終活で60代以降の人生も充実させよう

60代は定年退職など、人生の節目を感じることが多い年代です。2017年の厚生労働省「就労条件総合調査」によると、企業の定年年齢は60歳が79.3%と多いことが分かります。

定年退職後の人生について考えたことはありますか?

厚生労働省の「令和元年簡易生命表」では、60歳の平均余命は男性が約24年、女性が約29年です。第二の人生を充実して過ごすために、これからの生き方を考えてみましょう。

終活とは?60代からは早すぎる?遅すぎる?

現在では、終活という言葉が世の中に浸透しつつあります。

2019年の楽天インサイトの調査では、「終活」の言葉を知っている人は約80%です。また、終活の意向がある人の約42%が60代から終活を始めたいと考えています。

一般的に、60代からの終活は早くも遅くもない、ベストなタイミングという認識です。時間に余裕がある60代だからこそ、納得できる終活を進めませんか?

60代で終活を始める前に考えたいこと2つ

60代で終活を始める前に考えたいこと2つ
これから続く第二の人生を悔いなく過ごすために、終活を始める前に考えておきたいポイントを2つ紹介します。

①人生これから!今後について考えてみよう

これからの長い人生をどのように過ごしていきたいか、じっくり考えたことはありますか?

今この瞬間から最期を迎える瞬間まで、自分が大切にしたいと思っている「物」や「人」そして「譲れない信念」「叶えたい夢」をはっきりさせてみましょう。

終活を進めていく際、さまざまな選択肢に迷ったり、家族や関係者、相談相手の発言に悩んだりするかもしれません。

終活を始める前に考えておきたい1つ目のポイントとして、自分の希望の再確認をおすすめします。

②どのような最期を迎えたいか考えてみよう

自分の最期の瞬間について思いを巡らせると「どこで最期を迎えるのか」「誰に看取って欲しいのか」が、重要になってきます。

自分の希望や信念に基づいた最期を迎えるためには、自分以外の人に動いてもらう必要があります。自分の最期は自分で決めたいものですが、実行に移してくれる人がいなければ難しいのです。

終活を始める前に考えておきたい2つ目のポイントとして、自分の最期のイメージを明確にしましょう。

20代でも60代でも外せない終活の流れ

終活は、以降の人生をより良く生きるための人生設計とその準備です。老若男女、いつ始めても、やるべきことは同じであり、終活の流れも変わりません。

この章では、終活を行う全ての人にかかわる手順を紹介していきます。

1.家族や大切な人に意思を伝えよう

1.家族や大切な人に意思を伝えよう
終活を行い、自分の人生プランを決めても、自分ではどうすることもできない時があります。

例えば、病気やケガで自分の意思を示すすべがない時、もしくは万一の時など、さまざまな状況が考えられます。

当たり前のことですが、自分の死後に行うイベントや相続についての指示をすることができません。

そのため、自分が終活していることは誰かに知らせておきましょう。いざという時に、自分の希望が分かっている人をいるということが大切です。

エンディングノートを利用する

エンディングノートとは、終活の記録帳を意味します。自分の名前や生年月日から、いざという時に連絡して欲しい家族や親戚、希望する葬儀などを記載したノートです。

市販のものから、自治体が特別な仕様で配布しているものまで多種類あり、デザインや記入内容がそれぞれ異なります。

書き方に形式や決まりはないので、一般的なエンディングノートを参考に自分で使いやすくアレンジして、手作りのノートを作るのも良いでしょう。

重視すべきなのは、自分の終活の記録や希望を他の誰かに共有することです。

2.身の回りのものを整理してみよう

2.身の回りのものを整理してみよう
もし今、自分に何かあったら、「これだけは見られたくない」「そのまま廃棄して欲しい」ものはありますか?スマートフォンやパソコンに残されたデータをデジタル遺品と呼び、これらの処分について考えていますか?

また、自身の通帳やカードから定期的に支払っているものはありませんか?解約の手続きを踏まないと、例え本人が亡くなっていても請求が続きます。

終活を始めたら、個人の所有物やデジタルデータの処分方法、各種解約手続きなどを今のうちに依頼をしておく、またはエンディングノートに記載しておくと良いでしょう。

3.亡くなった後どうしてほしい?葬儀を考えよう

3.亡くなった後どうしてほしい?葬儀を考えよう
自分の葬儀に参列して欲しい人はいますか?

斎場の規模や場所、宗教や宗派、火葬後の遺骨の供養方法など、葬儀にかかわる希望はありますか?

要望やこだわりがある場合は、家族や親しい人に伝えておきましょう。生前予約を受け付けている葬祭会社や霊園に相談して自身で予約をしておくのも、残される家族の負担を減らすことができるため良い方法です。

生前予約した場合には、業者名や連絡先を必ず家族に共有しましょう。

4.自分の財産の行方を知っておこう

4.自分の財産の行方を知っておこう
今の自分の財産を把握し、これからの生活に必要な資金があるかどうかを確認しましょう。

万一の時には、誰がどの財産を分与するか決めていますか?

財産の価値や分配方法などは、専門家に相談することをおすすめします。

遺言の作成も検討しよう

遺言とは、財産や相続に関する自分の意向を残された人達に示す1つの手段です。

遺言書は、以下の3つの種類があります。

  • 自筆証書遺言:自由に自筆で作成する遺言書
  • 公正証書遺言:公証人に遺言書を作成してもらい、公証役場にて保管
  • 秘密証書遺言:誰にも内容を知られることなく、自分で作成した遺言を公証人に証明してもらい、自分で保管

遺言書は形式や書き方が法律で具体的に決まっており、正しく書かれていないと遺言の効力がありませんので注意が必要です。

60代からの終活だからこそ行いたいこと

本章では、60代の今だからこそおすすめしたい、終活で確認と検討すべき事項を解説していきます。

年賀状など季節の挨拶のやり取りを見直す

年賀状など季節の挨拶のやり取りを見直す
終活の一環として、年賀状などの季節の挨拶を見直してみませんか?

年賀状でのみ挨拶し合う知り合いの中には、顏すら思い出せない相手もいるかもしれません。個人的な関係ではなく、仕事としての付き合いで送っている相手もいるでしょう。

定年退職をしたタイミングで、継続して付き合いたい相手を厳選すると良いでしょう。

これからの住まいについて家族と話し合う

これからの住まいについて家族と話し合う
第二の人生はどこを拠点にして、どのように過ごしていきたいですか?

歳をとることによって、身体が思うように動かせなくなることも考えられます。ひとりで決めずに、家族と一緒に考えることをおすすめします。

シニア層の住まいの種類
シニア層の人達は、どのような場所に住んでいますか?
自宅のほか、老人ホームなどの施設を終の棲家に選ぶ人がいます。
終の棲家が自宅の場合

室内の段差をなくす、階段や風呂場、トイレなどに手摺りを設置するなどのリフォーム工事などを行い、自宅で暮らし続けることができます。また、今の住まいよりも生活利便の良い物件への引っ越しすることも選択肢のひとつです。

終の棲家が老人ホームなどの施設の場合

老人ホームは、自分の家での生活が難しい高齢者を収容する施設なため、入居時の健康状態や介護レベルによって、区分されます。

要介護認定を受けている高齢者のための公的施設を「介護保険施設」と呼び、以下の3種類があります。

  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設

その他、「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」などの施設があります。

60代以降のおふたりさまとおひとりさまの終活とは?

60代以降のおふたりさまとおひとりさまの終活とは?
終活は、共有する相手がいなければ完了できません。そのため、以下のようにその人の状況によって終活の内容が変わります。

  • おひとりさま
  • 夫婦二人きり
  • 夫婦以外の家族と一緒 など

おふたりさまは2人で対話をする機会を持とう

「おふたりさま」とは?
夫婦もしくは親ひとり子ひとりで生活している人達のことです。

万一のことがあれば、どちらかがひとりになってしまう可能性を念頭に置いて、終活を行いましょう。

おひとりさまは頼れる人や場所を確保しておこう

おひとりさまは頼れる人や場所を確保しておこう
余生はおひとりさまを大いに楽しんで過ごしたい!という人もいるでしょう。

「ひとり暮らし」「身内がいない」「疎遠になっている」といった場合でも、問題なく終活が進められるよう、行政や企業、専門家がさまざまな手助けをしてくれます。

終活のサポートを行っている自治体の中には、市民の終活の内容を把握し、必要な時には代理で実行するサービスを提供するところもあります。

おひとりさまが特に心配している、「後見」「死後事務委任」「お墓や埋葬の問題」などの解決方法について説明しましょう。

亡くなるまで頼れる後見制度

万が一、さまざまな判断をすることが難しくなった場合、財産の管理や契約、遺産相続や分割についての話し合いの際に不利益を被ることがありえます。

判断能力が不十分な人を保護するため、代理人による財産の手続きを認める制度が「後見制度」です。そして、後見制度には下記のように種類が2つあります。

法廷後見制度

家庭裁判所が後見を選任し、法律の定める権限を与える制度

任意後見制度

自分がしっかりしているうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、予め誰にどこまでの権限で判断をお願いするかを、申し込み時に決める制度

亡くなった後に頼れる死後事務委任

後見制度は生きている人の代理を委託する制度です。そのため、後見の契約は対象者が亡くなると終了します。

死後に行う必要があるさまざまな手続きや届け出、連絡などの事務作業を「死後事務」と呼びます。身寄りがなかったり、家族が対応できなかったりする場合は、死後事務委託がおすすめです。

弁護士や行政書士などの専門家やNPO、企業などと生前に委託契約を交わし、必要な時に死後事務を行ってもらいます。料金は契約内容や企業によって異なり、生前契約のため、まとまった金額が必要となります。

なお、死後事務委任を引き受けている自治体もありますので、親身になって対応してくれる相手に依頼しましょう。

お墓の問題を抱えているなら解決しておく

お墓の問題を抱えているなら解決しておく
お墓に関する悩みや心配事がありますか?

「アクセスが悪くて通いづらい」「お墓を継承できる人がいない」などが代表的な問題です。

今後の供養や埋葬方法について家族と話し合い、自分の死後について考えてみましょう。

墓じまいという選択肢
お墓を管理し引き継ぐ親族がいない場合は、どうすれば良いのでしょうか?
お墓は放置されると、無縁仏になる可能性が高いです。そのため、お墓を手放して先祖の遺骨を改めて別の場所で供養し直す「墓じまい」という方法があります。

墓じまいは、墓守の義務感から解放されますが、お墓に入っている先祖の遺骨をどうするかなどの問題が発生します。そのため、検討する際は、お墓に関係する全ての人に相談するようにしましょう。

なお、墓じまいをした後の遺骨の供養は、以下の方法があります。

  • 新しいお墓を建てる
  • 納骨堂や樹木葬などの永代供養墓を契約する
  • 手元に置いておく
散骨でお墓を持たずにいられる方法もある

散骨でお墓を持たずにいられる方法もある
墓じまいで遺骨の新しい供養先として、お墓を新調したり、永代供養墓を利用したりすることを選択すると、お墓の管理が必要になります。そのため、後継者がいないなど、お墓の継承に不安を感じる人には「お墓を持たない」供養方法がおすすめです。

それは、パウダー状に砕いた遺骨をまいて自然に還す「散骨」という供養方法です。手元にある遺骨を全てまけば、お墓を持たずにいられます。

また、散骨は海上や山の中など自然豊かな場所で行い、宗教や風習にとらわれない比較的自由な葬送です。

まとめ

1.60代からの終活は、これから20年以上続く人生を充実させるために行う
2.終活では、自分が大切にしたいものや生き方、人生の最期について深く考えて自分を見つめる
3.信頼できる人に終活の内容を共有し、身辺整理や葬儀、相続について手配する
4.交友関係の見直しや、住まいについて調べ、老後の人生の準備をする
5.自分自身で手続きや判断が困難になる可能性を踏まえ、後見制度や死後事務委任などの制度を利用したり、お墓の問題を解決したり、今からできることをする

終活は、これからの人生を自分らしく生きやすくするための確認作業です。定年退職を迎える60代だからこそ、納得がいく終活を進めましょう。

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未来のお思託編集部
散骨、お墓、終活などの準備に関する様々な知識を持つ専門チームです。皆さまのお役に立つ情報をお届けするため日々奮闘しております。