散骨と樹木葬はコンセプトを同じとする全く違う葬送
その自然葬の中でも「散骨」と「樹木葬」は、ナチュラル志向の現代に合った葬送方法として耳にすることが多くなってきました。
散骨と樹木葬の違いについては、大辞林第三版によると以下のように書かれています。
- 散骨は「遺骨を海や山河にまく葬礼」
- 樹木葬は「遺骨を土中に埋め、墓標の代わりに樹木を植える葬礼」
コンセプトは同じでも、定義は異なることが分かります。
この記事では、散骨と樹木葬の定義と種類、費用、許可と手続きについて詳しく紹介していきます。
散骨と樹木葬の定義と特徴について知ろう
似ているようで、実は全く違う葬送である散骨と樹木葬。2つを比較する前に、定義と特徴について確認しましょう。
自由な葬送で多種多様な実施場所と方法があります。
主に霊園のタイプによって種類が分けられます。
「遺骨をまいて故人を自然に還す葬送」です。
はっきりと明文化された法律が存在しないため決まりはなく、宗教にも縛られない自由な葬礼が特徴といえます。
遺骨をまくことから、自然豊かなところで実施しますが、主流なのは海洋で散骨することです。
遺骨を手放すことでもあり、納骨をせずお墓を持たずにいられることは大きな特徴のひとつです。
墓じまいでお墓から取り出した遺骨を散骨する方もいるでしょう。
散骨後にお墓を持たない選択は、子孫が永久に管理をしなくて済むため、永代供養のひとつと考えられます。
「樹木や草花を墓標とする墓地に埋葬する」ことです。
遺骨埋葬するので、樹木葬を行うとお墓に入ることになります。自然そのものの樹木を墓標とし、墓石を作成する費用がかからないことから、従来の墓石を設置するお墓に比べると安価で済みます。
なお、方法や形態については、樹木葬を行っている霊園や寺院によって大きく異なるので注意が必要です。寺院では仏式の法要を執り行いますが、霊園によっては宗教や宗派を問わず受け入れている場所もあります。
永代供養を希望している場合は、納骨先に確認が必要です。
散骨はまく場所によって種類を分けることができます。
海洋散骨は船に乗って散骨場所へ向かい、船上から散骨を行います。個人で調達した船や、業者が運航している散骨用クルーズを利用しますが、代行で散骨してくれる業者に委託することもできます。
海洋だけではなく、陸地に散骨することもでき、業者や寺院が所有する専用の土地や、自分の所有地で行います。自分の所有地での散骨は、トラブルになりやすいため、注意が必要です。
宇宙空間へ遺骨を飛ばす宇宙葬は、散骨の一種です。風船やロケットに遺骨を搭載して打ち上げます。
飛行機やヘリコプターに乗り、空中から散骨します。
樹木葬は、霊園の場所や埋葬方法によって種類が異なります。
- 都市型…霊園の内部にある専用エリアで樹木葬ができます。
- 里山型…山林部などの広大な敷地に、墓標の樹木を植えて根元に遺骨を埋葬します。
- 庭園型…庭園のような造りの樹木葬専用エリアを指します。
- 合祀型…シンボルツリーの根元に合同で埋葬します。
- 個別型…埋葬場所を分け、利用できるのは家族など少人数単位です。
- 区画型…区画内に埋葬した遺骨と同じ数の樹木を植樹します。
また、墓標とする樹木によっても種類があり、桜や低木のバラ、大型常緑樹のカエデなど多種にわたります。
散骨と樹木葬の手順と流れを知ろう
実際に行う場合、どういった流れと手順になるのでしょうか?
散骨と樹木葬、それぞれについて紹介します。
海洋散骨を例に、散骨の流れを見てみましょう。
仏教での四十九日後から墓じまいまで、散骨のタイミングは自由です。自分で行うこともできますが、散骨を専門に取り扱う業者に相談することをおすすめします。
- 日時や場所、あるいは代行委託するか決める。
散骨を実施する日取りを決めますが、散骨場所へ向かうのが困難な場合、業者に遺骨を引き渡し、そのまま代行で散骨してもらうこともできます。
行政関係手続きがある場合、業者に確認しながら進めます。 - 粉骨する。
散骨をする上で、事前に必ず行っておくことが、遺骨を直径2mm以下まで粉砕する「粉骨」です。自然に還りやすくなったり、トラブルなく散骨を行うためであったり、さまざまな理由があります。
セラミック状の焼骨は、自力で加工するのは難しいので、業者に依頼しましょう。 - 実際に散骨する
海洋散骨の場合、乗船して沖合の散骨スポットまで向かい、散骨を行います。
他の船から見えず、漁場にあたらない海域まで乗船時間はかかりますが、静かに水面に消えていく遺骨を見て、故人が自然と一体化しているのを実感できる穏やかな葬送を行うことができるでしょう。 - 証明書を受け取る
日時や、散骨した場所の詳しい緯度経度が記載された書類を受け取ります。
樹木葬は最終的に埋葬や納骨を行いますが、申し込みからどのように進めるのか確認しましょう。
- 申し込み先を選定する。
人気のある霊園はすぐに空きがなくなってしまうことがあります。終活をしていて樹木葬を希望している場合は、生前予約がおすすめです。
霊園や寺院、場所の雰囲気や好きな樹木の種類、永代供養の有無、そして交通アクセスなど、自分や家族に合う埋葬先を探しましょう。 - 粉骨が条件の場合がある。
納骨や埋葬の仕方はさまざまですが、中には粉骨が条件の霊園もあります。粉骨することで遺骨の容積を減らし、より小さな骨箱や骨壺、袋に入れて納めます。
粉骨を専門に請け負っている業者に、相談してみるとよいでしょう。 - 行政手続きをする。
詳細は後述しますが、樹木葬はお墓を持つことになるため、行政上の手続きが必要です。墓じまい後の新たな永代供養墓として利用する場合、改葬扱いとなるため、さらに確認が必要になります。 - 実際に納骨、埋葬する。
墓標となる好きな樹木を植え、その根元を掘って遺骨を埋葬したり、元々あるシンボルツリーのそばに納めたり、契約先の霊園や寺院によって方法は異なります。
散骨と樹木葬の費用相場はどのくらい?
散骨と樹木葬を比較検討している場合、最も気になるのは費用相場かもしれません。
次項から詳しく紹介します。
散骨は方法によって金額の差が大きく、代行での海洋散骨が5万円程度ですが、遺骨入りのカプセルを搭載したロケットを月に向かって飛ばす宇宙葬の場合は250万円以上の費用がかかります。
また、場所によっては渡航費や滞在費が発生しますし、副葬品などがオプション扱いになっていることもあり、申し込み時にしっかり確認することをおすすめします。
以下、方法別の参考費用です。
利用する船や人数によって金額が変動しますが、業者に代行を委託する方法が最も費用を抑えることができます。
陸地での散骨も場所によって大きく異なりますが、業者による代行が比較的安価です。
風船を利用した方法だと費用が抑えられますが、ロケットを発射させる散骨は高額です。
チャーターする飛行機やヘリコプターにより、金額は大きく変動します。
樹木葬は契約した霊園や埋葬方法で金額が異なります。種類毎の費用相場を紹介します。
- 個別型および区画型 (例)30万円~
- 合祀型 (例)8万円~
個別に埋葬すると、一般的な墓地と同じように区画利用料がかかり、初めから合祀にすると費用は抑えられます。また、都市に近い場所であるほど、より高額になる傾向があります。
- 納骨料…遺骨を納骨する手数料です。
- 永代使用料…埋葬場所を使用するための料金です。
- 管理料…霊園の管理費です。1年毎か、契約時に何年分かまとめて払います。
- その他…新たに植えた樹木やネームプレートなど、さまざまな経費がかかります。
知っておきたい散骨と樹木葬の許可と手続き
散骨や樹木葬を行うにあたって、必要な許可や手続きを事前に知っておくと、準備が進めやすくなることでしょう。
散骨には、明文化された法律が存在しません。
東京都福祉保健局のウェブページによると「散骨には許可や届出などの制度はありますか?」という問いに対する回答が記載されています。
散骨は「墓地、埋葬等に関する法律」に規定されていない行為であるため、法による手続きはありませんが、念のため、地元の自治体に確認することをお勧めします。
国による規定はないものの、散骨についての条例を制定している「自治体」があるからです。散骨する場所が該当するかどうか、役所で必ず確認しましょう。
また、墓じまい後に散骨を考えている場合は、散骨を依頼した業者から行政書類の提出を求められることがあります。
樹木葬は墓地を利用することと同じ行政手続きを経て行います。遺骨を埋葬するためには、役所から発行される「埋葬許可証」が必要です。
また、墓じまいや別の墓地から遺骨を移動させて、新しい場所で樹木葬を行う場合も、「改葬」となるため行政手続きが必要になることを覚えておきましょう。
墓じまいで元の墓地の管理者からもらう「遺骨引き渡し証明書」と、改葬先に発行してもらう「受け入れ証明書」が揃うと、役所から「改葬証明書」を発行してもらえます。この「改葬証明書」が手元に来て初めて、樹木葬を行うことができるのです。
散骨と樹木葬の注意ポイント
自然葬の散骨と樹木葬は、ナチュラル志向の現代でもてはやされ、画になる美しいイメージばかりが先行しがちです。実際に行ったら「思っていたのと違った!」とならないよう、注意したいポイントを確認しておきましょう。
自由で人と環境に優しいイメージがある散骨。実施する前に知っておきたい注意ポイントを3つ紹介します。
散骨は明文化された法律の規定がなく、宗教や宗派にとらわれない自由な葬送です。しかしそれは、節度ある葬礼にすることを心がけた結果でもあるのです。
自然環境や周辺住民に配慮を行い、トラブルなく故人を見送れるよう、守るべきマナーがあります。
以下はマナーの一部です。
- 必ず粉骨をする。
- 水源地や漁場、農地、観光地の近くを避ける。
- 副葬品は自然に還るものを選ぶ。
散骨は、どこで行ってもよいわけではないのです。
散骨する際は、遺骨をパウダー状にします。パウダー状の遺骨はサラサラと流れて、故人が自然に還っていくように消えていきます。つまり、回収できないのです。
後日、散骨場所で探しても、確実に遺骨があるわけではないのです。それでは「寂しく感じる」という方には、遺骨を全て散骨せず少し残して、手元で供養することもおすすめです。アクセサリーに加工して身に着けることもできます。
散骨は屋外で行う葬送のため、天候に左右されてしまいがちです。故人との想い出の日時に予定していても、キャンセルになってしまう可能性があります。
急な変更も念頭に置いて、準備をしておくことが必要です。
緑に囲まれた美しい葬礼をイメージさせる樹木葬にも、知っておきたい注意点が2つあるので紹介します。
墓標となる木々や庭園型の霊園の花壇は、利用者や家族が勝手に手を入れてはいけません。
月日が過ぎれば、若木だった木々は成長し姿を変えることでしょう。放置されてしまうと、当然のことながら、庭園は荒れてしまいます。
管理体制に問題なく、ずっと美しい庭園を保つことができるのか、霊園を選ぶ時に見極めることが大切です。
霊園によっては、埋葬できる遺骨の数が事前に決められている場合があります。
個人型の樹木葬で、子孫を含めた家族全員を追加で埋葬することができないかもしれません。家族継承を希望している場合は、申し込み時に確認しましょう。
まとめ
「散骨」と「樹木葬」の違いをよく知り、故人や家族が納得できる葬送にしましょう。
著者情報
未来のお思託編集部 散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。 |