海への散骨、その他散骨があり、値段も様々です。
3.外部から参入した業者も増えていますので、安心できる業者を選択することが大事です。

選べる選択肢が増えた中で、本当に自分が望む最期をしっかりとイメージして、それを家族と共有することが、後々トラブルにならない秘訣です。そしてそれが自分の意思を実現する方法です。

納得のいく人生の終い方を見つけたいものです。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。