近年、注目されている散骨には、散骨する方法はもちろん、散骨する場所についても守るべきモラルがあります。

  • 海洋
  • 山間及び森林
  • バルーン葬や宇宙葬

など、今回は散骨の種類ごとに散骨場所やモラルについてご紹介します。

地方自治体によって、散骨場所について、制限や規則を設けているところがあるので、注意が必要です。ご自身やご家族など散骨を希望されている場合や散骨の業者を選択する際に、参考にしてください。

散骨は自然葬の葬送のひとつ

散骨は自然葬の葬送のひとつ
現代では、お墓をみてくれる人がいないということや、親族に迷惑をかけたくない、死後は自然に還りたいという個人の希望などで自然葬を選択する人が増えています。

自然葬とは…?

お墓などの人工物を墓標とせず、遺骨を海や山などの自然に還す葬送方法の総称です。自然の摂理で誕生し、死後は自然の中に還っていくという考え方に基づいて行うのが自然葬です。
細かく砕いた遺骨を散骨する方法、土葬、火葬、風葬、鳥葬、土に戻る骨壺などを自然の中に埋葬する樹木葬なども自然葬に含まれます。

一般的に知られている散骨の方法
  • 海洋散骨
  • 山間散骨
  • 森林散骨

近年では、ロケットで宇宙に散骨する「宇宙葬」、大きな専用の風船に乗せて飛ばす「バルーン葬」などと呼ばれる方法もあります。

散骨の歴史は古く、弥生時代にも行われていたといわれており、一部の古墳からは散骨の痕跡が見つかっています。自然に還るということから散骨は、昔から行われている自然葬のひとつです。

樹木葬と散骨は違います

自然葬として注目されている散骨と樹木葬には、大きな4つの違いがあります。

1.場所の違い

散骨は、市区町村や土地の所有者に許可を得た場所及び漁業権に影響のない場所で行います。遺骨を全て散骨すると、手元に何も残らずトラブルなどにつながることがあるので、部分散骨や手元供養なども視野に入れることをおすすめします。

樹木葬は、法律で許可された墓地や霊園で行います。

2.遺骨の状態の違い

散骨は、遺骨であることが分からないよう細かく砕きます。樹木葬は、施設により異なりますが、遺骨の状態に決まりはありません。

3.墓標の違い

散骨は、広範囲に遺骨を撒くので、散骨場所の墓標や目印を設置するということはありません。ただし、海洋散骨などの業者によっては場所の座標を教えてもらえます。

樹木葬は、低木の木を植え墓標とすることが多く、植えた木を心の拠り所とする方が多いようです。

4.金額面

散骨の方が、樹木葬に比べ安価なことが殆どです。

散骨できる場所に法律はあるか

散骨できる場所に法律はあるか
散骨について、明確な法律は現在ありません。

刑法第190条で「死体、遺骨、遺髪又は棺内に蔵置したる物を損壊、遺棄又は領得したる者は3年以下の懲役に処す」とあります。

墓地、埋葬に関する法律第4条で「埋葬又は焼骨の埋蔵以外の区域にこれを行ってはいけない」と、墓地以外の埋葬、火葬場外の火葬を禁止しています。

ただし、これはどちらも埋葬と火葬についての法律なのです。

散骨については、法務省、厚生省(当時)とも「節度をもって散骨を行えば、違法にはならない」という意味の見解を1991年に示したといわれています。

  • 節度とは…?
  • 遺骨の粉末化
  • 土地の所有者への許可
  • 環境問題への配慮

葬送を目的とすることを明確にするといったことと解釈されているので、覚えておくとよいでしょう。散骨での葬送は法律違反ではありませんが、節度を守って行うことが大切です。

海洋散骨できる場所

海洋散骨できる場所
海洋散骨は、市区町村で規定がない限り散骨してはいけない場所は法律で定められていません。しかし、海洋散骨をする際は、守った方がいいモラルがあります。

遺骨を他の人がみても遺骨とは分からないよう、2mm以下に粉骨しましょう。海洋散骨の業者に頼めば、粉骨も行ってもらえますし、粉骨だけを頼むことができる業者もあります。

  • 砂浜や沿岸
  • 防波堤
  • 橋の上

などからの散骨は、近隣住民とのトラブルや事故のもととなりますので、正しい知識や常識を持った対応をするという認識を持ちましょう。海上での散骨は漁業の海域にあたる場合があるので注意が必要です。

海洋散骨に決まりはないといっても、上記のモラルを守りながら散骨する場所を個人的に探すのは困難です。納得できる海洋散骨の業者に相談することを、おすすめします。

海洋散骨協会には独自のガイドラインがあります

「一般社団法人 日本海洋散骨協会」は、海洋散骨についてトラブルや環境保全に配慮しながら、故人や遺族の想いに沿って散骨を行うために設立されました。協会では海洋散骨業者に対し独自のガイドラインを定め、遵守することで節度ある海洋散骨を行っているので簡単に紹介します。

  • 遺骨を1~2mm程度に粉末化しなければならない。
  • 河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地への水源への散骨は、その水を飲む人々の心情を害するおそれがあります。

海岸、浜辺、防波堤や近辺での散骨は、一般市民とのトラブルになりかねません。そのため、立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海上のみで行います。

  • 散骨のために出向した船舶においてのみ散骨を行い、フェリー、遊覧船、交通線など一般の船舶や漁船では行わない
  • 海洋上で散骨を行う際、漁場、養殖場、航路を避け、一般のお客からみられないように努力する
  • 海洋汚染にならないよう、自然に還らない、金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物(花などのラッピングは外す)を海に撒いてはいけない
  • 大量の献花、献酒は海洋汚染の原因になる可能性があるため、周辺の状況に配慮しながら行う
  • 散骨する参列者への安全確保義務
  • トラブルを避けるための散骨意思の確認義務
  • 散骨証明書の交付義務
  • 一般市民への配慮義務

他にもガイドラインは続きます。

協会では、ガイドラインを遵守することを誓約した加盟業者を「海洋散骨外ライン遵守事業者」として登録をしたうえで公表し、協会のロゴマークであるブルーハートマークの使用を許可しています。協会に所属している業者は、安全で安心なので、希望する海洋散骨の方法を相談するといいでしょう。

詳細はホームページをご覧ください:https://kaiyousou.or.jp/

山や森林散骨できる場所

山や森林へ散骨を行う場合、海洋散骨同様に遺骨を粉骨することが、最低限のルールです。散骨したい山や森林がある、または見つけたという場合、まずはその所有者を確認しましょう。

所有者を確認できたら、散骨の許可をもらうことが必要です。所有者に許可を得られた、自分や家族、親族などが所有している山や森林に散骨する場合、ルールを守って行いましょう。

山や森林へ散骨をする際のルール

山や森林へ散骨をする際のルール

  • 水源地域、建造物のある場所や施設周辺には行わない
  • 天然記念物、生態系に大きな変化を及ぼす可能性のある場所には行わない
  • 石碑や墓標(樹木含む)をたてない
  • 土の中に埋葬しない、土をかぶせない
  • 防火のため線香やローソクを使用しない
  • 環境保護のため、お供え物はしないか、用意しても散骨が終わったら持ち帰る

ルールを守りながら山や森林への散骨を個人で行うのが難しい場合は、まずは業者や山間や森林散骨を行っている寺院に相談することをおすすめします。

散骨場所が知らされなかったりお参りできない場合がある

山・森林散骨を業者や寺院に依頼して行う場合、具体的な場所を知らせてもらえないことや、里山の環境保全の意味から後からお参りできない場合があります。散骨場所は道路から離れているなど人目につかず、一般の人が立ち入りしづらいまたはできない場所が殆どです。

また、法律違反になるので、墓標や目印となる樹木を植えるということも行いません。散骨した遺灰は、木の葉や枝が重なり微生物が分解し、木の根が吸収する、雨や風がさらっていくなどして大自然へと還っていきます。

自然へと還っていくことで、故人の希望である自然葬の供養となります。山や森林散骨を業者に依頼する際は後日お参りが可能かなど確認し、納得した上で選びましょう。

宇宙葬やバルーン葬の散骨場所

宇宙葬とは?

専用カプセルなどのケースに粉末化した遺骨を入れ、人工衛星と共にロケットで宇宙に打ち上げる方法で、宇宙ゴミとなる心配もありません。打ち上げはアメリカ合衆国で行われ、有料及び予約が必要ですが打ち上げイベントに参加が可能なほか、打ち上げの様子を収めたDVDが後日送られてきます。

人工衛星と共に打ち上げられたケースは、数か月から数年間に及び周回しますが、期間は打ち上げられる衛星の最初の高度により異なります。周回している場所は、専用のアプリで確認することが可能です。

業者やプランによって異なりますが、打ち上げられる遺骨は1~7 gですので、宇宙に散骨できるのは遺骨の一部です。

バルーン葬とは?

バルーン葬とは?
専用の巨大な風船に粉末化した遺骨を一部または全部を詰めて空へ飛ばす方法で、周囲に電線や高層ビルなどの障害物がない場所で行います。条件をクリアしていれば、自宅の庭などどこでも好きな場所や、葬儀社などの許可が得られればその敷地内、場所が見つからない、希望の場所がないという場合は業者が所有している場所で実施可能です。

手順は、

  1. 膨らませたバルーンに、遺族が遺灰を入れます。
  2. 参列者が黙祷を捧げ、遺族によるお別れの挨拶の終了後、参列者全員でバルーンを持って合図と共に、空へ飛ばします。
  3. 2~3時間後、30~50kmの成層圏に突入すると、気圧の関係で膨脹し一瞬のうちに散骨されます。

バルーンは環境に配慮された成分でできており、自然に還るのでゴミにはなりません。

宇宙葬やバルーン葬は空や宇宙に散骨するので、空を見上げればいつでも故人を感じられるという遺族の想いや、または空や宇宙が大好きだった故人の希望で行われることが多いようです。

散骨について条例がある自治体もあります

散骨について条例がある自治体もあります
散骨について条例がある自治体があるのでご紹介します。

埼玉県秩父市

「秩父市環境保全条例」で秩父市内で焼骨を散布しようとするすべての人を対象に、墓地以外での散骨を禁止しています。また、隣地所有者の同意または隣地境界から100m以上離れているなど市長が散骨を認める場合の要件の規定などがあります。

東京都

「東京都福祉保健局」のサイト上に散骨に関する留意事項が記載されており、国の見解に準ずることと、都内における散骨については事前に各自治体に確認をとることが明記されています。

北海道長沼町

「長沼町さわやか環境づくり条例」で「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」としています。遺骨を散布する場所を提供することを業とした者は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。

北海道七飯町

「七飯町の葬法に関する要綱」で散骨業を行おうとするものは事業計画書の提出や町の許可が必要としており、実質、散骨業者は営業できません。

北海道岩見沢市

「岩見市における散骨の適正化に関する条例施行規則」で、散骨場を設置する際、事業計画書の提出や運営者資格条件の確認、学校や国道から500m以上離れていることなどを定めているので、やはり散骨業者の運営はできないに等しい状態になっています。

長野県諏訪市

「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例」で、墓地、納骨堂、散骨場、火葬場などの建設や設置において、近隣住民の同意者がないと設置できません。

静岡県御殿場市

「御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例」で散骨を行おうとする業者に対して、散骨場設置の詳細な許可基準を施行し、違反すると6か月以下の懲役または、50万円以下の罰金を科せられます。

神奈川県湯河原市

「湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例」で、散骨場設置に関して隣地所有者の同意、住居地域との距離制限などの条例や規則を設けており、散骨事業を行うのは実際に難しいです。

静岡県熱海市

「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」を制定し、「無秩序な散骨が粉われることによって、風評被害などによる熱海市のブランドイメージを毀損するおそれがある」として海洋散骨業者に対し、初島を含む熱海市の土地から10km以上離れた海上でのみの散骨、熱海や初島などの文言の掲載を禁じています。

静岡県伊東市

「伊東市における海洋散骨に係る指針」で散骨業者に対し、伊東市の陸地から6海里以内での散骨をしない、伊東市や伊東市沖などの文言の使用禁止を明記しており、実質的に散骨は不可能に近いです。

海外での散骨についても一部ご紹介いたします。
海外での散骨についても一部ご紹介いたします。

アメリカ合衆国のハワイ州

土地の所有者の許可があれば散骨できます。海洋散骨では、海岸より3マイル(約4.82km)以上沖合で行うことと、散骨から30日以内にアメリカが州国環境保護庁に報告するという決まりがあります。

アメリカ合衆国のカリフォルニア州

遺骨は0.35mm以下までの粉砕と、海または霊園の一定区域のみに行うことが決まりです。

インドネシアのバリ島

火葬後の海洋散骨が一般的です。

日本の自治体による散骨に関する条例などは、主に散骨業者に向けたものですが、これらを知っておくことで散骨する場所を選択する際の参考としてください。また、海外に散骨を希望している場合は、その国や州の規定をよく調べることをおすすめします。

散骨が知られるようになったと同時に、農業や、漁業、観光業などへの影響から何らかの規則や条例を設ける自治体が増えてきましたが、今後も増えていくかも知れません。散骨を個人で行おうとすれば、その土地の条例や規則はないかなど細やかなところまですべて調べる必要があります。

困難な場合は、実績があり信用できる散骨専門業者に依頼することをおすすめします。

島全体が自然散骨場所 大山隠岐国立公園内 カズラ島

島全体が自然散骨場所 大山隠岐国立公園内 カズラ島
島根県隠岐郡海士町にあるカズラ島は、島全体が自然散骨所となっている約800坪の無人島で、大山隠岐小栗公園の第一種特別地域に指定されているため、一切の建築物や構築物を認められていません。

国立公園内ということもあり、将来的にも開発されることなく、自然を残したままで静けさが保たれるので、故人も静かに眠ることができるでしょう。島内の環境を保全するために、散骨粒形、量の規制のほか、遺族が島に入ることができるのは運営会社の担当者が同伴時のみ、島内には遊歩道だけ設置されています。

対岸には、献花、献酒、献水などのお別れの儀式や法要を行える慰霊施設が整備されていて、一年中利用することが可能なので、故人を偲びに行きたいと思ったときいつでも行くことができます。

散骨料金は方法によって異なります。大きく分けると2種類です。

  • 施主散骨
  • 委託散骨
施主散骨とは?

遺族関係者が指定日に担当者と共に上陸し、散骨を行い、散骨後、対岸にて慰霊式を行います。料金は粉骨料込みで26万5千円ですが、生前に予約すると18万5千円です。

委託散骨とは?

遺骨を直接またはゆうパックにて担当者に託し、散骨する方法です。料金は粉骨料込みで22万5千円ですが、生前に予約すると16万円です。

宗教や宗派に関係なく、誰でも申し込むことができます。カズラ島の散骨は板橋区に本社がある、戸田葬祭サービス株式会社カズラ事業部が行っています。

カズラ島についてもっと詳しく知りたい方はホームページを確認してください。
ホームページ:http://www.kazurajima.jp/

まとめ

1.散骨は、自然葬のひとつで、樹木葬と散骨には4つ違いがある。
2.散骨には法律はないが、守るべきモラルがある。
3.散骨には、海洋散骨、山間散骨、宇宙散骨、バルーン散骨があり、どれも粉骨しなければならない。
4.地方自治体によっては、散骨について条例や規則がある。
5.島全体が自然散骨の無人島・カズラ島が島根県にある。

散骨を個人で行う場合は、さまざまなモラルを考慮し、なおかつ場所の選択も慎重に行う必要があります。また、自宅の庭や所有している山林などに散骨を行う場合、墓標となる樹木や大きな石などの目印を設置すると「墓地、埋葬法」の違反になります。

今回こちらで紹介したことをすべて踏まえた上で個人で散骨を行うのは困難な場合もあるでしょう。そんな場合は、実績のある散骨専門の業者に依頼しましょう。

故人と遺族双方にとって満足のいく選択をするために参考にしていただけたら幸いです。

著者情報

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。